REGAIN COLORS   作:星月

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紅月ライ

「ありゃりゃ。仕事増えちゃった。参ったなー、もー」

 

 急激に変動した戦況、そして新たに下された命令に国近が愚痴をこぼした。

 状況は芳しくなく指揮官の打つ手も未来が視える相手に対しては確実性に欠けているものであるためこの反応は仕方がない事だろう。

 もちろん悪態をつきながらも手を止めるような愚は犯さない。流れるような手つきでキーボードを叩き、味方への支援を施していく。

 

「さすがに当真を落とされたのは紅月も予想外だろうからな。大きな決め手を失ったんだ。あいつも賭けに出るしかなかったんだろう」

「ねー。太刀川さん・風間さんと続いて個人ポイントランカーがまたやられちゃったからねー。こりゃー大変だ―」

「チッ。痛い所を突きやがって」

 

 一足先に作戦室へと戻っていた太刀川が国近の心中を察し、彼女を宥めた。

 そんな彼に国近が呑気な声で指摘すると、隊長としても個人ポイント最高という立場としても先の迅との戦いでの結果はふがいない点があったのか、太刀川は短く舌を打つ。

 

「まあ。確かに次々とランカーがやられて不利な状況に陥った。あいつも傷を負ったとなればこれじゃあ長期戦も難しいだろう。——だが、問題はない」

 

 ただしこの戦いの展望についてさほど悲観的になっているわけではなかった。

 すでに戦力の大半を失っているものの、まだこちらにも勝機はあると太刀川の目がキラリと光る。

 

「ほー? 意外。迅さんはわかるけど、紅月君の事までそこまで太刀川さんが買っているなんて。その根拠は?」

 

 国近とてライの力は認めている。同年代という事で交流もあるし何度か解説としても彼の戦いを見てきた。一度はA級にも昇格したのだ。その力は伊達ではない。

 しかし明白に不利となったこの場面で太刀川のように断言する事は難しかった。一体どういう理屈なのかと彼女は疑問を唱え、小さく首を傾げる。

 

「別に根拠なんてものじゃないが」

 

 そこで言葉を区切ると、後ろ髪を掻き上げて太刀川は続ける。

 

「紅月は困難に陥れば陥るほど自分の力を発揮できるタイプの人間だと思うからだ」

 

 国近は知らない事だが、太刀川は前にも目にしたことがあった。

 それはライがB級のトップに立ってA級の昇格戦として挑んだ迅との模擬戦。

 あの時も今と全く同じような状況だった。

 初めて相対する強敵に磨いてきた己の力は届かずに跳ね返され、立て直すのは簡単なことではない。もしも他に見ている者がいたならば十中八九ライの敗北を考えていた事だろう。

 だがライはそこから立て直した。自分たちの持ちうる力を活かし、考えうる限りの最大のパフォーマンスを繰り広げて。

 だから今回もやり遂げる。

 あまり精神論などの具体性に欠ける物事を信じる事はしない太刀川であったが、なぜかそう確信を抱くほどの何かを直感的にライから感じ取っていた。

 

 

————

 

 

「ふーっ」

 

 ビルの屋上で鳩原が呼吸を整えていた。

 先の狙撃位置から移動し、迅との距離はさらに近づいている。もしも動きを気取られれば風刃によって即座に撃破されかねなかったが、どうやらその心配は杞憂だったようだ。

 後は自分が決めるだけ。

 トリガーを切り替えてその時を待つだけの鳩原だが、緊張の為なのか冷や汗が頬を伝った。

 

「——集中」

 

 張り詰めた空気を和らげるべく、ゆっくりと瞳を閉ざし、自分にそう言い聞かせた。

 

「大丈夫。今は紅月君たちもいる。あたしは指示通りやればいい」

 

 この戦い、鳩原はライの要請によって参戦を決めた。

 今でもまだ彼女は彼らに負い目を感じている。だからこそ自分の力を求めてくれたライの期待には応えたかった。

 

『鳩原先輩』

「はっ、はい!」

 

 突如通信越しに聞きなれない大人びた声が響き、思わず鳩原の体が硬直する。

 真木はその反応に幾分かの不安を抱いたものの口にはする事無く淡々と指示を飛ばした。

 

