ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
今年もどうかよろしくお願い致します。


61話 カキ氷パーティー

 

 

 

「おお~~、順調ですね。氷室の建設は」

「はい。土台を作る作業の殆どをカズキさんがしてくださったので、我々もそれに応える様に、頑張ってくれたようです」

「何だかオレも嬉しくなってきますよ。頑張った甲斐がある、って」

 

 

現在、氷室建設現場の視察へとやってきている。

本来ならば、気温の事もあり、もう少し標高の高い場所で建設をするのが理想なのだが、山道の移送時間、それに掛かるコストを鑑みると、この辺りがベスト。

和樹のピカピカで綺麗に山道整備――――と言うのは流石に難しいかった、と言う理由もある。

 

 

「そう言えば一良さんと一緒に視察って結構久しぶりな気がします」

「主に現場と事務って感じで綺麗に分かれてたからね。でも、そのおかげでかなり効率化を図る事が出来たよ」

「ですね! そのおかげもあってこうやってゆっくり細部まで見る視察ができますし」

 

 

適材適所とはまさにこの事。

一良は、日本の資材との橋渡しもあるし、事務作業自体が前の職場での仕事だった為、特に苦も無く、更に言えばこちらの世界のパソコンを持ち出して、印刷機も持ち出して、仕事周りを充実させてるので、更に効率良くこなせている。

 

そして、和樹は勿論ながらピカピカの実の能力者。

その能力を遺憾なく発揮して、大規模工事は殆ど1人でこなしてしまうので、寧ろ周囲への影響の配慮の方が時間がかかる程の嬉しい悲鳴。

そんなこんなもあって、目玉の1つである氷室建設も順調そのものなのだ。

 

 

「それにここの建設が完了したら、ジルコニアさんにとっても喜ばしいモノになる事間違いなし、ですね~」

「え?」

 

ジルコニアは何を言っているのか解らないようで、首を傾げた。

和樹は、そんなジルコニアを見てニコリと笑うと。

 

 

「実は、氷を使った美味しい美味しいデザートがあるんです」

「!!?」

 

 

ジルコニアは隠しているのかもしれないが、根っからの甘党。

この世界では果物しか甘味は味わえないから、チョコレートやアイスなど、日本製品を見たら目を輝かせる事間違いなし! ………なのだが、まだ日本食を摂取して貰う予定ではない。 その辺りは一良もかなり慎重になっているから。

バルベールとの開戦が起こる事になるのなら、直ぐにでも……と思うが、現在においては和樹の存在がデカい。大きな抑止力になるし、何なら攻めてきたとしても返り討ちにしてやる! と和樹自身から力強い言葉を貰ってるので、その辺りは一良は心配していない。

 

だからこそ、慎重に慎重を重ねる事が出来るのだ。大きすぎる力を持たせて良いモノなのかを。既に、バレッタを始め、グリセア村の住人に緊急事態とはいえ、色々と食べて超人化させしまったのに、何を言ってるか! と思われるかもしれないが、あの村はグレイシオールの伝説が、その伝承がある村なので、まだ周辺に言い訳が出来るのでヨシとしている。

 

 

それは置いといて、和樹の言う美味しいデザート、かき氷の説明だ。

 

 

「そうですよ~、夏場なんかは特に最高で。涼める上に美味しい、喉も潤うといい所尽くし!」

「そ、それは一体っ!? 一体どのような食べ物なのですか!?」

「あははっ」

 

 

いつの間に甘党なのがバレた!? と言う様な顔をしていたジルコニアだが、和樹に続いて一良も太鼓判を押す感じでの説明があり、そんな些細な問題はどうでも良くなった様子。目を輝かせているから。

 

 

