ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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明けましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします!!


67話 鉄の大鉱脈

「剣術歴は何年程ですか?」

「えっと、基礎を習ったのがだいたい3カ月半くらい前です。きちんと1対1で習い始めたのは1カ月半くらい前です」

「なるほど……、因みにその相手とは? シルベストリア様……ですよね?」

 

 

何やら探りを入れているのが解る。流石のバレッタも解った。

リーゼと2人きり。相手は領主の娘で方や平民農民な自分。比べたら天地程の差があるこの身分の違いに緊張やら恐怖やらで押しつぶされそうになっていたが、その辺りはハッキリと解った。

ある意味似た者同士だから。

お互いに神様(・・)と————なのだから。

 

緊張で顔を固くさせていたバレッタだったが、この時ばかりは頬を少し緩める。

和樹が自分に言ってくれた様に、一良が余所見をしないように気にかけてくれていた様に……自分もそっち方面で恩返しをしても良いのかもしれない、と思い始めた。

 

ただ、グリセア村でもニィナをはじめ、和樹はかなりの人気だから少々複雑な面もあるが、彼女らは自分と違い大人だ。ある程度割り切ったり、言い方は悪いが所謂遊んで(・・・)くれたり……と色々考えて世渡り上手で過ごしそうな気がしなくもない。

 

 

「? バレッタさん?」

「っっ、あ、そのはい! シルベストリア様から指導を賜ってます。後、時折グリセア村へ帰ってきてくれるカズキさんにも」

「そうですか。……やはり、そうですか」

 

 

リーゼは少し視線を細くさせていた……が、バレッタは慌てて両手を振って弁明に走る。

 

 

「あ、あの! カズキさんとは何もありませんから! えと、その、わ、私は………か、カズラさんが………」

 

 

和樹とは何もない。

一良と! と力いっぱい力説しようとしたのだが、自分が何を言おうとしているのか改めて自覚した途端にバレッタは顔を真っ赤にさせた。湯気が頭から出てきそうな勢いで赤くさせて、思わず俯かせる。

それを見たリーゼは、一瞬だけ目を丸くする———が、直ぐにクスクス、と口元に手を当てて朗らかに笑う。

 

 

「ふふふ。そうですか。そうですよね。カズラからバレッタさんの事は聞いてますよ。勿論、カズキからも。……お2人の事を祝福する、と。他の誰かに寄られない様に、と言ってましたね」

「あ、ぅ…………」

 

 

ぼんっ……と小さく音を立てて? 湯気を実際にだしてしまったバレッタ。

ここまでぶっちゃけたのだ。リーゼも変な勘ぐりや探りは止めてこれからの事に集中する事にした。

 

 

「すみません。話が逸れてしまいましたね。えっと、バレッタさん。今後は気が向いた時でいいですから、私の相手をしてくれませんか?」

「えっ!」

 

 

バレッタは先ほどまで俯かせていたのだが、リーゼの声を聴いて思わず驚いた。

剣の相手なら和樹が居る筈では? と思ってしまったからだ。勿論、和樹の剣術指導は、その剣術道場? は毎日大盛況で身分問わずに夜になると人が集まるで有名らしい。リーゼとの2人の時間が取れない、と言う意味なのだろうか、と少しだけ考えてしまうが……それを本人に確認する事は流石に出来ない。

 

 

「毎日、とは言いませんから。どうでしょう?」

「は、はい! 私で宜しければ!」

「そんなに硬くならないでください。気楽に、で構いませんよ。……私達は似た者同士じゃありませんか」

 

 

リーゼはそう言って笑った。

バレッタは逆に困惑気味に小首を傾げた。

 

 

「似た者同士、ですか?」

 

 

相手は貴族。大貴族だ。先ほども思ったが自分は村長の娘とはいえ、小さな村の長。身分で言えば圧倒的に下だから。

でも、似ている———と言われたら……。

 

 

「互いの想い人……愛する人は神様である。これ以上無く似た境地である——。そう思いませんか?」

「ぁ………」

 

 

そう、そこに帰結する。

紛れもなく似た者同士だ。

だからこそ、顔を赤くさせた。

 

 

「剣術以外にもバレッタさんとは沢山お話をしたいですね。楽しみです」

「あ、えと……はいっ!」

 

 

剣術の訓練が始まる前から良い関係を築けそうだ。とリーゼもバレッタもお互いがそう思い始めた。

もしも、想い人が同じだったなら……ちょっぴり力が入ってしまいそうだ。それに、リーゼなら意地悪な事を想わず言ってしまいそうな気もする。

それこそ、身分を利用して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーゼが受けでバレッタが攻めで訓練は始まる。

