ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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64話 超天才合流

 

 

和やかに談笑している最中、コンコン―――と部屋の戸が叩かれた。

 

 

「ん? どうぞー」

 

 

扉から一番近かった一良がノックに気付くと直ぐに返事をして入室を促す。そしてその扉はゆっくりと開かれた。

開かれたその先に居るのはハベルだった。

 

 

「失礼いたします」

 

 

ペコリ、と頭を綺麗に下げて入室前の一礼。

それに応える様に一良は勿論、和樹も手を振って応対。

それらを確認した後に、ハベルは口を開いた。

 

 

「井戸掘りの成果についてのご報告なのですが………」

「!」

 

 

一良が担当している分野の成果報告だ。

地下水が沸いて出てきたら直ぐにポンプを導入する予定にしている。

 

地下水、井戸水をくみ上げるそのポンプは、力が比較的弱い女性陣でも問題なく使えて大好評。

現場では勿論今この瞬間もその水の恩恵を受けている。

 

加えてナルソンからの使用用途、その提案で鉱山の穴の中の地下水を抜き出す、と言った作業にも割り当てられているので、侵入不可だった場所から更に奥へと進む事が出来、鉱脈探索も出来ている。まさに八面六臂の大活躍中。

 

だから、ある程度の成果は期待していた。勿論、地下水が出ればの話だったが……。

 

 

「うーん……5つだけ、ですか」

「はい。計150か所近く掘ったのですが、それ以外は全て岩盤にあたってしまいました」

 

 

成果は思わしくないとの事。

地下水そのものが出なければ如何にポンプがあっても意味ない。

正直、狙った穴の全てがヒットするとは思ってなかったが、それにしても150カ所中5カ所……約3%程度なのは………。

 

 

「じゃあ、いつも通りオレが対応しておきましょうかね~~って言いたいですが、流石に一気にやってしまったら、皆驚いちゃって誤魔化し聞かなくなっちゃいますか。……街中は特に慎重を心掛けないと、メチャクチャ目立っちゃいますし」

 

 

あはは、と笑いながらぐるん、と腕を回す和樹。

この手の案件は、和樹の分野で陰ながら光で助けると言う何とも面白い事をやっているのだ。……面白いかどうかは置いといて。

でも、情報統制や操作がやや難しくなってきている、と言う話も聞いている。

派手に動くのは自重しなければならない。

 

 

「ええ。以前もある程度の情報操作は行ったのですが……、どうしても人の口に戸は立てられない様で。深夜の時間帯、南の空に一筋の光を見たと報告も上がってました」

 

 

人工的な光は主に火を使ったモノ。電気の無い世界だから、和樹の光源は強烈だ。昼間であっても余裕で目視できる。ある程度光度を抑えているのにも関わらずこれ。

だから夜寝静まった後の深夜に活動をするのが基本になっていたのだが……。

 

 

「うへぇぁ……、確か夜中の3時くらいに行動したのに、見られてたんですか……。も、別に隠さなくても良い気もしてますが……」

 

 

思わず変な声が出てしまう。

 

どうしても、回数を重ねていけば誰かしらは見る事になる様だ。勿論、ネットの類が無い世界だから、情報の拡散速度は遅いと思われるが、噂話程度からどんどん話が大きくなって人伝で伝わりある至って不思議じゃないだろう。

特に、信仰心の強い世界であれば尚更だ。

と言う訳で、隠し続けるメリット・デメリットを鑑みても、そろそろある程度は打ち明けても良いのかもしれない。

ナルソンら領主の言葉で御布令を出せば何とかスムーズに伝わるのではないだろうか? アルカディアは、イステリアは神と契約、盟約を交わした。光で満ち日いずる国となったのだ! と。

グレイシオール(一良)の伝説もそこに織り交ぜて、オリジナリティを出して、誇張していけば。

 

ある種の商売にもなるかもしれない。その辺りはクレアに要相談になるだろうが……。

 

 

等々と色々と考えた後、リーゼの方を和樹は見た。

リーゼには自身の正体をバラしている内の1人。……と言うか何ならこの部屋の皆さんはご存じだ。1人増えようが10人増えようが、国中に広がろうが構わないだろう……と思った。流石に市民に対しては容姿関係は秘匿にして貰いたいが。普段の生活が大変になっちゃうのが目に見えるから。

 

 

「それは駄目よ。カズキも安易に明かす~なんて言っちゃ駄目!」

 

 

因みに、リーゼは首を縦に振る事無く、手を交差させて左右に振った。

 

 

「現状、ただでさえカズキには負担がかかってるし、そもそも頼まれたら大体なんでもやっちゃうし。自分達がどこまで出来るのか、その最低ラインの見切りをしない内に頼り過ぎるのって絶対良くないよ。……それに、こんな優しいヒトが神様だ~~って皆が知っちゃった日には、沢山押しかけてくるかもしれないよ? それも何だか嫌」

