パリィが得意なのでDEX極振りで致命入れたいと思います。   作:サレナルード

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 ダクソ3RTAしようとして色々覚えてたら遅くなってしまいました。
 許しは乞わん。恨めよ(反省)


9話 弟

「んーまぶしー」

 

 朝7時30分。

 昨日寝たのは0時を過ぎていた気がするが、カーテンからチラチラとこぼれる日の光が顔を照らしたせいで予想よりも早く起きたため、8時にセットしておいた目覚ましを切り体を伸ばす。

 

「えーとリモコンリモコン」

 

 自宅はワンルームで、ベッドのすぐ側にテレビを配置している。

 最近はもっぱらVRマシンを使っているのでやらなくなったが、前はベッドで横になったまま1日中ゲームをしていたものだ。

 あ、VRマシン使ってる時も横になってるから変わらないか。

 

『今日の天気は晴れ!よいピクニック日和になりそうです。紫外線に気をつけてお出かけください』

 

 枕の裏に潜り込んでいたリモコンでテレビの電源を入れると、ちょうど朝の情報番組で女性キャスターが天気を知らせてくれた。

 確かめるまでもないだろうが、先程からすこしだけ空いているカーテンを完全に開くと、まぶしい朝日が部屋全体に差し込んだ。

 

「うおっまぶし」

 

 なんだかデジャブを感じる台詞に既視感を覚えながら窓の下を眺めると、学生たちが友達としゃべりながら学校へ登校している。

 

(おはよう楓!昨日の夜は)(あんまり話せなかった)(けど)(なんかすごい装備)(手に入れたんだって?)

(そうそう!ユニークシリーズって)(いう装備で、)(一つのダンジョンに一つしかない)(みたい!)

(えぇ!?なにそれスゴすぎない!?)

(ふっふっふっー羨ましいかー)

(このぉ!私だって)(出きるようになったら)(手に入れてやる!)

 

 窓は開けてないのでよく聞こえないが、なんとも楽しそうだ。

 俺が高校生の時はあんな青春はなかったなぁ····。

 

「····顔洗うか」

 

 なんだか悲しくなってきたので気分転換に顔を洗うことにする。

 

「ふーつめてー」

 

 少し寝ぼけ気味だった脳が、顔に冷たい水をかけたことで完全に覚醒した。

 顔を拭いて、ついでにひげも剃っておいた。

 

「むぅ····あいつに似て、というかあいつが俺に似てるんだろうに、なんで俺はモテないんだ····?」

 

 鏡に映った顔は悪くない。いや、むしろけっこうイケてると思うんだが何故かモテない。

 弟と歩いていても声をかけられるのは俺じゃないし····いかん、今日はネガティブデーのようだ。

 

「はぁ、まぁいいや。あいつ起きてるかな····いや、どうせVRしてるだろうしメールにしとくか」

 

 ベッドに戻り、寝転んであいつにメールを送る。

 電話ではなくメールにしておけば、VRを使っていても邪魔にならないだろう。

 ちなみにフルダイブ型VRゲームはその性質上、使用中に体を揺さぶったり声をかけても気付けないので、VRマシン自体にスマホと同じように電話やメールを送受信できる機能が搭載されている。

 VR技術革命初期はあくまでVRマシン同士だけの機能だったが、今ではスマホから繋がるようになっておりなかなか便利だ。

 

「こんなもんか。送信と」

 

 さーて、メールも送ったし返信くるまでアーマードコアⅥ VRでもやっとくかな。

 

 

 

 

 

 

ーーーー???sideーーーー

 

「たぁっ!はあっ!!」

 

 掛け声と共に放たれた斬撃が、人間の何倍もの大きさの巨体で襲い掛かるモンスターの群れを瞬く間に一刀両断し、消滅させた。

 

「ふぅ。もうここらのモンスターじゃ経験値はおいしくなさそうだ」

 

 朝早くから経験値稼ぎにダンジョンに潜っていた青年は、振り抜いた剣を収めメニューを開くと、次のレベルまでの必要量を見て呟いた。

 

