日曜日、狙撃手合同訓練。正式入隊式を終えた狙撃手志望の新入隊員も交えた狙撃手の訓練日だ。
今日より訓練に加わった者はやはり慣れぬ環境でまだ落ち着きがない様子である中、既存の隊員たちもまた普段とは異なる空気を醸し出していた。
「ねえ、あの人って……」
「ああ。紅月隊長だ。せっかく昇格したのにすぐ降格させられたっていう」
「勿体ないよなー。生駒隊が駄目だった試験を通ったって言うのに」
「A級になって天狗になっていたんじゃねーの?」
一人の隊員、ライが訓練場に姿を現した事によって。
狙撃手訓練は各々の都合により参加不参加の日があるものの基本的に同じ面子が集う。
しかも狙撃手のポジションではもう一人、トリガーの使用を禁じられた為に今はこの場にいない鳩原の存在が大きかった。常に成績上位者に名を連ねる二人の違反者が出たという事でどの界隈よりも話題が広がっている。
当然彼らの性格や人付き合いを詳しく知らないC級隊員は特にその傾向が強かった。
(やはりこうなったか)
隊員たちのひそひそ話が耳を打つ。わかっていた事だが、ライはわずかに目を細めた。
先日彼が瑠花に話したように今回の事件の出来事について他言は禁止されている。たとえ詳しく踏み入らない話題だったとしても。
だからどのように言われようともライはただ受け流すしかなかった。
(さすがにこの空気ではいつもの場所で訓練するのは得策ではないな。どこか、周りに人がいない場所を探すか)
今日の訓練は隊員が自由なレーンに立ち、レーダーで指示された目標の的を撃ち抜くというレーダーサーチ訓練だ。
近くに噂の主である自分がいては周囲の隊員たちに悪いだろう。そう考えてライは普段のようにB級やA級の同僚が集まる場所とは異なる位置を探し求めて歩き始めた。
「おー、紅月。何ウロウロしてんだよ」
そんなライの背後から一人の隊員、当真がいつもと変わらぬ調子で語り掛ける。
「……当真」
「なんだよ、場所探しか? だったら俺の横来いよ。今日はユズルもいないみてーでな。ちょうど空いてんだ」
「いや、僕は」
「いいからいいから」
すでに荷物を置いてある自分の隣のスペースへと当真は促した。
ライは反対しようとしたものの、当真は強引に彼を引きずっていく。
仕方なくライは言われるがまま当真の横のポジションに荷物を降ろし、訓練へと参加するのであった。
————
一つ的を撃ち抜けばすかさず次の的が視界上にレーダーとして映し出された。
すぐさま銃口をそちらへと向け、速射。慣れた手際でライはイーグレットを操作し、次々とターゲットを撃破していった。
《おう。今日も絶好調じゃねーか》
《ん? 当真?》
するとその最中、訓練中にも関わらず隣に座る当真から内部通信が入る。
突然の出来事に驚きつつもライは視線を動かすことはしなかった。指示された的に狙いを絞りつつ、同じように通信で返答する。
《どうしたんだ、急に。訓練中だぞ》
《だからだよ。今なら変な邪魔も入らずにお前と話せると思ってな》
当真も引き続き狙撃しつつ、幾分か真面目な顔つきへと表情を変えて話を続けた。
《——ありがとうな、紅月》
《はっ?》
そして唐突に感謝の言葉を告げられる。要領を得ない当真の語りにライは意味が分からず彼の本音をすぐに理解する事は出来なかった。
《なんの話だ? 最近君に勉強を教えた覚えはないけど》
《そっちの話じゃねえよ。鳩原の事だ》
《……どういう意味だ? どうしてそこで鳩原が出てくる?》
《ああ。まあ当然とぼけるよな》
それも仕方ねえか、と一つ間をおいて当真は軽く笑みを浮かべる。
《確かに今回の処罰がお前と鳩原、どっちか一人だけってならわかんなかったかもしれねーけどよ。お前ら二人が同じタイミングで処罰を受けた。しかもあの会話の直後にだ。さすがにそこまで鈍感じゃねーよ》
