鉄華団全員生存ルートRTA 【参考記録】   作:オールF

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読者も増えて、評価も上がっていたので感謝の気持ちも込めて。
以前書いていたエピローグは消してしまいましたが、書きたかった結論はこの話になりまする。


エピローグ

 

 鉄華団───────決して散らない鉄の華の意を込めて、オルガ・イツカ団長が命名した少年兵達によって組織された民兵組織だ。元は火星の民間警備会社「クリュセ・ガード・セキュリティ(略してCGS)」を前身としていた。

 その中にいた参番組の少年兵達。彼らは非正規兵と言う立場にある事から、CGSの大人達に不当な扱いを受け、時として困難な任務に従事させられていた。

 しかし、彼らに転機とも言える時がやってくる。CGSがクーデリア・藍那・バーンスタインの護衛任務を請け負ったのだ。表向きはクーデリアからの依頼であったが、裏ではクーデリアの父とCGS社長のマルバ、そしてギャラルホルン火星支部の支部長との癒着があったのだが、それは置いておこう。

 ギャラルホルンの襲撃、その混乱から起こった会社幹部や、正規部隊の逃走未遂を経て、オルガ達がクーデターによって使えない大人たちを駆逐した。反抗的な者はオルガの相棒である三日月・オーガスによって射殺され、残りのメンバーは退職金を持ってCGSから離れていった。

 これにより、オルガは会社の実権を握った事で鉄華団を設立。以降、クーデリアを地球に送り届け、その功績が買われてアーヴラウの軍事顧問となり地球支部を設立。また宇宙海賊である夜明けの地平線団を壊滅させた他、経済圏同士の戦争の鎮圧、火星に眠っていたモビルアーマーの従属化やテイワズ幹部の起こした反乱も犠牲者を出すことも無く終わらせた。

 もはや、火星どころか地球でも知らない人はいないという程にまで成長した鉄華団。入団者は続々と増える一方で、彼らへと嫉妬の怨嗟を向ける者もいる。しかし、誰一人として彼らに牙を向ける者はいなかった。何故ならば鉄華団には2人の悪魔がいるから。しかも、その片方のもう1つの異名は"死神"だった。

 

 

 ###

 

 

 一躍有名企業となった鉄華団本部のオフィスにて、鉄華団副団長であるユージンは1人の男を探していた。地球支部を束ねていた長は、アーヴラウからの軍事顧問を解かれたのを機に、休暇をとると火星に戻ってきては経理と参謀の妹たちに占いを教えたり、その祖母の畑で好物であるベビーコーンを育てようとしたり、畑にいる殺戮兵器を手懐けては芸を仕込んだりとやりたい放題であった。

 しかし、有能な人材であることには変わりないため、鉄華団では彼に声をかけるものや、相談をしようとその姿を探す者も多い。ユージン副団長もまたその1人であった。

 

 

「なぁ、シノ、死神さんはどこほっつき歩いてんだ?」

 

 

「三日月と賞金首退治だとさ」

 

 

「またかよ……」

 

 

 流星隊隊長であるノルバ・シノは副団長からの問いかけに簡単に答えた。鉄華団の悪魔と死神は戦いが無くなったというのに、暇だからという理由でお得意のタロットカードで賞金首の居場所を突き止めては2機のガンダムフレームで殴り込みに行っている。おかげで鉄華団は護衛任務や提携している桜農場やハーフメタル採掘場での収入以外にも、お金がわんさかと入ってきている。

 

 

「ったく、俺も行きたかったなー。流星王が出撃したのなんてもう半年前だぜ?」

 

 

 流星王ことガンダムフラウロスはジャスレイ討伐以降の出撃はなく、鉄華団の所有するモビルスーツ保管庫に鎮座したままである。それはシノが新人教育を任されているからであり、あまり手が空いていないことに起因している。

 

 

「ハッシュは三日月についていくし、昭弘はラフタさんとイチャイチャ。タカキは妹のことで忙しそうだしなぁ……」

 

 

