ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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62話 次あったら目ェ潰す

 

 

 

「……あれ? おまえ持ち場はここで良いのか? 今日はリーゼ様面会じゃなかったか?」

「それが、ニーベル様と商業取引の打ち合わせもしたいとかで、外してくれとリーゼ様からのご命令で」

「そうだったのか、相変わらずお忙しいお方だな……、休息用の茶の準備を頼んでおくとするか」

「そうですね」

 

 

 

それは、ナルソン邸の談話室でリーゼがニーベルの2人きりで対談している事他ならない。

リーゼ自身は覚悟を決めており、決意に満ちた目で、絶対なる自信を醸し出す姿を護衛たちに見せているので、その信頼は絶大だと言える。

 

リーゼが望む未来はただ1つと定まった以上、その他諸々は有象無象に過ぎず、そしてニーベルもその例外ではない。

 

リーゼの真意は当然ながら護衛兵たちは皆知りようもないが、ただただ主を信じ、必要あらば命賭して守る所存だからいつ如何なる時にでも、対応できる様に武具の手入れは欠かせない。だが、多忙なリーゼの為に給仕を依頼する為、武具の手入れをする手を止めたその時だった。

 

 

 

「あ、すみませーん! アレスさんと、ヨーズルさん!」

「「!!! こ、これはカズキ様ッッ!!」」

 

 

 

一体いつの間に傍に来ていたのか……、背後から声が聞こえてきた。

その声の主に反射的に気づくと直立不動で背筋をピンっ! と伸ばして、敬礼する護衛兵の2人。

 

 

「や、そんな畏まらなくても良いですよー。ほらほら、あの時みたいに?」

「いいえ。そう言う訳には参りません」

「自分達は今、職務の最中でございますので」

「あー………そう言えば、でしたねー。フランクに接するのは、夜の訓練の時だけ、になっちゃったんでしたっけ」

 

 

実を言うと、武芸に対して嗜みのある者の殆どが、つまる所兵士関連の皆さま方は和樹の武勇伝? を耳にしている者が殆ど。

アイザックやハベルを始め、軍の中でも指折りの腕の持ち主。

更に更にマクレガー、イクオシス……とまさにイステリアの軍部のトップが来ての大所帯。

近衛兵と言えども一介の兵士。誰もが崇める相手に対して対等な物言いなど出来る訳もなく……、その場は、アイザックやハベルが言い聞かせる形で、半ば命令と言った形で接する様になったのだが、期限限定となった。……アイザックやハベルも普段から親しくフランクに接する事はヨシとは出来なかったのだろう。特にアイザックは。

 

 

「カズキ様。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「リーゼ様は只今面会中で、もうしばし時間が掛かろうかと思われますが」

「ああ、良いよ良いよ。……その面会に、面会相手に用事があるから。……悪いけど、暫くここから離れててくれないかな? 悪い様にはしないし、何なら後でナルソンさんやジルコニアさんに確認取ってくれても構わないよ。和樹(オレ)が命令した、って」

 

 

因みに、和樹の命令、一良の命令なら何でも聞く様に。比喩ではなく、上から通達、厳命されているのは、和樹を始め、一良も知らされてない。

そう言うタイプを好まないのは解っているから、勿論表立って言わない様にしている。

 

だから、和樹が《お願い事》をすれば、ノータイムで了解をし、その場を離れるのだが……、今回ばかりは数秒間2人が固まってしまった。

 

今まで見た事のない和樹の姿を見たからだ。

喜怒哀楽の打ち、《喜》と《楽》しか見た事がない和樹のその表情は、文字であらわすなら《無》となっているから。

いつも接して貰える時は名前まで読んで貰えて、更には笑顔まで向けてくれるお方の突然の変貌に驚きを隠せれなかったのだ。

 

 

「駄目、かな?」

「ッッ!! い、いいえ!」

「了解致しました!」

 

 

自分達が固まってしまった事にも気付かなかった様だ。

和樹が能面の様な表情から、いつもの笑顔? に戻った瞬間世界が動き出したかの様に、2人は姿勢を正し直して敬礼をした。

 

 

「そこまで畏まらなくても……って、それは良いや。うん、少しの間だけ離れてくれてたら良いよ。終わったらまた呼びに来るからさ」

「「はッ!」」

 