「へ? まぁ、確かに依存しちゃうって言うのは、今は良くても後々に響いてきたらやっぱし怖いし、リーゼの言う事も解らなくもないけど、そこは、何とか調整……ほら、整理券とか配る形で対応とか色々として貰って。若しくは制限する方向で対応、つまりバランスを取ってくれれば行けそうだと思うけど………。まぁ、丸投げだね。ナルソンさんやジルコニアさんならその辺り上手く回してくれそうな気がするんだけど??」

「だから、それでも駄目だって。依存って言ってる通り、もし皆が頼ってカズキがいないと何にも出来ない、ってなっちゃったらダメでしょ? 今回の井戸掘りの件だって、中々成果が出てないだけで、皆で協力すればきっと出来る案件だよ。……でも、カズキなら一晩あればさっさと1人で掘れちゃう。そんなのが続けばきっと絶対甘えちゃうから。今は色々と余裕が出てきている。カズキとカズラのおかげで、凄いスピードで復興が出来ているの。だからこれ以上はあまり、甘えさせちゃうのはよくない」

 

 

これは、少々リーゼにとっては私欲が入っていたりもする。

無論、領土の皆の事を一番に考えているのはウソ偽りではないし、依存云々、頼り過ぎる云々、に関しても同じくだ。

ただ、やっぱり和樹の人柄、人当たりの良さ、誰彼分け隔てなく接する様、色んな人達がその姿を見ているし、現在は和樹は別の国の大貴族って事になっていておいそれと平民たちが近づけない立ち位置なのに、実は神様である、と広がってしまえば教会に行くノリで和樹の所へと訪問してくる人たちが増えてきたって不思議じゃない。

 

 

……2人で会う時間が減ると思う。

何なら、まだ見ぬ女の陰が出てきたって不思議じゃない。

和樹が妾を取る事を否定するつもりは無いし、第一夫人の座こそは絶対ではある、とも思っているが……それまでの過程が大事。よく知らない人たちより、最低ラインこの場に居る侍女たちクラスに信頼できる相手じゃないと絶対に嫌だった。

何より、甘えるのは自分だけの特権にしたい!! とも強く思っていたり。

 

 

そんな事を考えてるとは露知らず、和樹はそれもそうかな……と言いつつ納得した様だ。

 

 

「今回の件、あまりに効率が悪いから街中の試掘は取り合えず一旦止めて、別の場所で井戸掘り機を使ってみるって言うのはどうかな? …………ああも、力説しちゃったけど、重要な案件だから、効率緩和の兆しさえも無かったら、最後はカズキに頼っちゃう事になるかもだけど」

「ふふふ。良いよ良いよ。だって頼ってくれるのは嬉しいから。それに、リーゼが言ってた手を出し過ぎちゃうのが良くないって言うのも解ってるつもりだったけど、リーゼのおかげでもう少し見直せる切っ掛けになった。………本来こんな超常的な力をひけらかすのって、本来大パニックモノだしねぇ。感覚が鈍っちゃわない様にしないと」

 

 

和樹は指先をひょいと上に向ける。

すると光線が発射されて、天井を光で彩った。

これはあくまでただの光、照明と同系統のモノではあるが、ひとたび和樹の意志で光に対し【攻撃せよ】と念じれば、それはこの世のモノ全て。どんな固いモノであっても貫く最強の弾丸となり、掘削機にも成る。

 

だから、井戸掘り等朝飯前。……掘り過ぎにだけ注意する必要があるだけなのだ。

 

 

「オレ達は見慣れた光景なんだけどね。……ねぇ? エイラさん、マリーさん」

「あはは……ですね。今では驚くよりもとても綺麗な光だな、って魅入っちゃいます」

「あ、私も同じ意見です。綺麗で、とても温かい光だなぁ、って思います」

「……いやいや、本人の前でそう言われちゃ流石に照れるよ~」

 

 

口々に和樹は異常な力と連呼しているが、そろそろ見知る者達は慣れてきた様だ。

エイラもマリーも、特にマリーは和樹に物凄く助けられているから、和樹には物凄く好意的。接し方も分け隔てなく、下も上も無いので尚更。和樹自身があまり望んでいないので言葉にはしない様にしているが、やっぱり和樹は神様だ。

 

 

「ちょっとーー! エイラもマリーもカズキ誘惑しないでよー!」

「えええ!!?」

「そ、そんなつもりはありませんよ!??」

 

 

きゃあきゃあ、と楽しそうに? はしゃぐ3人。

真面目な話のつもりだったのだけど、女の子が揃うとこうなるのだろうか。

 

 

「カズキ様」

「ん? はいはい! カズキさんですよー」

 

 

不意打ちだった事もあって、和樹は結構本気で照れていた。

でも、ハベルから声が掛かった事でどうにかこうにか平静を取り戻し、両頬をペチペチと叩いて気付けをする。

 

