鉄華団全員生存ルートRTA 【参考記録】   作:オールF

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RTA関係ないので主のモノローグとかはないです。
アーヴラウ代表指名選挙終了から3日後〜2期突入3ヶ月前くらいの話です。


きっと宇宙で繋がっている。

 鉄華団がエドモントン議事堂に蒔苗東護ノ介を送り届け、彼は無事にアーヴラウ代表指名選挙に当選した。さらに彼に同行したクーデリア・藍那・バーンスタインにより、ギャラルホルンとアンリ・フリューの癒着が明らかとなった。これにより各経済圏はギャラルホルンへの信用を無くして、独自の防衛軍事力を保有することを決断。その内、アーヴラウは防衛軍設立とともにその軍事的支援を鉄華団へと依頼する運びとなった。

 

 

「今回の仕事も上手くいって、おまけにこの先の仕事も出来た。これから鉄華団は忙しくなるぜ」

 

 

「……そうかい」

 

 

 嬉しそうに語る鉄華団団長の前にはモビルスーツ戦において多大なる戦果を上げた星原・モーリノがテイワズ系列の医療施設の回復カプセルで横たわっていた。

 最新の医療技術ということもあって、折れていた骨のほとんどは強固に繋ぎ直され、吐血による血液の減少も輸血によって回復している。けれど、退院はまだ少し先の話で星原は既に動ける身体が動かせないことに鬱憤を感じながらオルガの話に耳を傾けていた。

 

 

「アンタの完治まで報酬とは別に蒔苗の爺さんが宿泊施設を用意してくれたから、ゆっくり治してくれ」

 

 

 そう言って、「じゃああとはよろしく頼んます」と窓際で星原の世話をする女性に一礼して彼は病室を出ていく。

 

 

「よかったね、鉄華団のみんなキミが治るまで待ってくれるみたいだよ?」

 

 

 そう声をかけたのは、名瀬・タービンの妻であるエーコ・タービンなのだが、星原には未だにどうしてここにいるのかが理解出来ていなかった。

 何度理由を聞こうにも、手が空いてるのは自分しかいないからと宣うのだ。星原はタカキかライドに替わってもらうよう見舞いに来た団員に話している。

 初めは「わーったよ」と言っていた面々も目の前で修羅でも見たかのように怯え声を上げたと思うと「いや、やっぱり女の子に世話してもらった方がいいんじゃねぇーの?」と言って足早に部屋を去っていくのだ。ちなみに今のはユージンの反応である。

 

 今まで多くの見舞い人が訪れたその病室は再び静寂に包まれた。ビスケットやサヴァラン、三日月と昭弘にシノやおやっさんなど、事後処理で忙しいだろうに暇を見つけては星原の病室にやって来ては彼とたわいもない話をした。その中でも三日月は「また分身やってよ」と無茶ぶりをしてきたのは記憶に新しい。

 他にも名瀬がやってきた時には柄にもなく畏まってしまった。けれど、名瀬は「気にするな」とヒラヒラと手を振って笑っていた。こういう人柄だから、多くの女性に好かれてその愛を一身に受け取れるのだろうかと星原は考えているとオルガが出ていってからもたらされた平穏もわずか1分で破壊された。

 

 

「というかキミほんと無茶しすぎだからね」

 

 

 星原が世話役を替えて欲しかった理由はエーコが嫌いとかではなく、人妻で思ったよりよく喋りかけてくるからであり、食事も1人で摂れるのに執拗にあ〜んを強要してくるからである。

 最近は慣れてきて、文句も言わなくなったがやはり異常なのでは? と度々考えるようになった。

 そして、何より面倒なのが説教である。バティンのスラスター出力のリミッターを勝手に外したことに対して未だに怒っており、エーコがそのことを思い出す度に怒られている。だが、これが彼女なりの優しさなのだろうと思いつつ、ついでに名瀬の気苦労を痛感していると部屋の扉がノックされた。

 

 

「あ、どうぞー!」

 

 

 それに返事したのがエーコであるが、今更なんでお前がという気にもならない星原は開かれたドアから入ってきた客人を一瞥した。

 

 

「失礼します」

 

 

 金色の美しい髪をなびかせながら、クーデリアはそう言って花束を手に星原の病室へと入ってくる。その後ろにはメイドであるフミタンの姿もある。

 

 

「どうですか身体の具合は?」

 

 

「結構平気みたいだけど、退院は明日か明後日になるってさ」

 

 

「そう、なんですか。それはよかったです」

 

 

 少し言い淀んだクーデリアに星原は目を細めたが、野暮なことは聞かないことにした。恐らく、自分が治ったら三日月やアトラは火星に帰ることになる。彼らと離れるのが寂しいのであろう。

