ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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8話 私はゲーム脳

 

 

「はぁ……、予想はしてましたが、やっぱり思いのほか大変でしたね……」

「そりゃそうだよ……。オレだって ちゃんとカズキさんから事前に事情を色々聞いたり、元ネタ知ってないと、やっぱり ああ(・・)なっちゃうって。オレの道具とか知識とかとは比べ物にならないくらいインパクトあるし」

 

 

件の会議? の後、ナルソンに用意して頂いた部屋にて今日の反省会をしていた。

光を披露した後は本当に大変だった、と言える。当初は信じさせる事を第一優先に考えていたので、でっかいインパクトを残す! 事に力を入れて――――入れ過ぎた。

 

人は、得体の知れないなにかを、範疇外のなにかを、常識外のなにかを、……超常的ななにかを 目撃した際は、跪き、傅く。

 

古今東西、神話の類の話では大体そうだ。

 

だから、ナルソンやジルコニアの反応は全くをもって当たり前なモノ。

それを考えて、対処法もしっかりと吟味していなかったカズキの手際が悪い、と言う事なのである。

 

 

「デスヨネ。そういえば、バリンさんにもしっかり話して無かったのも迂闊でした。驚かせてすみません」

「い、いえいえ。確かに驚きましたが、(メルエム)様なのですから。あの現象は当然かと思ってますよ」

「……スムーズに信じてくれて嬉しいです」

 

カズキは、ピカピカの力を披露した際 いわばナルソンやジルコニアの2人を信じさせる為、つまり2人を狙ったのだったが……、直ぐ横で見ていたバリンも唖然としていたのに気づいた。

 

バリンの娘、バレッタには 出会った当初に自分自身を信じてもらうために教えていたので、普通だったが、バリンには伝えていなかったのだ。

 

だが、バリン自身は当初こそは驚き固まってしまっていたが直ぐに順応する事は出来ていた。

 

何故なら、グレイシオールであるカズラが来たグリセア村にて、様々な神秘的な事が何度も起こっていたから。

何処からともなく現れ、村人全員を救ってくれた事を皮切りに、見た事もない技術を教えてもらえたり、全くの疲れ知らずな身体になったり、極めつけには、日照りだった村に雨を降らせたりとだ。

 

確かに、あの場でカズキとカズラを比べれば、圧倒的にカズキの方が見栄えがするだろうし、光を放つ神々しさも目撃しているので、カズラの影が薄まるかもしれない。

だが、影響を及ぼした規模を基準に考えてみると、カズラの方が圧倒的だ。

これからしようとしている事を考えても。

 

と言うワケで、神様である事はしっかり信じてもらえた。

ナルソン達との、イステリアの復興に向けての話し合いもそれなりに進んでいる。……大飢饉、干ばつによって一部壊滅的な被害を被っているが、それでも全く不可能と言うワケではないだろう。―――そもそも、神の名を冠する以上、不可能を可能にしていきたい所だ。

ナルソン達にも結構な無理難題を言って、了承してもらえた手前もある。

 

 

「これから大変ですけど、頑張ってやっていきますかね」

「イステリア復興、ですね。問題点山積みですけど、着実に堅実に一歩ずつ行きましょう。オレも頑張ります」

 

 

 

 

 

 

 

そして、暫くして扉を叩く音が聞こえてきた。

 

侍女より、【準備が終わった】との知らせが来たのだ。……準備、とはグリセア村へと戻る準備である。

 

ここからは、グレイシオールとメルエムの2人とは別行動で、2人は村へと戻る事になっている。

ナルソン達を落ち着かせた後、国の現状から対処法を話し合っている時、機密事項だからと2人は席を外していたのだ。

 

「さて……、そろそろバレッタさんとバリンさんは」

「はい。わかりました。……バレッタ」

「………………」

 

ナルソン達と話をしている時、……いや、席を外された時から特に、バレッタの表情が暗くなっていた。今も、悲しそうな悲痛な表情が隠しきれずにいたのだ。

 

