あと一巻も佳境。
また感想や評価お待ちです。
「では、兵藤君。貴方は暫くの間リアス達と行動を共にしてもらう事で異論はありませんか?」
「…分かりました」
堕天使達とのイザコザの後。一誠はもう一度学園に戻り、オカルト研究部室に居た。
そこにはオカルト研究部員は勿論、生徒会役員全員が居て話し合いに参加していた。
その議題の中心に居るのは一誠であり何処かに居心地か悪かった。
「なら、オカルト研究部に仮入部という形で申請するわ。…それでいいかしら、ソーナ、兵藤君?」
部長であり、悪魔でもある部員達の主のリアスが確認を取る。二人ともそれに頷き、話は次の展開へ。
「一応聞くけど、兵藤君は悪魔に、私やソーナの眷属になる気はある?」
「いいえ、俺は遠慮します」
リアスの問いに即座に答えを返し、静かに目蓋を閉じる。その顔は、決して変わらない決意に満ちており、皆も何も言えない。
一誠が断った理由は自分の中にある力の事と振るう剣に基づいた決意があるからだった。
一誠の中に眠る力ーー伝説の赤い龍と呼ばれた赤龍帝ドライグ。
かつて起きた大戦争の折、神や天使や堕天使や悪魔といった者達の手により神器に封印された二匹のドラゴンの内の一体。
ドライグを宿した者は、その手に赤い龍の力を具現化した籠手を顕現する。しかし、今代の赤龍帝ーー兵藤一誠は、彼の中に存在するもう一つの記憶と魂、そして彼自身の強い意志で籠手ではなく、逆刃刀という形でドライグの力を顕現させていた。
また、一誠の振るう剣。
一体多数の斬り合いを得意とする古流剣術。戦国時代に端を発する物。一誠が緋村剣心であった頃、当時幼い剣心に師匠の比古清十郎が伝授した。
その理は、時代の苦難から人々を守る為の剣。
またその剣の力は強大であり、とある勢力に加担すれば勝ちを引き寄せてしまいかねない丘の黒船とも呼べる代物。
故に何処の勢力にも属さない自由の剣として振るわれる物。
これらの理由から、一誠はリアスの誘いを断った。
「そう、その顔ではもう口説き落とすのは無理そうね」
「ご理解ありがとうございます」
小さく頭を下げて、一誠はそのまま部室を出た。
『まぁ、あの程度の連中なら相棒の飛天の剣だけ問題ないさ』
「あぁ。たが、あの少年もそういけばいいが」
リアス達と別れ、帰路に着く一誠。
先ほどのリアス達の話し合いを当然聞いていたドライグは、一誠のひいては己の存在を悟られるように行動すればいいと念を押していた。
前世を持った奇妙な相棒。
その実力は歴代の中でも屈指。
同時に、歴代の中で最も穏やかでドライグを信頼している。二人の絆と相性の良さは闘いに於いて有利に働く。
今まではライバルとのイザコザを終わらせる事ばかりを考えていた。
けれど兵藤一誠に宿り、彼のもう一つの記憶を見てからは彼と共に歩むのも悪くはない。そう思えるようになっていた。
『おい、相棒…見てみろ』
「どうした、ドライ…グ」
普通に歩いていた一誠はドライグの声に反応し、即座に指摘された方向に視線を向けるとそこには。
「ーーーーーーーーーーーー」
ライトグリーンの修道服の上に薄い白いベールを被るシスターが。
背丈の半分はあるのでは、と思われる大きなリュック。シスターの手には少し汚れた地図が握られていた。
「なんで、シスターがこんな所に」
『どうやらあのカラス共が関わってるかもしれんな。…どうする』
「…悩んでいても仕方がない、か」
ポケットから取り出した携帯を操作し、特定の人物へメールを送る。
携帯に送信完了と表示されるのを確認して、シスターへ近づく。
「きゃっ!?」
突然吹いた突風に、シスターの被るベールが風に飛ばされ宙へ。ヒラリヒラリと空中を舞うベールを起用にキャッチした一誠。
さらりと見せた高い身体能力に呆気を取られるシスター。
