IS 〈インフィニット・ストラトス〉 誰でもない、少女   作:油谷

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第四話 一休止

学園に着いた一行が最初に向かったのは、IS学園の総合受付であった。

ここへ入学するにいたって、まずは分厚い書類の束を学校に提出する必要があったから、である。

 

それを受付に提出してから、少女と2人の付き添いは別れた。

少女はまず最初に、荷物を自分が暮らすことになる寮へ持って行くこととし、

2人は少女の付き添いのついでにと、とある場所に顔を出すことにしたからである。

 

そして今、少女は寮の一年生棟、1023号室のベットに寝っころがっていた。

 

「う~ん……なかなかいいベット。研究所のベットには負けるかもしれないけど……」

 

シワになってはいけないと制服を脱ぎ、アンダーウェアの姿で少女は身体を伸ばす。

輸送機の中に3時間、車で1時間も移動し続けて身体が強張ってしまっていた。

 

「あー、起き上がりたくない……その前に荷物どうにかしないと……」

 

少女はモソモソと起き上がり、荷物を片し始める。

服をクローゼットに仕舞い込み、傷みの早い餞別を冷蔵庫に入れ、部屋のパソコンをいじくる。

同居するルームメイトの分も残しつつ、少女は部屋を自分の物にしていった。

 

 

「さて、かわいい後輩ちゃんの仕事場はどこですかなーっと。」

 

一方のリーナとエイミーは、元SARFであり、今はここの職員となっている後輩に会いに来ていた。

先ほど受付から後輩の現在地を聞き出した彼女らはその場所、射爆場へ向かっていた。

 

「この年からの新任だっけ、彼女。」

「そうよー。SARFの任務こなしながら大学行って、教員資格とってここの教員になってって、

頑張ったよねー。自慢になるよ。」

「同じ部隊だった先輩として?」

「それもあるけどね、何より同じ部隊の後輩が頑張って自分のやりたいことしてる……なーんだか

嬉しいじゃない。自慢したくもなるって。」

「……そう。私はリーナもいろいろ頑張っていると思うよ?」

「私なんか全然だよー。急襲くらいしか得意手ないし、今ISの操縦者になってるのも、

成り行きみたいなもんだし……」

「それも、あなたの努力によるものでしょ。”教官つぶし”がよく言ったものね。」

「努力、ねぇ……そんなに頑張った覚えないけどねー。それにその名前って、名誉なものじゃないしぃ……」

 

そして、2人は学園の外れにある射爆場へとやってきた。ここは主に重火器などの試験や

訓練を行う場所であり、学園でもっとも大きい施設である。ちなみに次に広いのは運動場。

 

その上空に浮かぶ1つの人影。

 

「あれかなー?オーイ!ナーガーセーちゃん!」

「ここからで聞こえると思う、リーナ?」

「IS着けてりゃ聞こえるって。ナーガーセー!私よー!リーナ・ディードリッヒが来たわよー!」

 

射爆場に着いたリーナとエイミーは、地上からその人影へと呼びかける。

それを聞いたか、人影、いや一機のISが地上へ降りてくる。

それは上空から急降下し、2人の前にぴたりと着陸した。

 

「……お久しぶりです、先輩方。今日はどうしてここへ?」

 

身にまとったISを解除したその人物は、2人へと挨拶する。

 

「今日は、うちの代表をここに送りに来たのよ。ナガセ。」

「そのついでに、新任祝いに来たってところなの!」

「そう、だったんですか。ネモちゃんをここへ……もうそんなに経ちますか。」

「月日って言うのは、思っているより早く流れるものよ。…どう、ここは。うまくやっていけそう?」

「ええ、先輩……ここでの、先輩の先生方も良くしてくれますし、施設とかも不満はありませんし……

大丈夫だと、思います。」

 

少し思案しながら、ナガセと呼ばれた女性はそう答えた。

 

「相変わらず堅っ苦しいわねー、ケイは。そんなんじゃ、生徒たちと上手くやってけないよー。」

「そうですか?……先輩がもし教職についたら、生徒たちと仲良くなりすぎてしまいそうですね。」

「はい?それどーいう意味よ?」

「そのままの意味です。」

「なるほど、とりあえずいい意味じゃなさそうね……」

「ご想像にお任せいたします。」

「……こっっんのー!ケイっ!」

 

ナガセにからかわれたリーナは彼女に突撃するが、ナガセはISの脚部を部分展開させ、ふわりと浮かび上がって

それをかわした。

 

