Fate/SERAPH Memory   作:超ローマ人

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悪尼

遂にBBの野望を打ち砕き、マシュを救うことに成功したカルデア。

しかし、「岸波白野」としての記憶を思い出したことで記憶容量がオーバーした藤丸は倒れてしまった。

「うーん……。」

「あら、思ったより症状が軽そうで良かったです♪」

玉藻に起こされ藤丸は部屋を見た。

「なるほど…これがBBチャンネルか。」

「倒れた先輩に寝床を与える、心優しき後輩・BBちゃんでした!」

「どの口が言うんですか、この毒婦!」

「は?」

「は?」

二人の女の喧嘩を余所に藤丸は起き上がり、化粧室へ行った。

 

 

鏡を見て、変化した自分を見た。

「そうか、これが俺の髪………茶色が入ってる。」

藤丸は左腕が赤く光るのを確認した。

すると、鏡には自分ではない全ての髪が茶色い高校生ぐらいの少年が映っていた。

「オレが君の一部になろう。…元々なってるけど、更に深い物となってオレじゃなくて君が主人格となる。」

「そうか……たまにネロとかと話したくなったら交代してやっても良いぞ?」

少年・『岸波白野』は「ありがとう」とだけ言って、鏡から藤丸の中に入った。

藤丸は鏡を再び見ると右目が蒼、左目が茶のオッドアイとなった。

さらに右手にある盾のような令呪も横に広がり、植物の蔦に絡まった剣のような物へ変化していた。

 

 

「おい、雑種。その髪は何だ?」

化粧室から出ると、体に赤い紋様を浮かばせた上半身裸の男がいた。

「どうやらイメチェンしちまったようでな。」

「口が達者なうつけだ。相変わらず度胸だけは一人前だ。」

「王様はオレが『もう一人』いることに驚かないわけ?」

藤丸はそう言うと、ギルガメッシュは腹を抱えて豪快に笑った。

「フハハハハ!貴様は我を笑い死にさせる気か!?二重人格な者ぐらいで怖じけつきはせぬわ!」

「じゃあ、今のオレが『どっち』か分かる?」

「フン、そんなことはどうでも良い。何故かは…他の者に聞け」

 

 

「全く…君も物好きだな。」

「へへへ……今は束の間の休息って思ってるからな。」

藤丸は以前よりもフランクな態度でサーヴァントたちと接している。

その分彼はサーヴァントに『近付いてる』ということだ。

「一つだけ聞かせろ、マスター。『マシュを巻き込みたくない』……というのは本気なんだな?」

藤丸の表情は一瞬強ばった。以前までのやり方ではマシュの保護が難しい現実を突かれたからだ。

「あぁ……以前の私はマシュとの距離を取りすぎた………。その反動が今回の事件に繋がった。」

「では、どうするのかね?」

「…………分からねぇ。けど、どうすれば今回の二の舞を演じないで済むか思い付かない訳じゃない。」

藤丸はエミヤに囁く。

「……なるほど、その方法を取るか。だが、マシュ君にとっては暫くそっとしておいたほうが良いだろうな。」

「……そうだな。マシュが落ち着いたら少しずつ、彼女に会いに行くよ。」

藤丸は煙草を咥えながらBBのアジト内を彷徨いた。

 

 

「瓢箪に入れた酒ももう少しで終わりになりそうだな。」

藤丸は灰皿を側に置きながら瓢箪を振っては溜め息をつく。

「人間って不便ね。それが無いとやってられないってわけ?」

「メルトリリスか。身体の調子はどうだ?」

藤丸がいる部屋に入ってきたのはメルトリリスだけであった。

「貴方のその言い方……最早勘づいていたのね。」

「あぁ……。教会に着く前から勘づくべきだった。」

「ったく、鈍いなのか鋭いのか。貴方も必死になることもあるのね。けど、貴方が想っているのはただ一人の皇帝…。」

「そうだな。」

「貴方と後輩の闘いを見て思ったのは……『どうして人間は醜いんだろう』ってのが精々よ。」

メルトリリスは更にだめ押しに「美しくない」「狂っている」と切り捨てた。

「そうだ。俺は狂っている。けどな……苦しいほど狂ったかのように叫ぶとスカッとするんだ。」

「あら、『誰かのための闘いなら、醜いはずもない』理論をぶちかまさないわけ?」

メルトリリスの問答に藤丸はしばらく黙っていたが立ち上がる。

「アレは……『自分』との闘いだった。『誰かのために』じゃない。『俺のために』だ。まぁ、どちらにしろ『人間のエゴ』だと嘲笑しても構わないよ。」

「何言ってるのよ。」

メルトリリスは腰を伸ばして藤丸を一瞥する。

「『過去』の私と『今』の私は違う。一方的な愛は身を滅ぼす。そのことを何処かの誰かさんが教えたじゃない。」

メルトリリスはそれだけ言うと藤丸から離れた。

「また後でね、月のマスターさん。」

その言葉を残して風のように去っていった。

藤丸は再び煙草を吸いながら溜め息をついた。

「『どちら』で話を進めていたかバレたか。」

藤丸は煙草の火を消した。

 

 

一方で灯火が消えたある教会では。大人二人がお互いの身体を暖めていた。

「憎い……憎い!」

「ええ……そうよね、アーノルド?憎くて溜まりませんよね?」

女がアーノルドという名の男に囁く。

男は竜の幻影に対する恐怖と年下の青年に一杯食わされたという屈辱が一方的な怒りへと変わり始めていた。

女は男の機嫌を取りながら今に一つになろうとしていた。

男の脳内を自分で満たしたくなったのだ。その『隙間』に巣くうことによって。

「じゃあ、それを忘れるぐらいに……溶け合いましょう?ね?」

マーブルという女は妖しげな声でアーノルドに囁く。

すると教会は暗い海の底に沈んだかのように崩れ、落ちていった。

 