「これは、あなたのでしょう?」
「ーーーーーーーーーーっ!!」
ベールと大きいリュックに隠れて見えなかったシスターの容貌。
特徴としては、向日葵の様に明るいプランド。エメラルドを埋め込んだ様な大きな瞳。何処か加護欲を引き立てる可愛らしい顔立ち。
まぁつまり、かなりの美少女が一誠の前で、恐らくは感謝の言葉を述べていた。
「…しまった、英語かっ…」
「…??」
日本人離れの容姿から欧州系と分かったがいかんせん言葉が通用しない。
一誠は、真面目な性格もあり勉学は優秀と言えるが本場の外国人を相手に会話を成り立たせられるだけの語学力は持ち合わせてはいなかった。
相手のシスターも一誠に言葉が通じていない事を理解し、二人の会話が止まる。
『まぁ、そうなるだろうとは思ったが…。相棒少し待て』
ドライグの少し呆れた様な声が聞こえ、そのまま何秒か待機。
『いいぞ、相棒。好きに話せ』
「…ええっと、どうかしましたかシスターさん」
「は、はいっ!私のブーケを取って下さってありがとうございます」
ドライグの言葉に半信半疑ながらも取り敢えずは、と言葉をかける。シスターもいきなり通じた言葉に一瞬驚きながらも素直に感謝の言葉を述べる。
「あ、あの。実はこの町にある教会に今日から赴任する事になったのですが…道に迷ってしまって」
「教会…か」
シスターの言葉に、渋みを感じたい様に表情を濁す。
どうやら彼女は、もう悪魔が住んでいるはずのこの地に、10年近く前に神父も居なくなった筈の教会に赴任する事になっているらしい。
一誠の記憶が正しければ、確かに町の外れには一つ教会が存在する。
ただし、それは10年近く前に教会としての機能を失った筈だ。今では無人で人の寄り付かない場所でもある。
『相棒、当たりだな。…この娘は間違いなくあのカラス共と繋がっているぞ』
心中で、ドライグの言葉に同意しつつも。
目の前のシスターが、堕天使達の起こすつもりの厄介事ーー悪事に、加担する様には見えない。大きく見積もっても、彼等の下っ端程度の筈。
『あぁ、このシスターには殆ど警戒心もない。これで敵だとしたら大した女優だ。勲章物だぞ』
そう、ここまで隙だらけでは逆に何も言えない。仮にこの態度が演技だとしたら正に世紀の大女優になれるかもしれない。
「俺でなければ、その教会まで案内しますが…」
「いいんですか?」
「えぇ、とくに用事もないですし」
そうして一誠の先導で、町外れの教会に行く事になった。
一誠はシスターの背にあった大きなリュックを自分の背へ。シスターは遠慮するものの、同年代の女子が持つには重いだろうと言い、シスターも何回か御礼の言葉を述べる。
「自己紹介が遅れました。私はアーシア・アルジェントといいます」
「俺は、兵藤一誠です」
少し遅い自己紹介の後、二人は軽い会話を弾ませながらゆっくりと街を歩いていく。
十分程経った所で、一人の小学生が膝小僧から血を流して泣いていた。その姿を見て、即座にアーシアが駆け寄る。
「男の子ならこのくらいの怪我で泣いてはいけませんよ」
正に聖女の微笑み、と評したくなる優しい笑みで少年に声を掛けてから膝小僧の少し手前に手を添えると…。
「…神器…か」
『あぁ、それもかなり希少な回復系統の、な』
彼女の両手の中指に彼女の瞳と同じ光を放つ指輪が現れる。
ものの数秒で少年の擦り傷を癒した見せた。
すっかり治った膝小僧を見て、驚いた少年はそのまま立ち上がる。
「ありがとうお姉ちゃーん!!」
アーシアに笑顔付きのお礼を返して、ランドセルを揺らしながら走って帰っていった。
そんな少年の背中を見送ったアーシアは、とても嬉しそうな顔をしていおり、一誠はやはりそんな彼女が堕天使達の企てる悪事には加担しないだろうという考えを強めていた。
