「一良さん。その……
「はいはい、解ってる解ってる」
「えええ! まだ、何も言ってないのにっ!?」
「や、今のリーゼの顔みたら解るから。なんかめっちゃ幸せそうな顔してるし、何ならオーラまで出ちゃってるし」
「にゅふふふ~~~」
にゅふふ、と笑うリーゼの周囲には、まるで☆や♡が宙を漂っているかの様だ。一良はそれを一目見て直ぐに理解していた。
そう、リーゼから告白された和樹は受け入れた。
もうこれ以上無碍に出来ないし、何より和樹自身もリーゼには想いを寄せている。
言い訳は出来ないし、そもそもリーゼにはしたくない、と言うのが本音だ。
無論、条件付き―――ではあるが。……それが今回の件だ。
仕事の合間に一良にわざわざ来てもらって時間を作ってくれている。今の作業はそれなりに大変だから結構時間を作るのも難しいのにありがたい話だ。勿論、一良や和樹が時間が欲しい~~的なお願いをして拒む者はこの世には皆無だが。
このいつか見たにゅふふ~笑い以上な幸せオーラ全開のリーゼを横目に一良は微笑ましく思いつつ、苦笑いもしたりしていた。この笑みが連想させるのは、どうしても、メロメロばんばんで………。
「カズラ? 変な事考えてないでしょうね?」
「滅相もございませんよリーゼお嬢様?」
超能力だろうか、ちょこっと考えていただけなのに、リーゼはいつの間にか真顔になって迫っている。勘が良すぎるだろ、と口を大にして言いたいが、その気持ちも此処まで。
此処からは真面目な話だから。
「それで、カズラと一緒に私に話をしたい事、って何? ………それを聞いてもカズキに対する想いが変わらなければ、私を受け入れてくれるってカズキは言ってくれたけど。………もう私は覚悟できてる。どんな事でも受け入れるし、この想いはウソじゃない、って証明もしたい。だって、カズキの事愛してるんだから」
愛してる、まで口にするリーゼに思わず一良は赤面。今は席を外しているがもしも、エイラを含む侍女たちがこの光景を見たら? あっという間にお祭り騒ぎになる事間違いないだろう。和樹もそれを受け入れている、と言うのなら猶更だ。
いつもいつも幸せそうに笑ってるリーゼを見て、復興に手を貸し、繁栄を手助けしてくれている和樹や一良達を見て、もしも結ばれるとするならこれ以上ないくらいに明るいニュースである、と思っていたから。
正妻は無理でも、妾や愛人を―――――――と虎視眈々に狙ってる者がいるとかいないとか……、それはまた和樹には与り知らぬ話。
そして、和樹に邪な思考で近づこうものならリーゼが反応し、凄まじい怒気をその身で育むだろうから、中々にガードが固く、最難関だと言えるかもしれないが。
閑話休題。
和樹と一良は丁度リーゼと向かい合う形で座ると、真剣な顔をしながら言った。
「うん。……じゃあ、心して聞いて欲しい。オレ達2人のことを―――――――」
話す内容は決まってる。
それは自分達は神様なんかじゃない、と言う事。
「―――ふふ。やっと教えてくれたね」
「……驚かないんだな? 一良さんは紛れもなく普通の人間だけど、オレ、こんなんだよ?」
「あははははっ。それは確かに、ねぇ? 空のデートとかも凄かったし?」
ひょい、と指先を翳すと光が出る。
それが丁度レーザーポイントの様に壁に当たり、反射し、光で場を彩った。
それとリーゼが言う様に、空中浮遊をして夜空のデートを演出したアレもそうだ。どう考えても人間業じゃないのは一目瞭然。でも、リーゼは一頻り笑ったあと、考えている素振りではあるが、それでもその目には確信を持ってる様だ。
「うーん。なんだろう? なんとなく、だけどやっぱり2人とも神様っぽくないから」
「ぅ……、特にオレの方が~だよなぁ……。ただ不思議な道具を沢山もってるだけのヒトだし? 和樹さんの様に特殊な力がアレば……なんだけど」
「ううん。カズラはカズラのままで良いって思うよ。いつも一生懸命で、とても優しくて。誰にも分け隔てなく接してくれる。私から見たら、それは十分特殊な能力だから」
リーゼはニコリと笑ってそう言った。
