ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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65話 真夜中の邂逅

 

 

バレッタの荷物は無事アイザックの屋敷からこのナルソン邸へと搬送させた。

超人的な力を有しているマリー&バレッタの力により、簡単に運搬作業は終わったのだが……、仮にも一応男な一良は、如何に侍女とは言え、女性陣だけに力仕事を全て任せきるのはどうか? と思って少しばかり無理を言って手伝った。

 

その結果、想像以上に疲れてしまって、現在バレッタの部屋として用意して貰った4階の部屋で一休み中である。

 

 

「カズラ様。給仕はいかがいたしますか?」

「あ、勝手にやるんで大丈夫ですよ。何かあったら――――ああ、後和樹さんに終わった事を伝えて貰えると助かります。4階にいるので、って事も合わせて」

「畏まりました」

 

 

エイラは、4階の部屋から出ようとした時、丁度扉の先にバレッタが居たのに気付く。

それなりに離れた位置に居たので、扉との顔面衝突~と言った惨事は無さそうだと少なからずほっ……としつつ、表情には出さずに軽く一礼。

 

 

「あ、あの……」

「はい。どうなされました? バレッタ様」

「い、いえ! なんでもありません。失礼いたしました」

 

 

正直、何でもない訳はない……と思ったエイラだったが、深追いする事はせず、ただただ一礼をもう一度して部屋から出た。

凡そは解る。慣れない環境下に来て緊張しているのだろう、と言う所だろうか。

或いは、一良関係で聞きたい事がある・一良と一緒に居られて改めて緊張しているか。

その全てか。

 

 

「(……頑張って下さい)」

 

 

エイラは心の中でバレッタを応援する様に呟いた。

想い人の為に、努力に努力を重ね、ついこの間まで村娘だった彼女がここまでやってきたのは本当に凄い事だと思っている。

それも、一良や和樹の手を借りず、己の力だけで、研鑽と努力の賜物だと。

それを成し得る事が出来たのは、きっと想いの強さなのだと。

 

自分で考えて、自分で顔を赤くさせたエイラは、そそくさとこの場から離れるのだった。

 

 

 

バレッタは、部屋の中に入り、改めて一良と目が合う。

手をひらひら~~とさせてる一良は、表情にこそ出していないが相応に疲れたのだと理解した。

いつものバリンの家、実家であればマッサージの1つや2つ、やってあげようと思うのだが……いつもと違う環境下に居る事と、先ほどのエイラの様にひょっと誰かに見られたら………と思ったら中々に恥ずかしい。

 

 

「さあバレッタさん。どうぞ座って下さい。夕食にしましょう」

「はいっ」

 

 

それでも、一良と共に有れる時間は何よりも代えがたい宝物。

バレッタは心行くまで、その時間を堪能したいと思い、彼の前まで言って席に座った。

 

 

「あ……しまった。マリーさんが屋敷に居なかったから、料理の食材がこっちのものだけになってる」

「カズラさんの食事はマリーさんが用意しているんですか?」

「そうそう。俺だけじゃなくて和樹さんの分もね。2人の専属料理人って感じ。和樹さんの場合はこっちの料理で十分賄えるそうなんですけど、だからって俺と別々にするのもおかしな話なので、合わせてお願いしてます。彼女、凄く料理が上手で助かってますよ」

 

 

マリーの仕事に対する熱量は、それこそバレッタに匹敵すると言っても良いかもしれない。

切っ掛けは間違いなく、和樹が見てくれている事だろう。一良も同じく優しいがそれでもマリーにとって、心を見透かされた様に《大丈夫》と言ってくれた事や頭を撫でてくれた事等が、心に常にある。

出来る事は限られているが、だからこそ出来る事を全身全霊で行う。と言う訳で、料理は様々なバリエーション豊かに仕上げてくれる様にまで腕を上げた。

 

 

「そうなんですか……。あ、あの、もしよろしければ私にもカズラさんの食事を、お2人の食事を作らせてもらえませんか?」

「え、良いんですか!?」

「はい。包丁は毎日使っていたくて。腕が鈍ったら困りますし」

「うわー、嬉しいな! 正直、和樹さんには嫉妬してたんですよ。和樹さんはあっという間にグリセア村にまで戻れるので、バレッタさんの料理を堪能できた、と聞いてたので。……俺は、そうはいきませんからね~~。じゃあ、後でマリーさんに言っておきますね!」