「かき氷と言います。果物を煮詰めて作った甘い汁を、雪にかけて食べる―――って感じですかね」

「雪に、甘い汁を!? そ、そのような食べ物が存在するんですか……!??」

「そう言えば、一良さんが持ってた道具の中に、カキ氷機ありましたよね? 帰ってから実際に食してみるのが早いと思いますよ」

「わ、わかりました!! では直ぐにでも!!」

「い、いやいや、ちょっと待った待った! まだ終わってませんってば。全部終わらせて、帰ってからのお楽しみでお願いしますよ」

「し、失礼しました……」

 

 

甘いモノに目が無い。

この一連のやり取りで一良も十分解った様で、和樹と目が合った際に頷きあって笑っていた。その2人の動作をジルコニアは察し――――そして今し方、自分の言動・行動を思い返して、ただただ顔を赤くさせるのだった。

 

でも、早く食べてみたい! と言う気持ちは全面に出ている様で、その後の仕事を熟すスピードが心なしか3割増しになってる気がする。

 

 

「早めに戻れる、って言うのは良い事ではありますねぇ……」

「それ、リーゼの事いってるでしょ? 昨日は大変だったもんね~~」

「あー……いや、まぁ。自分のせいなんで仕方ないかな、と。一良さんもそれとなくフォロー感謝です」

「いや、まぁ…… お父さん(ナルソンさん)の前で言う内容じゃないって思うし……」

「はい。右に同じです」

 

 

グリセア村でバレッタやシルベストリアと剣術稽古を続けた結果、想定していた以上に滞在してしまっていた。

 

元々、和樹の仕事はそれこそ光の速度なので、業務上は全く問題ないが、一良が言う様にリーゼとの約束を破ってしまった1点だけは頂けない。

 

でも、仕方ないとも言える。和樹が時を忘れてしまうのも無理は無いのだ。

何故なら、かなり充実した稽古だったから。

シルベストリアもバレッタも、物凄く頑張っていた……と言うより、和樹相手に退かず、物凄く粘っていたから。

 

最初は1対1の実践式稽古だったのだが、直ぐにシルベストリアとバレッタの2人対和樹の2対1形式へと変わる。

それはアイザックとハベルと似通ってる展開だ。

 

元々武芸百般な世界で生き抜いてきた和樹だから、別に問題はない。どちらかと言えば、ケガをさせない様に、それなりに気を遣おうと思っていた。

でも、ふたを開けてみればこの2人のコンビは、即興な筈なのにアイザックとハベルの2人組を上回っていた。気を遣うなんてとんでもない。

剣術においても膂力においても、男たちを凌駕していると言って良い。と言う訳で、もっとしっかりしろ、男性陣。と思った和樹は悪くない。

 

 

シルベストリアは、アイザックも認める程剣術達者。

加えてバレッタは日本食強化済な上に根性と気合の鬼。文句なしの文武両道な天才。

 

 

最初こそは遠慮がちだった2人が、本当の本気の真剣勝負となって、結果後1歩、後1歩と和樹の剣に近づいたのだ。

 

一合一合打ち合う度に、研ぎ澄まされて行くこの感覚は、嘗て別の世界―――VRMMOの世界で体感した世界最強の剣士とのエンドレスバトルを思い出して、和樹自身も大いに楽しんでしまった。日本でもトップ10に入る高ランクを叩きだしたあの日を……このゲーマー魂を呼びおこす事になって、まさに時間を忘れて、寝食を忘れて楽しんでしまったのだ。

 

 

その日は、シルベストリアとバレッタの体力の限界が来て終わりになったが、2人とも目の中の炎は決して消えず、次も、また次も、と希望して和樹もそれに応えた結果。

リーゼに伝えていた日数を大幅オーバーしてしまったのである。

 

 

「はい。夢中になっちゃったボクが悪いです。その上、剣の相手をしていたのがシルベストリアさんだ、ってリーゼに口を滑らせちゃったのも……駄目でした。メチャクチャな悪手です」

「あはは……。女性の方、だよね? そりゃリーゼだってヤキモチ妬くよ」

「おっしゃる通りで」

 