 残りの人材でシノの代わりに新人教育を任せられるのはライドくらいなので、シノと交代制で行っているが、如何せん最近の入団者には大人も交ざっているため成長期途中で背の低いライドは舐められがちになる。それも気まぐれな誰かがどうにかしてくれたおかげで新人教育も円滑に行えているのだが。

 

 

「そういや、なんで死神サンを探してんだ?」

 

 

「あぁ、そのまぁ、見合いの話がな……」

 

 

「またかよ」

 

 

 鉄華団が一躍成長を遂げた背景には、地球支部支部長にして、相談役という立場にいる星原・モーリノの功績が大きいとされており、彼との繋がりを持とうとする企業や個人は数多く存在した。自分達の組織が大きくなったことで見聞を広めたユージンは手にした見合いを志願する女性たちの名前や所属企業全てに見覚えがあり、1人くらいくれねぇかなと顔を顰めた。

 

 

「あー、この人おっぱいでけぇしいいんじゃねぇの?」

 

 

「あの人の趣味じゃないだろ」

 

 

「は? 男はみんなおっぱい好きだろうがよ」

 

 

「なんでちょっとキレてんだよ」

 

 

 分からなくもないけどとユージンは首肯しそうになるのを堪えて口を開く。

 

 

「胸がでかい女が好きなら、それこそフミタンさんとかエーコさんと付き合ってんだろ」

 

 

「あー、たしかにな」

 

 

 2人の前では言えないが、あの2人は胸がでかい。ただ片方は星原よりも歳上で、もう片方はバツイチだ。そういう点がマイナスポイントになっているのかと2人は揃って首を傾げた。

 

 

「胸もなくて歳下でまっさらなやつならいるけどなー」

 

 

「ジュリエッタか」

 

 

 自称星原の妹にして、最近ではフィアンセと名乗るようになってきたギャラルホルンでもトップの兵力を持つアリアンロッド総司令ラスタル・エリオンの直属の部下ジュリエッタ・ジュリス。彼女の顔を思い出したユージンはその名を声に出した。

 

 

「たしかアイツからも見合いの話来てるんだよな」

 

 

 それもラスタル・エリオンからの紹介で。鉄華団としては、付き合いはないにしても是非ともパイプを作っておきたい相手ではある。しかし、ラスタルは鉄華団を懇意にしているマクギリスの政敵であり、両者と繋がりを持ってしまうとどちらもいい顔をしないだろうとユージンは思い至った。

 

 

「このおっさん、死神サンとは仲良いんだろ?」

 

 

「あぁ、この前焼肉行ったらしいぞ」

 

 

 しかも、政敵であるマクギリスも連れて。行かなくて良かったと胸をなで下ろしていたオルガの顔は記憶に新しい。

 なお、そのマクギリスも個人的に星原の力を欲しているのか、彼の部下を見合い相手に出してきていた。一体この男何者なのかと思うユージンだったが、大富豪で負かされ続けてからは考えるのはやめた。

 

 

「結局、誰と付き合うんだろうな」

 

 

「全員とくっつくのもありだと思うけどな、俺は」

 

 

 火星には重婚を否定する法律はない。同性婚も一般的であり、地球よりもかなり自由な法制度になっている。そろそろ、鉄華団の悪魔が調理担当と火星でも名の通った政治家と結婚するのではないかという噂も立っている。

 地球支部のメンバーも星フミ、星エーと派閥が分かれており、ラディーチェやサヴァランのような彼らに近しい者はシノのように2人共嫁にすればいいのではと言うものも多い。ジュリエッタ? 勝手についてくるでしょ。

 

 

 ###

 

 

「で、どうすんの?」

 

 

「どうするって言ってもな……」

 

 

 賞金首退治も終わり、ギャラルホルンへと身柄を渡し、低軌道ステーションで一泊することが決まった鉄華団の悪魔と死神は軽食を摂りながら雑談を交わしていた。

 

 

「エーコもフミタンも、ジュリエッタっていうのもホシのこと好きだと思うよ」

 

 

「それは知ってんだよ」

 

 

