ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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7話 私は光②

 

まず、ここイステリアでは……、否 アルカディア王国でグレイシオールの名は深く信仰されている。

あの御伽噺に対してもそうであり、グリセア村だけでなく 居る居ないは兎も角、その名は国中が知っていると言っても決して過言ではないだろう。

 

だから、もしも――その神が降臨したとなれば、イステリアどころではない。国中が歓喜するであろう事案となりうる。

 

だが――勿論全ては、そのグレイシオールが本物であればの話だ。

 

 

 

当然ながら、ナルソンやジルコニアは 不敬が無いように注意を払いつつカズラとカズキを見極める事に集中していた。

 

カズラたちもそれは当然見越している。と言うより事前に領主の出方についてはある程度の打ち合わせをしていたのだ。カズラが先か、カズキが先かも当然ながら。即座に信じさせるにはカズキが一番だろうが、カズラの方がグレイシオールである、と言う事なので一番重要度が高い。慈悲と豊穣の神で、現在のアルカディアで一番必要とされている神なのだから。

 

限りなくないとは思うが、カズキは信じられるが、カズラは信じられない、みたいな展開があるかもしれない。

 

故にカズラたちは、ナルソンたちに委ねる事にしたのだ。どちらから証明してもらうか、を。

 

 

そして、先だったのはカズラの方だった。

 

 

ナルソンは、アイザックから報告を受けていた 我々が見た事もないような道具を持っている、部分に着目し、拝見させてもらえないだろうか? と提言した。

 

カズラ自身も想定している事だったので、アイザックとハベルに荷物を持ってくる様に指示し、淀みない動きで準備を始める。

 

当然領主との謁見の場であり、危険物を持ち出す可能性もあるので、ナルソンの傍にいるジルコニアは特に手元に注視していた。武器の様なモノを持ち込んでいないかどうかを警戒していた。

 

 

結果―――その警戒は杞憂となった。

 

 

杞憂であるのと同時に、驚愕もする。

 

火も起こさず光りを放つ箱。

火起こし作業をせずに炎を発生させる小物。

 

他にも色々とあるが、アイザックの報告通り、どれもこれも全く見た事の無いものだった。

 

「なんと明るい! 精霊の力……では、その道具は雨の中でも使用は――」

 

ジルコニアがまず注目したのは、火を使わず、熱も発せず光るランタン。

それについて詳しく聞こうとした時だった。

 

 

「……ジル。それはもういい。普通に話せ(・・・・・)

 

 

ナルソンの突然の指示が飛ぶ。

 

カズラは言っている意味がいまいちわからず思わず首を傾げそうになったが、何とか堪えて2人の出方を見た。

ジルコニアは、はっ! として口を押えていた。 そして、申し訳なさそうに表情を落としながら、先ほどから感じていたアイザックやハベルたちの様子からくる違和感の正体について語り始めた。

 

「それもそうね。……試すような真似をして―――…… ご無礼を御許し下さい。カズラ様。カズキ様」

「??」

「試すような真似?」

 

言っている意味がまだ解らない。

だが、なるべくそれを表情には出さずに、自然に聞き返す。

そしてもうジルコニアには、最初にはややあった警戒心からくるであろう緊張の色は露と消えていた。

 

「お二方が偽者かもしれない……と言う疑念からグレイシオール様を信仰する複数の地域の言語を使ってお話をさせていただきましたが、全くの杞憂でしたわね。ナルソンの話した南方の島国の言語や、私の故郷の極めて特殊な方言にも顔色一つ変えず接して頂けまして……」

「―――!?」

 

 

此処で漸く意図に気付けた。

いや、今もある意味では気付けていないかもしれない、と言うのが正しい。

 

何故なら、カズラには…… いや、カズキにも普通に日本語を話している様にしか聞こえないからだ。

ジルコニアが言うのは いわば 仮にも神と名乗るなら この地域の複数の言語、方言に至るまで答えられて当然。答えられないのであれば本当に神なのか怪しい。と言う事だろう。判断材料としては決して強い手ではないとは思えるが、少なくとも信頼を得る事が出来たのは僥倖だと言えるだろう。