 

「マリーのこともどうか、よろしくお願いします」

「って、ぇぇ……ハベルさん」

 

 

そう言って頭を下げた。

入室する時の礼より更に深く深く、長く。

それは、リーゼが言っていた誘惑からの延長上の冗談の類ではなく、マリーの事も娶って貰えるなら、と言う願望も見えて取れる。

和樹、一良の庇護下に入れば間違いなく安泰なのは目に見えているから。

 

だからこそ、ただ照れるだけで終わるのではなく。

 

 

「大丈夫ですよ、安心してくださいハベルさん」

 

 

和樹はニコリと笑って言った。

 

 

「心配せずとも、大丈夫なんです(・・・・)。ハベルさんも勿論、……その家族(・・・・)もきっと」

「!」

 

 

それはとても意味深な言葉と笑みだった。

神々しく輝いている様にも見える姿(実際に光を出してる)。

 

いっている言葉の意味までは解らない。その笑顔と光の奥底に隠れてみる事が出来ない。

ただ、解る事はある。

正しく自分は、自分達は――――神の御加護を……。

 

ただ、(アロンド)(ノール)に関しては、加護を授かるだけの器量があるのか……? と少々不本意ではあるが、和樹が決めた事であるならば異論がある筈もない。

 

 

ハベルは片膝をつき、そして両手合わせて拝む。

 

 

「改めてこのハベル、身命を賭してカズキ様にお仕えし続ける事を此処に」

「っ……、ちょっぴりやり過ぎた? 普通通りが嬉しいよ。フレンドリーフレンドリー」

 

 

如何に光の力が皆にはもう見られている~とは言っても、日常的にその力を見ている訳じゃない。和樹自身も力は当然限定しているし、大っぴらに使う時は穴を掘ったり、移動で使ったり……後はリーゼとの夜のデートの時くらいだろうか。

 

特にハベルはよく周辺警護をしてくれてるだけなので、光の力を見たりする機会が更に少ない。マリーやエイラと比べても格段に。

そんな相手に、ピカピカの後光!! をして、安心させるような言葉を伝えればこうなっちゃうだろう。

ちょっぴりアソビも含んでた和樹は、やり過ぎた! と半ば慌てていて、そんな2人の様子に気付いたリーゼが絡んで———楽しそうにしていると。

 

 

コンコンコン

 

 

と再び部屋の戸を叩く音、ノックが聞こえてきた。

今度は先に気付いたのは一良で、楽しそうにしてる和樹らを尻目にゆっくりと立ち上がると。

 

 

「どうぞー」

 

 

と言って扉を開けた。

ガチャリ、と開かれた扉の先に居たのはアイザック。

 

 

「カズラ様、失礼いたします。以前お話した職人が間もなくお見えになりますので、ご連絡にきました」

「おおっ! ついに来ましたか」

 

 

それは一良が楽しみにしていた案件の1つ。

極めて優秀な職人で、これまで導入してきた機械の改良から始まり、斬新なアイディアも豊富で、間違いなく国を支える中心に立つだろう、と思わせられる人材。

 

実際に会うのを楽しみにしていたのだ。

 

 

「まもなく職人が屋敷に到着致しますが、こちらにお連れすれば宜しいでしょうか?」

「いやいや、出迎えますよ。私の方が無理言って来てもらったんですし」

「了解致しました」

 

 

そう言うと、一良は立ち上がる。

それに続く形で、和樹もハベルとのやり取りは一時中断して自分も! と立ち上がる。

 

なら私も! とリーゼも一緒に来て……大所帯になった。

本来ならば、一良と和樹の2人だけで十分な筈なのだが、リーゼが席を立ったので侍女であるエイラも同行。マリーは和樹の専属侍女でもあるから同行。

ハベルも、身命を賭して~~とまで宣言した手前、一緒に居ない訳がないので同行。

アイザックも合わせて7人で出迎えに行く事になった。

 

 

「(バッチリですね? アイザックさん。一良さんは全然気づいてませんよ? 流石です)」

「(いえ、私は職務を全うしただけですよ。秘密裏に動く事も良くあるので)」

 

 

アイザックは生真面目で正直人間。おまけにデリカシーも無い! (シルベストリア&和樹からお叱りを受けて改善中)

だから、正直嘘? をつく類は苦手かな? と少なからず思ったのだが、極々自然に言葉を濁して言えてたので大丈夫だったようだ。……と言うより、偽りなく、真実のみではぐらかすと言うやり方でどうにかやってきたらしい。本人としては職人の名は伏せているし、詳しい出身地も聞かれてないからやりようはあったし、で乗り切った。

少々疲れた様子も見えているが大丈夫そうだ。

 

 

「じゃあ、出迎えに行きますか!」

「あ、私もいくいく!」

 

 

