鉄華団全員生存ルートRTA 【参考記録】   作:オールF

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鉄血のオルフェンズ10周年おめでとうございます
記念になにかと考えたのですが大して何も思い浮かばず、そういやRTA内や日常回であまり触れなかったメンツで書くかとなってこうなりました
短いですが、僕なりのささやかながらもめいいっぱいの祝福をお受け取りくださいませ


サプライズ フューチャー

 初めは火星独立運動を掲げるお嬢様の用心棒でしかなかった鉄華団は今では火星どころか地球圏にまで名を轟かせる有名企業となっていた。

 従来の警護任務はもちろん、地球支部で行っていたアーヴラウへの軍事指導やテイワズからもたらされたハーフメタルの採掘権など子供ばかりの集団だった鉄華団は確実に力をつけていた。

 鉄華団の勢いは留まるところを知らず、今では様々な勢力から声がかかり、入団希望者も増加の一途を辿っていた。

 

「はい、次……ってこれが最後か?」

「ああ、今の太っちょが最後」

 

 度重ねる面接に疲れを隠せず頭痛を抑えるようにユージンが尋ねるとシノはつまらなさそうに唇を尖らせた。

 

「最近はなんかこれだ! ってヤツがいねぇよなぁ」

「つか俺らが1次面接担当でいいのかよ……副団長なんだから出てくるのは最終面接であるべきじゃねぇの?」

 

 それぞれ違う思惑だが面接に飽きていることだけは同じらしい。

 先ほどまで真剣な目で履歴書を見ていたビスケットもため息交じりに頷く。

 

「仕方ないよ。団長のオルガは忙しいし、人を見る目のある相談役は地球支部を離れてからは海賊退治や賞金首だってここにいることの方が少ないし」

 

 相談役というのは鉄華団団長であるオルガが地球支部の支部長の任を離れた星原・モーリノに与えた新たな役職である。

 ちなみに提案したのは名瀬やマクマードで、オルガの自分より下ではあるが何も知らない他の団員に舐められないような役職がいいという要望を叶えた結果である。

 本来の会社での相談役とは違う形ではあるが、その名前から子供たちにはなんだかすごそうと一定の効果があるらしくオルガや最初期の団員にも受け入れられていた。

 

「あー俺も流星王とならず者退治に行きてぇなぁ!」

「お前は新入りの指導があるだろ……」

 

 昭弘やライドなどと共に鉄華団への入団がなされた新入りの指導はシノの管轄であり、警護や採掘業務に関わる採用のため隊長格の代表としてシノは採用面接の場にいるのだ。

 

「鉄華団が大きくなるとその分人も必要になるからね」

「……本当にそうか?」

 

 窘めるように言うビスケットに対してユージンの返答は歯切れの悪いものだった。

 組織が拡大するためには人員が必要であることには納得している。

 だがその人員が必要とは思えないほどに現鉄華団の経理、警護、採掘業務は滞りなく回っていた。

 

「最近じゃ三日月がやりたいって言い出したから農業までやってるらしいじゃねぇか」

「あ! 聞いたぜ! ビスケットのばあちゃんの農園だろ! この前顔出したらマルの野郎が畑耕してたぞ!」

 

 火星ヤシが好物の三日月は全部が終わったあとに何がしたいかと問われた時に農業がしたいと答えた。

 それをオルガが星原に話すと「なら、やるか」とならず者退治で得た報奨金で着手したのが農業だった。

 火星という土壌でできる作物が限られているものの、火星のこれからを考えれば決して無駄では無い事業であった。

 

「でもまだ収益に繋がるようなもんはできてねぇんだろ?」

 

「まぁね。けど、三日月とばあちゃん、それにクッキーもクラッカも楽しそうだよ」

 

 アトラやクーデリアも三日月といる時間が増えたからか積極的に手伝っているらしく、三日月はクーデリアから教えてもらった文字の読み書きと星原に買ってもらった農業に関する本を読み込んで農業について勉強しているらしい。

 戦いしか知らず、命を散らすことしか出来なかった三日月が命を育む道を選べたことに初期の団員のほとんどが嬉しそうにしていた。

 

「くそ、いいよな三日月は、仕事も女も充実してて……」

「はいはい、いつもの僻みはいいから。面接の採点票出してね、まとめとくから」

 

 ビスケットはシノが腐らないように適当な返しをしながら紙を差し出した。

 ユージンも渋々といった様子で机に置かれている山のように積まれた採点票の中から数枚引き抜いて手渡す。

 

