ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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59話 グリセア村での相談

 

「―――んんん……、一良さん的には、どう思います……?」

「いやまぁ……うん。難しい問題だよね。俺も見ていてよく解るし。うぅん、こればっかりはなぁ……」

 

 

リーゼとのデートを終えて、暫くは書類関係の仕事に携わっている和樹と一良。

 

事務作業は大体が一良の仕事で、圧倒的な火力(笑)で現場仕事が中心な和樹。

最近では広範囲に工事の規模が同時進行で進んでるのでいい具合に効率良い仕事となっていたが、今回は珍しく、そして久しぶりに他の侍女たちも居ない仕事時の2人きりな状態。

 

そこで打ち明けるは、やっぱりリーゼとの関係性だ。

元々、リーゼが和樹に好意を持ってるのは一良も知ってる……が、普通であればあの超常的な力を目の当たりにし、神だと打ち明けた後は一線を引くだろう。それが一良自身の予想だった。自分の様な人間で不思議なアイテム持ってる程度のなんちゃって神様(笑)じゃなく、実際に光に成れる正真正銘な神様(笑)な和樹だ。本人の人柄や普通に接して欲しいという願いが無ければ、畏怖の念を覚えて口を利くのも難しくなるのでは? と思っても仕方がない。

 

でも、リーゼはあの後も非常に積極的。

仲良さそう……程度だと思っていた一良の見積もりは甘すぎ判定である。

 

そして和樹の想いも。

 

 

「……そりゃ、俺だって。フラれた~~って、女性不振だ~~って、一良さんに言っちゃってますが。ハッキリ言ってもうソレ言い訳に使ってるだけだって自分でも解ってますよ……。リーゼは良い子だし、普通に可愛くて綺麗で、あの素の性格だって十分魅力的だし、俺には勿体ないくらいだし……」

「年齢的な所を考慮しても、和樹さんと同意見。こっちじゃ適正年齢遥かに低いからね。一昔前の日本、元服があったころの日本を思えば何にも不思議じゃないし」

「でも………、俺は一良さんと全然違うんですよ? どうやって(・・・・・)ここに来たのか(・・・・・・・)のかも解らない状態(・・・・・・・・・)で」

 

 

この件は以前に一良にも和樹は打ち明けた事がある。

自分がどうやってこの世界に降り立ったのか、その経緯を。

流石に、自分がいた世界では、この世界や一良自身が空想の産物、虚構(フィクション)だった等とは話はしていないが、十分過ぎる程一良には解って貰えた。

 

 

「未来のゲーム、VRMMOをしていたら、此処に来てた。俺とはまた違った異世界転移方法だもんね……。単純に、眠ってるだけで意識だけが飛ばされた~みたいな可能性もあるし、その……言いたくないけど……」

「ああ、大丈夫ですよ。だって、俺からも言ったでしょ? そんな気遣いは無用です。……ゲームの最中に、発作とかで死んでたり(・・・・・)、でしょ?」

 

 

異世界もののお約束では、現実世界? で命を落とし、異世界に転生させられる、と言うパターンが多い。

 

和樹の場合はそれが当てはまる可能性だって大いにあるのだ。ピカピカの実と言うチート能力を授かった、と言う点にしても、神様的な存在がいて、その神様のミスなのか或いは気まぐれなのか、アソビなのか……、この世界に転生させられたという設定。結構世に出回ってる設定。

 

ただ、その場合は誰か別の人物……元の自分じゃなく、別の誰かに生まれ変わり、前世の知識を持って~的なのが王道な筈。

和樹の場合、身形は以前のままだというので………つまりどうなるのだろう?

身体が異世界転生、じゃなく転移、転送の類となるのだろうか? その移動の過程でチートな能力を得た、と……?

 

 

この件は、今日まで結構考えてきた……が、当然考えて答えが出るモノではない。

結局いつも結論は取り合えず巨大で強大な力か何かが働いたのは言うまでもない、と言う事。

 

 

そんな大いなる存在が居たのなら、この先のこの世界がどうなってしまうのか? と不安にならない訳ではないが、大体は干渉しない、と言うのが相場的。それに今の所神様自称した2人組が活動しても、天からの裁きの様なのはないから大丈夫……とは思うが。

 

 

「寧ろ、そっちの方が歓迎って、今は考えてます」

 

 

和樹はそう答えると天井を見上げながら続けた。

 