 

笑顔なのは笑顔。でもいつもとは比べ物にならない威圧感をそこに感じた。

でも、それ以上に安心感もある。だからこそ、彼らは固まっていたとはいえ、指令が出ているとはいえ、一分の迷いも無く和樹に委ねる事が出来たのである。

 

 

そんな2人を見送ったあと――――。

 

 

 

「………さて」

 

 

 

和樹はゆっくりと身体を動かした。

その身体は、動かす度にヒトの形を象っていた輪郭が軈て朧に見えはじめ、最後には消失した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナルソン邸、談話室にて。

時間は和樹が来る少し前のこと。

 

リーゼとニーベルはソファーに向かい合って座っていた。

正直、一良……何より、和樹に言われた通り、この男との対面は、2人きりになるなど控えた方が良いと思っていたのだが、領主の娘として、何よりこれ以上の無礼を働こうモノなら毅然とした態度で臨まなければならない、と腹を括ったのだ。

 

だからこその決意。

 

決意を抱いた微笑みを絶やさず向けるリーゼとは対照的に、ニーベルは訝しむ様な表情になっている。

 

 

「ほう。塩は通常価格に戻してもよろしいと?」

「はい」

 

 

その顔は値踏みをする様なモノ。

そしてあからさまなわざとらしい所作。ニーベルはわざとらしく首を傾げて告げた。

 

 

「失礼ですが、イステール領の財政はかなり厳しいのではありませんか? 今ここで塩の値段を元に戻すと、ナルソン様は大変お困りになるのかと思うのですが」

「確かにそうなのですが、グレゴルン領でも天候不順で塩の生産がままならないのですよね? それならば私のわがままでニーベル様にご迷惑をおかけする訳にはいきません。なんとか自分達で切り詰めて頑張ろうと思いますので、どうかお気になさらないでください」

 

 

ナルソンの名を出し、出方を再度窺うニーベルだが、全く淀みなく、怯む姿勢の欠片もなくリーゼは返答した。

少しだけ眉を動かした後にニーベルは続ける。

 

 

「……そうですが。いや、確かに我々も今は大変な状況にありましてな。リーゼ様がそう言って下さるのなら少々調整させていただこうかと思うのですが……」

 

 

続いて、腕組をしてまるでさも考えている、かの様な振る舞いをしつつ唸る。

上っ面はどうでも良い。リーゼはただただニーベルの答え、数字だけを待ちながら見つめた。

 

 

「では、塩の価格は従来の水準に戻し、取引も五割ほど減らせていただこうかと思います。また、今後はクレイラッツとも我々が直接取引をさせていただこうかと思います。……しかし、そうなると例え、天候が戻ったとしても今までの様な取引は出来なくなりますが……それでもよろしいですかな?」

 

 

薄く笑みを浮かべる。

本当に何処までも嫌らしい。……嫌悪と唾棄を覚えるとはこの事なのだろう、とリーゼは感じつつも、その一切を表に出す事なく微笑みながら告げた。

 

 

「解りました。こちらは大丈夫ですので、どうかお気遣いなく」

「なっ……!!?」

 

 

とうとうメッキが剝がれてきたか、とリーゼは内心ほくそ笑む。

そんな内情とは露知らず、ただただニーベルはつい先ほどまで向けていた表情から一変させていたままになっていたので。

 

 

「どうかいたしましたか?」

 

 

リーゼが先手を打ち、気遣った(……そんな風に見せた)

それに気付いたのか、或いは自分の本心がその表情に出ている、と思ったのか慌てて咳払いをしながら表情を取り繕い、言った。

 

 

「か、価格は元より、一度でも取引量を減らすといつ、元の量に戻せるか解りませんぞ?」

「はい。残念ですが、仕方ありませんね」

「リーゼ様がごr協力くださるのであれば、今まで通りの2割引き。いや、もう1割引きをする事もやぶさかではありませんが」

「申し訳ございません。私も最近忙しくて、ニーベル様のお手伝いを出来る様な余裕は無いのです」

 

 

とうとう、最早本性を隠す気も無くなったのかニーベルは明らかに怒りの籠った視線をリーゼに向けた。

 

 