 

バレッタもその場には居たのだが……そこはどうにか口を噤む事が出来た。

一良には秘密。それを暴露する様な真似は出来ない。アイザックに辛口評価をした以上、和樹も護るべき事柄なのだ。

 

でも、そこまで考え、思っていたのなら、何でリーゼにバレッタの話を伏せてシルベストリアと色々……と口を滑らせてしまったのか、と自分で自分を責めたい。大いに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして数日後。

無事にナルソン邸へと帰宅。

最初こそは、ジルコニアの為のカキ氷試食会に花を咲かせていたのだけど、暫くしてリーゼが2人きりになりたい……との事で、それとなく退出したのである。

 

 

「んっ。今回はちゃんと期日通りに帰ってきてくれたね? 偉い偉い!」

「や、一応神様(笑)だし。偉そうぶるつもり無いケド、周りの目は気を付けてよ?」

「だいじょーぶよ。その辺はちゃんとしてるつもりだから」

 

 

胸を張って出迎えてくれてるリーゼ。

ちゃんとTPOを弁えている、と言っている様だが、正直説得力が無い。

 

 

「でも一良さんがそれとなくフォローしてくれなかったら、ナルソンさんの前でトンデモナイ事言おうとしてたデショ?」

「う………」

 

 

勿論、それは前回のグリセア村からの帰宅が遅くなった時の事。

お詫びに何でも言う事を聞く~、聞いて~~、と上目遣いなオネダリが始まって、まだ14歳だというのに、アダルティな事を言い始めて、仕舞にはあのリーゼにとっての黒歴史、メロメロばんばんと似たような事を言いかけて……危うくナルソンに聞かれる所だったのだ。それとなく気配を察した一良がフォロー、止めてくれたタイミングで一仕事終えたナルソンが部屋の中へと入ってきたから。絶妙なタイミングだったので、一良は予知できるのでは? とも思った瞬間だったりした。

でも、油断禁物だ。

和樹も和樹で止めれば良かったのだが、やっぱり負い目と言うモノは有るので、リーゼが願う通りに~なスタンスだったのがちょっと不味かったのかもしれない。

 

 

「あ、リーゼは、もうカキ氷は食べないの? ジルコニアさんめっちゃ嵌っちゃってるみたいだけど」

「あ―――――……」

 

 

超特急で仕事を仕上げて、皆で戻ってきて、いの一番に取り掛かったのがカキ氷作りだ。

一良の持ち物の中で、比較的簡単で、こちらでも再現が安易で、更に老若男女問わず親しまれるであろう美味しいデザートが出来る器具、と言う訳で荷物の中に忍ばせていた。

氷に関しても、冷蔵庫を持ち込んでるので簡単に回収できる。

 

それで作って見せたらジルコニアにはドストライクだったらしい。

これまでで一番美味しいと目を輝かせて、その感動を周囲に周知して回っている程だ。

 

 

「いや、美味しいのは美味しいんだけど、お母様は異常よ。あんな冷たい食べ物、あれだけ食べたらお腹冷やしちゃって、下しちゃいそうだもん」

「まぁ、それもそうだけど」

 

 

リーゼ自身もそれなりには美味しいと頬を緩めていたのだが、ジルコニア程ではなかった、と言う事だ。……と言っても傍目から見たらよく解る。

延々とバキュームカーか? って思いたいくらいサクサクパクパク食べるジルコニアに皆が少々退いていた。でも、本当に幸せそうに食べるから皆笑顔だったりもする。

 

 

「それにカズキも同じじゃん。食べないの?」

「……そりゃ、ジルコニアさんやリーゼ達の分を取っちゃうわけにはいかないでしょ? オレや一良さんはもう既に沢山食べてきてるからね~~」

「あーー、なんか誤魔化したでしょ! 素直に言いなさいよ。あんなにお母様に付き合うのは無理だ~~って。おっ、カキ氷は無理でも、お酒の席なら幾らでも付き合っちゃうけど?」