「……中尉は相変わらずですね、エイミー大尉。」

「ええ、もうリーナと知り合って5年経つけど、相変わらずよ。」

「ちょっとエイミー!ケイも!降りてきなさいよー!」

「ああ先輩、IS学園で部外者がISを起動させようとしたら、私のような教員の許可が要りますので……」

「誰がISなんて起動させるもんですか!アンタなんて生身で十分、だーかーらー……降りてきて私と

戦いなさい!」

「イヤです。戦いたければここまでどうぞ。」

 

そういうとナガセは低空に浮かながら逃げていく。

 

「ケイーーーッ!逃げるなーーー!」

 

リーナは大人気なくそれを全力で追いかけていく。

 

「……本当に変わらないわねー。あの2人。」

 

エイミーはナガセが昔、UPEOに所属していたころを思い出し、呟いた。

この2人は7つも年が離れてはいるが、後輩のナガセが静かに毒を吐き、それにマジになって反応する

リーナが反撃しようとして失敗する、ということを何度も繰り返す、というト○とジ○リーのような

間柄なのであった。

 

これは悪びれも無く毒を吐くナガセが悪いのか、それとも28にもなって子供っぽく反撃するリーナが

悪いのか……

 

そんな2人を無視し、エイミーはそういえばネモちゃんはどうしかのかしら、なんて考えていた。

 

このIS学園のトップは、学園長である。

 

IS学園の学園長室。

その部屋の机に、この学園の長、学園長が座っている。

そしてその目の前にはモニターが表示され、あの博士が映し出されている。

 

「お久しぶりです学園長。」

「こちらこそお久しぶりです。2年ぶり、ですか。……単刀直入に聞きますが、御用は何かしら?博士。」

「いや、大した用ではありませんがね、ウチの娘のことと、ついでの挨拶といったところでしょうか。」

「ついさっき彼女は学園へ入りましたよ。付き添いの2人も一緒にね。たった今書類を受け取ったところです。」

「そうですか。何事も変わらずに、遅れることなく着いてよかった。」

 

笑みをモニター越しに見せる博士。対して学園長はため息をつく。

 

「……それにしても。あの子をよくここに入れる気になりましたね博士。相当反対されたのでは?」

 

そう言われた博士は、クックッと薄笑いを浮かべている。

 

「そりゃあもう。理由もざっと10を超えますな。やれ研究が続けられないだの、彼女の機体やナノマシンの情報得漏洩だの、

はたまては彼女の追っかけが研究所の前で…」

「まぁ、もういいわ。もう入学は認めたのだから。今更何を言っても変わらない。」

「それはそうですが。しかし先ほどの懸念も、IS学園なら杞憂ですな。何しろ、ここの先生方の実力は

折紙つきですからな。私も余計な心配をしなくてすむ。」

「ええ、彼女はすでにこのIS学園の生徒です。我が校が責任をもって、3年間お預かりします。」

「あなたがそう言ってくれるのなら、ますます安心ですな安心学園長。ネモはまだまだ子供です。正直に言いますと、私もまだ手元から離したくはないのですよ。」

「あなたまでそうお思いなら、何故ここへ?」

「1人立ちさせたかったのですよ。彼女は私に対する依存が強い。それではいざというときに困ります。

SARFは軍隊ごっこではありませんので……」

 

学園長は博士をじっと見る。

博士も学園長をじっと見る。

互いに沈黙する。

 

 

そして博士が破る。

 

「では学園長、最後にご挨拶を……学園長、ネモをよろしくお願いします。」

 

学園長は驚いた。この男が人に頭を下げるのを、画面越しにも見たことがなかったから。

 

「…頭を上げてください、博士。」

「……私は、どんなことがあってもネモを失いたくないのですよ。……娘を、洋子の忘れ形見を。」

「……そういえば、例の研究はどうなっていますか、博士?はかどっていますか?」

「はい。ネモの協力で、ほぼ完成していますよ。あとは煮詰めるだけですな。」

「そう……完成を待っていますよ、博士。」

 

博士は一礼して、通信を切った。

 

「あの……サイモン博士は……ネモ・ノーチラスは……」

 

ふーっと、学園長は深く息を吐く。

 

「今年の1年生は、問題が多そうね……いろいろな意味でね……」

 

学園長は、机の傍らに置かれた1年生の名簿を見ながら、またため息を吐く。

 




どうにもリアル生活が忙しくて、すみません。
次回は10000文字程度の続きを投稿できる予定です。
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