当真はライと同じように鳩原から絵馬を託される話を聞いていた。
その日の様子から当真も何か不安を抱いていたのかもしれない。だからこそそのあとの二人の処罰で勘付く事が出来た。
ライから肯定も否定もない中、さらに当真は自分の意思を打ち明けていく。
《多分、鳩原が何かしら無茶したんだろ? そんでお前が無茶してそれを止めたか助けた。そんなとこじゃねーのかよ》
《……さて、ね。どう考えるのかは君の自由だ。僕から語る事はなにもないよ》
《じゃあ俺が勝手にそう仮定したうえで言うぜ? 多分、そう考えているのは俺だけじゃねー。まず東さんは当然知っているだろうし、奈良坂あたりも何かしら察してんじゃねーかな。ユズルは余裕なさそうだからそのあたりのやつらはわかんねえけど》
当真一人だけではなく、狙撃手として共に訓練をしてきた者達ならば勘付いているものもいるはずだ。そう当真は確信を抱いていた。
《一応クラスメイトでもあるしな。色々気にはなっていたんだ。——だからありがとよ。俺らじゃ関わる事すらできなかった鳩原の為に動いてくれて》
ゆえに当真は仲間を代表して礼を告げる。狙撃手として、同級生として、戦友の為に動いてくれた彼に。
《外野の声なんて気にしないでいい。少なくとも俺達は、お前が
ライの戦う理由を知っているからこそ、何も知らない隊員の発言など聞く必要もないと当真は断じた。彼は良く知る隊員ならばそのような事は言わないと信じている。
《……そうか。君の言葉は嬉しく思う。だが、あくまでもそれは君の推測に過ぎない。そのような話はもう二度としないでくれ》
《おっと。こりゃ厳しいな。ヘイヘイ、どうせ俺は頭もよくねえしこれ以上突っ込んだりしねーよ》
当真の話を聞いて思うところがないわけではなかった。とはいえどのような事情であれ他人に真相を明かす事はできない。ライはあくまでも平然さを貫き、当真の追及をかわすにとどめた。当真もこのままとぼけ続る事を察し、それ以上の追及を避け意識を訓練へと戻した。
《ああ。——なあ、当真》
《ん? どうした?》
するとそこでライが最後に当真へと呼びかけを行う。
《僕の方からも言っておくよ。——ありがとう。信じてくれて》
加古や生駒、弓場だけではなかった。
他にも以前と変わらず接し、信じてくれる仲間がいる。
その事実に、ライはひたすら感謝した。
《……そんな事で礼を言ってんじゃねーよ》
当真は最後にそう言って通信を切る。
何事もなかったかのように訓練を続け、いつものように的を撃ち抜いた。
やはり今日もいつもの成績上位者が高得点をたたき出していく。この光景が変わる事はなかった。
————
「——ライ、お疲れ様。少なくとも気落ちはしていないようで安心した」
「奈良坂か。ごめんね、心配かけちゃったかな」
「いいや」
成績を見て、様子を見て問題ないと判断したのだろう。狙撃の師である奈良坂も普段と変わらぬ調子でライに語り掛けた。
「俺達も城戸指令直轄の部隊として動いているからな。ある程度事情は理解できる。陽介たちも同様だ。三輪は少し荒れていたがな」
「荒れていた? ——大丈夫なのか?」
「ああ。少なくとも今は落ち着いているし割り切っている。ただ、しばらくはそっとしておいてくれ。結局事情を話せないとなれば、余計に負担となるかもしれない」
「……わかった」
三輪隊はもっとも早くライと交流を持った部隊であり、城戸指令直属の部隊として様々な事情も知る複雑な立場にある。その中でも今回の騒動で一番気が揺れ動いたのは三輪だろう。
ライとしても何かしら声をかけておきたい。だが奈良坂の言う通り、結局真相を話せないならば余計に不安を抱え込ませてしまう結果になりかねない。だからこそここは彼のチームメイトである奈良坂達に任せる事とした。
「あっ、紅月先輩! 奈良坂先輩!」
「ん。日浦さんか」
