つい描きたくなってしまったので。
一応、一巻だけの予定です。
第一幕 兵藤一誠
闇夜に浮かぶ月を眺めて、一人の少年は小さく息を漏らす。
かつての師匠に言われた言葉を不意に思い出していたから。
「師匠、今はまだ酒は飲めませんが…今日も美しい月が昇っていますよ」
言葉を切ると、少年は登っていた建物の屋根から勢いよく飛び降りて危なげも無く着地を決める。そのまま建物の中に入り、迷いなく進んでいく。
1分も経たないうちに少年の足が止まる。その視線の先に、自身の目的を見つけたのだ。
「貴様か、この街に入り込んだはぐれ悪魔は」
「…んぁ?なんだ、人間のガキか。全く、これから食事の時間だってのに」
少年の眼前にいたのは、3メートルは超える体躯を誇る大男。腕と足も大きくの太さも一般的なサイズを遥かに上回る。その顔はまさに悪魔の一言に尽きる。
そんな大男の足元には少年と同年代、若しくは少し年上の少女が気を失い倒れていた。しかし、目立った外傷もなく服装に乱れもない為に間に合ったことに安堵しつつ少年は視線を大男に戻す。
「彼女から離れろ、こちらも無駄な争いはしたくはない」
「そうかい。…が、悪いなぁ俺はこの娘を喰うのに忙しくてな」
大男はそう言って話を無理やり終えて、まずはと言わんばかりに少女の身体に手を伸ばした途端、その目に映していた少女が消えていた。
「…!?」
「すまないが、この子に心の傷も負わせたくはないのでな」
大男が振り返ると、先ほどの少年が大男の狙っていた少女を抱えこちらを睨んでいた。少年は壁際に少女を寄りかかる形で横たわらせてから再び、大男を睨み付ける。
「人間が…俺の愉しみを邪魔すんじゃねぇぇぇ!!!」
「お前の愉しみの為に…誰かの血も、涙も、流させる訳にはいかない」
少年は自身に向かって走り込んでくる大男を飛び越えるかのように力強く跳躍した。
建物内の窓から月明かりの光が差し込み、大男の視界を少年と光が包む。
突如、少年の手元から一本の線ーー否、刀が出現。
少年はその刀を槌を振るうかのように慣れた、それでいて鋭く振り下ろした。
その一撃が、大男の体を捉え、瞬く間に勝負は決した。
ハイスクールD×D 〜平成剣客浪漫譚〜
第一幕 「兵藤一誠」
「おはよーっす!イッセー」
「たくっ、今日も朝から爽やかな面だなお前は!」
首都・東京から少し離れた地方都市、駒王町。都市圏からも然程遠くなく、穏やかな街並みが広がる街。その中心に位置する場所に建てられた駒王学園。その校門にて、三人の少年たちが肩を並べて歩いていた。
「まぁ、二人もいつも通りと変わらなく見えるが」
「言ってくれるなぁ、こいつー」
「やれやれ、松田!」
三人の真ん中で、イッセーと呼ばれた少年ーー兵藤一誠は、優男と評される顔立ちを軽く崩しながらも笑顔で応じる。
こうして、一誠のいつも通りの1日が始まろうとしていた。
最後の授業が終わり、早々と帰宅しようとする一誠。
その隣にうっすらと、それでいてゆっくりと現れる二つの影。
無論、一誠もそれを把握しており、溜息混じりに帰り支度を一旦止める。
「何の様だ、二人共」
「何ってお前、決まってんだろ」
「ナンパだよ、ナンパ!!」
二人の少年ーー松田と元浜は、どこからともなくキメ顔で現れた。が、その顔には何故か腫れていたり、絆創膏が貼ってあったりと既に一悶着あった事が伺える。
「今日はどこの部室を覗いたんだ…」
「おう、今日は陸上部の…って、違えっ!」
「さっき二人して階段から転がり落ちたんだ」
どうやら二人の話では、女子の体について…巨乳派か貧乳派で争った挙句、二人の他にその話に参加していた何人かが怪我をする始末だったらしい。
その結果がナンパに至るのかは…。
「いつまで経っても論争じゃ、水平線だ」
「だったら、実際に女の子のを見て判断しようと言うことになった」
「………」
話の流れを切らぬ為にも口は挟まなかったが、返す言葉が見当たらない。少し頭痛がすると錯覚し始めた一誠。
「ちょっとアンタ達、エロ同盟に兵藤を加えたいのかしらー?」
「こ、この声は…」
「桐生愛華!!」
三人の間に割って入って来たのは、眼鏡をかけ、長い髪を二つの三つ編みに纏めた少女、桐生愛華。
クラス内でも目立つ人物の一人で、男子らのエロネタに正面からぶつかり合える数少ない戦士の一人。
「まぁ、確かにアンタらエロ同盟じゃ…うちのクラスや学校は勿論、他校の女子に声かけたら即通報もんだからねぇ〜」
サラリと掛けた言葉が鋭い刃となり、松田と元浜…エロ談義に花を咲かせていた男子達の心を真っ二つに切り裂く。
「ナンパなんて真似、兵藤がするならまだしも。アンタらじゃあ、ねぇ…?」
桐生を始めとしたクラスの女子達に可哀想な物を見る目で見られた男子(一誠は除く)はその場に倒れ込んだ。
これ幸いと苦笑いと共に一誠は男子達に挨拶をしてから、教室を後にした。
「兵藤君!」
「おろ?」
ふと、聞き覚えのある知り合いの声が聞こえた。ゆっくりと振り返る。そこには長い黒髪を一つに括り、汗拭き用のタオルを首にかけた剣道着を着た少女が。
「神谷さん、こんにちわ」
柔和な笑みと共に距離を詰めてくる
「う、うん。こんにちわ。今日は練習どうかな?」
「お誘いはありがとう。けれど、俺は…」
「ううん、気にしないで!こっちこそ無理言ってごめんね」