 

藤丸はBBアジトの一つの扉を開けた。

そこには夕陽を浴びた校舎の景色があった。

「ここは……?」

「あぁ…ここは……懐かしいな。」

藤丸の心の住人と化した岸波が嬉しさと淋しさが混ざった表情で校舎を見つめていた。

「『再現』だと分かってても……なんだかな」

「……入ろうか。」

 

藤丸は校舎を開け、中を調べた。生徒たちが使っていたとされる教室、ゲーム機がおいてあった個室そして生徒会室を見て回った。

最後に、『自分』が入っていたとされる個室に入った。

そこには暗い部屋の中で白い薔薇が咲いていた。

「………奏者……なのか?」

「あぁ、『ただいま』。セイバー。」

「アレから何年待たせるつもりだったのだ……?この……この……馬鹿者ぉぉ!!」

ネロは『岸波白野』の面影を見せた藤丸に抱きつき、彼の腕のなかで川を流した。

「ごめんね……ごめん。」

その様子を一つの桜が見守っていたが、その気配を消し去っていった。

「良いのですか?リップ?」

「えぇ……良いのです。二人きりのほうが色々と話せるようなので。」

「私も、その意見に賛成です♪さて、もう暫く持ち場で待機しましょうか。」

二つの桜が立ち去る中、個室では薔薇が咲き乱れた。

皇帝の赤い花が彼女自身をセイバーと呼ぶ青年の体にゆっくりと落ちていく。青年は皇帝の愛を受けるようにその口を赤い花に接していく

 

 

───数時間経過したとき、放送が入った。

「皆さん、至急BBちゃんの元に来てください──」

皆が戦闘の準備を終え、BBの元へ集まった。

「皆早いなー」

「マスターが一番遅くてどうするのよ!」

「すまん、すまん。ところでBB。SERAPHの秘密を知れるんだな?」

「えぇ、これから最深部へ向かいますので。」

 

 

藤丸は半壊し、人が入っていた痕跡が見受けられるカプセルが散らばったドームの中に入った。

「これは───」

藤丸は一瞬言葉を詰まらせたが、冷静に言葉を続けた。

「俺の知るSERAPHと大分違うことにも触れたいが………『ただの人間』がどうしてこんな血生臭いところに居やがるんだ……?」

すると、物陰から女が男を率いるように現れた。

「マーブルっっっっ!!!!」

「ご主人様も気付いてますが、敢えて言わせて頂きます…!この女は臭ぇ!人間よりも酷い臭いがプンプンするぜぇ!!」

「これが本当の『毒婦』…!!」

トリスタンと玉藻が真っ先にマーブルとその後ろの影を睨む。

マーブルは妖しげに笑いながら、藤丸を指差す。

すると、アーノルドがナイフを持って藤丸に飛び付く。

「!てめぇは!!」

「俺の支配下になれぇ!藤丸立香ぁぁ!!!」

「丁重に断らせて頂くぜ!」

藤丸と対峙していた男は枯れ枝のように細くなっていたが、藤丸は相手の一言でアーノルドだと判別し遠慮なく腹を殴り気絶させる。

「殺さなかっただけ、感謝しろよ?」

気絶したアーノルドから目を離すと、マーブルの頭部に角のような物が生えていた。

「!雑種!!地面に転がってるその石ころ以下の男を見ろ!!」

「魔術!?」

アーノルドが妖しげな光を発していると、中からまるで生きているかのような刺が藤丸目掛けて飛び出した。

「テーマ実行──間に合わないっ!!」

藤丸はメイガスとは違う簡易的な魔術で防ごうとしたが、それがそこら辺ては防ぐのは難しいことを察した。すると、何者かが藤丸を刺とは違う方向へ突き飛ばした。

「!!?」

「お前なら──あの女を──」

赤い外套の弓兵が藤丸を突き飛ばしたのだ。

そして、マスターを庇った弓兵は朱く散った。

「アーチャーぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

「これで抑止は潰れましたね♪」

「てめぇだけは許せねぇ!」

藤丸はマーブルを睨んだ。すると、マーブルは人間の皮を捨てたかのように顔を千切り捨てながら外見を変化させた

「お前は……!!!」

「あら、私も有名になったのでしょうか?」

「殺生院…キアラ!!!」

藤丸と共に過去のSERAPHの全てを思い出したネロは、その顔と名前を良く覚えていた。

「……セイバーさんまでも覚えていたなんて光栄です♪」

藤丸はキアラを見てこのSERAPHで見たもの、そして生きた刺───魔神柱を見てSERAPHで何が起こったのかを察した。

「そうか…お前があのように皆を……??」

「皆さん、この腐れ外道尼をやっつけてください!」

「あら、貴女とは気が合うと思ってたけど?BBさん?」

「今ここで倒されるべきは!てめぇだ!!!」

藤丸は赤い外套と白銀の鎧を纏い、先陣を切った。

サーヴァントたちも続いてキアラに攻撃を仕掛けたが、キアラ本人は不敵な笑みを隠せないでいた。

 

次回予告 SERAPHで密かに生き残っていた人たちを次々と衰弱死または争わせた結果の死へと誘ったことが判明した殺生院キアラ。彼女の目的はSERAPHと一体化し、地球上の人間たちが復活した時に支配するというものであった。

藤丸たちは攻撃を仕掛けるが、巨大化したキアラ相手に全滅寸前にまで追い込まれてしまった。

そして藤丸の中のマグマが迸る時、正義の心を持った真の人類悪が現れる!

次回 Fate/SERAPH MEMORY 『覚醒の龍』

 

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