『月見さんと国近先輩から予測データが来ました。彼の動きに合わせてタイミングとコースを伝えます。お願いしますよ』

 

 月見と国近が行っていた分析が終了したという待ち望んだ知らせだった。

 瞬時に鳩原の意識が切り替わり、視線が鋭さを取り戻す。

 

「——了解」

 

 鳩原が実戦で使用するのはこれが初の試みとなるトリガー。

 だが技量に関していえばボーダー隊員で右に出るものはいないと呼ばれる彼女だ。目にもはや迷いはなく、静かにスコープを覗き込んだ。

 

 

————

 

 

 当真を撃破し、ライの右腕を切り落とした。

 風刃の弾数にも余裕がある今、迅は徐々にライと三輪を押し返し、敵を玉狛支部から遠ざけていった。

 

「どうした、二人とも。そんなんじゃ俺は落とせないよ?」

 

 敵を煽る様な言葉を告げつつ、近接戦闘を繰り広げるライ・三輪のコンビと斬り結ぶ。

 二人は常にどちらかが敵の死角を取れるようにと位置を変えているが、未来予知を持つ迅は次の動きを読み取っており、時に建造物で射線を切り、時にもう片方の敵を盾として立ち振る舞う事で凌いでいた。

 

「チイッ!」

「おっと」

 

 迅がライめがけて斬りかかると、彼を援護すべく三輪の鉛弾が放たれた。

 最初の二発を体を仰け反って躱すと近くの壁を蹴って方向転換。続けざまに三輪の鉛弾が放たれるが弾は迅が通過した建物の壁を打ち抜き、錘が形成された。

 

「そう易々と鉛弾を受けたりはしないよ、秀次」

 

 攻撃をかわした迅はそのまま今度は三輪へと切りかかる。

 彼が弧月に持ち換えると二合、三合と切り合い、ライの横薙ぎの斬撃を刃で受け止めて距離を取った。

 後退した位置を読んたのか狙撃が一発飛んでくるが、迅はそれも容易に躱す。

 

(おかしいな。さっきから狙撃が全然飛んでこない。二人の狙撃手を撃破したのだから当然だけど、撃ってきているのは一人だけ? 鳩原ちゃんも来ているならもう一人はいるはずだろう?)

 

 攻撃を難なく回避した迅だが、敵の動きに納得がいかず疑念の念を抱く。

 どうも当真の撃破後から狙撃の密度が少なかった。

 古寺・当真の狙撃手二人を撃破したとは言えど、まだ敵には奈良坂と鳩原の二人の狙撃手が残っているはずだ。

 しかしライ達の攻撃が再開してからというもの、狙撃の援護は一人によるものだけとしか考えられないほど機会が減っていた。

 迅を相手にする以上、決められないとしても動きを制限するために少しでも狙撃を行うべきであるはずなのに。

 

(何か考えがあるのか。それともランク戦のように鳩原ちゃんが何か準備をしているのか?)

 

 ふと脳裏によぎったのは紅月隊が部隊ランク戦で見せている戦いだ。

 鳩原が布くワイヤー陣に敵を引きずり込み、ライが強襲を仕掛けるというここ最近よく見る様になった彼らの得意パターン。

 そうだとするならばライや三輪が徐々に後ろへ下がる姿も罠のように見える。押されるフリをして迅を不利な場所に引きずり込もうとしているとしたら。

 

「まあ、まだ問題はないな」

 

 正誤は不明だが、まだ問題となるほどではない。

 少なくとも自分が敵陣におびき寄せられて撃破されるという光景は映し出されていなかった。そこまで確定した未来が視えてないならば今は目の前の攻撃に備えようと、迅は意識を切り替える。

 

変化弾(バイパー)!」

 

 正面のライ、そして離れた道から打ち上げられた変化弾が迅へと襲いかかった。

 その弾を避けようとして、直後迅は正面から放たれた弾の正体に気づいて足を止め、風刃を足元めがけて横振りに放って後退する。ライが放った射撃は風刃に阻まれて爆散した。

 変化弾と見せかけての炸裂弾。生駒隊の水上が得意としている技術だが、生憎と未来が視える迅には効果が薄い。

 

「煙幕を狙ってなら無駄だよ」

 