「女といえばさ」

「シノ」

 

 蒸し返さないでよと暗に咎めるビスケットにシノはバツが悪そうに口を噤んだ。

 

「わ、悪かったよ。んじゃ」

「おう、晩飯遅れんなよ」

「副団長もな」

 

 残りの仕事はビスケットに任せてシノとユージンは別々の方向へと向かった。

 一方は訓練室へ、もう一方は自身の執務室へと。

 そして、訓練の方へと向かうシノは言わなくてよかったのか? とビスケットへ言おうとした出来事を思い返す。

 それはシノがビスケットの実家の農場を訪れた時だった。

 

『ねぇねぇ火星の重婚って何人までOKなの!?』

『え? さ、さぁ……? 俺法律関係詳しくねぇし……ビスケットかサヴァランさんなら知ってんじゃねぇの?』

『……お兄ちゃん達には聞けないの!!』

『んじゃ、死神さんに』

『『星原はもっとダメ!』』

 

 ビスケットの妹であるクッキー、クラッカに火星の重婚制度について問い質されたため、シノにはその相手が誰かは分からなかったが2人に好きな人がいることがわかった。

 一応兄であれば知っておいた方がいいだろうと報告しようとしたのだが、そのビスケットは言わなくていいとシノを睨んでいた。

 兄妹間で何があったかは知らないがビスケットはあの様子だと妹達の想い人を知っているはずだとシノは黙っていることにした。

 なお、ビスケットはもちろん、サヴァランもまた妹たちの恋心など知る由もない訳だが。

 

 

 #####

 

 

 鉄華団のボイラー室。そこは鉄華団実働部隊2番隊の隊長、昭弘・アルトランドのトレーニングルームであった。

 トレーニング器具と呼べるものはなく、あるのは懸垂用に使っている鉄パイプのみだ。

 鉄華団の資金が潤沢になり、トレーニング器具が用意されている中、昭弘は未だにこの部屋で自身の身体を鍛えるのをやめていなかった。

 ここが彼にとって始まりの場所のようなものであることもあるが、ここなら他の団員の目もなく、集中してトレーニングができるというのが一番の理由であった。

 

「ふんっ、ふんっ! ふんっ! ふんっ! ふーっ! んぅっん!」

「ふーふーふーん、ふふふー、ふふー、ふふふ〜」

「はぁ、はぁ……上機嫌だな」

 

 だがそんな部屋にいる者が昭弘以外にもう1人。

 暑苦しく懸垂運動を行う昭弘の後ろで鼻歌を歌うラフタに、昭弘はパイプから手を離して振り返った。

 

「うーん? 別に? てか気にせず続けていいよ?」

「ん? 何か用があるんじゃないのか?」

「何? 用がないといちゃいけないの?」

「そんなことは無いが……」

 

 子供の頃、海賊に襲われヒューマンデブリとして生き、鉄華団という男所帯に囲まれている昭弘に女心など分かるはずもなかった。

 タービンズという鉄華団とは真逆の組織と関わる中で女性への免疫はついたもの、自身のところに用もなくやってくるラフタのことはよくわからなかった。

 しかし、一緒にいて不快な存在でもなく、むしろどこか温かい安らぎを感じるような、いや気の所為かと昭弘は再びトレーニングを再開する。

 

「そういえば三日月帰ってきてるんだよね? また農場?」

「ふっ、ふっ、あぁ、昨日、帰ってきてっ、アトラとっ、ビスケットのっ、ばあさんのとこ、だっ」

 

 懸垂をしながらも昭弘は質問に答える。

 だが三日月以外にももう1人帰ってきている人間がいるのに、そのことを聞かないのが気がかりで今度は昭弘から尋ねる。

 

「星原もっ、帰って、きてるぞっ」

「知ってるー。エーコから連絡きたから」

 

 だったら三日月が帰ってきていることも知っているはずじゃあと思ったが口には出さなかった。

 目標とする懸垂回数が迫っているのでそちらに意識を割く。

 ラフタは何も言わずただ楽しそうに鼻歌を奏でた。

 

「昭弘さー、ん、って……えっ……?」

 

 明日の訓練のことで打ち合わせにと昭弘の所へやってきたライドはその光景に絶句した。

 ガチムチ筋肉男が懸垂する傍らでツインテール巨乳美女がそれを見守るように鼻歌を歌って見上げていたのだ。

 

「なぁに? どったの?」

「いっ……いえ……!」

 