「日浦。元気そうだな」
「はい。お久しぶりです!」
するとそんな二人の間に日浦が駆け寄ってくる。年齢相応の明るい表情で活気の湧く声は空気を一変させた。
「やはりさすがですね。今回もお二人とも上位の成績!」
「まあな。とはいえ今回は参加していない隊員も多いみたいだが」
「確かに。そういえば東さんや絵馬もいないんだって?」
「ああ。東さんは大学の用事、絵馬は個人的に話をしなければならない人達がいると言っていたが」
「それでも先輩たちはすごいですよ!」
狙撃の腕に長けた隊員は訓練に来ていない者の中にも多くいる。鳩原の他にも東、絵馬など技量が優れる者もいた。当真のように訓練に全力で挑んでいないものもいるため謙遜する二人だが、それでも誇るべき事だと日浦は自分のように嬉しそうに語る。
(彼女たちも、そうか)
その光景がまぶしく見えた。何も考えていないという様子ではない。日浦も、そして彼女のチームメイトもきっと当真達と似たような思いを抱いているのだと容易に想像できた。
「——あっ。そういえば、紅月先輩」
「ん? なんだい?」
すると会話をしていてふと思い出したのだろう。日浦はじっとライを見つめて彼にある頼みを申し出た。
「実は那須先輩から紅月先輩に聞いてほしい事があるって言われたんですけど、今良いですか?」
「……僕が答えられることならば」
日浦の口から発せられたのはライの射撃の師・那須の名前だった。
体が弱い那須はあまり出歩けないからこそこうして日浦を介して質問をしてきたのだろう。
答えられる事に限りはあると前置きをして、ライは日浦の言葉に耳を傾けるのだった。
————
日浦の質問に答えた後、ライは彼女や奈良坂と別れて当真と共に廊下を歩いていた。
「今日はこの後どうすんだ?」
「この後は弓場隊と加古隊のところに行く予定だよ。稽古の約束をしてあるんだ」
「稽古? 新たな弟子取ったのか?」
「うん。ついこの間ね」
「マジかよ。——次シーズン当たる部隊からも弟子を取るとは余裕じゃねえか」
そう言って当真はふざけた調子で笑う。
確かに当真が語るように降格した紅月隊は再びB級ランク戦を戦っていくこととなった。
当然ながら昨シーズン何度も戦った弓場隊との戦いは避けられないだろう。隊員が脱退したとはいえ上位に名を連ねた実力者たちを相手に力を貸すとは中々出来ない選択だ。
「わかっているよ。だけど問題ないさ。昨シーズントップに立った身として、そう簡単に勝ちを譲るつもりはない」
だがライは支障がないとはっきり断じた。
二宮隊もB級ランク戦に加わるとなれば上位陣の争いも一段と激しくなることは間違いない。その上で必ず勝ち上がってみせると語る彼の目に迷いはなかった。
「そうかよ。なら楽しみにしておくぜ。昨シーズンの結果がまぐれだったなんて言わせんなよ?」
「当たり前だ。エンブレム持ちとして、不甲斐ない姿は見せない」
ライが隊服のエンブレムに拳を当てる。
これは昨シーズンの戦果である、彼の戦う意味が込められた紋章だ。
このマークに勝利を誓う。ライのランク戦に対する意気込みはすさまじいものだった。
「相変わらず真面目だなー。俺ならまたB級でやるのかよって不貞腐れるところだぜ」
「そんな事言っていたらまた理佐に怒られるよ?」
「……やめろよ。そうやって名前を出すと本当に現れかねねーだろ」
冬島隊のオペレーターの名前を出せば当真はすぐに震えあがる。冬島隊のパワー関係がよくわかる一場面だった。
「ふふっ。当真もそういう話を信じるんだね。——ん?」
「おっ? なんだ、本部から通知?」
こうして二人が他愛もない話題に花を咲かせていると、二人の携帯端末が通知を知らせる振動音が鳴り始める。
一体何事だろうかと二人そろってすぐに携帯端末を手に取り画面を開いて——
「えっ?」
