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「兵藤一誠君、す…好きです!私と付き合ってください!!」
駒王学園から少し離れた公園の中心。
そこにいるのは子供やその親たちではなく、二人の男女。
一人は高校生離れのスタイルを誇り、その顔は美少女といっていい。
もう一人は華奢な体、その顔は中性的で女装が似合いそう…とクラスメイトに言われる少年。
「おろっ…?」
そんな少年は、あまりの急展開に普段は言わないように気を付けている昔からの口癖があっさりと出てしまっていた。
話は、30分程前に遡るーー。
いつも通り授業を受けてから放課後。
帰ろうとする一誠は捕まえた松田と元浜を始めとした男子達に捕まった。
その理由は、この前行かずじまいになったナンパを決行するとの事。
クラスや隣のクラスの女子達の冷たい視線を受けながら一誠を先頭に男子達は勢いよく街中へと向かおうとした。
「ちょ、ちょっと待ってくれ…いきなりすぎて」
「うるせぇぇぇ!!!!俺たちが声かけても悲鳴をあげられるのがオチなんだよ!!」
「お前が声を掛ければナンパはほぼ成功するからなぁ…って言わせるな!」
松田達の魂胆はともかく、こうして気のおける友人らとバカ騒ぎをするのも悪くない。街に着いてから男子達もナンパをするよりも普通に遊ぶ方にフェードアウトさせれば…、などと強かな目論みを建てる一誠の視界に一人の少女が割り込んできた。
その少女が一誠達の前に立った途端、全員の足が止まった。
「あ、あの…貴方が兵藤一誠君ですか?」
頬を少し赤くして、恥ずかしさを内包させた柔らかな声は男子達全員の耳にしっかりと届く。
少女の視線の先は、松田や元浜といった少女の美貌に鼻の下を伸ばす男子…ではない。
ただ一人、この状況に違和感を感じている一誠だった。
それで話は今に戻る。
一旦、松田らと別れてから少し歩き、学園から少し離れた公園へ。
既に夕方で、日も落ちつつある為か周囲に人は居ない。
あまり人に聞かれたくはない類の話であるために一誠にとっても都合が良かった。
「それで…えぇと」
「天野、天野夕麻です」
名前も知らない少女のいきなりの告白に、些か取るべき態度が分からない。それとなく目の前の少女が名乗るように口火を切る。
「…天野さん、でいいですか。一応」
「は、はい」
想い人に名前を呼ばれ、僅かに上ずった声。
その一挙手一投足が思春期の男子には堪らない効果を齎す。
そう、ここで普通の男子高校生ならば堕ちていたかもしれない。それも性欲が盛んな人ほどあっさりと。
「あなたの本当の名前や目的を聞いてもいいですか」
そんな誘いを一蹴し、先ほどまでどういう態度を取るべきか悩んでいた者とは思えないほどの冷たく、覇気のある声が。
天野夕麻が見せる男の理想を詰め込んだような笑顔が止まった。
そこから、一変。
天野夕麻の手元から光で形作られた槍が出現。一誠に突き立てんと槍を構えた直後。彼女の手前にいた筈の一誠は、10メートル以上は距離を置いた位置に立っていた。
その顔は、先ほどまで見せていた笑顔ではなく、残忍さと妖艶さの混ざり合った悪女の笑み。
「へぇ、結構凄いじゃない…兵藤一誠君」
可愛らしい言葉遣いから、すこし粗暴な、野心を隠さない言葉遣いへ。
「俺の友人が、君の着ている制服を知っていた。そして…その学校に君が居ない事もな」
天野夕麻から声をかけられたか、松田と元浜が静かに呟いた声。
『おい、あんな可愛い子あの学校にいたのか!?』
『いや、居なかった筈だ。今年の新入生も含めて、美少女の噂は正規のルートを経て俺たちの元に来る筈。ましてあんな可愛い子が…』
二人からすれば、そんな子が一誠に突然告白するという事に目がいってしまっていたが、一誠にすれば違和感の塊でしかない。
「あら、低俗なオトモダチに救われて良かったじゃない」
「彼らはそれだけの人間ではない。大切な俺の友人達だ。それ以前に貴方の薄汚れた殺気が漏れてましたよ」
二人の会話以前に、一誠は最初から感じていた。