「……この世界に骨を埋める事が出来るのなら、リーゼとの付き合いだって十分マエムキに考え……いえ。普通にOKしますよ。即決です。こんな俺でも良ければ、って。その場合俺についての説明(・・・・・・・・)はしたいですがね。……勿論、一良さんの了承を得てから、になりますが」

 

リーゼと結ばれる未来を視てみたいと思う。

その先に何が待っているのか不透明な部分はあるが、それで別に構わない。今だってそうだから。ただ、明るい未来を創る為に努力をするだけだ。

 

一良は、そんな和樹の言葉を聞いて穏やかに笑った。

 

 

「ははは……。別に俺の了承なんて必要ないよ。そりゃ、和樹さんが居なかったら……正直メリット・デメリットを考えて、話す方が割に合わない、って判断してたけど。今はどちらでも良い、って感じだからね。皆を騙してるって考えたらちょっと複雑だけど、その分頑張って働いて貢献する事で許して貰おうかな? って」

 

 

当初は一良の言う通り。

自分が神でない、と暴露した時のメリットとデメリットを天秤にかけて、明かにデメリットの方に傾いた。

皆の人柄を知った今、神じゃないとしても分け隔てなく接してくれる事だろう事は頭の中では解っているが、それでもひょっとしたら村を人質に取られたり、軟禁されて知識・私財の全てを強奪されたり……と100%無いとは言い切れないからこそのデメリット側。

 

でも、その点は和樹が共に居てくれるのなら話は変わってくる。

実力でどうこうするなんて不可能だから。………万が一にでも、和樹の人柄がもっと横柄で横暴で……って考えたらアレだが………もうそれは考えない様にしてるから大丈夫。

 

 

「……それと、そっちの方が歓迎(・・・・・・・・)って言うのは?」

 

 

一良は次に、和樹に質問を投げかけた。

そっち、と言うのは現実で死に、この世界にまで渡ってきた、と言う説。

正直、それをヨシとする意味がイマイチ解らなかった。……嘘でも死んでいる、なんて自分は考えたくないから。

 

だが、和樹は視線を天上から一良の方に向け直すと、朗らかに笑いながら告げる。

 

 

「あ~~。……俺がリーゼの手を取れない一番の理由。今一番気がかりな事は、強制的にこっちに連れてこられたので、その逆もまたあるのかな? って事なので」

 

 

普通に屋敷から歩いてきた一良と違う点がそこだ。

勿論、一良だって扉、家を物理的に破壊されたり、時空間? か何かの力の作用が効力を失って世界と世界を繋げなくなったり、と不安要素がない訳じゃないと思うが、それでも突然連れてこられる、連れて帰られるかもしれない和樹よりはマシな部類だと思われる。

 

 

「リーゼの事が好きになって、この国も勿論好きで、リーゼだけじゃなくジルコニアさん達だってそう。力になる、って言っておいて、何もかも無責任にこの世界から退場させられたら、って考えたら、どうしてもリーゼの想いに対して二の足を踏むんですよ。もしも、を考えたら、こればっかりは、やっぱり抗いようがないですから。ピカピカでも逃げれないって思ってます」

「……難しいよね」

 

 

改めて和樹に告げられて、一良も少し表情を落としながら一言告げた。

現実ではありえない事象を何度も見てきているから、今和樹が言った様な事が起こらないとも限らない。

 

でも、それは自分達じゃ抗えない事………。

だから、一良は少し考えて……決めた。

 

 

「うん。やっぱりこれが一番かな」

「??」

 

 

ぽんっ、と手を叩き和樹に告げる。

 

 

「和樹さんは引き摺る性格じゃないとは思うんだけど、やっぱりマイナス面を考え込み過ぎたらさ? どうしても気落ちしちゃうから、この答えもプラス面を考える様にしよう。和樹さんの言う通り、こればっかりは俺の金でも解決できない問題だし、備えるなんて事さえ出来ない。なら、もう考えるの止めた方がいっその事良いと思うんだ」

「………ですよねぇ。やっぱり」

「それで、ね?」

 

 

和樹も一良が言わんとする事は解る、と苦笑いをした。

最終的に自分が行き着く所がそこである、と言う事は予想していたから。

 

だが、一良には続きがある。

 

 

「万が一って事もあるし、今からでも出来る事はしようと思う。だから、2人で約束事を決めない?」

「???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後。

 