 

 

くいくいっ、と飲む様な仕草をするリーゼ。

リーゼが鉄の肝臓をしているのは和樹とて重々承知。バリンを始め、ナルソンやイクオシス、マクレガーへのお土産に酒類を持ってきたのだが、一番飲んだのは間違いなくリーゼだったから。

たのしい席だったから、少々羽目を外したのだろう、と皆笑っていたが、正直身体が心配になるくらいには飲んでいたので、よく覚えてる。

 

 

「なら、今度晩酌でもしますか! お詫びにってわけじゃないけど。付き合うよ」

「やたっ! 約束したからねっ」

 

 

リーゼは笑顔になった。

この笑顔を見れるなら、それくらいお安い御用、と思っちゃってる和樹も結構チョロいのかもしれない。

 

でも、一良と約束(・・)した今――――以前の様にリーゼに一歩、二歩と退いてみたりはしてない。

だからこそ、無意識に少し、少しと歩み寄っているのである。

 

 

「あ、それともう1つ。さっきカズラさんに聞くの忘れちゃったんだけど、フライス領に製塩手法を教えるのはいつにするの? 夏終わっちゃったし、また来年?」

「その件は、一良さんが一任してるケド、ちゃんと共有は出来てるよ。こっちの向上が落ち着いたら、フライス領の方に職人を派遣するって手筈になってる。何せ新しい手法は効率がかなり良いからね。早めに教えておいて損はないし、季節とかも関係ないから」

 

 

季節関係ない、と言う話を聞いてリーゼは目を丸くさせた。

製塩には熱が必要なのはリーゼも解っていて、その生産効率はこれまでは気温……つまり季節に左右されるのは周知の事実だったから。

 

 

「季節、特に冬でも良いの? って顔してるね」

「どんな顔よ! って言いたいけど大正解。できるの?」

「うん。出来るよ。枝条架って言う道具を使うんだけど、今度実物を見せるからどんなモノかは、後々に……で、兎に角それは風で水分を蒸発させる方法だから、風が強くて乾燥してる冬の方が効率良かったりするんだよ」

「へぇーー。実際に見てみるの楽しみ! ……塩はやっぱり必要なモノだからさ」

「そうそう。無理しない範囲で、工夫次第でどんな事だって出来る。だからリーゼ1人で頑張らないで良い、ってこと」

 

 

和樹が指をぴんっ、と立ててそういうとリーゼは面白そうに笑った。

 

 

「もうっ、そんなに気にしなくて大丈夫だって言ってるでしょ? 私は和樹一筋だから、和樹が嫌がる事しないってば。そりゃ、面会謝絶するのは相手の面子もあるし、勘弁して欲しいって言いたいけど、絶対に身売りみたいな事しないからさ」

「カズキ兄さんと約束出来る?」

「はーい。約束しまーす」

「よっしゃ」

 

 

ぐりっ、とリーゼの頭を撫でてあげる。

整った良い髪の感触は撫でて貰って目を細めているリーゼ以上に、和樹の方が心地良くなってしまっていた。

 

 

「えへへ。あっ、南の島国からいろんなものが入ってくるから、今度フライス領に行って、色々見て回ろうよ。2人で」

「フライス領かー。確かに空の旅ならそんなに時間は掛からないけど、2人で、って言うのは流石に難しくない? 下町なら兎も角、リーゼが居なくなったら大混乱じゃん」

「そんな事ないよ。カズキと一緒ならお父様もお母様も絶対大丈夫だって言ってくれるし、それに他の領主でもお忍びで~って人も沢山いるんだ。そういう話も凄く聞くからね。なんていったって、フライス領はすごく良いところで、市民にも活気があって、市場はいつも賑やかなの。私、カズキと一緒に行ってみたいっ。……だめ?」

 

 