天野夕麻から向けられる視線、どこか嘘くさい言葉遣い、挙動。
その全てがかつて緋村剣心として生きてきた時からの積み上げられた経験に基づく直感に警鐘を鳴らす。
「もういいでしょう。さっさと仲間も出てきてください…堕天使さん」
その言葉にレイナーレは唖然とした表情を。
何秒かして、公園内から新たに三人の堕天使と一誠が呼んだ者達が。
堕天使。
神に使える天の使いでありながら、己の欲を優先したが為に白き翼は黒へ。天から堕ちた使い達をそう呼ぶ。
また、彼らと敵対する主な勢力としては悪魔と教会に与する者や神に使える者達。
そんな堕天使達の象徴ともいえる黒い翼を、一誠の前にいる四人は背中から広げていた。
「この街から今すぐ出て行くつもりは?」
「あるわけ無いじゃない」
一誠の質問に、嘲笑と共に応えるレイナーレ。
隣に立つ仲間達もケタケタと品のない笑みで、一誠を見下した態度を見せる。
「確かに、この街はグレモリーとシトリーの次期当主が住んでいるが、あの程度の小娘では我々の動きは止められまい」
ただ一人の堕天使の男が淡々と呟くが一誠は態度を崩さずに、堕天使達をその目に捉え続ける。
「私たちの計画の邪魔になるかもしれない、
レイナーレは、そう言ってジリジリと一誠へと距離を詰める。他の三人の堕天使達もそれに追随。四人とも手元から光の槍を出現させ、一誠に襲い掛からんとする。
「ドライグ、行くぞ」
小さく呟いた一誠を中心に突風が吹き荒れる。
突然の事に驚いた堕天使は詰めていた距離を戻す様に一斉に後退。
次に彼らが見たのは、先ほどまで持っていなかった筈の刀を構える一誠の姿。
「…怪我をしたくない者は、今すぐ下がれ」
「何を馬鹿な…ッ!」
堕天使の女、カラワーナの言葉はそこで途切れる。
驚いたレイナーレが、振り向くと意識を失いかけ、口元から血と涎を溢したカラワーナが。
どうやら、一誠の攻撃が腹部に命中したらしい。
「な、なんなのよ…」
「下がってください、レイナーレ様!!行くぞミッテルト!」
堕天使の男、ドーナシークは隣のレイナーレを背後に回る様に指示。そのまま残り一人の堕天使の少女と共に一誠に向かい突貫を仕掛ける。
「…がっ!!」
「きゃっ!!」
常人では捉え切ることなら不可能な速度で一誠に向かう。そのままの速度から繰り出される突きを一誠に見舞おうとするも、その動きを先読みしていた一誠が体を回転させた上での返し技を喰らう。
その後に続いたミッテルトは、すかさずカウンターの後の無謀である筈の一誠に攻撃を仕掛けようとするものの、今度は一誠の突撃が。
光の槍による刺突を狙うも、一誠の下から剣を掬い上げる形の一撃を見舞われてそのまま意識を失う。
「これで残りは、一人。貴方だけだ」
「…ま、待って!お願い!!」
既に意識を奪われた三人を見て、レイナーレは一誠に待ったをかける。その相貌は先ほどまでの余裕は一切見受けられない。
あまりの慌てぶりと焦りに、仕方なく足を止める一誠。
「こ、この街で厄介事は…貴方に被害が及ぶ様な事はしないわ!」
「つまり、俺以外の人が被害を被る…と」
「そ、そうよ!!つまり、貴方には関係の無い人間が…っっ!!」
厄介事を起こすと、暗に示唆されて一誠は即座に距離を詰めてからカラワーナ同様に柄での突きを鳩尾に叩き込む。
基本的な身体構造は、人間も堕天使も悪魔も天使も変わらない事を知っていた一誠の効率の良い攻撃はあっさりとレイナーレの意識を奪う。
なんの問題も無く、四人の堕天使を倒した一誠。
その直後、何かが割れる様な音がしてから何人かの一誠と同じ様な学生服を着た学生達が公園に。
「おーい!イッセー!!!」
「元士郎、それに会長達まで…」
顔を上げると、一誠には見知った友人と呼べる者がそこに居た。
一誠が通う駒王学園の生徒会役員の何名かと、ある意味生徒会と同等に校内では知れ渡っているオカルト研究部員らが。
彼らは駒王学園では多くの生徒に名を知られている者達ばかり。
ほぼ全員が容姿端麗であり、注目の的。オカルト研究部は男女問わずに入部希望者が殺到。生徒会役員にはファンが多い。