和樹はグリセア村上空まで飛んできた。

イステリアでの仕事はとりあえず和樹がいなくても良いくらいには一段落出来ているし、後は既存の道具や一良の日本式道具でどうにか出来るから。

必要な書類作成や事務的な処理もナルソンを中心として期日までには問題なく済ませれる、と太鼓判も貰ってる。

 

と言うより、やっぱりパソコン・印刷機を持ち込んだ事による事務的な仕事効率向上……以上に、ピカピカの力を使った現場作業が鬼の様に早いから時間のゆとりは物凄くある、と言うのが実際な所だ。

本来想定していた工事期間を超大幅に短縮させて、皆の士気も向上しているのだから。

ある程度無理するのはリーゼを含めた領主たちで、そんな領主側に負担を駆けまい、と他の皆も頑張って良い相互関係となっているので今後も期待大。

 

 

 

 

それは兎も角———和樹がグリセア村に来た理由は……。

 

 

「ええっと、まずは人気のない場所に降りて……、ノワに挨拶する前に、シルベストリアさんの方、かな?」

 

 

グリセア村警護に当たってくれてるシルベストリアに挨拶をする、と言う事。

大切な村を守ってくれるのだから、当然。本来ならもっと早くに、初日にでも来ても良かったのだけど……、その辺りは仕事以外にも色々とあったので、と言う事で。

 

 

「ニィナさんニィナさん」

「!!!」

 

 

グリセア村での農作物管理をしていたニィナと目が合って、和樹は手を振った。

一瞬ギョッ! としたニィナだったが、直ぐに色々と手に持ってたモノを投げ捨てる様に手放すと駆け寄ってくる。

 

 

「カズキ様!? いつの間に――――!??」

「ふっふっふっふ。私は何時如何なる時も、貴女の傍に現れるんですよ~~、お仕事、頑張ってますかーーー! って神様チェックしてるんですよ~~~! ……あはっ、グリセア村の皆は、その辺りは全く問題なし、ですがね。皆頑張ってます! ………そもそも、毎回ここに来る度に村がグレードアップしてる感じですし……要塞?」

 

 

ピカピカの力の応用。

光の屈折やら、太陽光やらに紛れたり、何やらを利用したなんちゃってステルス。

以前は光に紛れて移動~程度だったし、よく目を凝らして視られたらバレる程度のモノだったが、それなりに精度が上がってる。

ただ、神経使う精神的なモノなのか何なのかは不明だが、……物凄く疲れるのであまり長時間乱用は嫌だ。タイムを計った事は無いが、ピカピカ制限時間切れの件もあるから。

 

 

「ひょ、ひょっとしてカズキ様に私、覗かれちゃってた!? ついさっきも汗かいて、汚れちゃったから湯浴みを……、えと、えとえとえと、いつから、いつからですか? い、いえ、嫌だったってわけじゃなくて、その……わ、わたしは、どうでした……? バレッタ程綺麗でも可愛くもないけど、カズキ様のお目に叶いそう……ですか?」

「ぶっっ」

 

 

まさかのしっぺ返しを食らう和樹。

どうやら、驚かせて終わり、とはならない様だ。

 

ニィナは頬を赤く染めて、両頬に手を添えて身体をくねらせている。

丁度グリセア村にはお風呂も常備しているから、生まれたままの姿……裸だって和樹の力を使えば……アレだ。

 

 

「ちょちょ、ちょっとまった!! 今来たばっかです! 覗きなんてしてないですよっっ!!?」

「わ、わたし、カズキ様なら………」

「まってまってまって! ほんとですってば! 今着いたばっかりでーー!!」

「ニィナ~~! 誰と話を……って、カズキさん?」

 

 

ここに救世主(バレッタ)が現れる。

両手をぱたぱたと振るって、顔を赤くさせながら慌ててるカズキ、方や両頬に手を添えて、顔を赤らめながら悶えてるニィナ。

一体どういう場面だ? とバレッタは首を傾げながらも、和樹の来訪は喜ばしい事だ。(勿論、一良も来て欲しいけれども)取り合えず花開く笑顔で挨拶。

 

 

「着ていらしたのですね。お疲れ様ですカズキさんっ!」

 

 

いつも以上に良い笑顔のバレッタがそこにいて(和樹視点) やっぱり和樹にとって救世主だ! と半ば縋る形で、バレッタに言う。

 

 