一良を先頭に、和樹も立ち上がるとリーゼも手を挙げた。

領主の娘として、復興を助けてくれる優秀な人材ともなれば、自らが馳せ参じなければならない、と思っている。そう言う姿勢が彼女の人気、求心力にも繋がっているのは言うまでもない。特にここ最近のリーゼの対応は神がかっているとの専らの噂。

 

―——リーゼにとって、偽らざる本音で語り合える人が増えた事。本当に、真に愛すべき人が出来た事。それらが何よりも心の支えであり彼女自身の活力でもあるが故に、である。

 

 

 

それはそれとして、一良や和樹は勿論、リーゼまで付いてくるとなったので、他の4人も立ち上がってかなりの大所帯となった。皆で出迎えなければならない、と言う訳ではないのだが、リーゼが行くのならば侍女であるエイラは勿論、マリーも和樹専属侍女、ハベルは今し方忠臣を誓う所作をしたばかり。ついてくるのは自明の理だ。

 

 

「それでそれで。カズラ。職人って前に言ってた機械を再設計したり、自分で新しいのを作ったりしたって言う人でしょ?」

「そうそう。イステリアから離れた所で住んでるらしいんだけど、今回色々と無理言っちゃって来てもらう事にしたんだ」

「うんうん。イステリアから離れてる~は間違いないですね?」

「あはは……」

 

 

ウソは言ってない。

アイザックも上手くなったモノだ。シルベストリアにこっ酷く叱られたから、その影響も、英才教育? の賜物かもしれない。

苦笑いするその顔の奥に、これまでの苦労が目に見えてわかる気がした。

 

 

「かなり頭の良い人みたいだから、何とかお願いして職人の取り纏めをしてもらおうと思ってるんだ。イステリアの職人でも機械の改良を提案してくれた人はいたけど、その人の発案してくれたものは数段優れてたからね」

 

 

幾ら素人同然とはいえ、多少勉強をしているし、日本の最先端技術の一端を触れ続けている一良の目で見ても、その技能、技量は周囲と比較しても……いやいや、比較にならない程優秀だった、と太鼓判だ。

この世界の文明のレベルで考えれば、幾ら日本製を持ち込んで、色々と作ってきたとは言っても、数世代先を行く~と称しても何ら大袈裟じゃない。

 

そんな人材だからこそ、一良は強く欲したのである。

 

そして、和樹はニヤニヤ~と笑っている。その笑みには一良は気付かず。

 

 

 

「アイザック様。何だか挙動不審な気がしますが、何かやらかしたんですか?」

「失礼だな。……上手く、上手くできた、と思っている。カズキ様もそうおっしゃられた」

「なら何故?」

「………それでも、多少なりとも緊張をしてしまった、と言うだけだ」

「???」

 

 

ハベルはアイザックの意味がいまいち解らず。

和樹の前では平然を装っていたのだが、視線を外すと、やっぱりそれなりには心労があったようで、そこをハベルに見られてしまった。……気を付けなければならない、とアイザックは自身に戒めを刻む。

 

ハベルが言う様な事はやらかしてない。そこだけは自信を持って言い聞かせながら。

 

 

 

 

そうこうしている内に、広場へと到着。

タイミングが抜群だったようで、1台の馬車が騎兵に連れられて広場に入ってきた。

 

 

「お、あの馬車か。さてさて、どんな人かな?」

「どんな人でしょうね。楽しみです!」

 

 

第一声はどんな感じだろうか?

色々と想像を膨らませつつ――――和樹自身も約束をしっかりと守れた事を告げる準備もしていたりした。

 

 

軈て、馬車の窓からのぞく青い瞳が一良の瞳と交錯する。

どんな人か? と色々とその風貌を、容姿を想像していた一良だったが、それらの想像は一瞬で消えゆく。

何故なら、その姿はよく知る人物だったからで――――

 

 

「カズラさんっっ!!」

「ぐはっっ!!?」

 

 

ばんっ! と馬車の扉が開いたと同時に、腹部に強烈な一撃が決まった。

思考回路が追い付く前の衝撃だった為、中々に意識外からの威力は強烈で、思わず2~3歩たたらを踏む事になったが、どうにか堪える。

 

 

「ば、バレッタさん!?」

 

そして、意識をハッキリさせると同時に、抱き着いているその凄腕職人の姿をハッキリと見て、その名を呼んだ。

小奇麗な衣装に身を包んで、満面な笑みを見せていたその職人の正体はバレッタ。

 

目には強い決意が宿っていて、一良を見上げる形でハッキリと告げる。

 

 

「私、色んな事ができるようになりました!! 機械設計も建物の建築も、武術も医学も薬品の精製も!! もう、絶対に足手まといにはなりません! きっと、役に立ってみせます!! だから………だから………」

 

 

より一層強く、強く……掴んでいる一良の服を握りしめる。

笑顔だった筈の表情は硬く強張り、目じりには涙が浮かんでいて、一良に縋る様に見上げて。

 

 