「…ごめんなさい、つい」
「不思議だけど優しい力ですね」
一誠は自分の素直な感想を述べる。受け取ったアーシアは、そんな言葉に照れた様に頰を赤く染める。
『全く、お前は甘い男だ。…その甘さがお前らしいと言えばそれまでなんだが』
ドライグの批評も受け流しながら、少し歩いた二人の前にはいよいよ協会が見えてきた。
「あそこの教会ですよね…アーシアさんの赴任先は」
「はい。それがどうかしましたか?」
「いや、あそこに人がいるの、見た記憶が殆ど無くて」
アーシアへ問いかけた言葉を、彼女は全く顔色を変えずあっさりと答えた。
「今度からは私の他にも神父様も赴任するみたいなんです」
「神父…様」
アーシアの声から出てきた単語が一つの記憶を呼び覚ます。
先ほどの堕天使との衝突の折、最後に現れた少年。
彼は名前こそ名乗らなかったが、その格好は正に神父のそれ。
同じ日に二人同時に神父が来るのだろうか。
否、その可能性は低い。
むしろあの少年こそがアーシアのいう神父だとしたら、あまりにも危険すぎる。
「それでイッセーさん。…もしよろしければ、教会に来ていただけないでしょうか?」
「いいんですか…?」
「はい、困った所を助けていただいたので御礼として是非」
「それではそうさせてもらいます」
一誠は、小さく覚悟を決めて警戒を解かない様に教会への道を歩いていったーー
「こちらです、イッセーさん」
町外れの山の中、そこに教会はあった。
教会を指差して、少し浮き足立つアーシアは一誠よりも早く扉の前に立っていた。
少し遅れてやって来た一誠が隣に立ったのを確認して、アーシアが扉を開けようと力を込めた途端の事。
「おや、ようやく着いたのですねシスター・アルジェント」
突如扉が開き、中からは少し痩せかけてはいるが穏やかな顔つきの神父が。年の功は、一切の両親と同い年程度と見えた。
「は、はい!今日からお願いします!」
アーシアも現れた神父に対して、頭を下げて対応。アーシアに対して何か小さく呟いた神父。角度の問題もあり何を言ってるのかは聞き取れない。
「おや、そちらの方は…」
「こちらは道に迷った所を助けて下さった兵藤一誠さんです」
「それはそれは…。ですが申し訳ありません、今この教会は久方振りに人が居るような状態。とても客人をお招きできる状態ではありません。本当に心苦しいのですが…また後日、足を運んでもらえれば助かります」
神父の言葉に食って掛かる訳にもいかず、一誠はこの場では下がるという選択を選ばざるを得ない。
隣にアーシアがいるタイミングで事を荒立てたくもなかった。
「そうですか。ではまた…失礼します」
素直に帰ろうと教会に背を向ける一誠にアーシアの声が届いた。
「イッセーさん、また来てくださいね」
「勿論」
彼女の笑みに応えるように、一誠も笑みを返す。神父が扉を閉めるその直前。先程までの穏やかな顔では無く、何処か下卑た笑みを漏らしたその一瞬を見逃さなかった。
喉に魚の骨が刺さった様な感覚のまま、一誠は帰路につくしか無かった。
その日の夜、一誠は寝ずに知らせを待っていた。
自室のベットの上で、ドライグへと呟く様に問いかける。
「どう思う、ドライグ。…あの神父や教会は」
『現時点では、限りなく黒に近い…としか言えないな』
あの神父の一瞬の笑み、堕天使達の企み、謎の少年神父。
その全ての中心に、アーシアが座している様に思える。
彼等の目的を探る為にも、一誠は堕天使達との僅かな会話を思い出す。
『至高の堕天使となる私に勝てる筈がないわ』
『こ、この街で厄介事は…貴方に被害が及ぶ様な事はしないわ!』
『そ、そうよ!!つまり、貴方には関係の無い人間が…っっ!!』
レイナーレは何かをする事で至高の堕天使になろうとしていた。