 直後、煙を割いて飛来する狙撃を風刃で弾き、突っ切って来た三輪の弧月を受け止めた。

 

「そのまま抑え込んでくれ、三輪!」

「わかっている!」

 

 三輪と迅が鍔迫り合いを繰り広げるとライの叫びが迅の背後から響く。冬島のテレポートで後ろに回ったのだろう。

 ライは即座に弧月を握る左腕を引いて必殺の構えを取った。

 さらに三輪も素早く片手を腰元に回すと、先に鉛弾のリロードを終えていた拳銃を手にする。

 前からは三輪、背後からはライ、そして斜め上空からは出水の攻撃が迅に同時に襲い掛かる。

 

「さすがの連携だな。と、なると!」

「ぐっ!」

 

 不利な体勢とみるや、迅は三輪を力で押し切り、弾き飛ばした。

 さらにその振り切った風刃を背後へめがけて斬撃を飛ばす。

 

「ぐっ!?」

 

 この一撃は反射神経に優れるライが寸前でかわしたものの、これで体勢が崩れた。

 上空から振り注ぐ射撃を防ぐべく、迅は射撃とは反対方向の屋根へ飛び移るべく身を屈めて、

 

「——えっ?」

 

 跳んだ先で鉛弾に直撃する自分の未来が視えて、動きは中断されてしまった。

 

「獲った」

 

 その一瞬の隙を精鋭と呼ばれた彼らが見逃すはずがない。

 素早く立て直したライの旋空弧月が解き放たれた。

 

「しまっ——!」

 

 否、彼だけではない。さらに三輪が放つ鉛弾も今度こそ発射された事で逃げ場を失った。

 仕方なく迅はその場で本来の回避行動とは逆側へと転がり込むように移動して二人の攻撃を避け、そして——出水の放った変化弾に腹部を撃ち抜かれた。

 

 

————

 

 

命中(ヒット)。ようやくだね」

 

 ようやくこの戦いが始まってから初めて迅に大きなダメージを負わせた。その事実を確認し、指揮官である真木が静かな声で口ずさむ。

 

「ヒューッ。さすがだな。今の、鳩原の鉛弾だろ? ここまで読んでいたのか?」

「そうだね。迅さんがちゃんと彼らの攻撃をこちらの予定通りに回避して、鳩原先輩の鉛弾に自ら飛び込んできてくれる(・・・・・・・・・・・・)かどうかは賭けだったけど。上手くいってよかったよ」

 

 先ほど緊急脱出し、作戦室で戦況を見守っていた当真が口笛を吹き、調子よさげに尋ねる。

 迅が目にした鉛弾は三輪によるものではない。この戦いが始まる前に鳩原がライの指示の元に入れ替えたトリガーによるものだった。

 鉛弾は相手に重しを付与して動きを制限する強力な武器であるものの、その代償として弾速が大きく低下する。そのため短距離で拳銃に組み込んで戦う三輪はまだしも、狙撃となるとボーダー随一の技量を持つ鳩原でもこのトリガーを当てる事は非常に難しかった。

 なにせ動く相手に命中させなければならないのに銃弾が非常に遅いのだ。普通ならばまず当たるはずがない。

 だからこそ今回の鳩原はあえて目標の位置とは異なる場所にめがけて鉛弾狙撃を敢行した。撃ったのはライ達が同時攻撃をする前。迅が彼らの攻撃を避ける先をオペレーターが収集したデータから予測し、そして実行した。結果、弾はゆっくりと空中を突き進み、迅の逃げ場所へと飛来した。

 

「——『人を撃てなくても、王を詰ませる事はできる』って彼は言っていたよ」

 

 会議の際にライが放っていた言葉を反復する。

外目では鳩原の今の狙撃には意味がなかったように見えるかもしれない。だが間違いなく彼女の狙撃が今の攻撃の成功を呼び込んだのだ。

真木は手元にあるチェス盤のルークを前進させる。

 

「深夜という時間帯の中で撃ち出された黒い弾。しかも自分にめがけて撃ってきていない狙撃だ。さらに連続攻撃で情報を圧迫させた。三輪隊長の鉛弾とも未来が重なって迅さんでも直前まで視えなかっただろうね」