 そんな彼女の心を慰めることが出来るのは自分ではなく、あの二人しかいないだろうと結論づけた星原は何も言うことなく、ただ首肯で返した。

 

 

「クーデリアはどうするの? 火星に帰るの?」

 

 

「いえ、しばらくは蒔苗先生のところで勉強させてもらうつもりです」

 

 

「そっかー」

 

 

 クーデリアが蒔苗の元を訪れたのは火星の自治権独立のためであり、まだその目的は果たしていないため、彼女は地球に残る決意をした。それが自分にやれることであり、幸せにすると彼女が彼に約束したことでもあるからだ。

 

 

「フミタンさんは?」

 

 

「……私はお嬢様のメイドですので、共に残る予定です」

 

 

 当然といえば当然だろう。クーデリアはもはや火星のご令嬢ではなく、火星独立の旗印。彼女に付き人は必須であり、それは長年彼女の身の回りの世話をこなしてきたフミタンにこそふさわしいだろう。

 

 

「エーコさんはどうされるのですか?」

 

 

 不意にフミタンの放った質問にエーコは悩んだように顎に手を添える。

 

 

「それなんだよねー。名瀬のとこに帰ってもいいんだけど、どうせモビルスーツの整備とかで鉄華団とは関わりがあるだろうし」

 

 

「今回の戦いでバティンやバルバトスもかなりダメージを受けていましたしね」

 

 

「そう! だから、一旦は歳星かな?」

 

 

 特にスラスターを焼き焦げるまで使用したバティンの修復は急務であり、今はオルガ達の仕事完遂の祝いや、出向組として死線をくぐり抜けたラフタやアジーを労っている名瀬の船に載せている。

 おそらく、タービンズはマクマードへの報告も兼ねて歳星へと向かうことは明白であり、その事に対して「寂しくなるね」と呟いた。

 しんみりとしたムードになる病室で、本来は話すべきであるはずの男が珍しく口を開いた。

 

 

「どうせ宇宙で繋がってるんだ。会おうと思えばいつでも会えるだろ」

 

 

 クーデリアからすればこんなことも言えるのかと驚きであったが、彼の優しさについて理解のある2人はぶっきらぼうにこぼしたその言葉に頬を緩めた。

 

 

「そうですね」

 

 

「うん、私達の宇宙は繋がってる」

 

 

 そう返したフミタンとエーコに、クーデリアもまた自分の大切な人と離れていても、宇宙という大きな空があればいつでも会えるし、今や違う惑星にいても連絡が取れるご時世だ。そう別れは辛くないだろう。そう考えると今まで沈んでいた気持ちがどんどん晴れやかになってくる。

 

 

「ええその通りですね。私も頑張っていきます」

 

 

 それではと部屋を出ていった2人を見送り、エーコもまた名瀬の所へと戻っていくと星原に1人だけの穏やかな時間が流れる。だが身体は動かせずすることもないので眠りにつこうと思ったが、面会時間も終わりという頃にドアをノックされる。医者か看護師かと思ってドアに目を向けていると入ってきたのは、黒い装束に白く長い髪をした金色の仮面をした謎の男であった。

 

 

「失礼するよ。君がガンダムバティンのパイロット、星原・モーリノで間違いないかな?」

 

 

「……そうだが」

 

 

 何者だと問いかける前に外見的特徴からオルガの言っていた地球降下の手段を提供してくれた男だと思い至った星原は「何の用だ」と問いかけた。それに男は薄く微笑んで口を開いた。

 

 

「ふっ、用というほどのものでもないが。そうだな、礼を言いに来た」

 

 

「あ?」

 

 

「君達のおかげでギャラルホルンの腐敗は明るみになり、その信用は失墜した。ありがとう」

 

 

 礼を言われるようなことはしていないはずだが、自分の知らないところでこの男に何かしらの利益をもたらしたのだろうか。判断するには材料が少なすぎるため、星原は眉を顰めるしかない。

 

 

「言葉だけでは信用できないか。では、何かあれば私を頼るといい。ガンダムバティンに乗る君になら力になってもいいだろう」

 

 

 どうしてそんなに上から目線なのか訝しんでいると、男は踵を返して部屋を出ていく。あまりの唐突さになんなんだったんだと言葉を紡ぐ暇もなかったが、無駄な会話をしなくて済んだからいいかと星原はため息を吐いた。

 こんな身動きも取れない状態もあと数日の辛抱だと、瞼を閉じると彼は今度こそ眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ###

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺に地球支部を?」

 

 

「あぁ」

 

 

