残り二話ぐらいになりましたので、新しい小説を考えています。
コトッ、コトッと咲夜の部屋では何かを置いている様な音が連続して、時に規則的に、時に不規則になり続けている。
コトッ という音を最後にその音は時が止まったかのように鳴りやんでしまった。
「……5分経ちましたよ?」
咲夜は時計をチラリと見て、小さなテーブルクロスを挟んで目の前にいる小さな主へ向けて言い放った。
「……余裕かましやがって、ちくしょう」
「頑張って負かしてくださいね。 後何度できるかわかりませんから」
「……(コトッ 勝てないで終わったら、閻魔でもなんでもはっ倒して、とっとと戻ってきなさい、その時には絶対にぎゃふんと言わせてやるわ」
「お嬢様…… チェックメイトです(コトッ」
「……」
うんうんと唸りながら、苦し紛れに駒を置いたレミリアの隙を見逃さず、咲夜は、レミリアの持つ
「そうですね。でも、せっかくの申し出ですが、お嬢様がもう少しお強くなられるまでは、向こうでのんびりした方が良さそうですわ」
咲夜の最後の一手に唖然としたのか黙り込んでしまったレミリアに咲夜はとどめの一言を放った。
レミリアは思わず「…ぎゃふん」と口にしながら、自分の一手のどこが悪かったのか試行錯誤しながら再びうんうんと唸っている。
「お嬢様は少々攻めに気が向きすぎですね。若い証拠ですわ」
「年下に言われたくないわ」
どう考えても、チェックメイトの道しか見えず、拗ねたようにレミリアは口に出した。
2人がやっていたのはチェスだ、レミリアが咲夜の部屋に見舞いに来て、暇つぶしがてら、負け続きであったチェスのリベンジにと意気込みながら持ってきた、序盤は確実に優勢であったのだ。そのあとからなし崩しに劣勢となり、結果は惨敗であった。
時でも止めたのかしら、とあり得ない相手の不正を疑ってしまう程の見事な咲夜の手腕だった。
その後も何回戦かやったのだが、全てレミリアの負けで終わってしまった。
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「咲夜、あと……いくつぐらいかしら?」
度重なる連敗のショックから何とか立ち直ったレミリアはチェスの片づけを終えて、一息ついている咲夜に言った。
「そうですね、後、幾数年程でしょうか、自分の体ですので、よくわかります。」
「そう……」
ほんの少しだけ、沈黙が流れる
「そうね、長らくメイド長として紅魔館に貢献してきた貴女に、何か褒美でも……と思ったのだけれど、何か要望はあるかしら?」
「いいえ、御身に仕えることが最大の褒美ですから、ありませんわ」
そうだ、いつもこうなのだ、このメイド長は。
前々から、こう聞いているのに、返ってくる言葉はいつもそれだ。
無欲を美徳と認めるべきか
それとも、もっと欲を出して我儘を言うようにと叱るべきか
ここの部分だけは絶対に譲らない頑固者なのだ、何を言っても咲夜は変わらないだろう。 そうレミリアは思った。 これが咲夜なのだと。
「ただ……」
と咲夜は切り返すようにそう言った。
「ただ……最期に一つ、願いを言ってもいいのなら、ありますわ」
「……何かしら?」
咲夜が願い事を言うなんて珍しいとレミリアは興味を露わにしながら、咲夜の願い事を聞いてみた。
私が死んでも、決して泣かないで下さい。
従者の死を悼んで主が涙を流して下さる。
それは従者にとって、とても幸せなことなのでしょう。
でも、私はそんなお嬢様は見たくありません。
ただの一従者が死んだだけで心動くような、そんな姿は余りにも似合いません。
我儘で自分勝手でいつもやりたい放題で周りを巻き込む、そんな、私の敬愛するお嬢様で在り続けて下さい。
……それが私の願いです
「オマエが死んだら私が泣くと?」
「ええきっと。こうして言っておかなければ、それこそ子供のようにわんわんと」
「……可愛げのないやつになったわね、このクソババアめ」
「張り倒しますよ?」(ムニッ
「ほうひはへはひはへんへひは(申し訳ありませんでした)」(グニグニ
咲夜の寿命まで残り数年、 絶対的な絆と主従で結ばれた2人の会話がそこにはあった。
余談だが、レミリアが咲夜に抓られた片頬は数日程 腫れが治まらなかった
ショックでカリスマガードをしてたとかしてないとか