REGAIN COLORS   作:星月

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露見

「村上先輩は紅月先輩の強さの秘訣って何だと思いますか?」

 

 時を遡ることおよそ数ヵ月。

 三雲が村上に誘われ、1dayトーナメントを観戦した翌日、日課となっていた村上とのトレーニングの合間に彼は試合で目の当たりにした隊員の強さについて尋ねていた。

 敗れこそしたもののあのA級1位と最後まで渡り合う力を持つ、B級の上位に君臨する部隊長。何度か戦ったこともあり同年代であるという彼の視点からそのコツを是非聞いておきたいと考え、彼の答えを待つ。 

 

「……そうだな。一言で表すのは難しいが、『一流の策士』といったところかな」

「策士、ですか?」

 

 意外な表現に面を食らった。

 中々出てこないであろう親しい者への比喩、しかも一隊員としての戦闘における強さとはあまり直結しにくいような言葉のように思える。

 あまり納得いって無さそうな三雲の顔に、「仕方がないか」と村上も小さく笑う。

 

「なにも作戦だけに限った話じゃ無い。局地戦においても重要となる駆け引きの強さ、と言えば通じるか。表と思ったら裏、裏だと思ったら表。あると思えばなく、ないと思えばある。情報量で圧倒し、相手にこうなのかと幾重もの思考を強制させた上でその裏をつく。地力もあるが、それだけでは戦闘員二人だけでB級の世界を勝ち上がれないだろう」 

「……なるほど」

 

 続けられた言葉で理解に至った。

 たしかに改めて考えてみると、二宮隊や影浦隊をはじめとした他の上位部隊と比べても圧倒的な戦力で蹂躙するというよりは多彩な戦略や戦術で勝ち上がるという印象が近い。何度か目にした部隊ランク戦でも相手の不意をついて敵を撃破する光景が繰り広げられていた。

  

「いかに本命を隠すか、本命となりうる手札を持っておくか。あいつの強みはこれに尽きると思う。真相さえ知ってしまえば納得できることでも見せ方によって簡単に不意を突かれたりするしな。――そうだ、何ならあいつのログでも面白い戦いがあったから、見せておこうか?」

「何ですか?」

「これはあいつ自身も他人から教わったものらしいが」

 

 意外と単純な手でも、人の裏をつけるものだぞ。

 そう付け加えて、村上は自身のある対戦記録を起動したのだった。

 

 

―――― 

 

 

「……っくしゅん!」

「ん? どうした、ライ。風邪か?」

「いや、大丈夫だよ。トリオン体とはいえ、不意な風が吹いて反応しちゃったのかな?」

 

 突如大きなくしゃみをしたライに荒船が問いかける。

 軽く手を振り、無事をアピールすると、改めて大きな風穴が空いた本部の壁へと視線を向けた。

 

「まさかこんな事態になるとはね」

「てっきりお前が今日来たのはこうなる事を見越してかと思ったくらいだ」

「そんなわけないだろう。そもそも本当にわかっていたら、こんな事になる前に止めていただろうし」

 

 彼らの背後では責任者である佐鳥と当事者である雨取が事の大きさの前におろおろと右往左往し、その隣で東が冷静に他の部署へと連絡し、影響がないかやり取りしている。

 突然基地の外壁に大穴が空いたのだ。前代未聞の出来事なだけに、仕方のないことだろう。

 

「正直な話、僕自身も驚いている。まさかあれで止められないなんてすさまじい威力だ」

「……そうだな。実質、今の正規ボーダー隊員で止められるものは一人もいない砲撃だったからな」

 

 先の一連の様相を思い返し、二人はひとつの考えに至った。

 あのアイビスの一撃は、少なくとも現在のボーダー隊員の中に止められるものはいないと。

 先ほどライが起動したエスクードはノーマルトリガーのなかでも最高の硬度を誇る。それを何重にも張り、どのような攻撃であろうとまず防ぎきるほどの万全の態勢を敷いた。

 それでも彼女の砲撃はそれら全てを貫通して、なおも留まることを知らずに本部の壁をも撃ち抜いた。

 現状ではエスクードを使う戦闘員がほとんどいないという現状も相俟って、あの攻撃は防ぐ術はない強烈すぎる一撃だと二人は結論付ける。

 