そんな彼女らの裏の顔は、実は人間ではなく悪魔であるという事。
一誠は彼らの正体を知りつつ、基本的には友好な関係にあった。
「どうやら無用な心配でしたね…」
「えぇ、そのようね」
倒れ伏す四人の堕天使を見て、既に事が済んでしまった事を生徒会長の支取蒼那ことソーナ・シトリーと、オカルト研究部部長のリアス・グレモリーは察する。
「校門前で騒いでる男子達に聞いたら、お前が見知らぬ女に呼び出されたって聞いてな。その後すぐに、この公園一帯に人除けの魔力が貼られた事に会長達が気づいてな」
「そうか、それでわざわざ」
一誠にきさ気さくな態度で声をかけた少年、匙元士郎と共に話を進める。一誠の様子を見て要らない心配ではあったが、友人に怪我がないのが一番と素直に喜ぶ。
「ごめんなさい、兵藤君。また貴方に迷惑を…」
「いえ、先輩が謝る必要は。それにあの堕天使達の今回の目的は俺個人のようです。ですが、まだ何か企みがあるようです」
「そうですか…。念の為、こちらも冥界に報告して調べるように要求します」
ソーナとリアスに後の事を任せ、意識を失った堕天使達の体を動かないように拘束しようと一誠が動こうとした途端、何かがこちらに向かって飛来。
「元士郎!!」
「あぁっ!!会長、後ろへ!」
咄嗟に近くにいたリアスの前に出て、匙も『主人』のソーナの前に出る。その他のメンバーも飛来した何かへの警戒をして、一旦距離を置く。
土煙が上がってから数秒、その向こうにいるのは人影と分かり一誠は再び手元に刀ーー逆刃刀を出現させ、構える。
「あらあら、この街の害虫どもがそう集合でござんすねぇ…!」
比較的若い声。土煙を割って出てきたのは、一誠や匙とそう変わらない年齢の少年。ただし、その目は冷たく残忍さを隠せてはおらず、狂気に満ちた声はこの場にいる者全員を戦慄させる。
「あら、堕天使さんたち全滅〜!?ちょ、いくらなんでも早過ぎでしょ…まだ計画の幕開けだってのに。ってお一人様だけ、人間がいるじゃんか」
神父のような格好に身を包んだ少年は、コメディアン染みた動きや言葉を見せる。その様子に何人かは気が緩みそうになりかける。
「何の様だ。…もし暴れるのであれば…」
「俺らが相手だ!」
逆刃刀を構えた一誠と、
「まぁ、ここであんたらと殺るのも一興だけど。い・ま・は・っ!!」
上着の懐から閃光弾の様な物を取り出す。
眩過ぎる光に一誠たちの視覚が僅かに奪われる。
少年の狙いを即座に読んだ一誠は、そのまま少年に向かい突撃。匙は、自身の神器の力を発動しようとするも…。
「逃げたか…」
自身の誇る神速からの一撃を見舞っても空を切っただけ。その結果はあの少年が既にこの場からの撤退に成功した事を意味した。
「おい、イッセー!ヤバイぞ」
隣に立つ匙が指さした先には、先ほどまで自身の攻撃で意識を失っていた筈の四人の堕天使を達の姿が一切無かった。
「…最初から攻めるべきだったか」
結果として、彼らの言う厄介事を止める事に現時点では失敗したとしか言えない。レイナーレの発言からして、誰かが被害を被る事はほぼ確定と見ていい。
そんな一誠の呟きに応じる様に、少し冷たい風が一誠の頬を通り過ぎていった。
前書きにもありましたが、コメント…ください!!
励みや参考になりますので。評価のほどお待ちしてます。
匙君は、僕の中でお気に入りで皆様も何となく察してくださったと思います。
まだ一巻だけの予定なので、そのあとの展開等も浮かんでません!
なのに京都での修学旅行編だけはストーリーができてしまった…。
一巻で終わりか、続けるか
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とりあえず二巻まで
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取り敢えず進めて欲しい
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一巻で終わりでいい。