 

 鉛弾は弾が黒くなるという性質を持つためこの暗い街中では余計に気づきにくかった。

 加えて迅の未来予知はそもそも確実性が高い未来は先んじて視えるものの、確実性に欠けるものは寸前にならないと視えないという性質を持つ。

 加えてライの虚偽の射撃に煙幕、三輪の突撃、出水や奈良坂の連続攻撃などで情報が圧迫されていた。

 そのため迅は自分が回避しようとしてようやく本来は被弾しない鉛弾に命中する未来に気づいたという事であった。

 

「迅さんが黒トリガーじゃなくて部隊での戦いならば看過されていただろう。鉛弾を使っていた分バッグワームを使えなかったから、味方やオペレーターの指示で何かしら気づいただろうし。あらかじめ嵐山隊を壊滅できたのは助かったな。おかげで向こうの情報を制限できた」

「なるほどな。ここまで全部あいつの思惑通りってわけだ」

 

 この戦い、迅は玉狛支部の味方の支援なしで戦っている。

 だからこそ本来の部隊ならば気づけた情報にも気づけなかった。

 綾辻も弾道分析や周囲の警戒、風刃の軌道、トラッパ―の仕掛けたスイッチボックスの解析など情報に追われていたのだろう。支援の面で複数の部隊で挑んでいる合同部隊に後れを取ることとなった。

 

「迅さんには悪いけどこっちは部隊で戦っているからね。使える情報は全部使って行くよ」

「……真木ちゃんこえー」

「聞こえているよ、当真」

「ゲッ!」

 

 相手は黒トリガーだ。容赦はしない。

 当真の愚痴に目ざとく注意し、そして——

 

「これでチェックよ」

 

 真木は黒のキングを手に取った。

 

 

————

 

 

《迅さんに休ませる暇を与えるな! ここで仕留めるぞ、出水!》

《了解!》

 

 ようやく相手に大きなダメージを与えることが出来た。

 後は押し切るだけだと、ライは作戦を次の段階へと移行させる。

 すなわち出水の前線参加。先ほどまでは道路を挟んだ場所で支援に徹していた出水も迅を目視できる位置に移動し、アステロイドとハウンドの両攻撃(フルアタック)を繰り出した。

 

「チッ!」

 

 さらに攻撃の密度が増えた事に思わず舌打ちをする迅。

 シールドがない以上、真っ向から受けるわけにはいかない。

 三輪とライ、二人と切り合いながらなんとか射撃を振り切るべく、跳び上がろうとするが。

 

「くそっ」

 

 実行に移す事は出来なかった。

 風刃を振るうと地面を這って斬撃が出水へと向かって行く。

 衝撃がいくつかの射撃を飲み込み、弾数が減った射撃を切り落し、最小限の回避でこの攻撃を乗り切った。

 直後、迅が向かおうとした一軒家の屋上に鉛弾が突き刺さる。鳩原のトリガーによるものだ。

 

「何も自分の手で直接敵を撃破する事が全てではない。味方の一手が敵の逃げ道をふさぎ、次の動きを妨げる事が出来たならば、それで十分なんですよ」

「……さすがだ紅月君。ここまで俺の副作用に徹底して対策を打ってくる相手なんて早々いない。未来予知の面目が丸つぶれだよ」

「あなたは未来を視て行動に移すのだろうが、未来を読んで手を打つのが戦略家だ」

 

 そう。さながらチェスを指すように。ライの脳裏には盤上が浮かび上がっていた。迅という王を追い詰めるべく、次々と駒を動かし、その逃げ道をふさいでいく。

 

「ここで決めさせてもらいます!」

 

 奈良坂の狙撃を屈んで回避した迅にライが斬りかかる。

 突撃からの上段切り。当然視えていた迅はそれに対抗しようと風刃を掲げて、

 

「むっ!?」

 

 ライの姿が迅の視界から消える。

 

「ぐっ!?」

 

 背後から横薙ぎに払われた弧月を何とか受け止めた。

 今のは間違いなく正面からの斬り込みだったはず。未来予知で視えていたしライの動きが間違いなくそうだった。

 だが、冬島のワープトリガーによって寸前で未来が切り替わっていた。

 

「休む暇なんてないですよ」

 