「ば、バレッタさんもどうか説得してくれません!? おれ、ニィナさんの事覗いたりしてない、って! 神に誓ってそんな不貞してない、って!」

「え、ええ?? の、のぞき、ですか?」

「そーです! そーです!! や、違う! のぞきしてません! 俺、今着いたばっかりで、外だと駐屯兵の皆さんにバレて騒ぎが大きくなっちゃうから、いつも通り、俺の正体知ってる皆の所に、グリセア村の中に降りて、そ、そこでちょっとした悪戯でニィナさんを驚かせただけなんですっっ」

 

 

 

わたわた、と半ばパニック状態になってる和樹を見て、いつの間にかお腹を抱えて笑を堪えてるのはニィナだ。

バレッタもバレッタで、そんな和樹の姿が可愛らしく見えたのだろう、笑いそうになったのだが、ニィナの姿を見てどうにか止める事に成功。

 

 

「ニィナ?」

「くく、~~~っっっっ!?」

「もうっ、そんなにカズキさんを揶揄ってどうするのよ。罰あたっちゃうっても知らないよ?」

「へ?」

 

 

慌てていた和樹。

でも、次第に理解していくのだった。

自分自身がまたもや揶揄われてしまっているという事に……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ブスッ」

「すみません、カズキ様。っその……、ちょっとした仕返し~って思ってやって見たら、何だか凄くカズキ様がどんどん愛らしく見えちゃって、あ、私を驚かせたそのお返しに、って思って下されば幸いですが!」

「あ~~もうっ、イイ感じですよねっ! ニィナさんは、村一番俺に普通に接してくれてすごーーーく嬉しいですよ! いやー、うれしいなぁぁぁ!」

「あ、あははは。カズキさん、お水をどうぞ」

 

 

フランクに接する事。

普通に接する事。

神様(笑)だけど、それを望む―――。

 

そう言って、実行に移してくれたのは最早数える程だ。

ニィナはある意味希少で貴重な人材だと言えるのだが……。

 

 

「まったく、ノワと言い、ニィナさんといい、こっちの女の人は強いよね」

「あっはっはっは~! 私も漸くですよ? 漸くこうやってカズキ様と接する事が出来たんですよ? 正直、自分を自分で褒めてあげたい気分で~ ……っとと、そう言えば以前もその名前を聞きましたが、ノワ、とは誰の事なんですか?」

「ん? ああ。確か言ってませんでしたね。ノワは、その―――オルマシオールの事ですよ。いや、オルマシオールの相方? 眷属? とでもいうべきでしょうか」

 

 

事ある事に、和樹の口から語られるノワと言う名に、ニィナは疑問に思いつつも、中々タイミングがつかめずにいた。

丁度今良いタイミング、と名について聞いてみたらビックリ……。

 

 

「え? あれ? オルマシオール……って、確かバレッタが言ってた……?」

「うん」

 

 

オルマシオールの名が出てきた事にはビックリ。

驚きを隠せられない。思わず、《~様》と呼べなかったくらいには。

以前、バレッタと共に山の中で炭窯を作っている時にニィナ自身は会っていないが、バレッタは会ったらしい。

それは大きな大きなウリボウとの事。

 

 

「えと、大きなウリボウの姿で、言葉を喋る、でしたっけ?」

「えと、はい。そうですね。その通り。通常種の2倍はあるかな?」

 

 

普通のサイズより二回りは大きく、更には喋るとの事。

 

 

「バレッタが言ってたのって、やっぱり夢とかじゃなかった、って事かー」

「もー! ほんとだって言ったよ? ニィナ信じてなかったの?」

「いや、信じてなかったってわけじゃないけどさ。やっぱりほら? 頭打っちゃった~とか、働きすぎだから疲れが溜まって~とかも考えててさ? 疑ってかかる事も大事じゃん? 心配で心配で~」 

「も~~~! ニィナっ!」

「あはは、ごめんごめん」

 

 

本当に仲良さそうな2人を見ると微笑ましくて頬が緩む。

 

 

「そうだ。そのノワ――――オルマシオール達からの連絡で、昨日も変な集団を見かけたから追っ払った、との事で。身形から察するに野盗らしいよ。こんな要塞みたいな村に、イステリアの軍も居るのに襲ってくる~なんて事は無いと思うけど」

「「えっ!??」」

 

 

説明不足だった。

ノワールたちウリボウ組は、この地帯を、この地域一帯に根を張りアンテナを張り巡らせ、治安維持に努めてくれているのだ。

イステリアから遣わされた部隊も手の届かない範囲と言うモノは当然あるから。更に範囲を広げて見ていてくれてる。

 