この世界での上に立つ者の汚さは嫌と言う程リーゼは見てきている。自分は環境が良かっただけかもしれない、と時折背筋が凍る想いだってした事がある。
ナルソンとジルコニアのおかげとも言えるだろう。良い父と母を持った……とリーゼは思った。
「取り合えず、一良さん」
「ああ、そうだよね」
一良と和樹の2人は、リーゼに向かって頭を下げる。
「ええ!?」
「ごめんな。今までずっと騙してて」
「全部こちら側の都合だったから。リーゼはきっと良い、って言うけどけじめとして受け取って欲しい。もう、隠し事は無しにするから」
「…………うん。受け取りました。でも2人とも何言ってるの? こんなにも私たちの為に一生懸命になってくれてる2人に対して、怒るなんてあり得ないじゃん」
リーゼはむんっ、と胸を張って、力強く叩くと。
「誰にでも隠し事の1つや2つ、あるでしょ! 普通な事だよ!」
「それは……うん。リーゼのメロメロ」
「こらぁっ! 黒歴史掘り起こすの禁止!」
和樹がまたまたメロメロばんばん事件を言おうとしたが、リーゼの一声で中断。
一良も実は同じことを考えていたのだが……、何とか口に出す事は無かった。
最後は3人で一頻り笑い合い――――そして、和樹が神妙な顔つきになっていった。
「ごめん、何か終わりって感が流れてるけど……実は、此処からが本番なんだ」
「え? そうなの?」
神様ではなく、ニンゲンだった~と言う衝撃告白(知らない人が聞いたら)以上に何があるのだろう? とリーゼは小首を傾げるが、和樹の顔が朗らかに笑っていた今のモノとは違い、
より真剣味を増した顔になったので、リーゼも姿勢と表情を正して真っ直ぐ見据える。
「オレと一良さんの決定的な違い……とも言える事だよ。……心して聞いて欲しい」
「――――――うん」
そこから先、告げるのはこの世界に降り立った経緯について。
一良は、日本へと通じるグレイシオールの森を抜けた先の屋敷からこちらの世界に
でも、和樹は違う。
ある日突然、この世界に転移させられてしまった。
和樹の知る日本と一良の知る日本は微妙に違う点があり、別の世界の日本からやってきた―――と言うのが一番有力な説。
ただ、どうして、どうやってこの世界に降り立ったかは解らない。ゲームをしていたら本当に
突然この世界へとやってきたのだ。
だから―――――……。
「……だから、その逆も有りうる、って事? カズキが来てくれた様に……、カズキがまた、突然いなくなってしまう可能性も否定できない、って事?」
「うん」
どうやって来たのか解らない以上、帰り方も当然解らない。
何が切っ掛けで世界を飛び越えたのかも解らないから、いつの日か、その切っ掛けが起こりまた転移させられてしまう可能性だってきっとゼロじゃない。
和樹が恐れている点はそこに在る。
だから、一良は和樹と約束したのだ。
「何の解決にもなってないかもだけどさ……。もし、万が一、和樹さんが危惧していた事が現実に起こったとしても、絶対にオレがその後の事は何とかする、って約束したんだ。和樹さんがしてくれた事全部自分でやる、って言うのは無理な話だけど、それでも約束した。それがオレに出来る唯一の事だから」
40億と言う巨万の富を得た一良が出来うる事。それはもしも和樹がいなくなってしまった後も、必ずリーゼを、この国を幸せにすると和樹に約束したのだ。
「…………………」
リーゼは無言になった。表情は先ほどの陽気な姿から一転し、無と言う表現が一番近いであろう表情だった。
重大な事を言われるだろう、聞かされるだろう事は想像していたが、それでも秘密を打ち明けてくれるだけで嬉しかったし、何でも乗り越える事が出来るとリーゼの中で確信していたのだが……、蓋を開けてみれば和樹自身が自分達の身を案じていた。
消えてしまうかもしれない。
だから、その手を取る事が出来なかった。
自分は不思議な力が、強大な力がある人間とは一線を画す存在だから、と言っていた理由はあくまで建前でしかなかった。
本当は…………。
リーゼは、立ち上がると和樹の傍へと向かう。
そして、その袖部分を掴むと。
「……カズキは、ここにいるよ? 触れれるよ?」