「ふふふ。はい。お願いします!」

 

 

和樹がグリセア村に滞在していた時……最近で言えば、シルベストリアやバレッタと訓練をしていた頃だろうか。

確かに、国の為、村の為、頑張ってくれている和樹の為に、料理を振舞っていた。バレッタが特に嬉しい、と感じたのは自身の料理に対して嫉妬までしてくれた事に尽きるだろう。

 

和樹も素敵で素晴らしい正しく神様の様な人だけれど、バレッタの意中の相手は目の前の一良。もう後がなく、滅亡してもおかしくないあの現状を救ってくれた一良に夢中なのだ。

 

その辺は和樹も重々解っている。と言うよりメチャクチャ応援してくれてるので、心置きなく~なのである。

そう言った面もあってか、和樹の事はとても頼りになるお兄さんの様に思えてきたりもしているのだ。

バレッタには兄弟姉妹はいない。敢えて言うなら、村の子供たちが自分とっての妹や弟なのかもしれないが、兄はいない。……少し、それにも憧れていたから。

 

 

「一応、ジルコニアさんの計らいでマリーさんは和樹さんの庇護下に入ってる~って話にもうなってますが、表向きは専属料理人兼侍女でもあるので、仕事の1つを全部バレッタさんが取っちゃったら、立場とか色々と面倒なりそうなんですよ。だから、一緒に料理、若しくは替わりばんこ、って形が最適だと思いますが」

「そうですね。解りました。私もマリーさんと相談してみます。カズラさん、楽しみにしていてくださいね」

「それはもうっ! 話を聞くたびに羨ま~~って思ってましたから。凄く期待してます」

「はいっ!」

 

 

本当に嬉しい。

全てが報われたと言っても過言ではない。

勿論、託ける訳はないし、これからも全身全霊一良の為に頑張る所存ではあるが、この瞬間、この一瞬だけでも、その甘美な夢に身を委ねたい……そう思って、目頭が熱く、目尻に涙を溜めていたバレッタだったのだが………。

 

 

「一良さーん。来ました―――………よ?」

 

 

ガチャリ、とノックを忘れて中へと入ってしまった人がいた。

無論、その人は別にノックをしなくても、誰も咎めないし、誰もしなかった事が悪いとも思わないのだが……。

 

 

「あ、和樹さん。お疲れ様です!」

「………えと、何で呼んだんですかね? 何か仕事が……?」

 

 

勿論、やってきたのは光の神(笑)事、和樹である。

朗らかに楽しそうに、泣笑い、笑顔を見せているバレッタと、同じく笑顔な一良。

2人が備え付けられているテーブルに向き合って、さあ今からディナー! と2人でしゃれこむ場面。

バレッタと目が合った。迷惑そうな~残念そうな~と言った類の表情はしてない。普通に笑顔で会釈をしてくれているが、それでも……どう見ても、どう考えても、この場に置いて自分は異物? ではないか。いや、お邪魔虫か? と思ってしまう。

 

 

「先日、ノワさんと話をして、またバレッタさんとすり合わせしたい、って言ってたじゃないですか。丁度荷物搬入も一段落着いたので、エイラさんに呼んでもらったんで――――」

 

 

と、一良が言っているが、和樹はメチャクチャジト目だ。

 

 

「一良さん」

「は、はい!?」

 

 

笑っていた一良だったが、ジト目な和樹を見て思わず背筋を伸ばした。

そして、和樹はその目のままで、ハッキリと告げる。

 

 

「空気読んでくださいよ!! 何でですか!? なんでこのタイミングで俺、呼ばれちゃうんですか!?」

「ええええ!!?」

「どー考えても、2人きりの蜜月じゃないですか! オレ、そんな中に突入とかデリカシーがヤバいじゃないですかっ! もうっっ」

「ッ……あ、いや、その………(……た、確かに。ちょっと考えが足らなかった……)」

 

 

一良は一良で、当然バレッタに敢えて嬉しいし、ごはんもとても楽しみだ。

でも、一良の嬉しいとバレッタの嬉しいは、まだまだその種類が違う。

和樹がリーゼの想いを汲むようになったので、一良もそれなりにバレッタの事を考えている様な気がしたのだが……、やはりまだまだな様だ。

 

 

確か……以前は夜中にバリンの家に帰って、抱き合ってる? 2人を見た気がする……。

こう言うお邪魔虫キャラは嫌だ、とあの時同様に和樹はくるりと踵を返した。

 