「はっ? おいおい、何の冗談だ?」
届いた知らせに、言葉を失った。
「カゲが、隊務規定違反?」
「影浦隊までB級降格? 嘘だろ?」
それは彼らの同級生であり、影浦隊の隊長である影浦に処分が下されたという通知。
A級影浦隊隊長
同部隊をB級降格処分とする。
通知にはこのように記されていた。
————
影浦がその現場に遭遇したのは偶々だった。
「あ、あのっ! 待ってください!」
影浦が偶々ボーダー本部の廊下を歩いている中、彼のチームメイトである絵馬の声が耳に響く。
彼らしくないどこか焦りと緊張を含んだ声色に疑問を抱きつつ目を見れば、会議室から退出する忍田をはじめとした上層部の面々を呼び止めている場面を目撃した。
「絵馬君か。どうした?」
「どうしてですか。どうして鳩原先輩が処分を受けなければいけないんですか! どうして!?」
忍田に目的を問われると、絵馬が必死の形相で訴える。
当然と言うべきか絵馬の目的は彼の師である鳩原の処罰について上層部から話を聞く事だった。話を聞いても何も打ち明けてもらえず、弟子として何もしていられない現状に耐えられなかったのだろう。
「それは……」
「——隊務規定違反。それ以上でも以下でもないよ」
「根付さん」
言いよどむ忍田を手で制し、根付が彼に代わって絵馬の声に答える。
根付はどこか辛そうに、残念そうに表情に影を落としてさらに話を続けた。
「罪を犯した者に対して当然の事をしただけだ。我々とて好きでこのような事をしているわけじゃない。むしろ我々は対応に困っている方なんだよ。まったく。突然このような大事になって、彼の存在の為に本来考えていた処分をする事さえ出来なくなった。こちらの身にもなってもらいたいものだ」
根付はそう言って深々とため息を吐く。
少しパフォーマンスが大げさに見えるが、困っている様子は事実のように感じられた。
(……
その発言の中、絵馬は気づけなかったが影浦はある言葉が気にかかり心の中で反芻する。
現在話題の主は鳩原だ。女性に対して彼という表現はおかしい。
根付の発言から推測するならば、他の男性の存在によって根付が考えていた鳩原の処分が不可能となり、上層部も対応に苦労しているという事になるが。
(まさかあいつか……?)
影浦の脳裏に銀髪の隊員の顔が思い浮かぶ。鳩原と共に処罰を受けた隊員、ライの姿が。
彼が何かしら上層部に働きかけて本来予定されていた鳩原の処分を変更せざるをえなくなった。本当ならば上層部がもっと厳しい処罰を鳩原に下そうとしていただろうと予測できる。
だとするならば——
そこまで考えて影浦の思考は根付の続く発言によって遮られる。
「彼女たちのせいでボーダーの評判にまで泥を塗られた。ボーダーに残す事を許しただけでも感謝してほしいものだよ」
「根付さん! それ以上は!」
あまりにも言いすぎだと忍田が根付の発言を咎めた。だが根付は特段表情を変えたりはしない。自分は間違った事は言っていないと態度で示していた。
その光景が、影浦の胸中を荒立たせる。
「おい」
「うん? ——影浦君?」
いつの間にか影浦の足は根付たちの元へと向かっていた。
彼の接近に気づいた根付達の視線が影浦へと注がれる。
この時、影浦の中ではある記憶がよみがえっていた。
一つは絵馬と鳩原、二人の師弟が仲睦まじく狙撃訓練に励んでいる様子。
そしてもう一つは戦闘で、私生活であらゆる場面でボーダー隊員たちの力になっているライの姿だった。
どちらもボーダーの仲間と共に、仲間のためにと尽力してずっと戦っている。
そんな彼らが、こんな形で貶められるような扱いを受ける事が耐え切れなかった。
「おらああああっ!」
「んぐぉあっ!?」
影浦が一気に根付のもとまで詰め寄ると、その下顎を下から勢いよく突き上げる。
俗にいうアッパーが炸裂した。