 お邪魔しました! と空気を読んで退散したライドにラフタは「いい子だなぁ」と呟く。

 昭弘は集中していたので誰かが来たことくらいはわかったが、それが誰かまでは分かっておらず、懸垂を終え、息を整えながらラフタに尋ねる。

 

「はぁ……はぁ……、誰か、来てたか?」

「うん。ライドがね。多分訓練の相談とかじゃない?」

「そう、か」

 

 ふー、ふーと荒い息を落ち着けながら水を飲む昭弘を眺めながら、ラフタは再び鼻歌を歌う。

 

「ふー……、っし、シャワー浴びてくる」

「あ、終わった? じゃ、これから時間いい?」

 

 昔ならシャワーも浴びずにライドを探しに行くところだが、2年前にタービンズで特訓漬けとなり、女性陣たちからシャワーを浴びろと口酸っぱく言われたこともあり、トレーニング後は身なりを整えるようになっていた。

 昭弘が立ち上がると同時にラフタも腰を上げる。

 

「なんだまた買い物か?」

「んーん。三日月んとこ」

 

 ラフタが鉄華団に来てからというもの、力持ちな昭弘は荷物持ちとして駆り出されていた。

 だが、今回は違ったため昭弘は首を傾げた。

 

「じゃあ一人で行けばいいじゃねぇか。俺はライドの用件を」

「それはあんたがシャワー浴びてる間に聞いてきてあげるから。さっ、行った行った」

 

 と、汗がまとわりつく昭弘の身体を押すように促した。

 思春期真っ盛りの男ならばこんな近距離かつ、女性に触れられては様々な感情に耐えられるはずもないが、昭弘は平然とそれをやり過ごし、「わかった」と渋々浴室へ向かった。

 

「ったく、本当に……」

 

 そんな昭弘の背中を見つめながら、ふと昭弘の背中に触れていた手を見る。

 

「……あ、やばやば。ライドのとこ行かないと」

 

 前の旦那はシャワー浴びてから触ったなと一瞬、変なことを考えてしまったが頭を振って雑念を消し去った。

 

「星原のやつ、三日月に吹き込むなら昭弘にも吹き込んでもらわないと……!」

 

 朝にアトラとクーデリアから来たメールにラフタはかなり驚いた。

 何故ならばあの三日月から『星原から赤ちゃんの作り方聞いたんだけど』というノンデリではあるものの衝撃的な言葉が発せられたからだ。

 クーデリア達からは『お時間があれば桜農園に来て欲しい』と書かれており、恐らくならず者退治をしている間に星原が教えたのは誰の目にも明らかだった。

 

「あの鈍感筋肉バカにも女心とかその他もろもろ叩き込んでもらわないと!」

 

 これなら昭弘も連れて行ってもらえば良かったと先日星原が昭弘も連れていきたいと打診を受けた時にものすごい剣幕で断らなければ良かったとラフタは後悔していた。

 

「もうっ! ライド!! どこ!!」

「ええっ!?」

 

 そのイラつきもあり、ライドを呼ぶ声に怒鳴り声が含まれてしまい、その近くを通ったヤマギが怯えた。

 

「あ、ヤマギ。ライド見なかった?」

「見てない、ですけど……多分訓練所じゃないですか?」

「えー、遠いな……、ごめん、ライドに昭弘に何の用だったか聞いておいて!」

「えっ?」

 

 行って戻って来る間に昭弘がシャワーから出てきているのは確実だが、ラフタがわざわざここから訓練所に向かう気力はなかった。

 そういうことでと来た道を引き返していくラフタにヤマギは唖然とした。

 

「ちょっ、待ってください……! ええ……?」

 

 その後、ライドに事情を聞くも明日の訓練は休みというだけだったのでメリビットからラフタにメールをいれてもらうだけとなった。

 

 

 




前半のユージン、ビスケット、シノだけのはずが『2000文字か……少ないな……』となり、最近昔読んでた青春ラブコメを読み返していてラブコメ脳が高まっていたのもあってラフタと昭弘の後半部分が出来ました
何を言っているんだ俺は……?

久しぶりの更新がこれでいいのかと思いつつここでツモとさせていただきます。

タイトルは思いつかなかったのですが、4年ぶりの更新なんて未来は驚きだろうってことで
鉄血のオルフェンズの曲から取ろうと思ったんですけどね。
放送時期がギリギリ1ヶ月違うけど許されよ許されよ……。
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