 

「と言う訳で、お2人でどうぞごゆっくりです~~~」

 

 

そそそそ……と、帰ろうとした和樹だったが。

 

 

「カズキさんっ!? まって、待ってください! 私は大丈夫ですのでっっ!! カズキさんともお話したいですからっっ!!」

「ぅぅ…………でも」

 

 

 

バレッタに気を遣わせてしまう事になってしまった。

待って、と言われてるのに、さっさと出ていく事も中々難しい。

光になって即退散! も出来なくはないが、この時間帯は屋敷内でも人が多い。和樹の本当の正体を知らない者も一定数いるので、バレる訳にはいかない。

仕方ないので、踵を返していた身体を元に戻して一良の方へ。

 

 

「……ほんと、頼みますよ?」

「………は、反省します」

「ほ、本当に大丈夫ですから!」

 

 

その後も暫くの間、叱る和樹と項垂れる一良、そしてそんな2人をバレッタがフォローに回ると言うおかしな時間が流れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある程度言った後はもう取り合えず忘れる事にして、話題を変える。

 

 

「今日のメニューは日本食入ってないんですよね? オレ、前に貰った蜜柑の缶詰、今持ってますよ?」

「わ、凄くありがたい! 流石に食べずに日本食~は、これ作ってくれた人に申し訳ないし、間違いなく腹持ち良いし!」

「それなら、私からはこちらを。家にあった桃缶です。30個くらいはありますので」

 

 

蜜柑と桃の缶詰。バレッタが好みなのは桃。因みに、一良と間接キスをした事が有ったので……それも加わって世界で一番好きな食べ物候補になっているのだ。―――と言うのはバレッタだけの秘密である。

 

 

「あはははは。バレッタさんは本当に桃缶好きですよね。そう言えば、空き缶とか大丈夫ですか? 溜まってたら日本に持って帰りますけど」

「それは大丈夫ですよ。裏の空き家に纏めて置いてあります。使い道も色々と会って便利なので」

「成る程成る程……、こっちにとってはただのゴミだったとしても、バレッタさんの手に掛かればなんにでも化けそうだよね」

「えへへへ」

 

 

因みに、桃の缶詰を何に使うのかは追及していない。

一良も特に気にする様子も無いので、和樹から何かを言うつもりも無いのだ。バレッタの口から伝えられるのが一番だと思っているから。

 

 

 

 

 

 

その後、食事も終えて時間を忘れて談笑を楽しんだ。

色々な話をして、話題はグリセア村の事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「和樹さんに色々聞いてますけど、バレッタさんの方から見てどうです? 村の人と駐屯部隊の人たちは上手くやってますか?」

「はい、皆さん凄く良い人たちなので、直ぐに打ち解けて仲良くしてくれてます。最近じゃ、村の外で畑も作り始めてて、水路の脇が豆畑になってるんですよ」

「おぉ……、それは知らなかった。畑の規模も着々と広がって言ってるんですね。……でも、楽しそうにしている姿は目に浮かびます」

 

 

駐屯部隊の近衛兵たちは皆が現役———ではあるが、もう全盛期は過ぎた50歳代で構成されている。いわば予備役だ。戦争が起きた時は己が命を振るい戦う所存ではあるし、その心構えも勿論あるのはある……が、それでものどかな村に来て、子供たちが燥いで、田畑の仕事をして、程よく身体を動かせて楽しんでいるのを和樹は何度も目撃している。(豆畑は知らなかったが)

 

 

「シルベストリアさんは元気ですか?」

「それはもちろん! ここに来る直前まで、稽古をつけてくださいました。離れる時もとても悲しんでくださって、それでも背を押してくださって、本当に素敵な方です」

「確かアイザックさんの従姉妹でしたね。人柄優先で頼んだ結果、最高の評価を得られるなんて、嬉しい限りです。後でアイザックさんにも伝えておかないと……」

 

 

シルベストリアを選出したのはアイザックだ。

村を護る為に腕が立ち、尚且つ人柄も考慮する。寧ろ後者が重要だ。

村にはまだまだ子供たちは多いし、甘えたい盛り。一良と違い、何度も足を運んでる和樹でさえ、グリセア村から出る時は本当に悲しそうな顔をするから。

子供たちに囲まれて、村人の皆とも自然と談笑し、それでいて村を守ってくれる。

物凄く厳しい選出だと思っていたのだが……。

 