「だから、カズラさんの傍にいさせてください!!」

 

 

一世一代の告白。

一良の返事を聞くまでの時間が本当に恐ろしいだろう……と、移動する間の想像の中では心底心細かったバレッタだったが、当の一良はバレッタの存在に驚いたものの。

 

 

「あ、はいお願いします」

 

 

ほぼノータイムで返答をした。

鬼気迫るバレッタに対して、一良自身は何とも気の抜ける様な返事だ。

 

 

「ほ、本当……ですか?」

「勿論ですよ。それこそこっちからお願いしたいくらいで。ていうか、職人ってバレッタさんの事だったんですね。……うん? あれ?? 確か和樹さんはグリセア村にたまに行ってた筈だから、知ってたんじゃ……?」

 

 

一良は、和樹の方にぐるっ、と首を回して見て見ると……、意味深な笑みと共に、手を前に、親指をぐいっ! と上に突き立てたサムズアップ。

 

 

「……知ってて黙ってたんですか?」

「あはははっ! 良いサプライズだったでしょう?? それより、バレッタさんを安心させてあげてくださいよ一良さん。……バレッタさん、泣いてます」

「って、ええええ! なんで!?」

 

 

ほんの少しだけ目を離した隙に……だった。

今し方のバレッタの様子、鬼気迫る様子を考えたら、泣くなんて考えられない~と思ってた一良だったが、実際は。

 

 

「ふえええええんっっ」

 

 

ぼろぼろと大粒の涙を零して泣いてしまっているのである。それもそれなりに泣き声を上げて。一良の性格を考えたら受け入れられない訳はない。和樹自身も以前グリセア村に立ち寄った時、絶対に大丈夫だとバレッタに伝えていた。

 

でも、幾ら頭が良く天才で、何でもござれな彼女であっても、まだ齢15。ここまで必死に頑張ってきて、成果を出して来ても……やはり不安で不安で押しつぶされそうだったのだろう。

緊張の糸が切れた途端に、決壊した様だ。

 

と言った具合にバレッタの心情を理解している和樹とは真逆に、どうしてバレッタが泣く!? と慌てた一良は懸命に宥める。

 

ある意味ではサプライズ成功! と言えなくもないが、まさかバレッタが大泣きしてしまうとは思っても無かったアイザックも多少慌てふためき、それ以外の事情の知らない面々はただただ唖然としているのだった。

 

 

 

 

 

「ちょ、そんなに泣かなくても……」

「ぅぅぅ、よがっだ、よがっだでずぅうぅ……」

 

 

背中をよしよし、と摩り頭をナデナデ、としてもどうしても感極まったバレッタの涙を引っ込めるまでには至らず、えぐえぐと一良の腕の中で泣き続けるバレッタ。

涙と鼻水で顔が凄い事になってしまっていた。

 

 

「ほらほら、こういう時はこれが必要でしょ。カズラっ!」

「うわっ!! あ、ありがとリーゼ」

 

 

あやし続けてもちっとも泣き止む気配がない。

2人きりにさせてあげたい気持ちではあるが……流石にそう言う訳にはいかないので、誰よりも早くに気を利かせたリーゼが一良の服を少しだけ引っ張って驚かせた? 後ハンカチを差し出した。

 

一良はそれを受け取ると。

 

 

「ほら、バレッタさん」

「ず、ずびばぜん………」

 

 

バレッタは、一良に顔を拭かれて、取り合えず涙と鼻水の洪水が一時的に止められた事もあって、バレッタは周囲の状況に気付く事が出来た。

 

 

「ッ~~~~~」

 

 

これまでの行動を鑑みる。客観的に自分自身を見つめ直す。

どう頑張っても顔面紅潮が止められず。

 

そんなバレッタを気遣ってか、ある程度落ち着いたと判断したリーゼが先に声をかけた。

 

 

「あなたがカズラやカズキが言ってた職人さんですね。私はリーゼ・イステールです。これからよろしくお願いしますね」

「は、ははははい!! よろしくお願いします!! グリセア村から来ました、バレッタと申しますっ!」

「ふふふ。そんなに硬くならないで下さい。気楽に行きましょう? ……それに、想い人(カズラ)に敢えて、感極まってしまったその気持ちは私も解ります」

「ふえっ!??」

 

 

リーゼはもう1歩バレッタに歩み寄ると、その顔をじっと見て、ニコリと微笑んで見せた。

 

 

「私でも、貴女と同じ様になると思いますから。……想い人(カズキ)に漸く逢えた、ってなっちゃったら……ね? ふふふ」

「え、えとえとえと、それはどういう……」

「ふふふ。さて、どういう意味でしょうかね。……それより、これからも気楽に行きましょう? ね?」

「は、はいっ!」

 

 