(結果的に、僕の行動で余計に衝撃が強まってしまったな)

 

 勿論止めるつもりで動いたし、止まってくれればそれが最善だった。

 しかしライが備えていたにも関わらず貫通したという事実は余計に雨取の破壊力を轟かせる形となっている。

 まあこれで本部がより一層守りを固めるようにしてくれれば良いか、とどこか他人事のように考えて、ライは視線を佐鳥達への方へと戻した。

 

「まあ済んでしまった事は仕方がない。とにかく一度ーー」

「なっ!? なんだこれは!? 何があった!?」

「ん?」

 

 場を落ち着かせようとしたその瞬間、さらに騒動が増し始めた。

 発生源である訓練室の入り口へと視線を向けると、声の主である鬼怒田が大穴へと指先を向けて冷や汗を浮かべたまま表情を固まらせている。

 

「壁が、ない!? どういうことだ!?」

「鬼怒田さん。それにーー」

「ちっ。おい、どうなったら狙撃手訓練でここまでの大事になる。それも佐鳥だけならまだしも、お前や東さんまでいたというのに」

「俺だけならまだしもってどういう意味ですか!?」

「……二宮さん。あなたまで」

 

 さらに鬼怒田の横で悠然と構える二宮が淡々と愚痴を溢した。

 当事者の存在から、本当ならばまだ彼女と引き合わせたくはなかったのに。

 佐鳥の悲痛な叫びを他所にライがため息をこぼす中。

 

「状況を説明しろ、紅月」

 

 二宮は彼の心中を知ってか知らずか、ライに問いただすのだった。

 

「……わかりました。説明は構いませんが、二宮さんが出るほどの事ではありませんよ。設備の破損は出ましたが、人的被害はありませんし、それに」

「出ている」

「はっ?」

「人的被害なら出ている。そう言ったんだ」

「……えっ?」

 

 思いもよらぬ反論にライは言葉を失う。

 確かに砲撃は防げなかったが、事前に他の人へ被害が出ぬようにライ自身が動いていたし、訓練室の人員に欠員がない事は確認済みだ。

 ならば何故?

 答えに思い至らないライを見て、二宮は先ほどあがったばかりの報告を溜め息交じりにライへ話し始めるのだった。

 

 

――――

 

 

「そろそろ俺にも新しい技が必要な気がする」

「いきなりどうしたんですか、イコさん」

 

 訓練生たちが説明を受け始めた頃、交代のため基地から防衛任務に向かおうと出発した生駒隊の一行。

 いつも通り隊長である生駒はあまり任務と直接関係のない戯言を話し始めると、彼の機嫌を害さないようにと水上が軽く話を合わせる。

 

「最近な、ふと思ったんや。なんでライばっかり話題に上がるんかと。色々と振り返ってみて思ったんや。あいつが色々珍しいものを次々と披露するからそれに惹かれるんやないかと」

「まあ確かに彼の戦いとかは見てても飽きないですからねえ」

「せやろ?」

 

 隠岐の理解を得た生駒はしたり顔でさらに続ける。

 

「ほなら俺も新しい技、そうでなくても旋空のバリエーションを増やそうと思ってな。取り掛かりやすそうで、練習も難しくなさそうなもの何かないか。三日三晩考え、そして思いついた」

「何ですか?」

「名付けてーーアクロバティック生駒旋空」

「なるほど。派手に動きながら旋空撃つわけですか」

「マンマっすね!」

「何で名前だけで技の詳細までバレたん?」

 

 理解力に長けた水上だけではなく海まで即座に披露すらしていない技を理解したことに驚きを隠せない生駒。

 いや、誰でもわかるだろう。誰もが心中で突っ込むのはいつものこと。

 「とにかく」と生駒は咳払いをして間を置くと、今一度己の心中を打ち明けた。

 