「うん」
そう言って、次にはその身体に抱き着いた。
光になる身体で、実体が無い状態にも出来るが、ハッキリとリーゼには触れる事が出来る。
「……温かいよ? 鼓動だって、聞こえるよ?」
「……うん」
そう言うと、リーゼは和樹の胸に顔を埋めて……そして和樹の顔を見上げた。
「カズキは此処にいる。どこにもいかない。……きっと、絶対、私達を置いて何処かにいっちゃったりなんか、しないよ。……しない、もん」
「………うん。勿論」
和樹は誓う。
いなくなったりしない、と。
リーゼはそう言ってくれても、怖い。
言葉にしないととてつもない恐怖感に押しつぶされそうになる。
こんなにも怖いのか。大切な人が、愛する人が失うかもしれない、と言うのはここまでの恐怖なのか、とリーゼはこの時初めて本当の意味で知る事が出来た。
戦争を経験し、数多の別れを経験してきた人たちだっているだろう。彼らの苦しみを本当の意味で知る事が出来たのだった。
その後、何とか落ち着いたリーゼは部屋へと戻っていった。
最後には笑顔で、【今後ともよろしく!】と言っていたので、きっと大丈夫だろう。
「……一良さん。本当によろしくお願いしますね。迷惑をかけてしまいますが……」
「迷惑だなんて思ってないよ。それに、オレだってリーゼと同じ意見だ。……そんな時なんて、来ないよきっと。だから、絶対あり得ない保険? みたいな感じで受け取ってる」
「う~~ん……、でも一良さん、宝くじ10口買って全部当てちゃったんですよね? その強運が反転しちゃう~なんて事は?」
「不吉な事言わないでよ! ……って言うか、宝くじでの運はもう全部使い切っちゃってる気がしてるし。この世界に来れたって事実と和樹さんと知り合えた事。……あ、漫画の世界の能力? をこの目で見て体験できた事とかもね。お金幾らかけてもそんな経験出来ないでしょ?」
「そりゃそうだ」
2人も湿っぽい話はもうこれで終わり! と言わんばかりに明るく会話を繋げる。
万が一の備えは確かに必要。
でも、リーゼも一良も、……そして和樹も大丈夫だと思う事にするのだった。
「あ、それと共有したい情報が1つあってですね」
「え? なになに??」
明るい話をしていたんだけど……、ここからは違う意味であまり宜しくない、暗い話を和樹は一良にする。
勿論、リーゼとの恋仲の切っ掛けになった人物の話。ある意味では間柄を受け持ったとも言えなくもないが、絶対にそんな事思わない。口にすら出さない。考えない。
「……そんな実力行使でやろうとしてたんだ? 話に聞いてた腐れ外道が?」
「そうそう。至近距離でスタングレネードかました後、思いっきり脅かしてやったから、暫くは手荒な真似は出来ないと思うけど、一応一良さんにも報告を、ってね?」
男の名はニーベル。
思いっきりビビり散らかし、からくもイステリアから脱出を果たした男である。
確かに尋常じゃない事態に、人非ざる者に絡まれた以上、イステリアに今後近づくなんてあり得ないと思われるが………。
「なーんか、仕掛けてきそうな気がしなくも無いんですよね。あの手の輩は」
「ええ!? 和樹さんのピカピカを見た後で、ですか?」
「ええ。トリックがある~とか何とか言い出したりして。オレが居なくなった所で盛大にむかっ腹が立って、暴れたりして。……また違うやり方でこっちにきそうな気がします。だから共有を、と」
「うーん……」
一良は半信半疑だ。何せ光の超常現象を見舞われた相手だ。
そんな未知との遭遇を果たした後、またケンカを売る様な真似をするだろうか? と一良は腕を組んで考えてみる。
でも、外道の思考を読み切る事なんて不可能に近いから、考えるだけ無駄だとも言えるが。
「でも、ジルコニアさんやナルソンさんに報告は必要じゃないですか?」
「ええ。それは考えてますよ。……流石に、そこを黙るつもりはありません。リーゼには話さないで、とは言われてませんし? ……まぁ、話すとも言ってませんが」
「そりゃ、リーゼにとってみれば、白馬に乗った王子様が助けてくれたシチュエーションだったんでしょ? そんな事頭にないよきっと」
