夢破れた世界から少女は何を見る   作:chee

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前回の光属性ちゃんの場合とはまた別の場合。

秋津茜曇らせが苦手な方々はブラウザバック推奨です。



……この世界は、龍龍其ノ五十。その最後の一撃じゃ足りなかったら。そんな「もしも」の世界のお話。


光属性ちゃんの場合Ⅱ

新大陸拠点を襲ったユニークモンスター、天覇のジークヴルム。

 

 

その最後の試練、「覇滅炉心(バスターピース)

 

5体の竜と戦っていた者たちが、人と人とで戦っていた者たちが、その自爆を止めんとして一斉に黄金の龍(ジークヴルム)へと刃を向けた。

 

そして。

 

 

『【超転身(ちょうてんしん)】!!!』

 

 

黒の竜とその体を重ねた少女が立つ。

 

多くの戦士(プレイヤー)が彼女のために(ジークヴルム)の気を引こうと走り、飛翔し、各々の切り札を切る。

 

戦士たちの高火力魔法が(ジークヴルム)へと牙を剥く。

 

そして少女(主人公)は飛び出した。

 

 

たった一つの勝ち筋(逆鱗)へと向かって。

 

 

「致命……忍法!!」

 

 

 

「【満開咲閃(ハナヒラケ)】---っ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ました。

 

 

いや、私は眠ってなどいなかったからこの表現はきっと間違っている。

 

であれば、私が今したのは。

 

 

 

……リスポーン。

 

 

 

「……ッ!!!」

 

 

必死に記憶を手繰る。あの一瞬でジークヴルムさんに接近した私は私の持ちうる最高火力をぶつけた。

 

だけど。

 

皆さんの攻撃で『それじゃあ()()()()()()』と察したジークヴルムさんがそこ(逆鱗)を警戒するのは今思えば当然の事で。それでも愚直に突っ込んだ私の攻撃は…………

 

 

届 か な か っ た 

 

 

「ぁ……ぅ……」

 

 

顔から血の気が引く。嫌に鳴り響く心臓の音を聞きながら私はセーブ用ベッドを飛び出した。

 

「すみません!!!どなたかテレポートゲートを使えるヴォーパルバニーの方はいらっしゃいませんか!!!」

 

ラビッツの街に飛び出して初めて会ったヴォーパルバニーさんたちに奇妙な顔をされる。

 

「そんなに焦ってどうした?どこまで行きたいんだ」

 

「前線拠点まで!!今すぐに!!」

 

「任せときな!」

 

親切なヴォーパルバニーさんが扉を開いてくれた。

 

「ありがとうございます!!!!」

 

お礼を一つ残して現れた扉に駆けこむ。

 

 

その扉の向こうの景色は。

 

 

 

何もなかった。

 

 

 

一面の更地。前線拠点の大きなお城もない。樹海も半分以上消し飛んでしまっている。ただ広がっている地面。

 

 

「……うそ」

 

 

そして、当然、いない。

 

いるはずの人たちがいない。

 

プレイヤーはみんなリスポーンしたのだろう。

 

 

だけど、N()P()C()()()()()()は違う。

 

 

シークルゥさんも。ノワルリンドさんも。エムルさんもディアレさんも聖女さんも竜人族(ドラゴニュート)のみなさんも蜥蜴人族(リザードマン)のみなさんも巨人族(ギガント)のみなさんも鳥人族(バーディアン)のみなさんも蟲人族(バグマン)のみなさんも!!!!!

 

みんな、みんな。

 

 

「うそだよ、こんなの」

 

 

これだけの広範囲を更地にしたジークヴルムさんの自爆。それを耐えられるNPCなんてきっといない。……そして、死んだNPCは復活することはない。

 

考えてみれば簡単なことだ。

 

 

ーーー私が、逆鱗をちゃんと穿ってさえいれば。

 

 

「そんな……」

 

やだ!やだ!!

 

まだ探せばだれか生きてるかもしれない!

 

もしかしたらあの自爆から逃れる魔法を持っている種族がいたかもしれない!

 

聖女さんのすごい魔法で生き残った人たちがいるかもしれない!

 

もしかしたら!

 

もしかしたら!!!