 

「……ほん〇くこんに〇くでも食べた気分ですね」

「あ、それ一番しっくりくる。……バレッタさん達を見ても判るけど」

 

カズキとカズラは互いに顔を見合わせつつ、最終的には苦笑い。

からかわれている様にも感じられたカズラだったが、バレッタやバリンの表情を見たら、そんなワケないと直ぐに判った。

バリンが特に嬉しそうに、それでいて誇らしそうな表情をしていたから。

 

それはそれとして、疑惑は完全に晴れた! とまではいかないかもしれないが、所謂神を試したも同然だったので、深い謝罪を口にするナルソン。

 

「……なにぶん、初めての事例で……。直ぐに信用できかったのです。……大変失礼な真似を、本当に申し訳ございません」

 

 

ナルソンの謝罪を合図に、ジルコニアも深々と腰を折って頭を下げた。

 

「あ、いえ、特に気にしてませんので、顔を上げてください」

「領地を任され、人の上に立つ者なら当然だと思います。毅然とした振る舞いに私は寧ろ感服していますよ」

 

カズラもカズキも問題ない、と言わんばかりに 謝罪を受け入れる。

ナルソンは、アイザックの気持ちがよく判った。事前の報告が無ければ、恐らく自分もアイザックと同じ対応を取る可能性が高いだろう。勿論、柔軟に対応する自信もあるにはあるが、こればかりは難しいとしか言えない。

 

 

 

 

 

 

 

「さて……」

 

此処で、カズキが声を上げた。

カズラの方を見て、カズラも頷き返す。続いて、今度はバレッタやバリンの方を確認。2人も判りました、と言った様に頭を下げた。

 

「カズラさんがグレイシオールである、と言う事は信じて頂けたようですので、………次は、私、ですね」

 

できる範囲ではあるが、極めて柔らかく微笑みを浮かべるカズキ。

慈愛の~ 的なイメージを精一杯その顔に出そうとしていた。これから、自分自身を証明した後にも、安心してもらえる様に。―――なるべく、怖がられない様に。

 

上手く出来たかは正直不明ではあるが、ナルソンをはじめ、ジルコニアの身体もぴくっ、と動いたので 色々とカズキ自身の事をアイザックに聞いているんだろう、と思えた。

 

 

 

―――否、打ち合わせ通りであれば、聞いていない(・・・・・・)と言った方が正しい。

 

 

 

でも、一応確認を取る。

 

「アイザックさん達には、私の事は聞きましたか?」

 

カズキの言葉を聞いて、反射的に背筋を伸ばし直すのはアイザックとハベル。

ナルソンは、一呼吸置いた後に答えた。

 

「はい。アイザックからは、我々がカズキ様に、……メルエム様に会えば判る、とだけお聞きしています。グレイシオール様の伝承は伝え聞かされておりますが、メルエム様の伝承は残っていない為、我々としても、何をどう証明して頂けるのか、全く想像がつかないのが現状ですな」

 

カズラの道具や、何より2人が眉一つ変えることなく、言語関係を看破した所を見て、それだけでも十分驚愕に値する事なのだが、アイザックにはそれ以上の何かを感じた。

 

見ただけで神である、と判るような証明とは一体何なのか、と疑問が、そして今は好奇心も募っていく。

 

「私からそう説明を、と実は言っていたのです。なのでアイザックさん達に非は全くありませんので、その辺りはどうかご了承願えますか?」

 

カズキがそういうと、後ろにいたアイザックは涙目になった。

気にかけてくれた事が兎に角嬉しかったのだろう。……不敬をしてしまった負い目が未だに根強く彼の中にはあるから。

 