 見合いの話は三日月の耳にも入っており、それを鬱陶しがってなるべく本部にいないようにしている星原に「早く相手決めれば?」と言ったのが会話の始まりである。

 察しのいい星原は3人の気持ちには気付いていた。生きる理由を作ってやるためにフミタンにキスをしたことや、エーコを褒めるつもりが口説きかけたこと、幼いジュリエッタを甘やかしすぎたことが押し寄せてやってきていた。加えて、他企業や個人からの見合い話も相まって本部にいる時は「どうするの?」とエーコに上目遣いで尋ねられ、「私はいいですよ、別に」とフミタンに拗ねられ、「私こそがお兄様の相手にふさわしいです!」と強烈すぎるアプローチを仕掛けてくるので逃げるために心休まるグリフォン家に訪れたり、賞金首狩りをするという名目で火星から離れていた。

 

 

「結婚? はしたいの?」

 

 

「別に」

 

 

 家事全般は傭兵時代にできるようになっていたし、帰る家に誰かがいようがいまいが寝るだけなので星原には必要のない話だった。彼の趣味であるトランプは鉄華団にいればできる上に、相手も豊富に揃っている。また本部にいれば調理担当に飯を作ってもらえるし、宇宙に上がっておじさんたちにたかりに行けばいいメシが食わせてもらえるのだ。

 

 

「女の人に興味無いの?」

 

 

「ガキの頃に散々楽し……ってお前、今日はなんか色々聞いてくるな」

 

 

「普通でしょ」

 

 

 そう言う三日月のポケットには高そうなチョコレートの包みが多く入っており、誰かに聞くように頼まれたのは明白であったが、星原がいる方とは逆のポケットに入っているため気付かれてはいなかった。

 

 

「楽しんだって何したの?」

 

 

「……本部に帰ったら教えてやるよ」

 

 

 たしか帰る頃にはクーデリアも時間が空く頃だからちょうどいいだろうとトランプをシャッフルしながら呟く。

 

 

「じゃあ、男の人は楽しんだの?」

 

 

「いたぶる方面ではな」

 

 

「今と一緒じゃん」

 

 

 男の趣味はないのかと三日月は記憶するも、いたぶるのは好きそうなので恋人ではなくシノやユージンの言っていたSMならいけるのかと考えた。

 

 

「そういえば、昭弘ってどうしてるの?」

 

 

 この前はいたのに、今回の賞金首狩りには参加しなかった仲間のことを思い出して三日月が問いかけると「それは本部に帰ったらわかる」と星原は言明を避けた。

 

 

「なんか平和だね」

 

 

「さっきまでいつ死んでもおかしくはなかったがな」

 

 

「俺たち2人に勝てるのなんてそういないでしょ」

 

 

「だな」

 

 

 三日月の言葉に答えながらタロットカードを捲り、"運命の輪"の正位置を引いた星原はニヤリと微笑んだ。ステーションからは火星が見え、明日には降りる手筈になっている。帰ればまた見合いがどうだのと言われることを考えると星原は誰かとくっついた方が建設的かもしれないと顎に手を添えた。その様子を見て三日月は口を開いた。

 

 

「どうしたの?」

 

 

「いや、考えてみるかと思ってな」

 

 

「結婚?」

 

 

「あぁ」

 

 

 するとしたら誰とするかを考えたが、めんどくさくなってなんならもう全員でもいいかと星原は肩をすくめた。問題は受け入れられるかと結婚しようと思った理由についてだが、その辺はその時の自分に任せようとタロットをしまう。

 

 

「メシ行こうぜ」

 

 

「うん」

 

 

 これから鉄華団やオルガ、三日月や星原の周りで何が起こるかは分からない。けれども、血よりも深い鉄の絆で結ばれた自分達なら何があっても大丈夫だと鉄華団を始め、彼らと関わりの深い人間はそう思っている。

 何故ならば、止まらずに進み続ける限り、道は続いているのだから。

 

 

 

 

 




止まるんじゃねぇぞ…

流星王は誤字では?→本作ではフラウロスくんは流星王で合ってます

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