 

「俺からも最高点ですよ。シルベストリアさん、やってきてから直ぐ村の皆と打ち解けて、今じゃ『シア姉ちゃん!』って親しまれてますから。……それに、()って面でもしっかりしてて頼もしいです」

「おおお、和樹さんからも加点を! こりゃ、臨時ボーナスが出ても―――って、しつけ?」

 

 

少々気になるワードが出たので、一良は和樹に聞き直した。

シルベストリアの人柄はアイザックから色々と聞いている。

バレッタや和樹が言う様に、皆に優しく親しまれて、それでいて躾まで……。

 

でも、色々とアイザックから聞いている事もあるので、少々気になった。

そう、ぼこぼこ(・・・・)にした……と。

 

 

「あ~~。うん。アレは仕方ないですよ。ちょっと、バレッタさんとシルベストリアさんの2人と訓練して終わった時、何やらこっそりシルベストリアさんの天幕に忍び込んでた子達がいたんで………、そこで遊んでたんです」

「ああ~~、まぁ子供なら忍び込んでって言うのも仕方な――――」

「それも剣を使って」

「――――くないね。刃物は駄目」

 

 

結果、烈火の如く りつけるシルベストリア。

まさに鬼軍曹……いや、子供たちにとっては鬼教師の誕生である。

 

大きな声を出すでもなく、手を挙げる訳でもなく……ただ、表情が消えた? いやいや、黒いオーラが出てる?? 感じな表情で、子供たちをぐい、っと持ち上げると至近距離からじぃぃぃぃっと見て。

 

 

【勝手に入ってきて、剣は凄く危ない物なのに、それ使って遊んでたのは君か? ん??】

 

 

と。

とてつもない剣幕だった。

遊んでいた張本人は、漏れなく速攻で失禁。

場に居た子供たちも同罪だったので、皆身体中が震えあがった。

普段優しいお姉さんなんだけど、怒らせるのは駄目!! と子供たちの間で暗黙の了解が生まれたのは言うまでもない。

 

 

……でも、誰一人、意味なくシルベストリアを怖がったりする子はいなかった。

本気で、自分達の為に怒ってくれている。親の様に怒ってくれている、と言うのが伝わったから。

 

 

「あはは……、剣を振るう事自体は、あの子達でも十分出来るくらいの力があるので、余計に危なくならない様に、シルベストリア様の方でしっかりと叱って下さいまして……」

「確か子供が剣振るった時に彼女の前髪に触れた~って言ってたよね? 刃が目の前を通ったらって考えるだけでもゾっとするのに、シルベストリアさんは瞬きすらせず、速攻で説教に入ったから、やっぱり肝が違うって言うかなんて言うか~」

「……壮絶だったんですねぇ……」

 

 

訓練を受けた方が良いのでは? とちょこっと思ったりしなかったりする一良だったが、何だか意欲がそがれた気分になったのは何故だろう?

優しそうな人に教えて貰えれば~と思っていたのに、優しそうな……実際、優しいジルコニアは、鬼の様に強く恐れられているし、シルベストリアも聞く感じじゃ、とんでもなく怖い事は容易に想像がつく。

 

だから、仕方ない。そう、仕方ないのだ。

 

 

「はい! ですから、私はこれからもしっかりと訓練を重ねて、シルベストリア様に近付ける様に頑張りますよ! それで、カズラさんの事、守ってあげますね!」

「お、おぉう……ありがたい……のですが、立場が普通逆って言うか……やっぱり情けないですねぇ」

「そ、そんな事ないですよ! 私は、私達はカズラさんに守って貰えたから今があるんですっ!」

「ですです。そこはバレッタさんに激しく同意! オレがこっちに来るのはもう持ち直した時だったでしょ? ……話にしか聞いてませんが、あの場であの村を助ける事が出来る人って、一良さんしかいないですよ」

「あはははは。ありがとうございます」

 

 

バレッタと和樹の2人にフォローをして貰った。

確かに適材適所、自分の出来る事を全力でするだけ~と言い聞かせてる部分はあったが、それでもやっぱり男だから、ちょっぴり情けない気分になってしまうのは最早仕方がない。

本心から言ってるのではなく、ちょっぴり。

 

だって、こうやって2人はただ言い繕ってるだけでなく、着飾ってる訳でもなく、本心からそう思ってくれる、言ってくれていると解るから。

 

