黒鋼の天使は、自由の翼と共に   作:ドライ@厨房CQ

29 / 39
CHAPTER 2-11

「こちら揚陸艦ゼノン! ガレリアに侵食され航行不能、救援を乞う! 駄目です、外との連絡が全く付きません!」

「呼びかけ続けるんだ! この船を失ったら突入部隊の回収が絶望的になってしまう! むぅ、あれは!?」

 

 満を持してガレリアプラットフォームに吶喊した揚陸艦はアモルファスを取り込んだ事で膨れ上がったガレリアが漏れ出たタールのように流れてきて船体に襲いかかり、ジェネレーター出力を最大まで上げてオルゴンを吐き出しなんとか拮抗している。しかしプラットフォームと触れ合っている艦首ラムにはガレリアと融着してしまっているのか離陸できず、侵食してくるスピードも段々と上がってきていてこのままではジリ貧だ。

 外で待機しているであろう航空隊や内部へ突入したストライダー部隊への交信を続けているが上を覆う分厚いガレリアの雲に阻まれているようで、通信士が悲痛な声を上げるが艦長は檄を飛ばして気丈に振る舞う。そこへ暗雲を突き破る一閃が走って見上げると、一筋の赤い線が縦横無尽に飛び交いながらガレリアとドッグファイトを繰り広げているのだった。

 

「躊躇なくクラウドの方に突っ込んでいったぞ!? なんだ、あのストライダーは!」

「確認、出ました。デアデビルというプライベーティアに所属するネクサスです!」

「ネクサス、あの噂の……。だがガレリアの排除をしてくれているなら心強い!」

 

 分厚い暗雲だろうがお構いなしに超音速で通り抜けては赤い軌跡を残していき、ダークグレーのシルエットに迸る血管のような赤いラインが走った前進翼のストライダーがガレリアを蹴散らしていく。通信士は無線でなく発光信号でメッセージを送り、それにランナーは気付いたようでほぼ直角に曲がる鋭いターンでこちらへ向かってきた。

 誘爆をさせないためかミサイルは放たず機体側面に置かれたレーザー機関砲を向け、艦首ラムの周囲に取り付くガレリアを撃ち抜いていく。固着が緩んできたのを確認すると艦長は多少の損壊は仕方ないとして最大出力での発進を命じた。

 

「リバースエンジン、フルパワー! 艦首が取れても構わん、一気に上がれ!」

「了解、逆噴射開始!」

 

 艦前方側面に並んだ逆噴射口が一斉に噴き上がり、艦首ラムの一部が千切れながらもゼノンは再び浮上する。これで自由を取り戻したが気を抜くにはまだ早く、天蓋を覆う霧状のガレリアが一塊となって降ってきているのだ。対空機銃が唸りを上げてガレリアの礫を次々と破壊していくが、数があまりにも多くて雨霰の如く落ちてくるから防ぎきれなかった一部が船体にぶつかって大きく揺らす。

 ストライダーの方は器用にガレリアを避けながら飛んでいき、機関砲やミサイルを駆使して撃ち落としていた。単純な落下運動を行うだけの塊ならマニューバしてくる相手よりは対処しやすいようで、艦の直上を陣取りながら礫を破壊していってこのまま直掩につくようである。

 

「よし、浮上成功! ここからが本番だ、各員引き締めていけ! それからストライダー、援護に感謝する」

『別にいいさ。オレも中にいる仲間を探してるとこなんで、ここは一緒に頼みますぜ艦長さん』

 

 

 

 

 

「ふむ、ここも行き止まりか……。他の道はどうだい?」

「どれもダメみたいですね。一旦最初の枝分かれまで戻らないと」

 

 狭くて薄暗い上にデコボコだらけで歩きづらい事この上ない道を千景とワールドの2人は出口目指して進んでいくのだが、プラットフォームの内部は迷宮の如く入り組んでおりどうにか奥へ続いていそうな道は途中で進めない程に狭まっていた。名残惜しげにワールドは奥の方を見つめながら別の道を尋ね、千景はデルに記録したこれまでのルートを確認していく。

 世間を騒がすエクストリーム・プレイヤーにしてコーテックスやアカデミーからテロリスト認定されている人物と二人っきりというのも不安だらけであったが、ワールド自身は言われるほど危険な感じは無く声が少々大きくてあまり空気の読まないとこがあるくらいだ。なので来た道を引き返しながら千景は彼に聞きたかった事を尋ねる。

 

「どうしてワールドさんは反乱というか反抗をしてるんですか? コーテックスやアカデミーはそんなに悪い感じはしないと思いますけど」

「フムン、反抗の理由か……。カッコいいからだ! ……じゃあダメか?」

「ダメに決まってるんじゃないですか。そんなふざけた理由なら今すぐ関係各所に通報しますよ」

 