「バレッタさん。私たちも3日後にはここを発つ予定です。直ぐに村へは戻れますよ」

「で、でも……」

 

バレッタは、どうしても2人の事が…… いや、カズラの事が気になって仕方がないのだ。

 

カズラの事はどんな事があっても、自分の命を賭けても守る意思は強く持っていた。……だが、カズキがここへやってきてから、風向きは変わる。

カズラを護る、と言う意味では、カズキ程適任者はいないだろう。そして、何があっても カズキならば、それを通すだけの力が備わっている事も判る。

 

だから……、自分は不要なのではないか、と思ってしまうのだ。

 

カズキやカズラの事を考えてみれば、そんなワケない、と言う事は頭では判るのだが……、理屈ではない。

 

「バレッタさん。……カズラさんは大丈夫です。直ぐに、一緒にいられますよ」

「っ」

「私が保証しましょう! 何なら、バレッタさん。カズラさんに変な虫がつかない様に私が見張ってましょうか?」

「ええっ!??」

 

突然のカズキの申し出にバレッタは思わず顔を真っ赤にしていた。

カズラも一体何を!? と驚いてカズキの方を見る。

 

「ほら、カズラさんはスゴクモテそうですし、ちゃーんと、村に帰りを待ってる人がいる、って私が光りながら諭しますよ。そうしたら、大体の人達は理解してくれると思うんです」

「そ、そそそそそ、そんなっ、それはっっ!!」

「な、なに変なこと言ってるんだーーー!!」

 

ガーーっ! と2人して慌てながらカズキに詰め寄る。

そんな2人の表情を見たカズキは、ふっ、と力を抜いて更に笑みを浮かべた。

 

「そうです。笑顔です。……笑って見送って、笑ってまた会いましょう。辛く、暗い顔をいつまでもしていたら、もっともっと気が滅入ってしまいますよ」

「「あっ……」」

 

 

ここで、漸くカズラとバレッタは 2人して表情が暗くなってしまっている事に気付けた。

それと同時に気を使ってくれたカズキに対して感謝をした。

 

そして、別れる間際。

 

バレッタはやはり 寂しそうに、辛そうにしていたが、何とか堪えて笑顔を作って2人に言った。

 

 

「早く、早く 帰ってきてくださいね。……待ってますから」

 

 

健気で何処か儚い少女。かなりのしっかり者だとは今まで接してきて判っていたつもりだったが、彼女はまだ恐らく日本で言う成人にも成っていない年齢だろう。

そんな彼女が強い想いを堪えている姿を見て、カズラはそっと頭を撫でていた。

 

必ず戻ります、と言葉を添えて。

 

 

バレッタとバリンを乗せたラタ車を見送る際に、カズラはカズキに言った。

 

「カズキさんは、しっかりしてるなぁ……。何だかオレはまだまだ子供だって思っちゃってるよ」

「あはは。そんな事ないですよ」

「いやいや。だって、オレ。カズキさんが居るからまだ大丈夫だって思ってるもん。たかが数日だったとしても、知らない世界の知らない土地でひとりだったら……絶対に心細い。カズキさんが居なかったらきっと、バレッタさんを引き留めてたと思う」

 

カズラは、ラタ車がもう小さく見えなくなっていっているのを眺めながら、そう告げた。

 

所謂、たら、れば、にはなるだろうが、カズキが居なかったら、カズラは間違いなくそうなる、と思えていた。

グリセア村の人達が、特に心を許せているバレッタが助けてくれたなら、と。

 

「ほんっと、凄いよ。カズキさん。……カズキさんの方がもっともっと大変だって分かってるのに、こう思っちゃうから、余計に何だか情けない」

 

あはは、と苦笑いしながら カズラはカズキにそう言った。

カズキはカズラと違って、帰るべき世界(・・・・・・)が無いと言っても良いのだ。

この世界に来た方法も元いた場所に帰る手段も判らない。不安があるとするなら、きっとカズキは、自分の比じゃない、と思える。

 