……それと、やっぱり和樹はピカピカな力、バレッタ達は日本食からのパワーアップの恩恵があるので、ある意味割り切れてる、とも言える。

自分にはそう言う能力も体質も無いから仕方がない、と。その代わりの40億円なのだ。

 

 

「それと確かバレッタさんは医術も学んだそうですよね? 何を学んだんです?」

「基本的には本の丸暗記ですけど、山で捕まえた動物を使って解剖や手術もしてみました。流石に人間では試した事が無いので、今度街のお医者さんに習いに行かないと、ですね」

「か、解剖に手術……おおお、想像以上に凄いワードが飛んできた……」

「同じく……、それ初耳です……」

「ふふふ。ビックリさせたくて、実は村に来てたカズキさんにも内緒だったんですよ」

 

 

まごうことなき天才。超天才だ。

簡単に言っている様だが、医学が、医術が、手術や解剖が……そんなサラッと出来る訳がない。テキトーにやってる訳じゃないのも、バレッタの人なりを見てたら解る。聞きかじった知識だけでなく動物を使った実践もしてると言う。

 

何度でも言おう。まごうことなき、天才である。

 

 

「凄く大変でしたが、何とか形になってきてますね。最初は止血用の道具、鉗子(かんし)とか全然足らなくて、あの子達には悪い事しちゃったな……って」

「医学の発展って、日本でも様々な犠牲の元で成り立ってる、って言うからね。命をぞんざいにする訳ないバレッタさんなら大丈夫。しっかり供養してると思うし、後々の人たちも助ける事になるから、胸を張っていれば良いと思うよ」

「うんうん。それは当然同感~~なんだけど、生きたまま手術とかしたって言うなら、動物たちは大丈夫だったの? 暴れたりしなかった?」

 

 

バレッタは2人に対して頭を下げた後、一良の質問に答える。

 

 

「あ、それは大丈夫でしたよ。麻酔を使ったので」

「……おぉう、今度は麻酔が出ましたよ。麻酔」

「もう驚かないぞー! って思ってたのに。ホントに麻酔使ったの?」

「はい。そうですよ」

 

 

どうやら本当らしい。

バレッタが言うのだから当然だ! と思っちゃってる。

 

 

「精油のカモミールの現役をしみ込ませた布を、たっぷりと嗅がせて、手術に使った部屋にはラベンダーを焚いておいたんです。半ば意識を混濁させる事が出来たみたいで、殆ど暴れたりはしなかったですよ。私も、リラックスして執刀ができたので、とても助かりました」

 

 

確かに、カモミールには鎮静・鎮痛作用があるので、バレッタの言う様な効力がある――――とは思うが、当然、現代日本で、純日本人にそれは通用しない。痛みの許容が速攻で超えて大絶叫だ。

 

 

「日本製フルコンボ! 効力頼りになっちゃうけど凄い! ……ですけど、それ私には効かなそうですね……」

「勿論、こちらも」

「いやいや、和樹さんはそもそも刃が通らないから、ケガとかしようがないんじゃないです?」

 

 

刃を入れようとしても、光な身体は透き通るだけだろう。と、軽くツッコミを入れた後、バレッタがニコリと笑いながら続ける。

 

 

「カズキさんは確かに難しいですね。効力を確かめるにしても、どうにか身体に刃を入れて視ないと……。カズラさんの場合は、タオルでも噛んで我慢してもらう事になりそうです」

「実験で、身体にメス入れるのは嫌だな~」

「………タオルで我慢……それ、痛みでショック死するヤツです」

 

 

物理攻撃無効になって久しい。

本当な意味での痛覚も無くなって久しい。

ある意味、バレッタの言う様な実験に興味がない訳でもないが……口に出してする事を聞いてみると、やっぱり嫌だ。

 

一良も当然、色々と想像してみたら、思わず見悶えた。

残虐な映画のワンシーンになる事間違いなしだと思ったから。

 

 

 

 

 

更に更に時間は経過し―――もう時間的には深夜帯。

 

 

 

「あ! 楽し過ぎて忘れる所でした。和樹さんが以前言ってたノワさんとバレッタさんの情報の擦り合わせについて~はどうです? 今しておきます??」

「ッ―――――!!」

「ん」

 

 

 

