感想や評価をお待ちしております、出来れば一巻の評価次第で二巻も続けたいと思うので…。
「か、会長さん…部長さん達も」
現れたリアス、ソーナ、朱乃の三人は一誠の前に立ちながら宙に滞空する堕天使達を睨み付ける。
「兵藤君、ここは私達が引き受けるわ」
「匙や木場くん達は教会側に先回りしてます」
「さぁ、早く」
願ってもない援軍。アーシアの身を考えればここで時間を喰うのも得策ではない。
「感謝しますっ!」
感謝と共に三人の横を通り過ぎ、そのまま教会のある山へ突入。
加速するその背中に向けて堕天使達が光の槍を投擲。
当然一誠も、それを感知し逆刃刀で叩き斬ろうと剣を構える。
「随分と無粋じゃないの?王子様の邪魔をするなんて」
掌から赤黒い魔力を射出したリアスが、堕天使達の驚く顔を他所に睨み付ける。
その様子を遠目から確認し、今一度感謝の言葉を心中で述べながら一誠は三度教会に向けて駆け始める。
「おーい、イッセー!」
教会を前にして、後ろから聴き慣れた声がした。
振り向くとこちらへ走ってくる匙。その他にはオカルト研究部の部員の残り二人も居る。
「木場君、塔城さんまで」
こちらへ駆けてくる三人。その顔は強い決意を示している。これ以上の言葉を押し留めて一誠は三人と向き合う。
「んで、例のシスターさんはあそこに?」
「あぁ、その筈だ。…いいのか、三人とも」
確認する様な一誠の言葉に三人は迷う様子もなく首を縦に振る。
「それじゃあ、まぁ…行きますかっ!」
匙の力強い言葉に皆が応っ!と力強く答えた。
同時刻。
アーシアは、教会の奥にある狭い一室の中に居た。
ベッドの上で薄い生地の寝巻きに身を包み、その日出会えた同い年の少年の事を思い出しては表情を崩していた。
「イッセー、さん。また会いたいです」
アーシアにとって突然現れた少年と語り合えた時間は短いが、友達と共に時間を過ごすという夢に少しだけ近づけた様な気がした。
今日は此方の都合で彼は帰ってしまったが、また後日来てくれると言ってくれた。だから、だからきっと…。
「シスター・アルジェント、ちょっと宜しいかな」
部屋へのノックと共に聞こえたのはこの教会に赴任されたとされる神父の声。
「はい、どうぞ!」
姿勢を正し、少し乱れた髪を解かしてから返事を返す。
少ししてから神父が部屋に入ってくる。既に空には月が昇り、その光は窓を通して部屋に差し込む。照明の無いアーシアの部屋で神父の影が彼女の足元まで伸びている。
何も語るわけでも無く、ただアーシアとの距離を詰めてくる神父。
「あ、あの…」
「明日から、我々のこの地での仕事が始まる。…堕天使様たちと共に」
「はい…、分かっています」
堕天使達との仕事、その言葉にアーシアの顔は少し淀み、苦しそうな表情へ。
この事実は、アーシアに既に自分は以前とは異なる環境に身を置いてる事を痛感させる。
「そ、それでも悪魔に憑かれてしまった方々をお救いすることが…っ」
言葉を紡ごうとするアーシアの肩を神父が勢いよく掴む。その痛みに言葉が詰まり、後ろに倒れそうになる。
「き、君はもう、堕ちた身。もう君を私のモノにしても問題はないんだ」
「な、何を…や、やめてください!」
肩を掴んでいた手で、アーシアの薄い寝巻きを引き裂いた。
露わになった肌を神父から隠す為に自分の腕で体を抱きしめる。
「ずっと君を見ていた。…あの時、君に傷を癒してもらった時から」
静かに過去を振り返る男は、かつて自分を癒したアーシアへの異様なまでの偏愛を繰り返しながら語り出す。
その異様な様子にアーシアも恐怖を感じ、逃げ出そうとするも体を恐怖が絡め取り動けない。
「レイナーレ様が儀式を完成させる前に…君を、僕の手で!!」
アーシアの体を抱きしめながらベットへ押し倒す。
突如近くなる二人の距離。アーシアの瞳からは、涙が溢れて頬を伝ってシーツを濡らす。
そんなアーシアに男は満足した様。そのままアーシアの髪を、掴みながら自身の唇をアーシアのそれに重ねようと顔を近づけた時。
「それ以上、彼女に触れるな」
突然聞こえた怒りの篭った怒号。
神父もアーシアも揃って声の主を見つめる。
「イッセー、さん?」
逆刃刀を鋭く振るい、神父も壁ごと外へと吹き飛ばした少年を。