 刃を受け止めた迅だが、ライの背後に置かれたキューブに目を見開く。

 

「まずいな」

 

 たまらず迅は再び風刃を起動。

 キューブが発射される前に撃ち落とすものの、炸裂弾による爆風が広がった。

 すぐに一歩後退して煙から逃れる迅に、今度は三輪が斬りかかる。

 

「逃がすものか、迅!」

「一息くらいつかせても罰は当たらないと思うんだけど、な!」

 

 これを刀で受け、加速の勢いそのままに三輪の刃を振り払う。

 そのまま直進して迅が目指すは出水だった。まずは中距離戦の要を落とそうと駆け出す迅。そんな彼の目に、背後から伸びる刃が体を突き刺す未来が映しだされる。

 

「他の相手を気にしている場合ですか?」

「次から次へと……」

 

 ライの煽るような言葉を耳にして迅は足を止めた。

 風刃を斜めに構えてカウンターの姿勢を取る。

 そしてライがまさに弧月を前方に繰り出そうとしたその時。

 

「むっ!」

 

 再び未来が変わり、迅のすぐ上から迫るライを視た。

 ワープしたライが瞬時に体制を入れ替え、上から弧月を振り下ろしたのだ。かろうじて弧月を受け止めた迅だったが、不意を突かれた事で防戦一方となってしまう。

 

「この戦い方は……」

 

 冬島と真木の主導の元に繰り出されるライの連続攻撃に迅が面を食らった。

 間違いない。

 狙撃手最強という当真と比べると当然戦術は全く異なるものの。瞬時にあちこちへ移動しては消え、敵を撃破する、まさに神出鬼没。この戦法は冬島隊の戦略そのものだ。

 

 

————

 

 

「確かに未来予知という副作用は脅威だ。だが先んじて行動するが故に、その裏をかかれた際には次のアクションへの反応がワンテンポ遅れる。リアルタイムでの状況変化の中での戦いは、彼の副作用の方が上手だよ」

 

 瞬時のテレポートはライですら意識の外にあるものだった。

 だからこそ本来ならば対応する事は難しいのだが、ライだからこそできる荒業なのだと真木が語る。

 超高速精密伝達。次々と変化しうる状況下でも瞬時に適応できるライの能力は、彼の読みの強さも相まって味方の無茶な支援にも応え、迅と渡り合っていた。 

 

「何よりも、これまでの彼の経験が活きた」

 

 そしてこれは普段から様々な部隊の者達と組んで戦ってきた多くの適正を持つライだからこそできた戦い方であった。

 紅月隊のエンブレムが指し示すように、ありとあらゆる戦いを披露する彼らの力が黒トリガー()を追い詰める。

 

 

————

 

 

 ここが勝負所と読んだのか、連合部隊の攻撃の手が止むことはなかった。

 ライと三輪の挟撃、出水の射撃、さらに奈良坂の援護狙撃、鳩原の進路妨害。

 ありとあらゆる攻撃が迅の思考を割いていく。

 風刃の残弾数は残り4つ。当真を落としてから半減したというのに、あれから一人も落とせていなかった。もはや迅に余裕はない。

 

「……まさか、ここまでとはね」

 

 苦笑を浮かべて迅がボソッと呟いた。

 

「終わりだ、迅!」

 

 今一度三輪が迅へ突撃する。

 数合切り合ったところで、奈良坂に加えてさらに鳩原の狙撃も迅へと迫った。

 今度は通常の狙撃に切り替えたのだろう。

 かろうじて迅は上体を倒して躱すものの、続けざまに出水が放ったメテオラが足元に来るとたまらずその場から跳躍する。

 

「逃がすか!」

 

 迅が塀に足をかけるや否や、テレポートで屋上に飛び移った三輪が鉛弾の銃口を彼の頭に向けて。

 

「——墜ちろ、迅悠一」

 

 三輪と共に迅を挟み込むように移動したライが、弧月を抜刀する。

 この戦況を決する一撃が、繰り出された。




皆さんお久しぶりです。
前回の更新から一回目および二回目のワクチン接種があり、副反応であえなくダウンしてました。38度超えとかマジでつらい。
無事に復活しましたので引き続き更新頑張っていきます!
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