上目遣いのプロになってきているリーゼ。

甘やかしたくなる気持ちを押し殺して我慢させる~~~とかはする必要はなし。

 

 

「こりゃ仕事を速攻で、クオリティも落とさず、きちっと終わらす必要があるな」

「……なら!」

「良いよ。一緒に行ってみよう! 話聞いてオレも凄く気になってきたから。それにフライス領の領主さんも良い人なんでしょ?」

「ヘイシェル様ね。うん。とても良い人だよ。こっちの領内が大変になる前は、よく行き来してて交流があってね。……沢山、沢山助けてくれたの。今も昔も。……前の戦争のときもかなり無理して食料支援を続けてくれたみたいだし、フライス領がなかったら、この国はとっくに滅んでたんじゃないかな……」

 

 

敵国の矢面に立つイステール領を後方支援として支えた領こそがフライス領なのだ。

確かにイステール領が滅ぼされたら次は自分達だ、と言う打算も有りそうなものだが、リーゼの人を見る目は確かだし、何より命がけで支えるなんてそう簡単な事でも単純な事でもない。我が身惜しさを優先させるのであれば、敵国に寝返る~なんて考えを起こす者だっていても不思議じゃないから。

日本の歴史上でも幾度となく起こってきた事だ。

 

それでも惜しみなく支援をしてくれている相手。背中を任せられる国と言うのは本当に心強い。

 

そんな国だからこそ―――。

 

 

「神様(笑)なオレとしては、イステールを護ってくれた恩返しをしなきゃ、だね」

「え?」

 

 

リーゼに向かって和樹はウインクをした。

 

 

「守ってみせるよ。約束する」

「―――――――うんっ! 約束っ!」

 

 

リーゼは笑顔でそう言った。

和樹との約束が齎してくれる福音。その幸せを今この瞬間だけは独り占め。そう思いながら、リーゼは和樹に抱き着くのだった。

 

 

 

 

 

 

その後———あまり、長く抜けているのも不味いと思ったので、リーゼと和樹は、皆の元へと戻る。

流石にもうカキ氷試食会は終わってるだろうな……、と思ったんだけれど。

 

 

「あら? カズキさん。おかえりなさい。リーゼも」

 

 

そんな訳無かった様だ。

新しい氷をチャージしてる瞬間で、いつの間にかエイラとマリーも来ていて、当初は4人だったのに、人数が増えてる。

 

 

「ずっと食べてるんですか……? 流石におなか壊しちゃいますよ」

「ふふふっ。大丈夫です。カズラさんに素敵な方法を教えてもらいましたから。温かいお茶と一緒に飲む事で、とても贅沢な食べ方が出来て――――」

「………」

 

 

シロップも色んなものを試したのだろう。容器が増えてるし、皿についてる色もカラー数が増えてる。

一良の方をチラッ、と見たら苦笑いをしていた。何処か呆れている様にも見えなくない。

 

 

「それって、真夏にクーラーガンガンで毛布に包まる……的なヤツじゃないです?」

「言いえて妙だよ。オレもそれ連想した」

 

 

どうやら同じ日本人。

住む時代は違えど、まだまだジェネレーションギャップは感じない様だ。

 

 

「本当に美味しくて美味しくて、今まで食べたものの中で絶対一番です。ささ、リーゼもどうぞ」

「うぇっ!? お、お母様……」

 

 

あまり、乙女なリーゼが口にして良い様なコメントじゃない気もするが、ジルコニアの圧が凄くて、中々リーゼも断る事が出来ない。

そして、ジルコニアは圧と共にめいいっぱい近づいた所で……。

 

 

「カズキさんとの仲の進展、良い感じね。見ていて私も嬉しいわ」

「!!」

 

 

まさかのカキ氷の話ではなく、しれっと抜けていた事に対する言葉だった。

カキ氷に夢中で、和樹やリーゼが抜けた事なんか解ってなかった様に思っていたのだけど、どうやらそこまで視野が狭くなったわけではないらしい。

 