今日初めて出会った少年の名前を小さく呟く。
「遅くなってすみませんでした。アーシアさん」
一誠の差し伸べた手をアーシアは恐る恐る掴み、彼女はゆっくりと立ち上がった。月明かりに照らされたアーシアと一誠は、何処か絵画じみた光景。
「ごめんなさい、詳しい説明は後で…今はここから逃げましょう」
肌が露わになってしまっているアーシアに着ていた上着を着せて、彼女を横抱き…お姫様抱っこをして部屋を出る。
「…ごめんなさい、もう少し早く来れば。…やはり最初に倒しておくべきだった」
「また、助けてくれてありがとうございます」
小さく笑うアーシアの笑顔に、渋い顔で答える。
抱えた彼女の体から小さな震えを感じたから。
自分の体よりも遥かに大きい男に襲われたのだ、恐怖を感じない訳がない。
それから間もなく二人は、廊下から大きな扉を開けて、聖堂へ。
「よし、間に合ったみたいだな!じゃあ木場、搭城さん、退散だ!」
聖堂に着き、作られた地下通路から出てきたエクソシスト達と闘う匙達を確認。
匙達もアーシアを抱える一誠を確認して残りの二人にも一旦退く様に指示を。
四人が教会を飛び出して、エクソシスト達を振り切るのに五分も掛からなかった。
「取り敢えず、敵は撒けたようだな」
山の中を駆けた一誠は取り敢えず抱えていたアーシアを下ろす。他の三人もそれに伴い立ち止まる。
「シスターさんも無事なようですね」
オカルト研究部の部員の一人、搭城小猫。白い髪に、小柄な体格。中学生や小学生にも間違えられそうな顔立ちも相まっている為か、その辺のファンが学園にも多い。
「取り敢えず、作戦は成功だね」
金髪に白人を思わせる肌と整った顔立ちの少年、木場祐斗。彼もまた小猫と一緒でオカルト研究部の部員の一人で、リアスの眷属の一人。
周囲の気配を警戒し、エクソシスト達が周囲に居ないことを確認。
「了解です、会長。……外にいた堕天使達は、会長達が倒したらしい」
齎された情報は敵の戦力の殆どを削った事を示していた。祐斗や小猫も一安心といった様子。
そんな中で、一誠はまだ一つの不安点が。
「まだレイナーレと、あのエクソシスト達が居る。…それにあの神父服を着た少年も残っている」
「そうだな。さっさとケリをつけますか」
一誠は、アーシアに視線を向けてから幾分か表情を和らげてから静かに言葉を伝える。
「アーシアさんは、搭城さんと共に早く安全な場所へ」
「イッセーさんは、どうするのですか?」
「まだここに残らなければならないので、必ず後から追いつきます」
小猫に対し、頼みますとアーシアを託す。小猫は、まだここに残り闘う気概ではあるが震えるアーシアの体と一誠の上着から僅かに見える引き裂かれた上着を見て、事情をある程度察する。今のアーシアには同性の自分が付き添うのがベストと判断した一誠の判断に同意。その作戦に乗る事にした。
「行きましょう…私に掴まっていてください」
「は、はい!」
小猫も、先程の一誠同様にアーシアを横抱きで抱えてから山を下りる。その目的は駒王学園。
そこに行けば、リアス達や生徒会役員の面々と合流出来る。
「気を付けてくださいね、先輩達…っ」
山に残った三人に小さなエールを送りながら、アーシアを守る決意を固めながら小猫は学園を目指した。
「搭城さんとシスターさんは、学園についた頃かな」
「だろうね。部長や会長達がいてくれてる。大丈夫さ」
一誠を安心させるような言葉に、小さな笑みで感謝を伝える。
同時にこちらに向けて駆けてくる面々の存在を感じ取る。臨戦態勢へ。
「兵藤一誠ぇぇぇぇ!!よくも、よくも、わたしの計画を壊してくれたわね。…いいわ、お前たちあの人間と二匹の下級悪魔を殺してしまえ!!」
百以上はいるであろう堕天使の庇護下にあるはぐれエクソシスト達。その一人一人が悪魔狩りのプロである。そんな彼らはあまりの残虐性に教会に追われ、神の信徒とは思えない風貌をしている。
そんな者達が、勢いよく山を駆けて三人に向かってくる。
「行けるか二人とも」
「勿論さ、
「あぁ、久しぶりに暴れてやるぜぇ!!!行くぜ、ラインよっ!!」
逆刃刀を構えた一誠。
その隣では、己の神器を顕現させる匙と祐斗。