この街で奇妙な事や事件をこの街に住う人相手に起こせば、一誠の耳に入った途端に動きかねない。
あの場合の言い方では、この街に縁のない人間に対する物。
三つ言葉の裏が、一本の線となり繋がった。
「くそっ、やはり狙いはアーシアさんか!」
『だとしても目的はなんだ、あのシスターには…何も』
「そう、確かに彼女には戦う力はない。けれど、それ以上に癒しの力がある。それが奴らの狙いだとしたら、彼女が危険だ」
神器、セイクリッド・ギア。神が人間にのみ与えた超常を引き起こせる能力。その力は多岐に渡り、様々な形の物がある。中には一誠の様に神をも滅ぼせる力を持った
けれど、その多くは攻撃に用いられる。一方で回復の力を持つ神器はそうは無い。
『そういう事ならば、連中の狙いは簡単だ』
「どういう意味だ、ドライグ」
少し躊躇ったドライグに疑問を抱きつつも、その言葉の続きを静かに待つ一誠は、息を飲む。
『あの娘から神器のみを抜き出す。そうすれば、あの癒しの力はカラスにも使える様になる』
「そうなのか…。それで、神器を抜かれたらアーシアさんは」
『死ぬ。神器はその人間の魂に直結してるからな。それを抜かれれば例外なく全員が、命を落とすことになる』
歯軋りを部屋に響かせ、急いで家を飛び出そうと上着を羽織る一誠に一通の連絡が。
急いで内容を確認すると、そこには一誠の決意を更に早める事実が。
『あの町外れの教会に天使側が神父もシスターも送り出した記録はなし。今あの教会にいる者は全て堕天使の息のかかった者達』
リアスからのメール。
アーシアと出会った際に町外れの教会の状態を調べる様に頼んでおいたのが功を奏し、ここに来て一誠に迷いはない。
けれど、ここで一つの疑問もあったがひとまずそれを、頭の隅に置いてから家を飛び出す。
「ドライグっ!!」
『あぁ!!いくぞ、相棒っ!』
『Boost!』
家を飛び出し逆刃刀を顕現させて、ドライグの本来の力の一つを発動。
持ち主の力を倍化。
常人以上の身体能力を持つ一誠の力をさらに高めるべく、刀が強く光る。
『Explosion!!』
倍化された力を一旦解放。
一回のパワーアップにつき、十秒の時間が掛かる為に今回は二倍で完了。
高められた力は身体能力となって、解放される!
正に飛天の様に街を駆け抜ける一誠を一匹の猫と、蝙蝠が見つめていた。
『あと十秒で教会だ』
「あぁ、分かってる!」
夜の街を屋根伝いに駆ける一誠。その速度は、一般人には風が通り過ぎていった様にしか感じない。
目標の教会を視界に捉えた途端、その教会のある方向から光の槍が向かってくる。その数は、一つや二つではない。
「やはり、来たか小僧…」
「さっきは悪かったねぇ、人間」
「悪いっすけど、今度は本気で殺るんで」
レイナーレを除いた堕天使三人が、両手に光の槍を握りしめて空を浮遊して一誠を睨む。
その三人を前にしても一切怯むことのない眼光。むしろ、彼等という敵を前にして、その強さは増す一方。
「悪いがゆるりと会話と洒落込んでいる暇はない。そこを退く気がないのであれば…」
「私達が、相手をするわ」
突如聞こえた声。
振り返ると、そこにいたのは…。
「全く、本当に一人で堕天使達に挑もうとするなんて」
「えぇ。匙の忠告を聞いておいて正解でしたね」
「それでも、まさかシスターさんの為にここまでするなんて」
展開された魔法陣により現れたリアス、ソーナ、そしてオカルト研究部の副部長の姫島朱乃の三人だった。
剣心ならこれくらい読めるのかなって感じです。
一応最初は、一人でアーシアを助け出す予定でしたが、それでは間に合わないかも…ってなったので結局みんなで助けます。
感想や評価をお待ちしてます。
一巻で終わりか、続けるか
-
とりあえず二巻まで
-
取り敢えず進めて欲しい
-
一巻で終わりでいい。