「………この状況で、私の申し出を断るということが、どういう結果を招くか解っておいでか?」

「ええ、勿論です。卸による収入が無くなるのは辛いですが、他の分野に力を入れて補おうと思います」

「塩の取引量が減れば価格が高騰し、民はさらに困窮しますぞ。それに価格の高騰で良からぬ噂でも流れればイステール家が民から非難を受けることになるかもしれません」

「……………噂ですか?」

 

 

微笑む事を絶やさなかったリーゼの表情が、今初めて無に近づく。

その反応を見れただけでもある程度の満足感が得られたのか、怒気を向けていたニーベルの表情に余裕と笑みが戻った。……いや、表情が歪んだ、と言うのが正しい。

 

 

「例えばの話です。急に市場に出回る塩が減って、価格が高騰を始めたとあれば、イステール家が何か不手際を起こしたのではないか、と言う噂が流れたとしてもおかしくない、と思いましてな。経済的に苦しい時に、更に民の不安を増大させることと色々な不穏なことに繋がりかねません」

「…………」

「ですが、リーゼ様がご協力くだされば、取引量と価格は従来のまま据え置きにさせて頂きます。それに加えて数ヵ月はイステール家には通常価格の3割引きで販売すると約束しましょう。クレイラッツへの卸で儲ける事が出来れば、その資金を領内の事業に回す事が出来る筈です。ご両親も喜ばれると思いますが?」

「……………協力とは、具体的に何をすればよろしいのですか?」

 

 

YES、と取ったと思ったのだろう。

ニーベルの表情には明らかに煌々とした笑みが張りつけられた。

この種の笑みをリーゼは良く知っている。

いつも、本当に……心から楽しみ、心から皆と楽しむときの彼らの顔が、……彼の顔がその表現に最も当てはまる。

 

 

だが、そんな考えは一瞬で消し飛ばした。

一瞬でも、彼と目の前の男を並び立たせるなどと、末代までの恥であるとリーゼは自覚しているからだ。

 

 

そんなリーゼの心境とは関係なく、更に醜く歪ませたニーベルは口を開く。

 

 

「お判りいただけませんかな? ……なぁに、簡単な事です。ほんの少々、私を満足させてくださればそれで良いのですよ」

「……気持ち悪い」

「……は?」

 

 

最早限界。

取り繕った顔も、選ぶ言葉も、堰き止めていた堤防も全てが決壊した。

もう、ここまでとしよう。……リーゼは本当の意味で覚悟を決めた。

 

 

 

「気持ち悪い、と言ったのです。そのようなふざけた提案に、私が本気で乗ると思っているのですか? そこまでの考えが及ばない、のですか? 肉欲に目が眩み、対局が一切見えていないのでは?」

 

 

リーゼが言い終わるのと同時に、ニーベルは額に青筋を浮かべて立ち上がる。

冷めた表情でリーゼはそれを見上げると。

 

 

「どうなさいました? 顔色が優れないようですが?」

 

 

更なる挑発を入れる。

ニーベルの表情はそのまま醜く歪んだまま……ずかずかとリーゼに歩み寄った。

そのソファーに座るリーゼの正面に立ち止まり、ギロリと睨みつける。

 

 

「あまり調子に乗るんじゃない。自分が何を言っているのか解っているのか?」

「それは誰に対しての事でしょうか? 立場と言うものが解っていないのは貴方のほう。……一体誰に対してモノを言っているのです」

 

 

更なる挑発に、ここがどこで、どこの誰に手を出そうとしているのか理解も及ばなくなったニーベルは凶行に出る。

まず間違いなく、直ぐ傍では近衛兵が控えていて、更にはこの場所はイステリアのど真ん中。自分もただでは済まされない、と解っている筈なのに、本能で動くブタは、こうも醜く、こうも目障り、で、……こうも殺処分に下したい、と思うのか。

 

 

「ッッ!!?」

 

 

その薄汚れた手が、リーゼに届く事は一切なかった。

反射的に、リーゼが短刀を抜いた……が、その心配は無く、まるで固まった様に、まるで時が止まったかの様に、ニーベルは一歩も動けない。

 

 

「む、む、むーーーっっ!!?」

 

 

そして、言葉も出ない。……息は出来るが、あまりの突然の事にニーベルは混乱極まり、激昂したその時よりも混乱極まった。

 

 

 