月が昇る夜の中、三人ははぐれエクソシスト達に向かって突撃していったーー
「
匙の体にある異なる種族を悪魔へと転生させる
主人が敵地と認めた場所でなら、他の駒へと昇格できる。
その特徴をもって、高い攻撃力と耐久力を有する
「おらぉ!!」
「こぶっ!」「ぎゃぁ!!」
全力で振りかぶった拳は近くのはぐれエクソシストを捉え、その体を吹き飛ばす。余波により、周囲の者達も同様に体を吹き飛ばされる。
元々、不良で他校との揉め事も絶えない過去を持つということもあり喧嘩慣れした動きを見せる。美しさではなく、粗野な動きではあるが相手を倒すという事には適した動き。
「逃すかよ!!」
匙の右手首に取り付けられている神器、
「おらぁぁ!!!」
ラインを力強く引っ張り、はぐれエクソシスト達をぐるぐる巻きの要領で拘
束。そこから、全力疾走で助走をつけてからのドロップキック。
一つに纏められ拘束されたエクソシスト達をそのままノックアウト。
ラインをそのまま出したままで、塊となり動くエクソシスト達の元へ戻る。
「木場ッ!」
スピードを生かした斬撃を得意とする裕斗の周囲を囲むエクソシスト達の一人を殴り飛ばして、彼と合流。
互いに背中を合わせ、再び乱戦へと縺れ込ませる。
「でっかい剣を、一つ頼む!!」
エクソシスト達の怒号と呻き声の中で、匙は叫んだ。裕斗もその言葉に応じる様に神器、魔剣創造の力でおよそ自分では扱いきれない長さと重さを誇る剣を創造し、匙へ託す。
魔剣創造。所有者の頭の中でイメージされ魔剣を作り出す神器。
裕斗の力で作られた巨大な剣を、戦車の力を持って振り回す。
匙は周囲のエクソシストらに不敵の笑みを見せる。
「おらおら、怪我したくなきゃ…さっさと降参しろー!!」
「すごい使い方…でも、面白いっ!」
自分の近くで、巨大な剣を力の限り振り回してエクソシストと戦う匙に苦笑しながらも裕斗も悪魔にとっては猛毒でもある光の剣を受け止める。その体勢のまま、軽く力を抜き均衡を崩す。
崩れたバランスにエクソシストが慌てるその隙を狙い澄まし、一撃を。
「兵藤君は…っ!」
一人、堕天使レイナーレに向かう一誠を捉えてその状況に目を疑う。
戦闘開始から十分で自分と匙でおおよその半分を倒したとみていたが、既に一誠は半数を倒していた。
残るのは自分たちの周囲にいるエクソシスト達とレイナーレ。
「ま、まずいんじゃないか…」
はぐれエクソシスト達にも全滅の文字が見え隠れし、動揺する者もいる。その隙を逃さない裕斗と匙により逃げられないのが実情だ。
そこから数分足らずで、百を超えるはぐれエクソシスト達は全員地面に倒れ伏す事になる。
「な、なんなの…なんなのよ!あんた!」
レイナーレは、目の前の光景に正に度肝を抜かれていた。
今回の計画のために集めた百人以上のはぐれエクソシスト達。一人一人が腕に覚えのある者達ばかり。
そんな連中がたった三人になす術もなく破れていった。加えて一人は、神器持ちとはいえ人間。
「兵藤一誠だ」
二匹の下僕悪魔も強いと言えるが、この三人の中で別格なのは真ん中に立つ人間。瞬く間にエクソシスト達を沈め、その速さは堕天使でもあるレイナーレの目にも捉えきれなかった。
「お前の計画は…ここで終わりだ」
癒しの神器を持つアーシアから神器を抜き取り、自らの物にする計画を眼前の人間に破綻させられた。
「ふ、ふざけないで!!この為にわたしは…私は!……ッ、フリードォォ、来なさい!!早くしなさい!!」
「全くうるさいったらありゃしないねぇ…堕天使の姉さん」
まるで今までの動向を見計らっていたかの様に森の奥から…ゆらりとした足取りで神父服の少年がやってくる。
「来たか」
戦いに対する喚起、殺しへの快楽、神という存在への怒り。
あらゆる方面での独立している筈の感情を溢れ出し、この世界にぶつけてたがっている。
そんな表現が出来る親父服の少年ーーフリード・セルゼン。
「いやぁ、まさかアーシアちゃん一人の為にここまで大立ち回りを演じてくれちゃうなんて、流石の俺っちも読めなかったでござんす」
コートの内ポケットからピストルを取り出して、鋭く研ぎ澄まされた脇差程度の短剣を取り出す。
ピストルを片手で弄びながら、短剣を正面に構える。