バレッタにとっては正しく雲の上の存在であるリーゼ。

そんな彼女から気さくな物言いを受けて、しどろもどろになりながらも、何とか平静を保とうと頑張っていた……が。

リーゼは、そんなバレッタの様子を見ただけで心境を察して口元に手を当てて笑う。

 

 

「ふふふ。バレッタさんの周囲にはもっともっと凄い人? 達が沢山いるじゃないですか。それに比べたらどうって事ない、って思いません?」

「え、や、そ、そんな事っっ!!」

 

 

慌てて両手を前にブンブンと振るバレッタ。

でも、確かに……、と思う節も当然あったりする。

正体を知っているとはいえ、バレッタは《慈愛と豊穣の神》《全ての光》と顔見知りであり、気さくに話をしたり、家に招待したり……と、ある意味ではとんでもない事をしているのだから。

本人たちがトモダチの様に~と言ってくれた事、そして一良や和樹から正体を打ち明けられた事もあって、完全にバレッタの中では除外していたんだけど………リーゼの言う通りだ。

 

 

「ふふふ。今後とも、よろしくお願いしますね」

「こ、こちらこひょっっ!! よろしくお願いしますっっ!」

「「「(噛んだ……)」」」

 

 

場は温かな空気に包まれて、バレッタの緊張具合も、言葉を噛んでしまった事もあって、何だか楽になっていく。……恥ずかしいのは恥ずかしい様だが。

 

 

「それで、アイザックさん。バレッタさん……彼女の泊まる場所ってもう決まってるんですかね?」

「一応昨晩は私の屋敷で泊っていただきましたが、今後どうするかはまだ決まっておりません」

「なら答えは1つですね!」

 

 

ぱちんっ、と和樹はバレッタに向けてウインクをする。

一良自身も最初から同じ考えだったとは思うが、最後の一押し、と言う事で和樹がリーゼへお願いをする形にした。

 

 

「リーゼ! 俺じゃんじゃん働くからさ? バレッタさんもこっちに泊れる様に計らって貰えないかな?」

「いや、だからカズキは働き過ぎなんだってば! そんな交換条件しなくても大丈夫よ。(どーせ、交換条件を出すんだったら、夜のデート10回とかにしてよね。……後で言ってみようかな?)」

 

 

バレッタに向けてウインクしたのをバッチリみていたリーゼ。

意図は解ってるんだけど、何だか通じ合ってる感じなのが面白くないので、頬を膨らませる流石にデートの部分はバレッタも居るからハッキリと言わないが……後々に言ってみよう! と思うリーゼだった。

 

 

「エイラ。4かいの客室を彼女に使って貰うから、直ぐに用意させて」

「畏まりました」

「マリー、バレッタさんの荷物を4階まで運んできてちょうだい」

「はい!」

 

 

元気よく返事をするマリー。

彼女の力は常人のソレを遥かに超えている~と言うのは彼女を知る者からすれば周知の事実。祝福の力を授かってるのである。………ただ単に食事の味見をする為仕方なかった、と言う理由もあるが。

 

 

「それじゃあ、バレッタさんも色々と疲れてると思うし、カズラが傍に居てあげて。きっとその方がバレッタさんにとっても一番良いでしょ?」

「そうそう! これからも大変だしさ? 英気を養うって意味でも一緒の方が良いと思う!」

「っ――――、は、はぃぃ………」

 

 

顔を再び真っ赤にさせるバレッタ。

あそこまでやらかしてる以上、バレてない訳がない。

和樹も和樹でニヤニヤと笑いつつ―――本心でそれを言っている。

耳元でしっかりとハッキリとバレッタに《頑張って!》と告げたから。

 

勿論、自分自身も頑張らなきゃならない事は多いので……、他人に言ってる暇は無いのだが。

 

 

「はーい! カズキはこっちでーす!」

「うわっ!!」

 

 

バレッタに近付き過ぎ!! とリーゼは和樹を引き寄せた。

 

そして、各々各自、持ち場へと向かうのだった。

 

 

 

「それで~、耳元でなーに話をしてたのかなぁ??」

「あっはっはっは! 以前、バレッタさんと約束しててね」

「約束??」

 

 

頬をぷくっ、と膨らませているリーゼは朗らかに笑い、彼女と約束がある、と言う和樹を見てきょとん、とした。

 

 

「あれ? 以前リーゼにも言わなかったっけ? 一良さんに他のコが引っ付かない様に見てますよ~~! ってヤツだよ。バレッタさんが一良さんをどう見てるか、なんて物凄く解り易かったし。離れて暮らすともなれば、やっぱり気が気じゃなかっただろうからね」

「ふーん……。それで、グリセア村に向かう時、定期的に彼女にも連絡する為に合ってた、と?」

「それもあるけど、シルベストリアさんやニィナさん達との約束とか、後は村の子供、それとノワ達とも会う為もあるかな?」

「ふ~~~~~~ん………」

 

 