それでいても、周囲を気に掛けるだけの事が出来ているカズキに本当に脱帽する想いだった。

 

それを聞いても、カズキは首を横に振る。

 

「違うんです。カズラさん。……ただ、オレは場数(・・)が違うだけで大したことじゃないです」

「え?」

 

カズキの言う【場数】の意味がいまいちわからず、カズラはカズキの方に改めて視線を向けた。

 

「ほら、此処に来る過程の話、したでしょ? VRゲームをしてたら来たって」

「うん。最早疑う余地なんて、オレの中じゃないよ」

「それはありがたいですね。証明の仕様がないですし。……それで、オレが居た世界ではVR…… 仮想現実っていう世界は、それこそ無数に存在してるんです。オレがプレイしていた世界は、無限って言っていい程存在する世界の内のたった1つに過ぎません。そして、オレは今やってたゲームをやり込む前も、沢山の世界を見て回ってます。ただ世界を旅したり、世界の命運をかけて戦う! みたいなのもしてみたり。きっと オレがこの世界でも立ち回り出来てるのは、そういった経験があるからです。……所謂、ゲーム脳ってヤツですね」

 

カズキはそういうとぴんっ、と指を立てた。

 

「オレにも、出来ない事は山のように沢山ありますし、カズラさんに頼りまくる事も沢山あります。……なので、オレの事も助けてください」

 

最後に苦笑いしながらそういうカズキに、カズラは 一瞬きょとん、とするが、直ぐに笑顔になっていった。

 

「勿論だよ。オレに出来る事なら何でもする。……最初雇って~っていう話だったけど、もう給料払いたい気分だよ」

「あ、それは嬉しいです! えっと んじゃ、早速頼りたい事があるんですけど……」

「って、はやっっ!? もう??」

 

カズラとカズキは笑いながらやり取りを続け、軈てバレッタ達のラタ車が完全に見えなくなった所で、ナルソンの屋敷内へと帰っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

執務室にて、穀倉地帯の復興に治水工事、色々な資料を確認しつつ、日本の技術・物資で解決策を見いだせないか、色々と議論をカズラとカズキは交わし合っていた時だ。

 

「―――カズラ様、カズキ様。少しご相談が」

 

ナルソンがタイミングを見計らって入ってきたのだ。その声に反応して2人は振り返る。

 

「お2人の事は、混乱を避ける為に内密にし、私の友人として屋敷に来ているということにさせていただけると助かるのですが」

「かまいませんよ。そのほうが動きやすいので是非」

「!!」

 

普通に了承するのはカズラで、そのナルソンの申し出に、やや過剰気味に反応するのはカズキだった。

カズラは良くてもカズキが悪ければ、今後にかなりの影響が起こる、と懸念しているナルソン。何か不味いことを? と一瞬焦っていたのだったが、直ぐに杞憂となる。

 

「い、いえ。そんな提案をナルソンさんからして貰えて、何だか嬉しくなって……。私に対する畏まる姿勢と言うか、傅いてる姿勢が暫く崩れそうになかったですから」

「あ、あははは。申し訳ない。あそこまで気が動転してしまうのは何分初めての事でしたから……。今後は、出来る範囲にはなってしまうかもしれませんが、カズラ殿やカズキ殿のご要望通りにしていこうと考えております」

「はい。よろしくお願いします! ……友人、と言う普通の関係は私にとって大歓迎ですので」

 

神と友人に成れた―――と言うのは、まず間違いなく歴史に刻まれる邂逅、神話の世界の話になってくるだろう。

そんなのがこうもあっさりと訪れるとは、ナルソンは 今後これ以上の驚きは恐らく無いだろう、と想いつつ 2人との関係をもっと良好的なモノにしていこう、と心に深く刻むのだった。

 

 

 

 

 

そして、その日の夕食時。展開が動いた。

 

 

「――――っっ!!」

 

ナルソン達に食事を共に、と招待されてやってきたとっても綺麗なダイニングルーム。

色とりどり鮮やかな夕食のみなさん。

 