 無事に退院し、火星へと戻った鉄華団は地球に行く前では考えられないほどの忙しさに見舞われていた。その仕事のひとつに鉄華団を軍事顧問として雇いたいというアーヴラウからの打診により、オルガはビスケットと相談して地球に支部を作ることを決定した。そして、その支部長に星原・モーリノを推薦した。

 打診側の1人である蒔苗もこれに賛成し、支部設立の業者に力を入れて作らせようと大いに喜んでいた。

 

 

「別に構わんが……」

 

 

「じゃあ、決まりだな」

 

 

 特に断る理由のない星原がそう言うと、オルガはすぐさま地球支部の人員配置についての話に移った。星原の補佐としてチャドとタカキ、実働隊としてブルワーズで実戦経験があるアストンと昌弘などを人選し、その他にもモビルワーカーの操作経験がある者を中心に選んでいく。

 そんな中である人物から事務職に立候補があがった。

 

 

「オレも地球支部のメンバーに加わりたいんだけどいいかな?」

 

 

「アンタは……」

 

 

 そう申し出たのはサヴァラン・グリフォン。火星に戻ったことで実家へと帰属し、姓も戻したビスケットの兄であり星原との契約者である。久々に帰れば、自分のことなどもう覚えていないかと思われた妹達には抱きつかれ、祖母には笑顔を向けられたのは記憶に新しい。

 色々あってやや痩せ細っていたが、祖母の家庭の味というやつで健康的と呼べるほどに身体も回復した彼は自ら地球支部の事務職へと名乗り出た。

 

 

「……事務職の方はテイワズの人間が来ることになってはいるが」

 

 

 言ってちらりと星原の方を見る。どうすると暗に問いかけたオルガに星原は口を開いた。

 

 

 

「別にいいんじゃないか。それに事務職が1人だと回らないだろう」

 

 

「……だそうだ」

 

 

「ありがとう。それでいつ出発するんだい?」

 

 

 サヴァランに尋ねられて、今度は星原がオルガの方を見た。詳しい日程はまだ決まってないが決まり次第連絡すると言ったオルガにサヴァランは頷くと早くも荷造りをしてくると踵を返した。

 

 

「なんであんなに張り切ってんだ?」

 

 

「桜さんに身を固めろとしつこく言われてるんだとよ」

 

 

 それから逃げるためだろうと推測した星原にオルガは「なるほど」と相槌を打った。

 契約者である星原にはその手の情報が本人からだけでなく、弟や姉妹、さらにはそう言った祖母からも寄せられている。家族睦まじくて何よりだが、他人を巻き込まないようにして欲しいと切に願う。

 

 

「確かにビスケットの兄貴はいい歳だもんな。そういや、アンタはどうすんだ?」

 

 

「俺はいい」

 

 

 即答した星原にオルガは苦笑すると「そうかい」と言葉を返した。理由に関して訊かないのはオルガも聞き返されたら面倒だからであり、そこまで踏み入る気もなかったというのもある。

 鉄華団も一躍急成長して、色んな輩に目をつけられる可能性はあるものの、オルガには星原という頼れる家族がいる。自分達の進むべき道を指し示してくれる名瀬とは違う兄貴分が。

 

 

「他のメンツについてはどうする?」

 

 

「お前に任せる。こっちに支障が出ない程度にな」

 

 

「ああ」

 

 

 そう言って星原はオルガに背中を向けると腹が減ったため食堂へと向かうことにした。そして、そんな彼を見てオルガは立ち上がると、地球支部への転属希望者などを募り、またあらかじめ決めた人員については自ら打診しにいくなどして動き回っていた。

 

 

「それ私も行ってもいい?」

 

 

 ある時、たまたま整備庫にいたチャドへと地球支部の事を話していると首を突っ込んできたのはエーコであり、オルガは「アンタが?」と首を傾げた。

 

 

「うん。ホッシーがあっちにいくならバティンの整備で腕利きが必要になるでしょ?」

 

 

「まぁ、確かに」

 

 

 軍事顧問をするだけならマンロディだけでも事足りそうだが、あの男のことだ、バティンも持っていくのは間違いない。それよりもオルガはエーコの星原へのあだ名が気になった。

 

 

「それよりなんでアイツのことをホッシーって……」

 

 

「え? あぁ、なんとなく?」

 

 

 疑問を漠然とした答えで返されたオルガは面食らい、それを近場で見ていたチャドも苦笑いしていた。

 

 

「……兄貴に聞いてみる。あとはおやっさんだな」

 

 

「あ、どっちも私が聞いとくよ」

 

 

 あとで通信機借りるね〜とヒラヒラ手を振りながら、目に見える距離にいた雪之丞へと話しかけるエーコを見てオルガは肩を竦めた。

 