和樹が上げる名。

子供を除けば全員が女性である。

ノワ事、ノワールの事、そして同じく村娘と聞いてるニィナ、2人は実際に見た事無いが、シルベストリアはリーゼも知ってる。

文句なしな美人だ。そして、ノワールはあった事無いけど、和樹から美人であると知ってる。ニィナの事は一良に聞いてる。

 

矢継ぎ早に、美人な女の人たちの名が出てくるなんていかがなモノか。

 

 

「ほらほら、そんなふくれっ面にならないの」

「ぷしゅーー」

 

 

えい、と頬を突いてやると、リーゼの口から空気が一気に漏れる。

それが何だか可愛らしくて思わず笑ってしまう。

 

そしてまたリーゼは頬を膨らませる……が、直ぐにそれは萎む。

 

 

「バレッタさんを直ぐ泊めてくれる様に言ってくれたリーゼに対して、お礼したいな。―――また、星空を見に行こう?」

 

 

今さっき、ついさっきまで考えていた事をズバリ先に言われたから。

にこっ、と笑いながら頭を撫でる和樹。見透かされてる、とリーゼは実感した。

 

 

「リーゼ解りやすいからさ! あはははっ」

 

 

楽しそうに笑う和樹。そんな和樹にリーゼは抱き着く。

 

 

「カズキの前だけだもんっ!」

「それは流石にウソでしょ? リーゼ、普段から結構隙見せる事あると思うよ~? 勿論、公務時以外ね。……良い事だと思うよ」

「ぶー……抱き着くのは、カズキの前だけ、って事だもんっ!」

「うわ、後付け感がハンパないってそれ」

 

 

久方ぶりに、少し長く和樹と2人きりでいられる~~ような気がするリーゼ。

普段は侍女であるマリーは勿論、タイミングによってはエイラもいて、一良も居るから、公務時間は中々和樹と2人きりでいられる時間は無い。忙しいし、皆と一緒の時間も当然好きだけど―――やっぱり、2人きりの時間ほど格別なモノはない。

 

でも、今は気になる事を先に聞く。

 

 

「あのバレッタって娘は前に言ってたカズキもカズラもお世話になってた家の娘だったよね? カズラもカズキも凄い凄い連呼してたし。そんなに凄い娘なの?」

「勿論! 今後のイステリア―――アルカディア王国にとっても間違いなく貢献する娘で、頭抜きんでてる、って評価! イステリア(こっち)に来て色んな技術者の人に会ったけど、やっぱり贔屓目なしにバレッタさんが何枚も上手だって思っちゃうかな? 何せあの歳であれだけの事やっちゃってるし」

「ふーん……」

 

 

ここまで手放しに相手を褒める和樹にちょこっとだけ妬けちゃう気もしなくもない……が、バレッタの意中の相手は一良だから。だからこそ、リーゼはそこまで表情に出さずにいられた。これが恋敵~とかだったら、と考えただけでも頭が痛くなってくる。焦燥感もありそう。

 

 

「後は意欲もそうなんだけど、1番は記憶力が半端ない所かな? 彼女自身が図書館みたいになっちゃってると思う」

「え? それってどういう……??」

「以前リーゼに一良さんが持ってきた百科事典の事覚えてる?」

「うん。凄く分厚い本ね。文字は流石に読めないけど、絵が凄くって、あんなの忘れられないよ」

「でしょでしょ? 何とバレッタさん……、何ページに何が載ってる~とか丸暗記出来てるんだよ」

「………………ぇ?」

 

 

あの分厚い本を知っているからこそ……、リーゼは思わず絶句。

冗談の類ではないか? とも思ったが、和樹がそんな事をする意味も理由も無いし、寧ろハードルを上げ過ぎてしまう結果となれば、困るのは彼女だ。

つまり、実際にその場面を見た訳ではないが状況的に考えて――――。

 

 

「天才?」

「うん。天才。瞬間記憶能力って言うのかな? その能力持ちプラス意欲も良し、応用力発想力もよし。非の付け所がありません。唯一あるとしたら――――一良さん関係じゃ、ちょっぴり奥手になっちゃう所かな? 今日はあんな感じでやれたケド、普段は中々進展出来ずに、周囲の皆がヤキモキしちゃう~ってのが日常茶飯事だし」

「聞けば聞く程凄い娘ね。……唯一、私が勝ててるのって、積極的に好きだって言える所だけかもね」

「いやいや、そんな事ないでしょ。リーゼにはリーゼにしか出来ない事、リーゼしか持ってない所があるって」

「ふふふっ。うんっ! ありがと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丁度その頃、一良、バレッタ達はと言うと、アイザックの屋敷へと向かい、到着していた。

さっそく荷物を荷馬車に積む作業に取り掛かり、そんな中バレッタの視界に入ったのはマリーの姿。間違いなく自分より年下で、まだまだ成長途中なのが見てわかる一回り小さな子が、明らかに重そうな木箱を1人で抱え始めている。

 

 