ナルソンに関しても、その辺りは全くと言っていい程気にしていなかった。今回の内容を考えたら、些細な話だからだ。

カズキは、ナルソンが頷いたのを確認した後、続けた。

 

 

 

私自身(メルエム)を証明する、と言うのはとても簡単なことです。お2人も、この後 恐らくは納得して頂けるかと思います。……ああ、そうだ。証明するに当たって、ナルソンさんに1つだけ お願いごとがあるのですが、良いでしょうか?」

 

 

 

カズキからの問いに姿勢を今一度正しつつ、はい、と頷くナルソン。

如何ともしがたい只ならぬ気配を、その身で感じたかの様に 気が引き締まる思いだった。そして、それはジルコニアも同様だ。

 

謝罪の後は、カズラの道具に意識がいっていた筈、なのだが、今はカズキに釘付けだと言っていいから。

 

了解を得たのを確認したカズキは、再び微笑みを浮かべて言った。

 

「この部屋の灯りを―――消して貰えればより判るかと思います。……あ、勿論カズラさんの照明き……、光の精霊のランタンは最大の光を放つ状態で灯しておきますので、完全に暗闇にしてください、とは言いませんよ。今より少し、この中を暗くしてもらいたいだけです。 ――より、(メルエム)を判ってもらえる様に」

「判りました。アイザック」

「はッ!」

 

アイザックは速足で、夫々の蝋燭に灯されている火を消して回った。

この部屋には通気口はあっても日をさすような窓はない。蝋燭の火を完全に消してしまえばほぼ暗闇になってしまうだろう。

 

もしも―――カズラの前に、カズキが闇にしてくれ、と言った要望を出そうものなら、文字通り闇討ちされる危険性を考慮して、渋るかもしれなかったが、今はそんな事はしなかった。

 

アイザックは、1つ、また1つと火の灯を消していき―――やがて、木のテーブルの上に置かれている2つのランタンの灯のみの光となって辺りが闇になった。

 

「ありがとうございます。……では」

 

 

 

どくんっ……。

 

 

誰かの心音が聞こえた? 

否、違う。ナルソンとジルコニアは夫々心臓が高鳴ったのだ。何をするのかは判らない。……だが、突如やって来た肌がピリ付くこの感覚は、何かが間違いなく起こるであろう事を物語っていたのだ。

戦場でも、この感覚は大いに役立ってくれた歴戦の兵の勘……とでもいうべき感覚。

 

だが、今回のこれは過去最大級。

―――過去のどの感覚とも比較できない、比べようもない程の何かを感じられた。

 

 

そして、期待を裏切らない程の事が……否、想像を遥かに超える様な事が起きた。

 

 

「「!!!!」」

 

 

カズキが両手をグッ、と握ったかと思えば、その手に光が出てきた。

先ほどのカズラの持ってきた道具、精霊の道具を用いているのでは? と一瞬ナルソンやジルコニアは思っていたが、直ぐにそれは違う事に気付く。

 

なんてことはない。手、そのものが光っているのだから。手自体が光の発光体となっているのだから。

 

仄かな光だったが、目が眩まない程度に徐々にその光度を上げていった。両手が光でその掌の形が見えなくなった所でカズキは立ち上がる。

両手を前に、差し出す様に伸ばすと、まだ手周辺に留まっていた筈の光が、道筋の様になって伸び―――部屋の壁にまで到達した。その光は反射を繰り返し、軈て……先ほどまで蝋燭の火で灯りをつけていたが、そんな灯りは必要ない程 部屋中を光で満たした。

 

恐らくはナルソン達に配慮しているのだろう。目が眩むような事は一切なかった。

 

 

「ごらんの通りです。――私は、()に成る事が出来ます。無論、この程度であれば、まだイカサマ、手品の類ではないか? と疑問に思う事でしょう。先ほどの光の精霊のランタンを用いたものではないか? と」

 