「他の場所を探そう」

 

 今ソロでできる最高レベルの狩場だったが、この分では既に効率が悪いと青年は判断し、効率のよさそうな新しい狩場を探しにダンジョンを後にした。

 

「そういえばあの竜が飛んでいる丘にはまだ行ってなかったな····ん?」

 

 遠くに見える、空を羽ばたく竜を見て次の目標を定めたところで、青年はメールが届いていることに気が付いた。

 

『おは!突然ですまんがNWOってやってるか?昨日始めて装備やらスキルやら手に入れたんだが、まだ他のプレイヤーと戦ったこともないから強さの基準がわからんから色々教えてくれ。あと、やってないなら買え』

 

「はぁ、またあの人は」

 

 始めのほうですまん、なんて言ってるくせにやってないなら買えという強引さ。相変わらずだなぁと思いながら青年は返信を簡潔に書き込む。

 

『今やってるよ。会う?』

『そううdっなあ』

 

「????」

 

 送って数秒で返事が返ってきたが、何故か誤字というか滅茶苦茶な文になっていた。

 意味がわからないと首をかしげる青年。数十秒後、またメールがきた。

 

『アーマードコアしながら返事打ったから滅茶苦茶なったわw今クリアしたから、ちょっと待ってろ。最初の町の噴水に集合な』

『了解』

 

 何故アーマードコアをしながら返事を打とうとしたのか、そもそも滅茶苦茶な文になったとはいえ、ACを操縦しながら何故キーボードを触れたのか疑問に思いながらも青年は了承の旨を伝え、最初の町へとアイテムで転移した。

 

「流石に人は少ないな」

 

 町の中はいつもより人が少なく、活気も薄れているが、そもそも今は朝の8時を過ぎたところ。

 しかも平日で、学生は学校へ行っている頃。

 平日に休暇を取っている社会人か、無職、あるいは青年のようにとある事情(・・・・・)がなければ朝っぱらからゲームをする人間はいない。

 

「よ、待ったか?」

 

 集合場所に指定された、この町の一番の特徴とも言える町の中央に設置された大きな噴水。

 青年がその目の前でメニューを開いて、レベル上げの副産物であるクエストの達成アイテムにもなる素材をチェックしていると、横から声をかけられた。

 

「いや、さっき来たばかりだ」

 

 現れた男に青年は、まるでデートの待ち合わせでもしていたカップルかのように返事を返す。

  

 ぼさぼさでまるで手を加えられていないが、それが逆にワイルドさを醸し出すかのような金髪に、少しツリ目で鋭い目つきの赤い両眼。服装はいかにも初心者というか、防具をつけていない状態で固定される防御力の欠片もない村人が着ていそうな服。

 青年の青を基調とした聖騎士のような恰好と比べると、あまりにもみすぼらしく釣り合わない。

 

「んじゃ、ここで話すのもなんだし場所を移すか」

「ああ、それなら近くにいい喫茶店があるんだ」

「ほぉ、喫茶店ね。最近ろくなもの食べてなかったからVRの中くらいいいもの食べてぇわ」

 

 青年の有名さ故に、見ていた周りの人間は気軽に話し合う釣り合わないの付かない二人を見て驚くが、次に出てきた青年の発言で更に驚くことになった。

 

「まったく、ご飯くらい体壊す前に食べなよ。兄さん(・・・)

「お前に言われたくねーよ、あや····」

「ここではペイン(・・・)だよ」

「おっと、すまんな」

 

 その会話で周りの人間が硬直しているのにも気付かずに、二人は喫茶店の中へと姿を消していった。

 

ーーーーアーリーsideーーーー

 

「んじゃ、とりあえずなんか頼むか。おすすめは?」

「チーズケーキかな」

「ふーん、ならチーズケーキで」

「俺はシンプルにショートケーキに」

 