「……一体、誰に対して、何をしようとしたのか?」

「!!!」

 

 

まったく気づかなかった。

自分の直ぐ後ろに、背後に誰かが来ていたなんて……。

 

そして、驚くべきことに、目の前のリーゼも驚いている。

ずっとニーベルの後ろ側が視界に入っていた筈なのに、リーゼが驚き、構えていた短刀を下におろしてしまった程だ。

 

 

「貴様が触れて良い相手じゃない、と言う事くらい解らないのか? ……もう一度、問うぞ。貴様は今、何をしようとした?」

「む、むぅぅぅ、むぐぅっっ」

「ああ、口を抑えていたのだった。……(うわぁ、汚い。後で洗っとこ……)」

 

 

すると、口が動く様になった。

でも、一体何をされたのか解らない。言うならば、口を手で押さえつけた様な……。

 

 

「ごほっ! ごほっっ!!」

 

 

漸く解放されたニーベルは激しくせき込む。

異常事態である事と上手く息をする事が出来なかった事が合わさって、心臓が激しく鼓動する。

 

 

「はぁ……」

 

 

ニーベルはせき込むばかりで、何の回答も得られない。

ちょっと守護神っぽく気取った問い方をしたのだが、それももう時間の無駄である、この男に対しては全てが時間の無駄だ、と思い直した時。

 

 

「リーゼ様。この者に対し、最後(・・)の言葉をおかけください」

「ごほっ、ぐ、ひっっ!!?」

 

 

最後の、と言う言葉に今度は一気に青ざめる。

まだまだ酸素が足りておらず、必死に脳に酸素を送ろうとするが、上手くいかない。

 

 

リーゼは少しの間驚いていたが、もう既にその様子は解消されており、毅然とした態度で、ゆっくりとニーベルに近づいた。

 

 

「や、やめっ」

 

 

リーゼが何か言おうものなら、この得体のしれないナニかが、自分の命を刈り取ろうとしている、と察したニーベルは懸命に身体を動かそうと藻掻くが、まるで磔られたかの様に身動きが取れず。

 

 

「今まで懸命に、必死に我慢をしてきましたが、もう止めにしましょう。……ふふ。貴方の忠告を通り、もう二度と関わる事は無い様にします」

「――――――」

 

「ぐおっっ!?」

 

 

ニーベルは、突然解放された事で身体のバランスを崩し、地に伏してしまった。

見上げると、絶対零度の様な冷たい視線を自分に向け、見下ろしているリーゼの姿が視界に入る。

 

だが、それ以上に尋常じゃないのが背後から伝わる気配だ。

 

 

 

「このまま、御帰りになる事を御勧め致します。……かの存在を知れば、貴方自身がどうなるか保証は致しません。塵芥の様になりたくは無いでしょう?」

「き、きさ――――っ」

 

 

恐怖心よりも、目の上のリーゼに対する憎しみが勝ったのか、ニーベルは再び藻掻き、距離を詰めようとするが……学習能力の無い男である。

 

 

突然、視界の中に人間の指? の様なモノが見えたかと思えた次の瞬間。

 

 

ピカッッ!!

 

 

突然凄まじい発光が視界を白く塗りつぶした。

 

 

「ぎゃ、ぎゃああああああ!! め、目がっっ! 目がぁぁぁっ!??」

 

 

この世界には無いであろう攻撃。

所謂閃光手榴弾(スタングレネード)モドキ、である。

流石に実際に鎮圧する様な凄まじい大音量、閃光を起こせば、この屋敷内とはいえ大騒動になる可能性があるし、ニーベルの視力を潰してしまえば気分は晴れるかもしれないが後々に面倒事になるのが解るので、ある程度抑えつつ、更には周囲に素早く散りばめていた光の粒子の結界で外に漏れない様にカバー。

上手く光の能力を使いこなせている、と自分に花丸を上げたい気分だ。

 

だからこそ、リーゼの目も異常はない。

 

 

「リーゼ様。……この者は、私が放り出します。今の内にお戻りください」

「ええ。解りました。………では、後で。…………必ず」

 

 

リーゼはそういうと優雅に一礼して扉を開けて対談室から出て行った。

 

 