 

その説明を和樹は忘れていたので、ニィナは勿論のこと、バレッタも驚き目を見開いていた。

 

 

その後は、これでもか! と頭を下げられたのは言うまでもない。

本人に合わせて欲しい、とも言われたがノワールは基本的に催眠術を駆使するので難しいし、和樹以外(例外的に一良)はなるべく合わない様にしているので難しい。

 

それをそれとなく伝えて、感謝の念は自分から伝える~で解って貰えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後———アイザックと合流。

ここへ来た目的の1つ、守護を引き受けてくれたシルベストリアに挨拶をする為、である。

 

シルベストリアを紹介するという過程でアイザック以上の適任は居ないだろう。

 

 

「付き合ってもらって感謝ですよ。アイザックさん」

「いえいえ。私で宜しければ幾らでも使って下さい。私こそがいつもカズキ様にはお世話になっております。……カズラ様、カズキ様の為にこれからも粉骨砕身の覚悟を持って働きますので」

「あははは。でも、アイザックさん? ベクトルは忘れない様にしてくださいよ。アイザックさんが粉骨砕身で働くのは国の為。私はそのお手伝いをしている立場ですので」

「あ、ありがとうございますっっ」

 

 

時折、涙まで流して感極まるのはアイザックの通常運転。

最初こそ諫めたり落ち着かせたりしていたんだけど、アイザック自身がこういう性分なので、ムリに矯正したりせず、このままにしている。

楽しんでたりもする。

 

 

 

「それにしてもシルベストリアさんは、子供たちと釣りですか。うん。良いですね。早速皆と仲良くなってくれたのは、嬉しいです」

「はい。彼女は元々子供好きと言うのもありますし、とても昔から上手だったので。イステリアの町の子供たちにも人気がありますよ」

「それは人柄の良さ―――ですね。流石はアイザックさんの家系」

 

 

和樹がほめると、物凄く嬉しいそうに頭を掻きながら照れ笑いを浮かべるアイザック。

褒めて伸ばす、と言う言葉があるが、アイザック程ストイックな軍人には寧ろこちらの方が良い気がする。……と言うより、普段から自分にも他人にも厳しく、上層部には鬼の様な上司が沢山いるので、普通に自分といる時くらいは鞭なし、飴状態で良い筈だ。

 

そして家系の話をちらりとしたが、これは心の底からの本心。

マクレガー、イクシオス、ルートとそれなりにアイザックの家系、スラン家の皆さんとは面識があるからこそのモノだ。

 

その後も、主に剣の訓練話を中心に話しながら川縁の方へ足を運んでいくと、楽しそうな―――それでいて慌てた様な声が聞こえてきた。

 

 

 

「―――ぜ、全然外れないよこれ!? どうして!? なんで!?」

「違うって! 板を押し込むんじゃなくて、押しながら捻るんだよ! 急いでやらないと魚が死んじゃうよ!」

 

 

 

声の方を見てみると、どうやら人だかりが出来ている。

アイザックに目配せして確認すると、頷きが帰ってきたので間違いない。彼女がシルベストリアだ。子供たちに囲まれて大騒ぎしている。

 

 

「だから! ただ押し込むだけじゃ駄目なんだって! 糸も引っ張りながらじゃないと外れないよ!」

「そ、そんなこと言ったって……」

 

 

シルベストリアは半泣きになりながら、魚の口に入れた板をこねくり回している。

どうやら、魚が飲み込んだ針を外そうとしているのだが上手くいかないらしい。

軈て、魚の方が根を上げたようで、「グェッ」と謎の異音を発して大人しくなってしまった。

 

 

「あー、もう! 俺がやるよ。ほら貸して!」

「あうっ、あぅぅぅ……」

 

 

見るに見かねた周りで騒いでいた男の子の1人がシルベストリアから魚を引っ手繰ると、手慣れた様子で板を捻って針を出した。そして水桶の中に魚を放り込む。

どうやら、根を上げても完全に事切れた~と言う訳では無かった様子。身体を痙攣させながら水桶の底へと沈んでいった。

 

 

「あ、あの~シルベストリア様?」

「……あ、アイザック……、私、釣りの才能ないのかも……」

「は、はぁ」

 

 