 弟····彩斗、NWOではペインを名乗っているこいつのオススメというチーズケーキを頼むと、次の瞬間机の上にポンと現れた。さすがVR。待ち時間が無いのは嬉しい。

 さっそく一口食べると、濃いチーズの味となめらかな食感が口のなかに広がった(たれぞう並感)

 うん、おいしい。これで現実の体には影響が無いのは本当に素晴らしいと思う。

 もっとも、自分は現実でもっと食べなければいけないとは思うが。

 

 そんなことを考えながらペインをみると、こいつは頼んだショートケーキをそれはもう上品に食っている。

 いつのまにやら頼んだ紅茶も合わせて、どこぞの王子様のようだ。

 ほんと、食べてるだけで絵になる男だ。

 しかも改めて見ると、ずいぶん強そうな装備をしている。

 発売してからそこまで経っていないとおもうが、既に終盤の勇者のような装備だ。

 まぁ、こいつは職業柄(・・・)ゲームをやるとなったらとことんやるヤツだから不思議ではない。

 それに強そうな装備なら俺も手に入れたし····って、チーズケーキが旨くて飯を食べに来たように錯覚していたが、本題はその装備だった。

 

「モグモグ····んく。これ見てくれ」

「ああ、メールに書いていたやつだね····ッ!」

 

 とりあえず口に入れていたチーズケーキを飲み込んで、装備の詳細を記したウィンドウをペインに見せる。

 すると、ペインは目を見開いて前のめりになり、ウィンドウを睨み付けた。

 

「に、兄さん、これを····どこで?」

「森」

「森····近くにあるあの?」

「正確に言うなら森の奥の地下ダンジョンだな」

「森····地下ダンジョン····そんな話聞いたことがない」

 

 んー?もしかして隠しダンジョンとかだったのか?

 

「それより、この装備ってどうなんだ?強いのか?」

「強い。俺の装備にも匹敵····いや、デメリットさえ抜けば遥かに高性能だ」

 

 どうやら俺のこれは普通に高性能な装備だったらしい。こいつの強そうな装備より上ということは、見た目も格好いいかも。手に入れてまだ一度も装備してないから分からないんだよな。

 

「ついでにスキルの方も見てほしいんだが」

「スキルは····なるほど。相変わらず変態じみてるね」

「変態とはなんだ!?変態とは!?」

 

 こいつ、俺のスキルを見たあとに若干引いたような目でこっちを見てきやがった。なにが悪いんだ。

 

「普通、パリィ50回連続成功とか出来ないよ?それに何でやろうと思ったんだい?」

「いや、なんかスキル手に入るかと」

「だからって実行できるところが変態なんだ」

 

 呆れたように言うが、お前も大概変態だと思うがなぁ。いや、こいつの場合厨二病か。

 まぁロールプレイしていると言えばそれまでだが、それでも顔を晒してやる勇気は俺にはない。

 やるとしたら顔は隠す。

 実際、ダクソVRとかでNPCの完コスしてロールプレイする時も顔が分からないキャラしかしてないし。

 

「はぁ、変態云々はいいが、強いんだな?」

「ああ、ただその【大物喰い】というスキルは強力だけど相手によってAGIが変わったりして逆に戦い辛くなると思うけど」

 

 確かに、戦ってる相手によってAGIがコロコロ変わってたら身体の調整もままならなさそうではあるな。

 俺には関係ないが。

 

「あ、それは問題ない。俺DEXに極振りしてるから」

「·····」

 

 なんでまた呆れたような目で見るんだ、お前は!?




 感想で弟の予想してた方、なんの捻りもなくてすみません。
 なお、ペインのリアル事情はほとんど捏造です。

 次回には明かしたいですが、果たしてペインの職業とはなんでしょう。
 個人的にはニートだろと思っていますが、それではあまりにも可哀想というか、あのイケメンが中身ニートの厨二病とは思いたくないのです····というか、ペインの口調難しくないです?一人称俺だけど、勇者っぽくて強さを求めてて、痛い(ステキな)セリフを平然と言える感じ····どうすればよいのだ。

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