「ぎゃあああああ」

「いい加減喚くのヤメロ。耳障りだ。そもそも、光度は抑えてあるから、もう見えてるだろ」

「ぐえっっ」

 

 

リーゼを見送った後、襟首引っ付構えて無理矢理立たせる。

視界はまだまだ定かではないかもしれないが

 

 

「―――――俺が見えるか?」

「ぐ、ぐぅ……、き、きさ……い、いや! だ、誰だ!?」

「見えてないのか? 目玉くりぬいて、状態を見てやろうか?」

「っっ!! み、見えている! 見えてるっっ!! やめてくれ!!」

 

 

目に溜まった涙を拭い続けて、どうにかこうにか視力を取り戻したニーベルは、しっかりとその男の姿を見た。

正体不明だったナニかは、……どこにでも居そうは優男風な男(ニーベル談)

だが、それでも得体のしれない攻撃? を受けたのは事実なので、これ以上相手の逆鱗に触れぬ様に言葉を懸命に選ぶニーベル。

それでも、媚び諂う様に敬語を……などは一切使わない、使えない? のはある種才能か。

 

そして、殆どゼロ距離まで顔面を近づけると、地の底から響く様な声でニーベルに言った。

 

 

 

 

 

 

「リーゼに近付くことは許さん。イステリアにもな。……俺はリーゼを、イステール家を、アルカディアを守護する者だ。―――――次、貴様がリーゼの視界に入ったその時は、完全に目を潰してやる。………俺を決して忘れるな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腰が抜けていた様なので、取り合えず部屋の外に放り出してやった。

そのまま、まるで犬の様に四つん這いになりながらも、這いずって外へ。時折侍女に目撃されてギョッッ!? となっていたが、その辺りは直ぐにフォローを入れて大事にしない様に務める。

 

 

勿論、そんな人外な真似が出来るのはピカピカの実の能力者(笑)の和樹その人だ。

 

 

ここまで上手くできた。

もう少し早くに突入しても良かったかもしれないが……。

 

 

「リーゼ自身の口から、しっかりと決別の言葉を……の方が良いもんな」

 

 

と言う事で、ほんの少しではあるが間に割って入るタイミングを窺った。

流石にリーゼを襲おうとしたその瞬間は、あのウリボウのハクをぶん殴った時以上のピカピカのパンチ! を繰り出して首から上が大変な事になりそうだった、と思うが我ながら上手く加減が出来たものだ。

あのまま殺してしまった方がこの国にとっても良い筈なのだが、生憎ニーベルが何をするかまでは思いだせていない。

如何に人間性最悪な男であったとしても、他国の商人を、それもかなりの商人を葬ったともなれば、関係性悪化に繋がりかねない。

その変もピカピカの仲裁!! で、強引に解決できそうな気もしなくもないが、ただでさえ他の仕事もあるのに、余計な男の、最悪な男のせいで手間を取らせてしまうのも申し訳ないのだ。

 

勿論、変な事をしようものなら次は容赦しないが……。

 

 

「その辺はジルコニアさんにも一報……だな。まぁ、滅殺一択だろうけど――――っっ!?」

 

 

そんな時だ。

背中に温かいものを感じたのは。

 

……抱きしめられたのは。

 

 

 

「………よく、頑張ったな、リーゼ」

「うん、うんっ……」

 

 

強い決意をしていても、どれだけ気を張り詰めていても、リーゼはまだ14歳(幼い)女の子だ。怖かっただろう事はその身体を通じて伝わる震えで解る。

 

 

「ありがとう、ありがとう……、かずき……」

「うん。リーゼの為なら、だよ? だから1人で抱え込まない。出来ない事は絶対あるから。皆を、オレを頼ってよ。……反則って感じはしなくもないけど、今まで頑張ってきたんだから、それくらい大丈夫大丈夫」

「……ふ、ふふ」

 

 

ここでリーゼの笑顔が戻ってきた。

背中を抱きしめていたその腕を離し、正面に回ると……。

 

 

「かずきっっ!」

「わっっ!?」

 

 

今度は正面から抱き着いた。

和樹の胸に埋まり、頬を擦りつけ、そして上目遣いをする。

 

 

 

「やっぱり、私はカズキが好き。大好き。……愛してる」

 

 

 

そして改めて、和樹に想いの丈をぶつけるのだった。

 

 

 

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