左手を腰に当てて、盾を使わないバレッタに対し、リーゼは盾を使用したスタイル。

 

 

「あの、防具は……」

「ふふ。ありがとう。無くても平気ですよ。ちゃんと受けれます。それに、ケガなんかする訳にはいかないので、しっかりやりますよ? カズキに心配かけちゃうのは嫌なので」

「! ———では、私も同じですね。受けの時、リーゼ様に習って想う様に致します」

「ですね。本番(・・)で傷1つでもついていたら、良き思い出にならないかもしれませんから」

「?? ほんばん??」

 

 

本番の意味をいまいち理解してないバレッタはよく解ってないままに剣を構えて打ち始めた。

リーゼも、意味深に、しったげに本番~等と口にしたが……、詳しく聞かれても正直詳細をハッキリ伝える事は出来ない、と思っているのである意味バレッタが解ってなくて良かったと内心ホッとしていたりもする。

 

 

「うん。やっぱりバレッタさんもカズキから剣を習ってるんですね。攻め方が似ています。基本の中に彼のスタイルを模倣させ、自分の中で昇華させている。流石です」

「あ、いや……それ程までは。……でも、私は強くならなければならないので。カズキ様には大変感謝をしております」

「強く——ですか?」

「はい」

 

 

バレッタの握る剣に力が籠った気がした。

 

 

「私は、カズラさんを守れるくらい強くなりたいのです。……カズラさんの役に立てるように、なりたいのです」

「――――――」

 

 

一良は確かに体力も少なく、時折の誘いにも載らない専ら頭脳専門な所がある。

そこを和樹が余りある超絶な能力で補っているので、あの2人は2人揃って最強神である、とも思っていた。

だが、確かに一良単体で見てみると———バレッタの言う通りだ。守らなければならない。

 

例えば、戦争。

 

敵国(バルベール)が攻めてきたとなれば………和樹は兎も角、一良は生身だ。何があってもおかしくないから。

 

 

「バレッタさんは凄いですね。……カズラも幸せ者だと思います。こんなに想ってくれる恋人がいるんですから」

「」! え、えっと——……その、じ、実はまだ恋人、ではなくて………」

「あれ? そうなのですか? っとと、バレッタさん。会話を挟んでいたとしても、相手と対峙する時は目を見ないと駄目ですよ。部位を見て打ち込む癖もやや出てます。それは攻撃をする際に隙となりますし、相手に動きを読まれてしまいかねません」

「あっ! はい! すみません!」

 

 

一良との関係を改めて第三者に———それも同姓であるリーゼに言われて、少し乱れてしまった様だ。勿論、リーゼのせいになんかしたりはしない。

これはシルベストリアと1対1で訓練をして貰っていた時にも何度か指摘され、注意されていた悪癖だから。

一良を護る、護れる様になるためにと克服したつもりになっていたが……、これは何の言い訳も出来ない。

敵は聖人君子の類ではないのだから。

弱い所を、隙をいつでも狙ってくる様な相手なのだから。

 

 

「私は、カズキの事が好きになりました。初めてカズラとカズキの2人に合って———色々経て、カズキの事を想う様になりました。事前にそれとなくバレッタさんの事は聞いてましたので、……まぁ、カズキを狙った(・・・)。と思われて間違いないです」

 

 

もしも、和樹がおらず一良だけだったとしたら、リーゼは間違いなく一良に狙いを定め———そして、この国を救ってくれる事と、あの人柄も相合わさってきっと好きになっていただろう……と、この時バレッタはリーゼの話を聞いて連想させてしまった。心底安堵をしてしまった。

 

 

「でも、カズキは中々受け入れてくれませんでした。……当然です。彼は神様、なのですから。……光なのですから」

 

 

リーゼは、この訓練の時視線は必ず外していない。しっかりとバレッタを見据えて隙を一切出さずに、対峙し続けている。でも、雰囲気は何処か遠くを見ている様でもあった。

 

 

「私も、解ります。リーゼ様の想いが」

「ですよね? ……私は生半可な気持ちでカズキを好きになったんじゃない。心からカズキの事を、メルエム様の事を愛する様になった。彼が嫌悪し拒絶しない限りは諦めなかったんです。……それで」

 

 

次の瞬間、リーゼの目に光が宿った。そんな気がした。

徐々に剣と盾がぶつかる音の間隔が短くなっていっている中で、バレッタはハッキリとそれを見た。

 

 

