いつからだろう。君のその横顔を目で追うようになったのは。
「オイ見てみろよペンシルゴン。天下のプロゲーマー様が死んだ目でインタビューを受けてらっしゃるぜ」
「なんだって!そいつは面白いじゃないか!かわいらしく頬を引きつらせちゃって全くこの女男魚類は!!」
冗談のような掛け合いをしながらサンラクくんと二人で見るのは
……まぁ、君はそんなこと全く気にしてないのだろうけどね。
「……ところで女男魚類ってなに?」
「いや俺に聞くなよ」
世紀末円卓の鉛筆王朝事件以来、私達は三人でつるんでゲームをやってきた。それでも、『ゲーム』という舞台において『プロゲーマー』と『アマチュアゲーマー』っていうのはやっぱり別物なんだろう。本人たちがどれだけ気にしなくても、そこには明確に「
あ、サンラクくんにプロ並みの資質があるのはもちろんわかってるよ?
それでもね、私と一緒にただのアマチュアゲーマーとして隣を歩んでくれる君との距離感が、私にはひどく心地いい。
だから、私は君と一緒にいたくなったのかもしれないね。
「このインタビューな、半分以上の質問が一般募集かららしいんだけど、その募集枠の9割5分を魔境民に独占されたらしいぞ」
「ぷはっ。それマジで?」
「マジもマジよ」
なるほどね、そりゃカッツォくんも表情が取り繕えなくなるくらいに追い込まれるわけだ。
ちなみに、爆笑してるサンラクくん、その大量の質問の中に
「ていうかサンラクくん、君もいずれ
「ん?俺はまだ進路確定させたわけじゃないからなぁ…」
「大学は行かなきゃいけないんだっけ?」
「そ。家の決まりだし」
「ふーん。で、
考えこむような仕草を見せてるけどね、サンラクくん、それはきっともう答えが出てるんじゃないのかい?
「まだ決めてないけど、確実に外堀埋められ始めてるんだよなぁ…」
「まぁ、間違いなく業界は君の参戦を望んでいるだろうね」
「だよなぁ」
お姉さん分かっちゃうなぁ……君は嫌なら本気で逃げるはずだからね。結局、本心ではまんざらでもないんじゃないの?
「まぁ、プレッシャーかけてくるって意味ではプロ連中よりガト社のが怖いが」
「ん?」
「何でもない」
『では次の質問に……魚見さんの警戒する国内ゲーマーってどのくらいいるんですか?』
『………!!そうですね、
魔境からの質問から解放されたとたん急に饒舌になったよこのプロゲーマー。しかもかなりイキイキしてる。急に雰囲気が変わって記者側の人たちが揃って困惑してるじゃん。
「……………」
そして、私の隣でも一人、雰囲気の変わった男がいる。その瞳が見据えるものは果たして魚臣慧なのか、彼の見据えるプロゲーマーたちなのか、それらすべてに大立ち回りをしてのける自分自身の未来の姿なのか。
さっきは同じアマチュアゲーマーなんて言ったけど、やっぱり
……ねぇ、サンラクくん。
その時、私が君の隣にいるにはどうしたらいいのかな?
今から全力外道プレイでプロ界隈に殴り込みでもかける?最終的には転職まで視野に入れて?
………いや、そんなことはできない。分かってる。普通に実力が足りないし、そもそも実力が足りてたとしても、『
それとも、サンラクくんは私を『
………いや、そんなこともない。君が私のことをそういう目で見てないことなんて十分にしってる。
じゃあ、
………いや、それじゃあ私が満足できないんだよ。
あぁもうめんどくさい!!いっそもう迫っちゃえば!!
………色気で落とせたら苦労しないよ全く。それに、今の距離感を崩す度胸は私にはない。
「どの道破滅かぁ……確かに、その方が私らしいのかも」
「ん?何か言ったか?」
「いや、なーんも」
「ならいいが」
「そんなことより、今からリアル魚臣慧でも煽りに行こうよ!」
「え!?あいつ仕事中じゃねーの?」
「もうそろそろ終わってるはずだよ!」
「よっしゃ、全力で笑いに行ってやる」
全く、恋は燃え上がる炎だなんてよく言ったものだ。
私の恋は燃え上がる。
その炎は、導火線を走り、確実にタイムリミットに迫っていく。
それでも、今はこの刹那的な快楽に身を任せよう。
それで、導火線が燃え尽きてしまって、私の
…………君も私の巻き添えになって一緒に吹き飛んでくれる?
初めて会った時のように、二人でもろとも吹き飛ばして、新しい私たちの関係を始めよう。
炎が燃え尽きてしまった私と、そんなことは全く知らない君の、正しい関係を。
「おい、行こうぜペンシルゴン!」
「待って今行く!!」
いずれ消えてなくなる期間限定の儚い恋。
その微かな煌きが私の心を掴んで離さない。
本当に、
鉛筆は先の見えきった自分の恋にすら輝きを見出してしまいかねないと思うんですよ。
例え報われなかったとしても、その刹那的な快楽に身を委ねてしまうのではないかと。そんな儚さを秘める鉛筆も、好きだなって。
苦手だった人は申し訳ないです。