 

「なんか星原さんとエーコさんって仲良いよな」

 

 

「そうかぁ?」

 

 

 クーデリアを送り届ける仕事の時は一緒にいるのをよく見た気がするが、病院での世話役以降はすっかり見ていないように思う。それは星原が戦いがなくなりバティンに乗らなくなったことと、エーコがこちらに出向してきてメカニックとしての務めをしっかり果たしているからだと思われるが。

 

 

 

「俺もいい人見つけたいなぁ……」

 

 

 

 チャドの呟きにオルガは特に何か返すことはなく、地球行きの件頼んだぜと一声かけるとタカキやアストンを探しに足を進めた。

 そして、またその途中でえらく大荷物を持ったフミタン・アドモスを見かけた。クーデリアは既に火星に戻ってきており、ノブリス・ゴルドンの支援金やハーフメタル資源の利益もあって商会を立ち上げたのはつい先日聞いたばかりだ。そこにはフミタンの姿もあったはずだが、と疑問の声は自然と出ていた。

 

 

「アレ? アンタなんでこんな所に」

 

 

「……あぁ、団長さん。実はお嬢様のメイドをクビになりまして」

 

 

「はぁ!?」

 

 

 なんとなくで話しかけたオルガだったが、その話を聞いて思わず手に持っていたタブレットを落としそうになるも間一髪でキャッチすると顔を上げた。

 

 

「クビって……」

 

 

「えぇ。お嬢様からではなく、バーンスタイン家からですが」

 

 

 理由に関しては伏せられていたが、念の為クーデリアに尋ねると本当らしく、彼女は設立した会社のスタッフとして雇用を考えていのだが、フミタンの方から首を振ったらしい。彼女にも理由を聞いたが自分からは言い兼ねるとの事で、オルガの頭を悩ませた。その際の表情が暗くなかったことから喧嘩別れなどではなさそうなのだが、考えてもそれらしい理由は思い浮かばない。

 断る理由もないので、応接室にて彼女の配属先を練っているとそういえばと、オルガは頭に豆電球が浮かんだかのように閃いた。

 

 

「そういや、アンタ、メイドってことは家事全般とか出来るんだよな?」

 

 

「えぇ、まぁ。他にも出来ますが……」

 

 

 出来ることをある程度書き出してもらうと、オルガは目を見開いた。こんな人材をバーンスタイン家は手放したというのか? という程にただのメイドが持つには多すぎる資格に瞬きを繰り返したが、これならと口角を上げた。

 

 

「分かった。アンタに頼みたいことがあるんだ」

 

 

「なんでしょうか」

 

 

 オルガはそう切り出すと、鉄華団が地球に支部を作ること。そこの人員を募集してることを話して、フミタンにこう言った。

 

 

「アンタには支部長の……補佐はいるし、秘書ってのはどうだ?」

 

 

 秘書が必要なほどの仕事はないだろうが、あの男の無茶さ加減にはビスケット曰く、心臓がいくつあっても足りないとの事なのでブレーキが欲しいと思っていたところだ。チャドやタカキは何かと甘いが、エーコにフミタンと女性陣の言うことなら彼も聞くのではないかとオルガは自分の考えに大いに頷くとフミタンを見た。

 

 

「雇っていただけるなら構いませんが……」

 

 

「決まりだな!」

 

 

 地球行きが決まるまでは桜農場に寝泊まりするように頼んだオルガにフミタンが首肯すると、送りを団員に任せて、オルガはどかっと社長用の椅子にもたれこんだ。

 星原・モーリノは頼りになるが家族のためなら無茶をするクセがある。それも自分や三日月並に。この前など治ったばかりの身体で、鉄華団の急成長が気に入らないと息巻くゴロツキ5人組を素手で相手して帰ってきたのは記憶に新しい。

 

 

「まぁ、あれはアイツがやってなきゃミカがもっとやってただろうが……」

 

 

 まだ加減を知っているだけ星原の方が利口なのだが、無茶のし過ぎでこの前のように入院されては困る。なので一応首輪をつけておくことにしたオルガはバレたら呪われねぇかなと思いながら大きく息を吐いて天井を仰いだのであった。

 

 

 

 




次回から2期ですのでこんなもんかなと。
RTAとは関係ない部分でマクギリスに気に入られるホモくん。主はここ飛ばしてるのでマッキーに久しぶりとか呼ばれても「は? 初対面やぞ?」となる他、エーコやフミタンが地球支部にいる理由も分からないので大困惑することになります。やったね(愉悦)。

なお、サヴァランが来る理由は契約主だしホモくんの近くの方が安心だからで、好意はありません。

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