そして、今ここで重要となる1名の侍女。

 

何故なら、入ってきたカズラを見るなり、はっきりと驚きの表情を見せていたから。

ナルソンにもそれは伝わっていて、何事か? と問いただしたのだが。

 

「い、いえ! 申し訳ございませんっ!!!」

 

ただ、急いで謝罪、頭を下げるだけだった。

 

「なら良い。ジルはまだ来てないのか……。カズラ殿、カズキ殿。夕食の席に妻と娘を同席させていただいても?」

「かまいませんよ」

「はい。大丈夫です」

 

カズキは、侍女が何を驚いたのかは分からないが、カズラは思い返していた。

 

彼女とは、一度会った事があるからだ。――以前に初めてイステリアに来た時に。

 

 

「では、エイラ。リーゼを呼んできてくれ」

「かしこまりました」

 

エイラと呼ばれた侍女は、少々取り乱した様子は見せつつも、ナルソンの指示通り、部屋を後にする。

 

 

カズキは、席について、ナルソンが離れた際にそっとカズラにエイラの事を聞いてみた。

 

「カズラさん。いまの人と顔見知りだったりします?」

「あ、うん。……以前、イステリアに来た話はしたよね? その時に会ってるんだ。……ナルソンさんのご息女、リーゼさんともそこで会ってる」

「へぇー」

 

カズキは、再び記憶タンスの引き出しを頑張って開ける作業開始。

エイラ、の名前にも リーゼ、の名前にも憶えがあった。事細かな詳細をどうにか、どうにか、と。

 

エイラは勿論だが、リーゼもかなり美少女だった筈だ。単行本を読んでいたあの頃の記憶を頑張って思い出し、手ごたえを感じ始めたその時だ。

 

ダイニングルームの扉からノックが聞こえ、ナルソンが入る様に促して―――そして、入ってきた。

ジルコニアとリーゼの2人が。

 

「――リーゼ。この方々は私の友人。カズラ殿とカズキ殿だ。我が屋敷に来るのは初めてでな。よくして差し上げてくれ」

 

紹介され、促され、自然な流れで歩み寄るリーゼ。挙動のひとつひとつが滑らかであり、気品に満ちている、の一言だ。

 

「カズラと申します。よろしくお願いします」

「私はカズキです。よろしくお願いします」

 

にこっ、と挨拶をすると、同じく微笑みを返してくれるリーゼ。

 

 

「リーゼです。お二方のことは、母から聞いております。内政の手助けをして下さるとか。私にできることならなんでもお手伝いしますので、どうかよろしくお願いします」

 

 

ほぼ至近距離で向けられた微笑み。

艶やかで鮮やかな淡いブラウンの髪が室内で風もない筈なのに靡いている。

 

まず間違いなく美少女。この世界にやってきてトップクラス。……失礼な事を言うつもりはないが、この世界の女性は、出会った人達全員が、皆顔立ちが整っている。

母のジルコニアも同じくだ。銀の髪をかき分ける仕草は、非常に絵になる。こちらは少女……ではなく美女。

 

カズラもカズキもその笑みに癒される想いだ。……因みにカズラは 以前 出会った事があるのと、冗談の類だったとはいえ、バレッタの事をカズキに言われていた事もあり、なるべく顔に出さない様に務めていた。……面白おかしくバレッタに報告されるのでは? と若干ながら思ったからだ。……それを鑑みても、非常に愛らしい。

 

 

その後の食事会は非情に有意義なモノだった。社交性………と言うものを絵にかいた様に完璧でパーフェクトだったのはリーゼ。初対面のカズキに対しても、気を使ってもらい非の打ちようがない程に完璧だった。――――そう、完璧過ぎた(・・・)

 

 

「あ……」

「? どうしました? カズキ様」

 

 

ふと、イステリアの話を、内政の話を中心に、カズラが話をしていた際だ。

カズキの記憶のタンス、引き出しの中身が わっ! と出てきたのは。

 

 

 

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