げっそりした様子のシルベストリアは、アイザックの存在には気付いたようだが、直ぐ隣に要る和樹の事は気付かない様だ。

いや、気づいているのかもしれないが、アイザックの部下? 程度の認識であまり気にしてないのかもしれない。

それ以上に、魚との格闘、長い格闘の末に、どうにもならず途中リタイアしてしまった自分自身が泣けてくる……と半泣きになってしまっている。

 

 

「あの、シルベストリア様には本日ご紹介したいお方が――――」

 

 

それは兎も角、目的を果たそうとアイザックは隣の和樹の説明に入ろうとしたその時だ。

 

 

「あっ、カズキさまっ!!」

 

 

村の子供の1人が、和樹に気付いて声を上げた。

すると、あれよあれよと言う内に、子供たちの注目を集める。

 

 

【ほんとだ! カズキさまだっっ!!】

 

 

持っていた釣竿を、石と石の間に引っ掛けたり、地面に突き刺して固定したりして、手放すと直ぐに皆の人だかりが、シルベストリアから和樹へと変わった。

 

 

「え、あれ? かずきさま、って確か――――……」

 

 

シルベストリアは、一体何事か? と目を白黒させていたが、その名についてはハッキリと覚えているので、アイザックの方を見た。

すると、アイザックもそのシルベストリアの視線の意味が分かったのか、笑いながら小さく頷く。

 

 

「ッッ!!」

 

 

それで全てを悟り、急いで立ち上がって直立不動の姿勢で敬礼をした。

 

 

「も、申し訳ありませんっっ! 私は、シルベストリアと―――」

「あ、いえいえ、そのままで大丈夫ですよ。お話はアイザックさんから聞いています。シルベストリアさん」

 

 

あっという間に子供たちに埋もれていく和樹。

シルベストリアにしてみれば、アイザックから聞かされていた人との邂逅。

冗談抜きでまさに神との謁見。

どういう形式が良いのか、軍隊形式の礼儀作法が良いのか、正直答えが解らない。この辺りは、アイザックに追々相談を~と言う形にしていたのだが、あまりにも不意打ちが過ぎる。

 

そもそも、神との邂逅だ。こんな遊んでる所であって良いモノではない! 

 

 

———と、シルベストリアは慌てていたのだが、物凄く子供たちに好かれている様で、子供たちに向けている笑顔を見ても物凄く人柄が良さそうで……、次第に思いっきり緊張して、筋肉が突っ張ってしまっていた感覚が解れていくのを感じ始めた。

 

 

「カズキさま~~! おうた、うたって~~!」

「カズキさま~~~!! 一緒にあそぼーーーっ! 追いかけっこ~~!」

「カズキさま~~~~!! おままごとしよーーーーっ!!」

「「「カズキさまーーー!」」」

 

「ほらほら、いつもながら無茶言わないの。俺の身体は1つしかないんだからな? 取り合えず皆で釣りをしよっ!」

【はーいっ!】

 

 

一日の長と言うモノがあるとは思うが、こうまで子供たちの心をつかみ、こうまで笑顔を弾き出せている神に思わずシルベストリアは目を輝かせた。

 

 

「皆で勝負、ですね。アイザックさんも」

「え! あ、いえ私は……」

「アイザックさんが帰っちゃうの、辛いなぁ……。ねー? みんな。アイザックさんとも一緒に釣り勝負したいよね~?」

【うんっ!!】

 

 

子供たちからの期待の目。

更に和樹から差し出される釣竿。

 

粉骨砕身の覚悟を誓ってるアイザックに断るなどと言う選択肢は端から無い。

 

 

「じゃあ、お隣失礼しますねー」

「ひゃ、ひゃいっ!!」

「あはははっ。シアお姉ちゃん面白いおかお~!」

 

 

和樹がシルベストリアの隣に腰かけた。

気も漫ろだったようで思わず驚いてしまって、それが顔に出た様だ。

 

 

「ゆっくり釣りでもしながら、お話しましょう。アイザックさんも、今日の急ぎの作業はとりあえずない、と聞いてますから」

「はい、了解です」

 

 

付き合いも仕事の内。

村を預かる以上、子供たちとの触れ合いも言わずもがな。

 

アイザックは頷くと付近の石をひっくり返して餌になる虫を探すのだった。

 

 

「かずきさま~~! 早速つれたよっっ!!」

「ええ、早ッ!」

 

 