ナルソン達は、そんな事最早頭の片隅にも無い。人体そのものが信じられない程光を放った時点で、人間業ではない事は直ぐに判った。

目の前に神を見た――と言うアイザックの言葉の真意が此処へ来て更に1段階増して理解出来た。直ぐにでも 首を垂れたかったが、カズキの言葉を遮らない様に、食い入る様に次の展開を待った。

 

「では、カズラさん。お願いします」

「! っと、はい。わかりました」

 

事前に全て打ち合わせていた事であるとはいえ、やはり、カズラ自身もこんなファンタジーな力は直ぐになれる事ではないだろう。

でも、これは入念な打ち合わせを行っている事だから、淀みなくただ粛々と行わなければならない、とは感じている。

既に十分すぎる程のインパクトを与えているが、これ以上ない事をする為に。

 

「アイザックさん。短刀を一振り……カズラさんにお貸し願えますか?」

「!! はっ!!!」

 

アイザックとは何をするかは打ち合わせてはいない。光の光景は一度見せているから、それをまた再現する、程度だった。

勿論、それだけで十分すぎる、と言うのはアイザックも思っていた事、と言うのがある。

 

アイザックは、言われた様に短刀―――ではなく、腰に備えているアイザックの家紋、スラン家の紋を刻印している剣を差し出した。

 

それを見たカズキは、普通にそこにある果物を切るであろう包丁みたいなので構わない、と思っていたのだが、自分自身の剣を差し出してくれたアイザックに、敬意のようなものが生まれた。

剣を差し出す行為。……その重大性くらい流石に判るからだ。

 

カズキはそっとその剣を受け取った。

 

流石に重くズシッ、とのしかかってくる。

これを自在に使いこなせるようになるには、訓練に訓練を重ねなければならないだろう、と判り、アイザックがどれだけ鍛え、忠義を尽くしてきたのか、朧気にではあるが見えた気がした。そんな大切なモノを貸してもらえたのだから、とカズラもより気合が入る。

 

「では、カズラさん。よろしくお願いします」

「っ。判りました」

 

カズラは、その貰った剣を慣れない手つきで振り上げると……カズキに振り下ろした。

 

思わず、ナルソンも、ジルコニアも、横で見ていたバレッタやバリンも、そして背後に立っていたハベルやアイザックまでも、何を! と席を立ち、または手を伸ばす所作をしたが……、直ぐにカズキが制した。

 

そして、誰もが我が目を疑った瞬間が訪れた。……カズキの光を見た時を含めると、目を疑うのはこの短い時間で2度目だ。

 

 

そのカズキに振り下ろした剣は、何の手応えもなく……すり抜けた(・・・・・)

 

 

そのまま、床に落とす……と、床が傷ついてしまうので、カズラは頑張って力を入れて床を切る寸前で止める。

 

 

「御覧の様に、私は光そのものです。―――我が身を傷つける事は、如何なる武器を用いても叶いません。ですが、私に一切触れる事が出来ない、と言う事ではありません。ただ……悪しき意思は全て私を害さないと言う事です。そして、斬る事が出来ない理由は 水や空気を切る事が出来ないのと同じでしょう」

 

カズキは、そう言うと 光の光度を一部に集中。

それは、さっきまで灯っていた蝋燭の芯の部分。アイザックが消してしまった箇所を、光熱で発火させ、再び火を灯した。

 

全ての蝋燭に火が灯り―――部屋がもとに戻ったのを確認すると、カズキ自身の光も引っ込める。

 

 

「――以上です」

 

 

ゆっくりとした所作で元の位置に戻って腰を掛けるカズキ。

 

超常現象を間近で見せられたナルソン達は、暫く何も言葉を発する事が出来ず、軈て数分後―――目の前に神を見た、とまた頭を擦り付ける様に下げてしまった。

 

 

明らかに畏怖の念が見える、これでもか!!と強烈な畏怖の念が。

その後、アイザックの時程ではないが、カズキはどうにかナルソンとジルコニアの2人を宥めるのだった。

 

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