「ただの旋空やないで。ほら、前にもあいつのエスクードで香取ちゃんが吹っ飛ばされたり、鋼くんが三回転半決めたことあったやろ?」

「ああ。そう言えばランク戦でそないな事もありましたね。懐かし」

「そういった時のカウンターにもなると思ったんや。これが決まればあいつがカッコつけようとした所で反撃の一発を炸裂。皆の注目が俺に向かう事間違いなし。どや?」

「決して彼はカッコつけようとしているわけではないと思いますけど、まあそれ以外は正論やと思いますよ」

「よし!」

 

 参謀である水上の賛同まで得られたならばまず間違いはない。自らの考えに自信をつけた生駒は胸を張って拳を握りしめた。

 

「というわけで今回はマリオちゃんに頼んで前もって特別にエスクードを装備してきました」

「何でこういう時に限って準備万端なんや?」

「料理番組並の手際の良さですね」

『待って!? 防衛任務に必要って聞いとったんやけど!?』

「だから必要やん。今からやるんやから」

「そういうの訓練室でやってくれません?」

「俺こういうのはガチな状況でやりたいねん。そもそもカウンターを想定するならどんな状況かなんてわからんからシミュレーターじゃなくてリアルにやりたいし」

「ホント、変な所で真面目」

 

 真面目にふざけるのだからタチが悪い。その熱量は可能ならば他へと向けられないのだろうか?

 とは言ってもやる気はあるのだから下手に止めても聞きはしないだろう。何よりもここで駄々をこねられても困る。

 生駒隊の面々は皆ため息をこぼすに止まり、それ以上強く口を挟むことはしなかった。

 

「まあ最初は移動も兼ねて、空中でもしっかり動けるかどうか素振りでやってみよと思ってな。マリオちゃん、空中での動きとかちゃんと分析しといてくれる?」

『……はあ。やるならさっさとやりぃや』

「助かるで。皆もちゃんと見とってな? ライに自慢できるくらいになるまでやるで」

「そのうちイコさんは彼に撃ち落とされても文句言えなくなりそうですわ」

 

 むしろ同じ部隊でもないのによく今でも付き合ってくれているなと、隠岐はライの面倒見の良さに感心した。自分だったらここまで一対一で最後までつきあうことは中々難しいと思う。

 まあ目論見は置いといて、うまくいけば確かに生駒の新たな武器にもなるかもしれない。苦笑を浮かべつつ、隠岐は改まって生駒の姿をじっと捉えた。

 

「よっしゃ、ほな行くで。――エスクード」

 

 そして彼らの注目の中、生駒の足元に光が集う。やがて地面から競り上がった壁の勢いを利用し、生駒の体が空高く舞い上がって――

 

「ん? なんや今」

 

 瞬間、生駒は背後で強大な爆発音のような、何かが弾ける音を耳にした。

 一体何事か。

 彼が理解するよりも早く、その音の正体である砲撃は、一瞬で生駒の体を飲み込んでいった。

 その砲撃で体の大半を吹き飛ばされた生駒は瞬く間にベイルアウトし、本部へと帰還していく。

 

「イコさん!!??」

「えっ!? 砲台!? 何、今の? 基地の方から来んかった?」

「……フラグ回収早すぎやろ」

 

 基地を発ってから数分も経過していない中で突如襲った悲劇。

 あまりにも呆気なく隊長が離脱した現状に、皆現実を直ぐには受け入れられず、その場で硬直するのだった。

 

 

―――― 

 

 

「というわけで、防衛任務に向かうついでに遊んでいた生駒が撃墜。突然欠員が出た事、さらに当の生駒も訳がわからず騒ぎ立てているため、現場は混迷を極めている」

「……何をやっているんですか、イコさんは」

 

 砲撃が放たれた方角的にも犠牲者が出ないと読んでいたのだが。二宮の報告にライは言葉を失った。

 しかも相手が生駒というのが余計に質が悪い。下手すれば発砲の場所が訓練場と判明し、この場に殴り込んでくる事さえ考えられた。

 そうなれば責任者である佐鳥や当事者である雨取がさすがに可哀想だろう。なんとか事前に手を打つべきか、ライが次善の策を脳裏に浮かべ始めると。

 