とは言っても、やっぱり子供たちに大人気な和樹だ。

そこにシルベストリアまでいて、テンションが上がらない子供は居ない様で、ゆっくり話す~と言うのはムリがあったな……と、苦笑いをするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も暫くは子供たちと遊んだ。

今回は主に釣りで、皆で釣り勝負! どれだけ沢山釣れるか勝負! と言う話を持ち掛けて、子供たちは雲を散らす様に散っていき、漸くシルベストリアと話をする事が出来たのである。

 

最初こそは当然ながら物凄く緊張していた様だが、次第に打ち解け合い、笑顔を見せてくれる様になった。

まだまだ自然に~とはならないかもしれないが、素性を知った上で、この速さでの打ち解けは、シルベストリアが初めてではないだろうか。

 

 

「それにしても、シルベストリアさんは凄いですね~。皆と1,2日で仲良くなっちゃうんですから」

「えへへ……。その、仲良くなってる、と言うよりも私自身があの子たちに遊んでもらってる、って言う方が正しいかと思いますよ」

 

 

照れ笑いを浮かべるシルベストリア。

アイザックが言っていた子供好き~と言うのは筋金入りな様で、性別など色々な要素があるとは思うが、やはり義務や仕事だと認識して接するのと、心から子供好きと言う気持ちで接するのとでは、やはり信頼関係を結ぶのに時間は生まれてしまうと思う。

彼女は後者だったからこそ、ここまで短期間で仲良くなれた筈なのだと。

 

 

そして、ここでもアイザック似……と言うより、スラン家の血筋が爆発する。

 

 

「カズキ様は、夜な夜なアイザックに剣術稽古をしている、と話に聞いてますが!」

「ええ。アイザックさんに限らず、ルートさんやハベルさん、ですかね。たまにマクレガーさんも顔を出す事はありますし、イクシオスさんも同じ頻度で。ジルコニアさんは度々、ナルソンさんは稀に……」

 

 

指を折り折り出てくるのはこのイステール領土の重鎮と言っても良い超大物ばかり。

益々シルベストリアは目を輝かせて―――。

 

 

「カズキ様はオルマシオール様なのでは無いですか??」

「いえいえ。私はメルエムですよ。オルマシオールは別に存在してて―――」

 

 

戦いの神の名を口にする。

それも仕方がない事だ。アイザックの話から照らし合わせても相当な剣術・力がないと務まらない相手ばかりだ。特にジルコニアは国でも間違いなく5本指に入る程の実力者。

それらを手玉に取る(とは言ってない)和樹が最早最強であり、つまり神様であり、オルマシオール、と言うのがシルベストリアの連想ゲーム。

即座に和樹には、手をぶんぶん横に振って否定されたが。

 

 

「いいなぁ、アイザック……。私も神様に手取り足取り稽古して貰いたいなぁ……」

「え、そ、それはですね……」

 

 

和樹との剣術稽古は、イステリアに居てこその話だ。

そしてシルベストリアはグリセア村から動けない。

 

和樹自身の能力を使えば、領土内の行き来など文字通り光の速さで出来るだろうが、流石にそこまで苦労を掛けるのは有りえないから。

 

 

「あはは。空いた時間で良ければ別に構いませんよ? あ、勿論グリセア村に来ている間、になっちゃいますが。いつでも気軽にどうぞ。時間は作ります」

「よよ、よろしいのですか!?? わ、私なんかの為にそんな―――っっ」

「すっごい食いつき……。流石アイザックさん家の血筋………。こほんっ。いえいえ。シルベストリアさんにはここを護って貰ってる感謝があります。グレイシオールに変わって、私の方から感謝の意を。この程度で宜しければ幾らでも、です」

 

 

女性であってもやっぱり軍人か……。

花より団子? 的なことわざが頭を過ったが……流石にそれは飲み込んだ。

 

 

シルベストリアは、両手でガッツポーズを見せると。アイザックの方を見て子供の様に喜んだ。

 

 

「これで私も神様の弟子の1人になるんだねっ! アイザック!」

「あ、あははは……。そうですね。私も負けてられません。やはりまだまだシルベストリア様の方が御強いですから―――っと、そうでした。シルベストリア様に1つお願いしたい事がありまして、聞いていただけますか? そのかたにも許諾を得ないといけないので、それからにはなりますが」

 

 

元々合間に話す予定だった事を告げるアイザック。

話の流れ的に鑑みれば、話題も剣の稽古の話だからある意味最高だといえる。

 