そりゃそうだ、とあはは~~と笑う和樹。自分自身に置き換えて考えてみたら、妙に気恥ずかしくなってくるが、それでもリーゼの想いを受け取ると決めた以上受け入れる。
「あ、でもただの付き合う~レベルだから。婚姻云々になってくると大騒ぎになっちゃうからさ? その辺の話はまだしないつもりだよ。少なくとも、アルカディアが安定して、不安要素を払拭させる時までは。その時に……ナルソンさん達にも報告を、とか考えちゃってます」
「明るいニュースで埋め尽くす、って感じで良いね。和樹さんは皆に人気あるし、絶対祝福してくれるね」
「一良さんも他人の事言えないと思いますけどね~」
リーゼが言う様に、2人は皆から絶大な信頼を得ているとの事。
助けて貰えていると言うのもそうだが、以前リーゼが言っていた分け隔てなく接し、名を呼ぶ、目を見て話す、等の事を当たり前の様に行っているその人柄が、皆からの信頼を得たのだ。
「あ、話したらきっとジルコニアさんは確実に怒髪天だから。その辺りのガス抜きも考え解かなきゃだね。下手したら自分で
「え~~、それアロンドさんにも言われたけど、あのジルコニアさんがそこまでするかな? いまいちピンとこないんだけど」
「普段の、余裕がある時の彼女はいつも楽しそうですからそう思うかもしれないですが。…………でも、違う面はあると思いますよ」
多くを失ったあの戦争を経験し、政略結婚をした彼女の一面を一良は知らないから仕方ない。
だが、直ぐに知る事になる。
「(――――――――や、やばい)」
その日の夜。
執務室にて、今回の件を報告しに行った和樹に同行した一良は、その凄まじい圧に、怒気に、殺気に思わず仰け反ってしまった。
「今すぐ殺してしまいましょう。ええ。カズキさんの手を煩わせるまでも無い事です。もし、今後彼がこの領地に来なくても構いません。兵を送り出し、グレゴルン領土から引き釣り出して血祭に上げます」
「いや、無茶苦茶を言うな。我々が正面切ってグレゴルンと事を構えてどうする。今はバルベールと休戦状態とはいえ、一丸とならねばならぬ時に、他方に敵を作る訳にはいかんだろ?」
「なら、野盗辺りに扮して、グレゴルンから出たところを闇討ちすると言う手はどうかしら?
「いや、基本的には使者はかなりの数を護衛に連れている。隠ぺいするのにも限度がある」
「なら、ナルソン。貴方は娘を辱められて黙ってて良い、と言うのかしら? 私は無理よ。腸が煮えくり返ってどうにかなりそうなの」
家族を殺された時の情景がジルコニアの頭の中では焼き付いて離れないのだろう。
ナルソンも渋い顔をしている。
これが疑いの余地程度であるならまだ言い聞かせる事も出来そうだが、判明したとなれば話は別。だが、だからと言ってこちらからの証言を一方的に話、豪商でもあるニーベルを殺すなんて出来るとも思えないし、あのグレゴルン領の領主が首を縦に振るとは思えない。
相応の金を生む男であるのは間違いないのだから。
「あの、ニーベルの件ですが、
そんな時、和樹が手を挙げた。
「お2人が許せない、と言う気持ちは十分解りますし、正直オレ自身が、あの場で殺してしまう寸前でした。それ程までに怒りを覚えましたから。それにもう2度とリーゼをあんな目には遭わせまい、と彼女に誓いました」
和樹のもの言いは静かだが、その心の内に内包されている激情があるのをジルコニアもナルソンも見逃さなかった。その静けさがまるで大嵐の前の予兆であるかの様。だからこそ憤慨していたジルコニアも言葉を噤んだのだ。
「では、カズキ殿はどの様にされた方が良いかと思われますか? ご意見を伺いたい」
ジルコニアの代わりに、和樹に聞くのはナルソンだ。
「私の力を使えば捕える事も殺害も至極容易に。……ですが、領土を超え、無法を犯したいとも考えてません。……大分皆さんと信頼関係を気付けて、友好的に接する事が出来た私でも、一応は
正直人殺しは、かなりのハードルがある。
でも、必要と在ればスイッチを切り替える事も厭わない。
その為に
「散々脅かしましたが、
「……………」