「バレッタさん。―――女は、攻め有るのみ、ですよ」

 

 

リーゼはバレッタから突き出された攻撃を自らの剣で上から叩きつけた。

じん————と痺れる手に、リーゼの想いを受け取った気がした。

 

 

「……やはり、そうですよね」

「ええ。その通りです。攻めて攻めて攻めた結果———和樹は私を受け入れてくれたのですから」

 

 

汗が額を流れ、ニコッと笑顔を見せた途端にまるで空気中に散らばる。それはまるで宝石の様だった。

想いが成就した時……自分も此処まで喜ぶ事がきっと出来るだろう。リーゼの様に……。自分に足りないモノがあるとするなら、それは勇気だけだ。……その勇気が一番大変で、最凶の相手なのだが……。

 

 

「それにしても、今のよく剣を手放さなかったですね。ビックリしました」

 

 

リーゼは笑顔7割、驚き3割な顔つきになる。

同姓に、言うなら侍女のエイラ以外にここまで話した事は無かったのである程度興奮していた所が有ったのだろう。正直、バレッタの握力の強さに舌を巻いたのである。

 

 

 

『おーい!』

 

 

 

そんな時だ。

聞き覚えのある声が聞こえてきたのは。

 

 

「リーゼにバレッタさん。そろそろ、和樹式剣術道場に空きが出ましたよーー」

「あれ? カズキ。私とバレッタさんが一緒に訓練してるの知ってたの?」

「うん? ああ、エイラさんから聞いたんだ。今日の早朝訓練は珍しく人数が少なめだったしさ。早めに終わったから伝えにこようかな? って思って。………ん~2人の方が良かった、かな? コレ」

 

 

ちょっと、空気読まなかった? タイミング悪かった? と和樹はバツが悪そうな顔をしているのだが、バレッタは首を横に振った。

 

 

「とんでもないです! カズキさんに指導をして貰えるのって中々ない事なので」

「そうそう。……ふふ。バレッタさん。私の喋り方、こっちが素ですから。こっちの話し方も慣れて貰えると嬉しいです。ゆくゆくは、バレッタさんとこう言う感じでお話をしたいですから」

「!!」

 

 

和樹が来た事で先ほどまで丁寧に敬語を使っていたリーゼだったが一瞬で砕けた。それに別にバレッタは驚いてはいなかった……が、まさか自分に求められる~とは流石に思わなかったので。

 

 

「ほら。似た者同士。色々と助け合える事があるかな、と」

「ぁ……、な、なるほどです」

「ん? 似た者同士? なんのこと?」

 

 

和樹には解らない事だ。

当然だ。

でも、それでいい、それがいいんだ、とリーゼは軽く笑って舌を出す。

 

 

「カズキには内緒の女同士の秘密の話ですー。知りたいなんてデリカシー無いと思うゾ」

「いやいや、ムリに聞こうとしません、って。アンタッチャブルですやん」

 

 

わざとらしく肩をすくめてみせる和樹。

そんな2人を見てバレッタは益々笑顔になる。

 

 

 

ああ—————イステリアは安泰だ。アルカディア王国は間違いなく安泰だ。

 

 

 

2人を見て、愛する者同士を見てそう思う。

 

 

 

——早く、私もカズラさんと……。

 

 

 

そして、リーゼに言われた通り、自分も後に続くんだ、と心に強く秘めるのだった。

秘める~だから迅速に行動できる訳じゃないのは……もう仕方ない、のである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、汗を水で流し朝食を取る。

今の今まで、色々と話をしていた事もあって、バレッタは正直一良と顔を合わせると顔から火が出そうな勢いで熱く赤くなってしまうのだが……当の一良はと言うと、この場に居るナルソンやジルコニア、リーゼ達。領内のトップが居るから緊張しているのだろう、と思うに留まり、自分の事で色々あったなど露とも思って無かったりする。

バレッタはヘタレ~と周りからよく言われているが、一良も一良で結構な鈍感さんなので、これは頑張らなければならないだろ、と違った意味でバレッタは力を入れた。……勇気を決める、作る猶予が増えたと思えば………と良い風に考える様にしている。

 

それもこれも、和樹が一良にはバレッタの陰あり! と皆を牽制してくれているおかげだ、と改めて感謝の念を持ったりもしていた。

 

 

そんなこんなで色々と悶々としていた所で早速始まった。

 

 

「今日から、彼女にも仕事に加わって貰おうかと。それで職人の取り纏めと機具の開発指導を中心に手伝って貰うと思ってます」

「開発指導ですか。彼女は設計が出来るのですか?」

 