「オイコラァー! ここかいな。俺の華麗な新技の邪魔をしたっちゅう不届き者がおるのは!」

「生駒か」

「……来るのが早すぎです、イコさん」

 

 再び訓練室の扉が乱暴に開け放たれた。

 怒号と共に生駒が姿を現す。どうやら予想以上に彼の怒りは凄まじいらしい。それ程声量が大きなものだった。

 

「許さん。よくも俺の邪魔をしおったな。叩き斬ったる」

「だそうですよ佐鳥さん」

「責任はお前にあるしな」

「ええっ!? 俺になるの!?」

「大変ですね、責任者って。――さて」

 

 荒船と東にポンと肩を叩かれ、生駒の怒りの矛先を向けられた佐鳥が一人狼狽する。

 まあ現場の責任者なのだから当然だろう。ライは他人事ながら、どうにか助け船を出してあげようと前に出た。

 

「叩き斬ったるぞ、ライ」

「はっ? えっ……はっ?」

 

 しかしその直後、何故か生駒の視線が自分へと向けられてライは言葉を飲み込んだ。

 全く意味がわからない。何か勘違いしているのだろうか。ライが困惑していると、それを見かねたのか生駒が話を続けた。

 

「話は他の狙撃手のメンバーに聞いたんや。自分、今日は本来ここの訓練監督に入る予定はなかったそうやん」

「はい。その通りですが、それが何か?」

「突然参加した自分。そしてそこで起きた不慮の事故。巻き込まれたのは師匠である俺。そらこの事を仕組んだのは誰かなんて一目瞭然やろ。そんなに俺が邪魔だったんか? 俺の存在がうざかったんか?」

「……なるほど。そういう考えになっちゃうんですか」

「当たり前や」

 

 事実はむしろライが守るべく立ち回っていたのだが、そんな事情を知る由もない生駒はさらに熱弁を続ける。

 

「俺はなぁ、もはやありとあらゆる事件に自分が関与しとると疑っとんねん。そのうちきっと『一体いつから僕が関わっていないと錯覚していた?』とか言うやろ」

「いくらなんでも買いかぶりすぎです。そんなこと言いません」

 

 どこの黒幕ですかと、ライは冷静に突っ込んだ。事実、ライの行動原理は雨取を警戒しての事であり、事故においても彼は被害を減らすべく動いている。

 そのため生駒の発言は完全に的はずれなのだが、彼が一度拗ねてしまっては中々意見を覆すのは難しいのはライもよく知っていた。

 さてどうしたものか、ライが顎先に手を置いて考えを纏めていると、先程から視線を右往左往させていた雨取が生駒たちの方へと歩を進め、大きく頭を下げる。

 

「本当にすみません! 撃って、壁を壊してしまったのは私です!」

「何……!?」

「はっ?」

「何だと?」

 

 雨取の謝罪に、鬼怒田と生駒、二宮の当時現場にいなかった三人は思考が停止した。

 基地を名乗るだけあってボーダー本部の装甲は並大抵ではない。それなのにこんな幼い少女が撃ち抜くほどの砲台を放ったのかと、皆目を丸くした。

 

「まさか。東くん、本当なのかね!?」

「にわかに信じがたいが、そうなんですか東さん?

「おいライ。自分が責任を押し付けてるだけとちゃうんか? こんな小っさい子に……」

「そんなことしません」

 

 事実確認をすべく、鬼怒田と二宮は東へ問いかけ、生駒はライへと疑念を投げる。

 確かにもしも逆の立場であったならば信じられないだろうが、目撃していた東は淡々と事実を告げる。

 

「その通りです。彼女が射撃訓練で用いたアイビスによって今回の風穴は開きました。――その肩のエンブレム、君は玉狛支部の隊員だね?」

「は、はい。玉狛支部の雨取千佳です」

「なっ。玉狛の……!?」

「えっ。じゃあマジで単なる事故なん!?」

 

 東が言うならば間違いないと、語られた真相に鬼怒田と生駒は驚きの声を上げて雨取を見つめ。

 