 

「うん? お願いしたい事?」

 

 

子供の様に燥いでいたシルベストリアだったが、取り合えず落ち着きつつ、小首を傾げた。

 

 

「それは、私も聞いてて大丈夫な話ですか? 必要なら距離を取りますが―――」

「いえいえいえ、カズキ様に聞かれて困る様な事は私は知りません。持ち合わせてもいません」

「……そこまで言って下さるのは有難い事ですが、流石にプライバシー系はフルオープンにしないでくださいね?」

 

 

アイザックは真面目な性格だから、ちょっと心配……と苦笑いする和樹。

シルベストリアも同じ気持ちで、和樹の気持ちも解るから同じ様に笑っていた。

 

アイザック自身はよく解ってない様だが、一先ず【少し長くなる】と前置きをしつつ話を続ける。

 

 

 

 

「……というわけで、バレッタさんに武術の指南をしていただきたいのです。丁度、シルベストリア様がカズキ様に弟子入りをしてしまった後、と言うのは中々複雑ではありますが、彼女が拠点としているのはこのグリセア村ですし、同姓で、常駐しているシルベストリア様なら、と」

 

 

アイザックの話は分かった。

確かに和樹に剣の稽古をつけてもらう~と喜んでいたシルベストリアに、剣を教えてあげて~と言うのは、中々に変な話ではないか? と思わなくもないが、中身をしっかりと聞けば理解できる。

元々、和樹の場合は剣を教える~と言うより、実際の手合わせ中心。無茶な動きも能力を使ってするので、アレを模倣したりするのは極めて難しいから。

如何なる状況に置いても臨機応変に動けるだけの心構えを持つ、と言う意味では良い稽古だと言えるが。

 

 

っと、色々考えていたが、シルベストリアが考えているのはそこではない。

頬を赤く染めて、目を輝かせて、両頬に両手を添えて感嘆とした表情をさせると。

 

 

 

「うわー、いじらしいなぁ……。しかも彼には秘密で頑張るってところがもう、ね……。ぐっとくるよ~……」

 

 

くねくね、と身体をくねらせ悶えさせて……。和樹との稽古~の時とはまた違う彼女の一面に、思わず微笑むのは和樹。

 

 

「そっか……、バレッタさん、そっち方面も頑張ってるんですね。動機を考えたらそりゃ、気合が入るってものです」

「ですよね……。【守れるようになりたい】なんて、中々言える言葉じゃないですよぉ……ん? ちょっとストップ。アイザック」

「はい?」

「許諾を~って言ってたけど、そもそもこの話自体、その娘から許可とったの?」

「いえ、とってませんが?」

 

 

 

そのアイザックの返答を聞いて、和樹&シルベストリアは、まるでシンクロしたかのように、息を合わせて首をぐるり、と回し、アイザックの方を見つめて……。

 

 

「えぇ……」

「最っ低……」

 

 

侮蔑な視線を送った。

 

 

「えええ!!? な、なんでですか!? か、カズキ様までっ!?」

 

 

アイザックにとって一番の威力は、和樹からもその様な視線を受けてしまった事にあるのだろうか。でも、シルベストリアのも強烈だ。

 

 

「流石にデリカシーが無いですよ、アイザックさん。……そういう類な話は、私であっても絶対に話さないでくださいよ?」

「そ、そういう??」

「【そういう?】じゃないよバカ。どう考えても相談する順番が逆でしょ!? 流石に意中の人がいる所で、そんな事口にする貴方じゃない、とは思いたいけど、ひょっとして、口にしてないよね?」

「い、いえいえいえいえ、してませんよ! シルベストリア様とカズキ様の御二方だけで……」

「それはまぁ、100万歩譲って良かった、と言えなくもないけど、受けた恋愛相談を勝手に第三者に話すなんて、幻滅どころの話じゃないじゃない。私がその娘の立場だったら間違いなく幻滅するよ。そうですよね? カズキ様」

「うん。私がバレッタさんと同じ立場なら、-100点プレゼントします。折角の積み重ねが、根本からポキリ、かもしれません」

「ぅぅぅぅ……も、申し訳ございません……、どうか、お許しください……」

 

 

 

その後はアイザックは只管涙目で頭を下げ続けた。

 

最後は、シルベストリアが【謝る相手が違う】とぴしゃりと占めて……アイザックは乙女心やデリカシーについてを学んだのだった。

 

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