にっこりと笑う和樹を見て、ジルコニアも表情を緩めた。
「……リーゼは、幸せ者ですね。母親としてこれ以上ない程に喜ばしい事です」
そう言うと、ジルコニアは頭を下げた。
「お見苦しい所を見せてしまい、申し訳ありません。……どうか、娘をよろしくお願いします」
リーゼの事を心から想い、リーゼの事を想っているからこそのこの迫力なのだろう。
ナルソンとて同じ気持ちだが、身分と言うモノがどうしてもある。
その後、改めてナルソンも和樹に頭を下げて礼を言いニーベルの件は見送る事にするのだった。
「はぁぁぁぁ……ビックリした……」
「あはは……ゴメンなさい。こうなるって解ってたのに」
「いやいや、オレが信じなかったのが悪いよ。だって、いつものジルコニアさんの姿を見てたらどうしても……」
全て終わった後、ちょっとしたお茶会を2人で開催していた。
いつもは、エイラやマリー、後時折リーゼもやってきて大所帯になるんだけど、今回は2人の姿は見えない。ひょっとしたらここにやってくるかもしれないので、来たら話題を変えよう! くらいの備えはしている。
「かき氷食べてる姿を見てたら、ですね?」
「そうそう。ず~~っと抱きしめて離さないで、食べ歩きも当然。アイザックさんやハベルさんは勿論、他の近衛兵の皆さんにまでどんどん勧めて信者を増やそうとしてる姿とか見てますから……」
「あははははは! 確かに! ……でも、一良さんは見てなかったから、だと思います。あの時のニーベルとリーゼのやり取り。もし、一良さんも一緒に目撃してたら、その場でぶん殴ったりしてても不思議じゃない、って思います」
穏やかではない話ではあるが、その気持ちは一良も解る。
戦闘員じゃないし、腕っぷしが良い訳でもないから出来るか、出来ないか? で問われたら、どうしても首を横に振ってしまうのだが。
「仮に、狙われたのがバレッタさんだったらどうです? オレの様になると思いません?」
「えええ!? いや、まぁ……大丈夫です。解ってますって。……でも、バレッタさんなら、相手を千切って投げ飛ばしちゃいそうな気がしません? 日本食で凄い事になってますし」
「……しまった。チョイスを間違いました」
一良の事に好意を、想いを寄せているバレッタ。
勿論、一良自身もそれは解ってる。年齢的な面があるから色々戸惑ったり躊躇ったりしてしまうが、それでもリーゼと同じ事が彼女の身に起きれば……、と真剣に考えた結果。
「私の持てる全ての力を使って報復———ですね」
「……うわぁぁ、それもなかなか……」
一良の財力を駆使した力。
日本とこちら側の物価の違いの利用。
一良が出来る事をする――――の中身を色々と想像してみると……和樹は相手が可哀想になってくる、と苦笑いをするのだった。
その後———エイラとマリーがやってきた。
そして、地獄耳だと言うのか、或いはエイラの作る菓子の匂いに誘われたのか、リーゼまでやってきて結局いつもの大所帯に。
「美味しい! 今日も美味しいですよ、エイラさん!」
「ふふふ。畏れ入ります」
「本当にお菓子作り上手ですね。私も美味しいです」
「ありがとうございます、カズラさん、カズキさんも。たくさんありますから遠慮せず食べてくださいね」
絶品の品々を頬張りつつ、お茶を嗜む。これぞ優雅なお茶会。
「わっ♪ 私もいただきまーす!」
「いただきます……!」
マリーも最初こそは物凄く遠慮して中々手が伸びなかった様だけど、回数を重ねて、和樹が差し出したりしたりもしてどうにかこの空気に慣れる事が出来た様だ。
そう言えば、リーゼが頬を膨らませてマリーに嫉妬な目で見ていた光景も何だか面白かったなぁ……と一良は何処かしみじみと思う。
「あ、マリーちゃん。口元にお菓子付いてるよ?」
「っっ! す、すみません。えと、えと……」
「ああ~~~! マリーずるいっ! カズキ! カズキ! ほらほら、私にもっ!」
「いや、リーゼはエイラさんのお菓子が美味しいからって完璧に食べれてるから何も付いてないよ」
「ぶーーー!!」
「……本当に楽しいですね、カズラさん」
「ええ。恒例行事にして良かったです」