 

バレッタを見やりながら問うジルコニア。彼女もバレッタの様子は緊張からくるものである、と結論しており、変な邪推はせずにただただ疑問に思った事は全て聞く様にしている。ある程度の報告は受けているが、他の誰でもない、一良・和樹の2人からの説明が何よりも重要。だから、納得するまで聞くのが良いと判断したのである。

 

 

「はい、できますよ。図面も引けますし、製材機を再設計した実績もあります」

「更に、次にグリセア村に行けばよりその凄まじさが解ると思いますよ。―――論より証拠、とはまさにあの事ですから。文句なし100点満点、120点だってあげちゃえる天才です」

 

 

2人してバレッタの事を褒める。

なので、違う意味でまた顔を赤く染め上げるバレッタは慌てて言った。

 

 

「ええっ!? そ、そんな事ないですよ! まだまだお二方には教えて貰わないといけない事ばかりですし……」

「いやいや、本当のことじゃないですか。仕事の方は無理そうだったら考えるので、とりあえずやってみて貰えませんか?」

「グリセア村をあそこまで魔改造しちゃったバレッタさんですよ。大丈夫大丈夫! 自分をもっと信じてあげてください」

「ぁぅ……、わ、わかりました」

 

 

2人からの絶大な信頼は非常に嬉しい———けども、やっぱり自信を持つ事が中々に難しい。最初の仕事と言う事もあって中々ハードルが高い。

 

でも、一良に想いを告げて、結ばれる為の行動の難しさ、勇気に比べたら何でもない! と最終的には勢いで頷いた。

 

 

「それじゃあ、職人の取り纏めって言うと私に付いて貰う事で良いのかな? その方が効率的だし」

「うん、リーゼが適任かな? 間に挟んだり別の所でやるより断然早いし」

「えっと————うん。違いないね。オレも同感。リーゼに任せたい」

「やった! 頑張るね。じゃあ、バレッタさんも一緒に頑張りましょう」

「はい!」

 

 

和やかな雰囲気のまま、続けて一良はバレッタから受け取っていた図面をテーブルに広げた。

 

 

「これがバレッタさんが考案してくれた鉱石粉砕機って言う機械です。これを職人に作って貰おうと思うんです」

「図宴……水車の様な形、ですね。読んで字の如く、鉱石を砕く為の機械ですか?」

 

 

ナルソンが興味深げに聞き、一良は頷いた。

 

 

「ええ。水車の動きに連動して、地面に設置した石の台座に槌を振り下ろす機械です。今までのように人力で鉱石を砕かなくてもよくなるので、かなり楽になるかと思います」

「後————……俺の手が入ったヤツの言い訳を考える手間も省けるかな? とも思ったりしてます」

「あははは……」

 

 

時間が推している時、他にしなければならない事が多々ある時。シレっと夜中に和樹がピカピカ能力で色々やってる事は今でもある。

その度に、アイザックやハベルにはそれとなく言い訳や台本作りを頑張って貰っているのだ。正直、騒ぎにならない様に夜中を選んで誰も居ない、確実に居ない時間帯を狙ってやってるので、作業時間こそ一瞬だが、効率はお世辞にも良いとは言えない。大々的にメルエムを大公開して、やればあっという間なのだが……流石にそれは悪手に繋がりそうなのでよっぽどの事が無い限りやらない方向である事はナルソンもジルコニアも同意している。

 

やはり、人の手で、人が出来る手段で効率よく作業を生み出すのが理想なのは間違いないから。全てを能力に頼り、頼り尽していると———きっと、何処かで手痛い事が起きてしまうモノだと解っているから。

 

 

「それで、採掘量はどうでしょう? 順調に増えてますかね?」

「はい。手押しポンプのおかげで排水が上手くいくようになったので、いくらか採掘量は増えております。思ったほど劇的には増えませんでしたが……、まぁこんなものか、といったところですな」

「―――過剰に期待していた、と言う訳でもありませんでしたし、取り合えず良好、で良いですよね?」

「無論です。採掘量自体は増えてますので。これまで不可能だった場所で獲れるようになった。この時点でも紛れもなく良好、と言えますな。それとまだ閉鎖された鉱山があります。そちらの再採掘準備も行ってますので、それらが始まればもっと採掘量は増えるかと」

 

 

手押しポンプ製作に手間がかかっているがどんどん揃ってきている。加えて和樹の処置もポイントを絞って行っている。

盗難防止等で四六時中警備をつけたり、まだまだ企業秘密な機器なので作業が終わる度に撤去したりしてるので人件費はかさんでいる……が、それも何とかなるだろう。

大がかりな作業での人件費削減が出来ているので、予算の方もプラス方向だから。

 