でも、就寝を忘れて話は弾む―――のだが、少々この話題に関しては話が違った。

バレッタの様子があからさまに変わったのだ。それに気付いたのは和樹だけだろう。一良は、和樹の方を見ていたから、バレッタの変化に気付けなかった様だ。

 

 

だからこそ、和樹は――――。

 

 

「以前、一良さんにはバレッタさんと会ったら~って話ましたけど、やっぱりノワも交えての方が良いかな? って思ったんですよね」

「ノワールさんも一緒で?」

「はい。……まぁ、あの悪戯っ娘がこっちに来るってなったら、周囲を眠らせないと難しいらしいんで、中々にタイミングが難しいですが、また聞きよりそっちの方が良い。……バレッタさんの様に記憶力抜群! ってわけじゃないので……。ノワも俺の方から言えばきっと会いに来ると思います」

 

 

苦笑いをしながら頭を掻く和樹。

そんな和樹を見たバレッタは、意図を察したのか。

 

 

「わ、私はそんな大した事をしてませんよ!?」

「えっと、百科事典のページ数とその内容を全部覚えてるんですよね?」

「………はい。でも、写真と同じなんですよ? 見たものを写真に撮っておいて、頭の中に置いておく―――みたいな感じです!」

「……そんな不可能な事を力説されましても、それバレッタさんしかできませんから。ええ、絶対に」

「そ、そうですか……? そうなの、かなぁ……」

 

 

上手く話題をすり替える事が出来て取り合えずほっとする。

 

話すタイミングを、本人もうかがっているのだろう。……そして、一良にそれを話しても良いか否かも。

 

 

「そ、それより! カズラさんの方は何か変わった事はありませんでしたか? 私、なんでも力になりたいんですっ」

「うぅ~~ん……そうですね。あ、1つ。いや2つかな? 相談したい事がありまして。いすてリアに掘ってる井戸の事で――――」

 

 

 

 

 

 

その後も、バレッタに質問・相談する事で天才の知識量を遺憾なく発揮させてもらってあっという間に解決策まで出してくれた。

井戸に対しても、地中にコップを入れて水滴があるかどうかで確認をする、と言う思いもしなかった提案をされて、光明が見えた。掘った穴をそのままにするわけにはいかず、かと言って埋めてしまうのももうちょっとで水源があるかも? と思えば躊躇ってしまう。

 

当の本人は、聞きかじっただけの知識~と謙遜していたが、間違いなくバレッタのおかげで最適な対応をする事が出来るので、終始2人は脱帽だったのである。

 

 

 

そして、驚いたのはその直ぐ後だ。

 

 

「こんばんは! カズキ様っ! 皆さまっ!」

「うわっっっ!!??」

 

 

音もなく、扉を開いた気配も微塵も無かった筈———なのに、いつの間にか部屋の中に入ってきていた黒い影。

 

 

「ええええ!?」

「………ぁ、ぁあ、だ、だれ……っ!?」

 

 

一良は呆気にとられ、バレッタは、いつの間にか異様に重たくなってしまっている身体をどうにか起こして臨戦態勢に入る。

 

一良を護る! と豪語したその宣言を証明する為に。確かに驚いた。物凄く驚いた。和樹さえ気付かないと言うのに、突然現れた事に。

 

 

「すみません、すみません。驚かせるつもりは無かったんです。前回、カズキ様が戻ってきた時に会えなかったのが残念で仕様が無かったのですが……、今回、私の事を呼んでくれた様なので、嬉しくて駆けつけてきちゃいました!」

「…………背後に突然現れて、突然声をかけてきて、驚かせるつもりはない! は、もう無理だよノワ(・・)。つーか、このやり取りもう何回すんのよ!」

「えへへ~……すみません、カズキ様っ。会えるのが本当に嬉しくて―――。リーゼって娘の事だけじゃなくて、私の事も構ってほしくて……」

「もう。少なくとも俺以外の他の人には加減してあげてよ? 下手したら即倒モノだよ。間違いなく」

 

 

和樹は驚きの声を上げていた……が、比較的直ぐに平常に戻っていた。

もう何回もやられているこれに、今回反応が遅れてしまったのはいつもは森の中での事なのに、まさかイステールに、この屋敷の中にまでやってくるとは思いもしなかったからだ。

 

 

そして、一良とバレッタにとっては何気に初の邂逅でもあったりする。

 

 

 

 

「改めまして、私はノワール。カズキ様より命名して頂きましたウリボウです!」

 

 

 

 

 

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