 

あるかもわからない最後の手掛かりを探してひたすら走りまわる。既に視界は涙に歪んでいて何も見えないけれど。それでも走らずにはいられなくて。

 

 

そして走り続けて、一つの人影を見つけた。

 

 

「ーーッ!!」

 

 

生きてる!!生きてる人がいる!!

 

走り寄る。そして見えてきた()()。きっとあれは鳥人族(バーディアン)の人だ。もしかしたら他の種族の方たちも……

 

 

 

「……秋津茜?」

 

 

「………サン……ラク…さん、でしたか」

 

 

鳥男が振り返ってみれば、見覚えのある覆面、見覚えのある刻傷。その姿は間違いなくサンラクさんの物だった。

 

「サンラクさん、NPCのみなさんは……」

 

「……見つからなかった」

 

「そんな……私が…私が…」

 

一度止まった涙が、再び溢れ出してくる。

 

「秋津茜、お前が責任を感じる必要なんてない。そもそも、あの極限状態の中で一度きりのチャンスで警戒されている中たった一枚の鱗に攻撃しなきゃいけないなんてどんなクソゲーだって話だ。誰もお前を責めないし、実際に、お前のせいじゃない」

 

 

…だから、気にすんな。

 

 

サンラクさんはそう言う。でも、シークルゥさんやノワルリンドさんともう会えないというのはまぎれもない事実で。サンラクさんだってエムルさんともう二度と会えなくなって辛いはずなのに。それを気にせずに遊び続けろと!そう言うんですか!?

 

 

 

私は、サンラクさんほど強くない。

 

 

 

サンラクさんは私よりもずっとゲームがうまくて、

 

サンラクさんは私よりもずっと経験豊富で、

 

サンラクさんはきっと私よりもずっと傷を負い慣れている。

 

 

……私には、そこまでの強さはない。

 

 

「…………サンラクさん」

 

「ん?」

 

 

自分の中に感じたことのない怒りを感じる。こんなにも弱い自分に。サンラクさんに()()()()()を抱いてしまっている自分に。

 

 

 

「……なんで、なんとかしてくれなかったんですか」

 

 

 

「サンラクさんなら何とか出来たんじゃないんですか!?リュカオーンさんも、クターニッドさんも倒してくれたじゃないですか!!ウェザエモンさんも倒せたんですよね!!なんで!!ジークヴルムさんも倒してくれないんですか!!!」

 

 

「私だって頑張ったんです!!それでも!無理だったんですよ私には!!そんな私なんかを信じたせいで!!皆さんが……ッ!!」

 

 

 

言って、ハッとした。今、自分が何を口走ったのかを。

 

……もう、わたし、だめだ。

 

 

「すいませんでした……失礼します」

 

 

 

 

指は、迷いなくログアウトボタンへと伸びた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ぅっ……」

 

 

涙が、止まらない。

 

結局、私が勝手に理想の主人公像をサンラクさんに押し付けて、その責任を押し付けようとして、ひとりで逃げ帰ってきただけなんだ。

 

あれだけのNPCの命は私の肩には重すぎて。そこから逃れる言い訳にサンラクさんはきっと都合がよかったんだ。

 

……それなのに。

 

まだ心のどこかでサンラクさんが今の状況を何とかしてくれるって思いこんでる私がいる。

 

もうどうしようもないことだけはわかり切っているのに。もう戦いはとっくのとうに終わってしまっているのに。サンラクさん(私の主人公)なら、きっとこの状況から救い出してくれると思ってしまっている。

 

 

 

そんな自分が、たまらなく大嫌いだ。

 

 

 

でも、本当にもしかしたら、

 

強くて、かっこよくて、ずっと私の前を走ってくれる貴方なら。

 

 

「……あぁ」

 

 

そういう事か。だから私はサンラクさんにこうも期待してしまっていて。まるで少女漫画の主人公のように、どうしようもない状況からサンラクさんに救ってもらいたくて。

 

 

 

「……どうしましょう、サンラクさん。どうやら、私はサンラクさんのことが好きみたいです」

 

 

 

 

だから、どうか私のことを救わないでください。

 

 

 

もう、私は『あの世界(シャングリラ・フロンティア)』へは行けない。




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