「……なるほどな。また玉狛か」

 

 一方二宮は一人、冷静にそう口にした。彼女が口にした所属、それは二宮がつい先程耳にしたばかりのものだったが故に。

 

「いやーそうかそうか。千佳ちゃんと言うのか。すごいトリオンの才能だねえ。これ程の威力は見たことがないよ。壁のことは後でトリオンを使えばいくらでも直せるから、何も気にすることはないからね」

「冗談ですやん。ちゃうからな? 叩き斬る言うたんは、『俺がちゃんと狙撃の弾を叩き斬ればよかったのに』って言っただけやからね? ほんとすごい弾やったわ。自信を持ってええで」

「えっ。えっ。あ、はい。ありがとうございます……?」

 

 こうして事の顛末を知ると、鬼怒田と生駒は掌を返して雨取を褒め称え、気遣うように優しく声をかけた。鬼怒田に至っては雨取の頭をそっと撫で、彼女の緊張を解そうとしている。

 

「イコさんはわかりますが、鬼怒田さんは一体……?」

「別れて暮らしている娘さんが中学生らしいから、彼女を見て思い出すんだろう」

「ああ、なるほど」

 

 東が以前耳にした家庭事情を打ち明けた事でライや佐鳥も納得した。確かに大切な存在と似通った相手にはどうしても甘くなってしまうことがあるのはライも経験があるため、クスッと笑みが自然と零る。

 

「そっかあ。まだまだこんな才能がある子供が……うん? あれ、ちょい待ち。俺この流れ、何かちょっと前にも見たことある気がするんやけど……!?」

 

 女の子に甘い生駒も同様だ。

 雨取とこの機に仲良くしようと声をかけて。同時につい先日、彼は弟子が己の知らぬ間に女の子と親しい関係を築いていた事を思い返し、表情を強ばらせた。

 

「ちょっ、ごめん。雨取ちゃん。いくつか質問してええ?」

「はっ、はい。答えられる事でしたら」

「あなたは師匠がいますか?」

「はい。います」

「なるほどな。その人は男性?」

「そうです」

「……イコさん、アキ◯ーターのつもりですか?」

 

 雨取へ次々と質問を続ける生駒に、ライが以前ネットで見た知識を思い返して呆れを抱きながら問いかける。しかし生駒は「わかっとらんなぁ」と前置きを置いて、弟子の疑問に答えを示した。

 

「これは生駒ーターや。一度も外れた事ないで」

「でしょうね。今初めて聞きましたから」

 

 それはそうだろう、ライの冷静なツッコミを右から左へと聞き流し、生駒は話を続ける。

 

「その人のポジションはオールラウンダー?」

「よくわかりませんけど、たしかパーフェクトオールラウンダーって言われてました」

「……やっぱり自分やないかい!」

「外れです。役に立たないそのサービス、早めに終了した方がいいですよ」

「えっ。マジで違うん?」

「は、はい。玉狛支部の木崎さんです」

「木崎さん……はっ? サイズ比どうなっとんの?」

 

 溜め息を吐き、最後の1/2の択を外した生駒に指摘するライ。

 雨取が恐る恐る師匠の名前を挙げると、生駒は木崎の恵まれた体格を思い出し、信じられずに狼狽した。

 そんな馬鹿な。中々現実を受け入れられない生駒をみてライが呆れる中、二宮がライの肩を叩いてそっと耳打ちする。

 

「紅月。こちらが落ち着いたらその雨取を連れて一緒に来い。話がある」

「話ですか? 何かあったんですか?」

「ああ」

 

 そこで二宮は間を置いて、何かを思い返すように瞳を閉ざし、それから話を続けた。

 

「三雲修と、会ってきた」

「えっ?」

 

 二宮の口から出た名前は、つい先日の防衛任務や黒トリガー争奪戦などでも話題になっていた隊員の一人、三雲だ。

 まさか事件の詳細を知らないはずの二宮からその名を聞くことになるとは思ってもいなかったライは、衝撃に目を見開いた。

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