 

「カズラさんは、グリセア村のバレッタ。カズキさんはリーゼ。……ふふっ。本当に微笑ましいわね」

「……は、はぃ」

 

 

ここまで言われてしまったら、流石のリーゼも照れてしまう。

一良に想い人がいる事は、もう随分前から知っていた。正直、本性を知られる前までは横恋慕も辞さず、強行突破も十分選択肢に入れていたリーゼだったが、結果として一良ではなく和樹に夢中になったし、形としては夫々が恋愛面で頑張ると一番最適な形として落ち着いたのではないか? とも思う。

グリセア村の娘―――バレッタにはリーゼは会った事は無いけれど、一良や和樹、そしてジルコニアからも伝え聞いてみる限り、かなりの秀才で良嬢だという事は解る。

恋愛し、結婚し、愛したいし愛されたい相手は唯一無二の和樹だけれど、一良だってリーゼにとってはかけがえの無い友達。素で話をする事を許してくれたし、沢山助けてくれる恩人であり、大切な友達なのだ。

 

やっぱり、最後は幸せになって貰いたい。

 

 

リーゼはそう強く思う様になってから、1つの疑問が……1つの仮説が頭の中に浮かんだりしたのはまた別の話。

 

 

「あ、でも足りないって言われるかもしれないから、私やエイラ、マリーとどんどん候補を上げていきましょうか?」

「ええええ!!」

 

 

頭の中で色々と考えている際、まさかのジルコニアの発言で、止まっていたかの様に見えたリーゼの時間が動き始める。

 

 

「なな、何を言っているのですかお母様!!?」

「カズキ様は素敵な方ですし、皆まとめて囲ってくれると思わない?」

「そ、そんなの駄目ですっ!! 駄目に決まってますっっ!!」

「えー、でも側室を持つのなんて当たり前の様にあるし。専属の使用人契約でも一緒に居られるなら……。あ、でも私はお妾さんでも愛人さんでも全然……。正妻はリーゼに譲るわ」

「っっ~~~~~!!」

 

 

あくまでも穏やかに微笑みを絶やさずにリーゼに言い聞かせる様に言い続けるジルコニア。

勿論、リーゼは顔を真っ赤にして否定する。

 

それが本心からなのか、ただただ幸せそうだったリーゼを揶揄いたかったのかは解らない。

ただ、その後 2人の話を聞いてなかった一良と和樹が【一体なんの話?】と近づいてくるその時まで、続くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に数日後。

 

 

「失礼致します」

 

 

連日開催中のカキ氷パーティ。

それもイイ感じでカキ氷パーティが盛り上がっていた時に来訪者がやってきた。

 

 

「アイザックさん」

「お疲れ様です、アイザックさん」

 

 

自分達より一足先にイステリアへと戻ってきていたアイザックである。

イステリアへ戻ってきてからは、業務の関係で中々顔を合わせる事が出来なかったので、進捗報告を聞けるのは丁度良い。……カキ氷パーティを一時停止するという意味でも。

本当にそろそろ大変気味になってきたので。

 

 

「お二方にご報告がありまして―――」

 

 

アイザックは、頭を下げて挨拶をしたのちに、手の中にある書類を差し出しながら告げる。

 

 

「鍛造機の製造の目途がつきました。数日中に製材機や動力水車と合わせて、数台完成品を揃えますので、現物のご確認をしていただければ、と」

「おお! 流石仕事が早い!」

「本当に順調そのものですね! でも、油断は駄目。ここから気を引き締め直しますか!」

 

 

イエーイ! とアイザックにハイタッチを申し出ようとした和樹……だが、やっぱり生真面目なアイザックにはハードルが高かった様で、顔を赤くさせながらぎこちないタッチ。

一良には普通にパチンっ! とハイタッチ。

 

 

それを見ていたジルコニアはと言うと。

 

 