咲は、剣道で全国大会に勝ち進むほどの腕前。加えて、彼女のルックスの良さも相まって駒王学園や他校には「剣術小町」と称されている。そんな彼女が少し頬を染めながら、なんとか会話を終わらせまいと続けようとする姿が背後で見守る剣道部女子部員達にはもどかしく映る。
「それではまた。神谷さん、怪我をせずに気を付けてくださいね」
そう言って、一誠は今度こそ校門に向かって歩き始めた。
「咲、今日も…ダメだって?」
「うん。…この前は私が無理やり一方的だったからそのせいかも」
一誠に練習の誘いを断られた咲。
肩を落とす彼女を慰める様に肩を優しく撫でる女子部員達。
休憩時間が終わりを近づき、皆が練習場に戻ろうとする中で、ふと一人の女子部員が呟いた。
「それにしても、本当に信じられないわよね…あの兵藤君がメチャメチャ強いなんて」
「えぇ…。私も男の子にも負けないくらい強くなったつもりだったけど、彼はそんな程度の人じゃないわ」
咲は、静かに思い出した。一誠の強さを目の当たりにしたその日を。
一ヶ月ほど前、春休みの最中で剣道部は他校との練習試合を何回も行った中で剣道部としてある程度は名を知られる学校との練習試合での事。
『女の子相手じゃ、本気が出せないよ。竹刀は置いてさ一緒に遊ぼうよ』
咲に声をかけて来たのその学校のレギュラーは、咲本人のみならず、女子部員を貶める様な発言を繰り返した。
それに怒った咲が試合として、その男子生徒を含めたレギュラーを一人で五人抜きした。
それから数日後、部活動が休みの日に女子部員で近くのショッピングセンターに遊びに行った時のこと。
女子一人に負けたことが他校にも知れ渡り、その名を穢されたとしてその学校の剣道部員らが復讐と称して、咲達を襲おうとした。
その際、女子部員の一人が彼らの学校の部室に連れ込まれてしまい、咲は一人で助けに向かうが多勢に無勢だった。
咲やその女子部員が服を脱がされそうになった時、一誠が友人の男子と共に助けに現れた。
どうやらその友達と共にショッピングセンターに遊びに来ていたらしく、咲が一人で女子部員を助けに行ったと他の女子部員達から話を聞き、即座に駆けつけた。
その時、二人を助けた際に見せた一誠の戦う姿。咲には青天の霹靂としか言えなかった。
元々、一誠とはクラスメイトで言葉を交わすことも少なくない。穏やかなで優しい人柄は咲は勿論、クラスの女子にも好意的に見えた。
だからこそ驚かざるを得なかった。そんな彼の一騎当千が如き強さを見てしまったのだから。
気になる理由は、強さだけではない。
彼の笑顔を見るたびに、クラスメイトになって初めて会った筈なのに、何処かで会った事のある様な気にされる。
子供の頃から…ううん、もっともっと昔に。
ーーおろ?
「…うん、気のせいかしら」
一瞬聞こえた声を、そう結論付けてから咲は再び練習へと打ち込んでいった。
「ただいま…母さん」
「あら、一誠。お帰りなさい」
自宅に着いた一誠は、母に静かな声で挨拶を。
朗らかな声と優しい笑みを浮かべる母に静かな笑みで答えて、一誠は自室に戻る。
『いつも通りの穏やかな1日って奴だったな、相棒』
「そうだな、今の世に血溜まりは似合わない。それでいいんだ」
何処からともなく聞こえた威厳ある声に、一誠は静かに応える。
頭をよぎるのは、いつからか見えている自身には覚えのない記憶。それでいて確かな記憶として一誠の記憶と魂に刻まれている。
倒れ伏すのは、血を流しながら刀を握りしめる侍と呼ばれた男達。
彼らはそれぞれの想いと正義の為に立ち上がり、その為に刀を手に取った。
その中で多くの者達が命を落とし、多くの人が人を殺した。
江戸幕府を倒さんと多くの者達の思いが入り乱れた時代ーー幕末。
その中で、伝説とされた男が居た。
長州派維新志士として新撰組、見廻組、幕府軍と戦った男の一人。
人斬り抜刀斎と呼ばれた男が、京都に血の雨を降らせ、数え切れないほどの血溜まりを作った男。
そんな男の人生と記憶が、いつからか頭に過ぎる様になった。
時に人斬りとして刀を振るい、時に
「もう二度と血溜まりは作らせない。この剣と心を賭してでも」
誓いを立てる様に呟いた一言と共に、一誠の手に刀が現れる。
ゆっくりと鞘から抜いた刀は、普通の刀ではない。
刀の腹側に峰が来ており、人を斬る事は難しい。
その刀の名は、逆刃刀。
かつて、人斬り抜刀斎と呼ばれた男が人を斬る事を禁じてから振るった剣。
そして、兵藤一誠と彼の中に眠る赤龍帝により生み出された一本の刀。
「うぅ〜ん、こっちであってるのでしょうか…駒王町」
その日の夜、一人の少女…シスターが駒王町にやって来た。
彼女が来た事で、兵藤一誠が、そしてこの街に住まう者達の運命が少しずつ動き出そうとしていた…。
感想や評価のほど、お願いするでござる。
一応、剣心の言葉遣いは現代は難しいすぎるので、普通の敬語キャラにしました。でも、おろっという口癖は今でも出てしまうって感じです。
一巻で終わりか、続けるか
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とりあえず二巻まで
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取り敢えず進めて欲しい
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一巻で終わりでいい。