「あの、それは重いので私が運びますから……」

「いえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます!」

 

 

心配するバレッタを他所に、マリーは木箱を抱え上げると、ひょいひょいと軽快な足取りで進んでいく。そのままい荷馬車へと到着し、高低差などものともせずに積み込んでゆく。

 

明らかに、少女の膂力ではない、とバレッタは思い……そして、その答えは直ぐに帰ってきた。

 

 

「あはは……、実はマリーさんは俺や和樹さんの料理担当もしてくれててね。その過程、味見をしちゃって、日本食を食べちゃってたから」

「そ、そうですか」

 

 

あまり、この力を広めたくない……と思うバレッタ。そう思うのは仕方がない。自分の武力としての絶対的な有利性(アドヴァンテージ)は、あの力によるから。でも、依存する事なく、技術を磨いてはいる……が、生粋の兵士、歴戦の猛者たちの域に到達したとは言えない。シルベストリアに稽古をつけて貰っているが、彼女にはまだまだ到底かなわないのだから。

 

技能もあり、力も持った人が、一良の敵に回ったら……と考えただけでも恐ろしいのだ。

勿論、一良・和樹がそんな事はさせないだろうと思うがどうしても……。

 

 

「バレッタさん。ちょっと良いですか?」

「ふぁいっっ!!?」

「ふふふ。そんなに緊張しなくても良いと思うんですけどね。もう大丈夫でしょう?」

「は、はぃ……。本当に、先ほどはお見苦しい所を……」

「いえいえ。私は気にしてませんよ。バレッタさんが来てくれて、本当に心強い。それだけですから」

 

 

一良の本心からの言葉を聞けて、バレッタは心底嬉しかった。もしも、1人だったら跳びはねて跳びはねて、身体全体で喜びを露にしていた事だろう。

天にも昇る~とはこの事だろうか。

 

だが、そんな気持ちは直ぐに引っ込む事になる。

 

 

 

「バレッタさんが来たら、後で話がしたい、って和樹さんが言ってました。……なんでも、ノワールさんから色々と情報を貰ったからその擦り合わせ~との事で。後で、俺も情報共有するつもりですが、何せやる事が多くて」

「!!」

 

 

 

ノワール、つまりオルマシオール。

かの存在からの情報と、自分の持つ情報の擦り合わせ。それを和樹がバレッタに求めている事。

 

それらは、有頂天気味だったバレッタの頭を冷静にさせるのには十分過ぎる。

 

 

「解りました」

「っ」

 

 

真剣な面持ちになったバレッタを見て、一良は一瞬息を呑んだ。

本当に一瞬で、直ぐに笑顔に戻ったから、特に気にする事は無くそのまま話を続けた。

 

 

 

 

そしてその後―――積み荷を再確認する際に、荷台に乗ったバレッタはイステリアに持ち込んだ木箱を手に取る。

 

その木箱の蓋を開けて―――中にある銀色に鈍く輝く長方形の塊を手に取った。

 

 

 

「――――鉄」

 

 

 

それは、青銅よりも強く、鋭く、軽く、安価で、世界を席巻する力を持つ次世代の金属。

オルマシオールの警告、そして和樹と懇意にしているノワールの情報。

 

和樹が自分と話をしたい、と言っている事実。

 

 

それらは、全て1つの解を示している。

 

 

 

 

【バルベールは、製鉄の技術を持ち量産している】

 

 

 

 

鉄を味方につけた文明に対し、現在のアルカディア……青銅しか持たない文明は勝てない。戦えば必ず負ける。

 

でも、唯一の例外があるとすれば、和樹の存在だ。

 

あの超常的な力は、鉄だろうと何だろうと、何なら一良の世界の最高硬度とも言われている超硬合金であったとしても歯牙にもかけないだろう。

光、即ち神を前に、ヒトの手で生み出したモノなど通じる訳がない。

それは和樹の力を目の当たりにしてから、これまでも幾度もその力を目にしてから疑った事は無い。

 

でも、それ以上に………。

 

 

 

「………私達の世界の戦争に、あの人達の手を汚させたくない…………」

 

 

 

確かに以前、自身はゲーム脳と言う言葉で、精神的負担なく攻撃を出来ると聞いた事があるが、和樹は本当は心優しい人間なのだ。和樹は勿論一良もそう。ただ、住む世界が違って、何の因果か解らないが、この世界に来てしまっただけの優しい人達なのだ。

 

そんな優しい手を、何かを生み出し、育み、慈しむあの手で、壊したり、奪ったり、殺したり……そんな事はさせたくない。

 

 

でも、バレッタは知る由もない。

 

もう、和樹はリーゼの求愛に応えると決めてから……、否、それ以上前ジルコニアを助けると宣言した時から、紛争があるならば全面的に協力すると強く決めている事に。

 

 

それが吉と出るか凶と出るか……この時は誰にも解らなかった。

 

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