 

そして、此処からが重要だ。

 

 

「鉱山に関連してもう1つ相談があります。青銅に代わる新たな金属の開発についてです」

「新たな金属、ですか?」

「ええ。鉄と言う名の金属で、青銅よりも強くて安価な金属です。……恐らくですが、バルベールは既に鉄を開発しているかと思われます」

「「!!」」

 

 

この一良の言葉に、ナルソンは勿論、ジルコニアの顔色も変わった。

バルベールにおける錫の枯渇と木材生産量の増加の情報が咄嗟に頭に浮かんできたからだ。

新たな金属の開発———加えて、従来の青銅より安価で強力ともなれば、これ以上無いくらいの凶報だろう。

 

 

「以前、見せて貰ったバルベールの情報、ノワ……オルマシオールの証言、手あたり次第の森林伐採。全て照らし合わせても間違いないですね」

「オルマシオール様が……」

 

 

武の神をも手を貸してくれている。紛れもなく光栄であり、士気も上がると言うモノなのだが、そうも喜んでばかりはいられない。後に改めて感謝の意を伝える事を和樹に告げ、一良の方を見た。

 

「……その鉄と言う金属は加工は容易なのですか?」

「青銅と比較すると難しいですね。鉄は青銅よりも硬くて溶かしにくい金属なので。加工技術も高度になります」

「安価、と言うのは銅や錫に比べて採掘し易いと言うことですか?」

「はい。それは間違いないです。埋蔵量が比べ物にならないので容易に調達できます。現に、

北西の山岳地帯にも鉄の大鉱脈が存在してます。和樹さんの方で現地で確認もしてくれてるので間違いないです」

「なんと、その様な鉱脈が領内にあったとは。……バルベールにも大鉱脈があるのでしょうか?」

「それに関してはこちらが」

 

 

ひょい、と手を挙げる和樹。

 

 

「流石に、バルベール領土内を飛び回って確認するのは目立っちゃいますし、ムリがあるのでやってませんが、そちらもオルマシオールが手を貸してくれました。……似た鉱脈は発見した、との事です。そこに人がかなり集まっている、とも」

 

 

これ以上ない程説得力がある。

喜ばしい事ばかり続いていた。でも、世の中甘い話ばかりではない事を再認識した。これまでが上手くいきすぎていただけなのかもしれない。

 

こう言う時こそ、冷静に判断し最善を尽くすに限る。何より、全てを和樹に……自分達の手に余る様な事を全て和樹にやって貰う、貰い続ける訳にはいかないだろう。

以前、アイザックに話した。自分が神の手を……どんな神罰を受けようとも、神の力を存分に利用する、と言い切っていた……が、ものには限度と言うモノがある。

安易なモノにしがみ付き、乞い続ける将はいざと言う時に崩壊するものだ。

 

何より、リーゼを娶ってくれた心優しき神に。……恐れ多くも、義父と言う立場になった自分がいつまでも義理息子に頼ってばかりでは呆れられてしまうだろう、と言う気持ちの方が大きい。

 

 

「こちらも直ぐに鉄の採掘を始めましょう。鉱脈の場所をまた教えていただけますか?」

「はい。マッピングもしてますし、共有もしてます。位置を言えばグリセア村からの方が圧倒的に近いですね」

 

 

和樹がそう言って航空写真の様に上空から取った写真と地図を合成したモノを広げた。これで直ぐに派遣する事が出来るだろう。

 

 

「バレッタ。アイザックをつけるから採掘の人員を連れて鉱脈まで案内して貰える?」

「はい」

「急ぎで悪いんだけど、直ぐに準備して貰えるかしら、午後には出発して欲しいの。この後、カズキさんの地図も一緒に確認させてもらえるかしら?」

 

 

ジルコニアの対応は早い。

これも想定内だ。和樹も一良に進言しているし、一良自身も素のジルコニアと現場の……仕事のジルコニアのギャップについては理解してきているので驚きはない。

 

 

「……リーゼ。こう言う時くらいは(・・・・・・・・・)? 良いんじゃないかな? ちゃんと埋め合わせもするから」

「ぅ……。まぁ、仕様が無い、かな。我儘(・・)言ってられないし」

「ん?」

 

 

不意に聞こえてくるリーゼと和樹の会話。

それがどういう意味なのか、ジルコニアが知るのはこの直ぐ後の事だった。

 

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