「けどまぁ、…一応、今回のカタはつけさせてもらいます…わっ!」
「な、何を!?」
そう言うが速いか、フリードはピストルの銃口を一誠ではなくレイナーレに向けると即座に引き金を引き、銃弾を放った。
「止めろ!!」
一発目の弾丸をを放ったタイミングで、一誠はフリードを止めるべく前に足を出す。一足目で自身の間合いにフリードを入れる。逆刃刀を鞘から抜き放ち、横薙ぎの一撃目を振るう。
「何の真似ですかい…人間君」
「それはこちらの台詞だ。…何故こんな真似を」
危なげもなく一誠の一撃を短剣で受け止めつつ、鬩ぎ合う。鍔迫り合いにより火花が散り、一誠が力を込めて押し切る。
フリードも後退し、一旦距離を置く。
「いやぁ、もうこっちの勝ちの目はないし、そこの烏を守りながらあんたと闘うのは厳しいでしょ」
「わ、わたし…は…し、至高の、堕天使に…なって、あ、アザゼル様に…」
異形の存在でもある堕天使が普通の鉛弾を撃たれて、そこまで傷付くとは思えない。恐らくは堕天使にも効くように細工をされていたのであろう。
見えない何かに対して、手を震わせるながら伸ばし続けるレイナーレ。
一誠は近づき、声を掛ける。
「自分の力で、君自身の力で道を進んで行かなければならないんだ。その為には生きるんだ、生きていればまた何度だって目指せる」
「に、人間風情が…何を言ってるの」
「確かに、君の事情も何も分かってはいない。それでも、生きていれば償いも、夢もまだ追いかける事が出来ることは知ってる」
生きていればどんな形であれ幸せを得ることが出来る。
そう信じている。
何処までも純粋で真っ直ぐな瞳でレイナーレを捉える。そんな瞳に貫かれるのが居た堪れないのかレイナーレは、そっと目を逸らす。
「あらあら、まさかまさかの改心エンドですか!?」
二人の空気にフリードも驚かざるを得ない。
と、そのまま自分に背中を向けるレイナーレに対して、駆け出す。
油断したレイナーレも反応が遅れるが。
「させない…」
眼前の一誠が、突然消えた。
先程まで一誠がいた場所から突風が発生して、レイナーレさえも風圧で体が吹き飛ばされる。
後方にいた祐斗や匙がその体を受け止めて、事なきを得る。
「アイツは…っ!」
一誠を探すレイナーレは、息を呑んだ。
月が昇り、光を放つ夜の中。一誠は月と重なるほど高く飛翔していた。
深い山の中、逆刃刀の刀身に月の光が反射し、白く光る。
「飛天御剣流ーーー龍槌閃」
「げ、マジかい…っ!!」
そのまま一誠の体は、落下し落下速度と共に加速する。
速度の勢いと共に刀を振り下ろす。一撃は、フリードの体を直撃。一誠は上手く着地を決める。
「何なんですかい…その刀は」
体が血を流しながらも、決して致命傷ではないフリードは一誠が握りしめる逆刃刀を見て軽口を叩く。
「不殺の誓い、逆刃刀だ」
夜の闇が少しずつ明るくなり、夜明けが近づいてきた。
「イッセーさん!!」
フリードを倒した後、一誠は匙と祐斗らと共に駒王学園へ。
校門前にはアーシアとリアス達が待機し、三人を待ちわびていた。
そこから事後処理が行われ、一誠はそれを見届ける事に。
「恐らく、あのレイナーレとはぐれエクソシスト達は拘束されて然るべき場所に送られるわ」
「そうですか…」
小猫とアーシアが学園に着いたタイミングで、リアスが冥界に報告をした為に一誠が着く頃には冥界から悪魔達が到着していた。
因みにリアス達と交戦した堕天使三人は死を選び、そのままリアス達の手で消滅。その最期を、レイナーレも知った様で痛ましい顔でリアスの呼んだ冥界の悪魔達の手で連行されていくのを一誠は見届けた。
「部長さん、彼女はどうなるのですか」
「正直に言えば、堕天使の組織にそのまま送られるでしょうね。人的被害はほぼ出ていないし、この程度の小競り合いは珍しい事でもないわ」
「…そうですか」
この騒動で、彼女は仲間達を失い、成り上がるための手段を潰された。
それでもやり直す機会はまだある。
生きてさえいれば、きっとーー。
次回で一応最終回。
伏線を張るかもね…。
今回は実写版のイメージが強い…見ながら作ったので。
一巻で終わりか、続けるか
-
とりあえず二巻まで
-
取り敢えず進めて欲しい
-
一巻で終わりでいい。