「そうですね! でも、休息も同じくらい、重要ですよ? ほら、皆でカキ氷でも食べて一休みしましょう」

「えっ――――お母様まだ食べるのですか?」

 

 

ジルコニアが食べる、と言うよりは、アイザックを抱き込もうとしている様に見える。

いわば、カキ氷信者を増やそうというのがジルコニアの狙いだろう。

 

アイザック自身も、カキ氷自体は話には聞いていたが、実際に食べてみるのは初めてなので、興味はある様だが――――。

 

 

「ありがとうございます、ジルコニア様。全て報告をさせて頂いた後、いただきます」

「………えぇ」

 

 

直ぐに食べて欲しいのに……と言わんばかりのオーラ。

でも、生真面目なアイザックには通じない。報告の途中だという事もある。

なので、取り合えず会釈をした後、カキ氷は置いといて報告を続ける。

 

 

「製材機と鍛造機ですが、部品の調整を円滑にするため、工房をグループ分けをして個々で製作させました。精度には細心の注意を払う様に指示をしましたが、やはりグループによって動作に差がある様です」

「精密なモノですからね。それに職人さんたちの技量にもバラつきがあるという感じですか……」

 

 

流石に、その分野に関しては和樹の能力じゃどうしようもない。

幾年月を重ねて、積み上げてきた技術の結晶がモノを言うのだから。

 

 

「製造の工程、若しくは人員の配置を見直すしかないのでは?」

「うーん……確かに対応策はそれくらいしか思いつかない、かなぁ」

「でしたら、製造工程を検討し直して、機械を再設計したグループが1つあります。そちらが参考になるかもしれません」

「え!?」

 

 

アイザックの言葉に、一良は目を輝かせた。

精度を上げる、細かく注意する、と言うのはいわゆる感情論でそれなりには何とかなりそうだと思うが、製造工程そのものを検討し直して機械を再設計するなんて事、普通は考えられない。日本の技術、即ちこちら側の世界からすれば未知の技術も同然なので、1から覚えなければならないのが普通。でも、基礎を学んだ後直ぐに応用できる―――ともなれば。

 

 

「そんな優秀な職人さんがいらっしゃるんですか!?」

「…凄いですね。優秀、と言うより天才………あっ」

 

 

一良だけでなく、和樹も感銘を受けた様子だったが、【天才】と言う言葉を口にした瞬間、察した。

アイザックにそれとなく目配せをしてみると、小さく頷いて見せたので間違いない。

 

 

「そんな優秀な方なら、近々一良さんと会う事になるかもですね?」

「はい。それは考えております。今は何かと予定が立て込んでいる様なので、近い内に必ず都合をつけて屋敷に呼び寄せますので」

「え? それならこちらから出向いた方が良いのでは? ジルコニアさんやリーゼに一緒について来て貰って、地位向上が必要なら私も何とかお願いする形でお手伝い出来そうですし」

「いえいえ。今は間違いなく忙しい場面だと思いますよ一良さん。ここはアイザックさんのスケジュール通りに合わせて面会した方が、都合が良いと思います。……お互いに(・・・・)

「そう? まぁ、製材機と鍛造機(アレ)を再検討と再設計ってなると、確かに忙殺されてても不思議じゃない、かな。幾ら優秀だと言っても……」

 

 

本人(・・)が望み、狙っているタイミングが一番望ましいだろう。

ついつい、何だか自分事の様に嬉しくて余計な一言をいってしまった感があるが、一良も納得してくれたので大丈夫だろう。

 

 

 

そんな時———だった。

 

 

「リーゼ様。面会のお時間が……」

「……解ったわ。直ぐに行く」

 

 

屋敷の侍女筆頭がリーゼを呼びにやってきたのは。

そして、2人の会話の中で出てくる名前。その面会する相手の名を聞いて表情を強張らせた。

 

 

ニーベル様(・・・・・)が……――――――」

 

 

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