突然の暴挙に根付が反応できるわけもなく、勢い余って背中からその場に倒れこむ。
「ね、根付さん!? 大丈夫ですか!?」
「か、影浦! 貴様正気か!? 自分が何をやったのかわかっているのか!?」
すぐにそばにいた忍田が駆け寄り、根付の安否を確認。その一方で鬼怒田は影浦を指さして糾弾するが、影浦は一歩も退く事無く絵馬を庇うように彼の前に立つと、根付を睨みつけた。
「さっきから黙って聞いてればゴチャゴチャとうるせーんだよ! 御託を並べれば俺らが黙って従うってか? 甘く見てんじゃねーよ!」
後に根付さんアッパー事件と名付けられたこの騒動。
影浦が自身に突き刺さった負の感情以外の理由で人を殴ったのは、これが初めての事だった。
———
「……何をやっているんだよ、カゲ」
「紅月かよ。なんだ、もう話を聞いたのか。耳が早いじゃねーか」
「通知が来たからね。誰でもわかるさ。しかも本部内で上層部を殴ったとなればね。今も大騒ぎだよ?」
あの知らせの直後、すぐにライは一人影浦隊の作戦室を訪れた。
部屋の中には今影浦のみ。残りのチームメイトは外出中のようだ。
絵馬もいないがひょっとしたら彼はすでに帰宅したのかもしれない。
「どうしてこんな事を? 根付さんを殴ったんだって?」
「はっ。別に理由なんてねえよ。ただあのおっさんがむかついたから殴っただけだ」
特別な理由なんてないと影浦が鼻で笑った。
影浦は副作用の事もあって元々手が出るのが早い。暴力沙汰も珍しい事ではないため他の隊員が聞いたならばこれだけでも納得して引き下がっただろう。
「本当にそれだけか?」
「当たり前だろーが。他に何があるってんだ?」
「少なくとも君が自分個人の為に殴ったのならば、チームメイトから色々不満が出るはずだ。でもその様子はなさそうだから」
今回の処罰は影浦だけでなく影浦隊の降格まで及んだ。個人だけでなく隊員を巻き込んだ形となれば隊長への批判は殺到し今も問い詰められていた事だろう。
だが、チームメイトはすでに事態を聞いているはずなのにそのようには見られない。ならばきっと何か他の事情があるはずだ。
「……関係ねえだろ。つーか人の事言える立場じゃねえんだからそこまでにしておけ。聞くだけ無駄だ。テメエと同じように答えは出ねえよ」
これ以上繰り返し聞いても答えは変わらない。明確な答えは出ないと影浦は告げる。
今のライと同じように。
そう言われてしまえば確かに同じ立場にあるライはこれ以上繰り返し質問を重ねる事は出来なかった。
「それよりだ」
そんなことよりももっと言うべき事があるだろうと影浦がライの方へと向き直る。
「これで次のランク戦からは面白い事になりそうじゃねーか」
「二宮隊、影浦隊、紅月隊。エンブレム持ちが3部隊揃う事を言っているのかい?」
「ああ。テメエが勝ち上がった昨シーズンとは全く別物になるぜ。せいぜい楽しもうぜ」
先ほどまでの雰囲気とは打って変わって、影浦が好戦的な笑みを浮かべて言った。
これで前代未聞のA級3部隊が降格。
確かに影浦の言う通りB級ランク戦はこれまでとは全く異なる様相を呈する事になるだろう。
「——楽しめる余裕があると良いね。悪いけど僕は次シーズンでもトップを狙っていく。余裕が過ぎれば痛い目に遭うよ」
「上等だ。楽しみにしてるぜ」
必ずや汚名を返上してみせると意気込むライ。
相手が昨シーズンより手ごわくなろうとやることに変わりはない。
必ずや勝利をつかんでみせると語るライに、影浦も迎え撃つと言うように口角をあげるのだった。
こうしてここから約半年の間、B級の勢力図を決定づけることになるランク戦の開始の時が、少しずつ近づいていく。
東さんなら知っているはずという信頼感。
許せ、根付さん。これが最後だ。(半年ぶり二回目)
次回からのランク戦以降は少しダイジェスト風味にお送りします。