 真剣に聞くもおどけて答える三十路過ぎの男に千景は思いっきり冷めた視線を向けた。とはいえ誤魔化したのは何か言えない訳や言いたくない事情があるのだと察して、視線はすぐに外してデルに記録してある地図を頼りに道を引き返していく。

 戻りの行程はワールドの軽口が無くなり打って変わって静かでどうやら何か考え事をしているようだ。こう静かにしていれば年相応に見えるもので友人の印象と重なる部分がある。そんなことを思っているとワールドは思考から抜け出して顔を上げると、率直に切り出した。

 

「私があのような行動をしているのは、本当の事を言えばただの目眩ましに過ぎないんだ。真の目的は別にある」

「真の目的? じゃあエクストリームとかいうのはオマケみたいなんですか」

「エクストリームゲームが好きなのは事実さ。目立つからこそ裏が悟られづらいんだ。そして真の目的というのが、コーテックスの裏に潜んで世界を操る巨悪を打ち倒すことだ!」

「裏に潜む巨悪、まるで陰謀論ですね」

「うむ、確かに口で言うとゴシップ記事の隅に書いてある感じがするな。異世界から来た君には、そして大多数のこの世界の人間もそう思っているだろう」

 

 まさに荒唐無稽な話だと千景は率直に感じて言った当人もそれに同意する。だが同時にその口振りから確固たる証明や確信があるようで、ただのエクストリームゲームとして正規軍にちょっかいを出すのも変な感じがした。

 千景の困惑を察知してかワールドは証拠を見せると豪語して手招きをする。その先はガレリアの反応が強すぎて危険だから入らないように決めた通路であり、ついさっき決めた事を無かったかのように進んでいった。

 

「証拠って、この先にあるんですか!?」

「ああ。静かに、そして低くして。あれを見るんだ。これが私の反抗の理由さ」

 

 どんどん狭くなっていく道は1人が進めるのがやっとという具合になっていき、ようやく広いところへ出られる終点の手前でワールドは止まって後ろの千景を制する。腰を下ろして身を屈めて慎重に奥の方へ視線を向けていき、それに倣って千景も身を低くして道の向こうへ顔を合わせた。

 その先には怪しく蠢くものがあった。それはプラットフォームと一体化して黒い壁面となっているガレリアをまるで塗り替えるように覆い隠していく黒い靄であり、侵食された壁面は虫食いのように穴が開いてタール状の液体が漏れ出して靄に吸い込まれいく。まさにガレリア同士の共食いというおぞましい光景に千景は言葉を失ってしまった。

 

 

 

 

 

「ハアアァァァーッ!!!」

 

 淡い燐光を放つ刃が迫りくる黒き触腕を切り裂いていき、同時に黒い壁面を強く蹴って長く伸びる銀髪を翻しながらアズライトは飛び上がる。弱点となるオルゴンを受けて塵のように溶けていく触腕に代わってアローヘッドを小型にしたような自律抗体が編隊を組んできており、握りしめる長短2本のブレードが鮮やかな軌道を描きながら的確にガレリアを空ととも切り裂いた。

 着地するのとほぼ同時に足元が崩れてそこから新たな触腕が現れて槍の穂先のような鋭い先端を向けてくるものや足に絡みついて動きを阻害するものなどの波状攻撃で迫り、しかしアズライトはグリップの合わせて両端から刃が出るダブルブレードへ変えながら足場を抉るように斬り裂きながら棒高跳びの要領で再び飛び上がる。

 くるりと空中で前転しながら今度は2本のグリップを折りたたむよう平行に組み合わせてそれぞれの結晶体が混じり合った巨大なエネルギーの塊を刃とするオルゴンの大剣へ姿を変え、着地とともに叩きつけて爆発的な奔流が周囲のガレリアを丸ごと消し飛ばした。

 

「いい加減にしなさいよ……! どこまで来るのよコイツらは!」

 

 エナジーの大剣を解除してすぐさま一刀流の構えを取りながらもアズライトは懲りずに攻めてくるガレリアに毒づく。謎の揺れから大暴走が始まりかれこれ30分はぶっ通しで戦っており、敵の数が多いのと狭く入り組んだ小さな道がいくつも続いていたので、スプリットセイバーの大剣モードによる光刃で邪魔立てする一切合切を吹き飛ばして文字通り活路を切り開いていた。

 ガレリアから見れば腹の中を散々にかき回して暴れてるのだから全力で排除しにかかってきており、アズライトには疲労が出始めて他の仲間とも未だ合流できていない。だが逆に言えばこうしいて敵を引き付けておけば間接的に仲間の手助けになるのではないかと思い、こうして剣を振り続けた。

 

『……ットさん……ジュネットさん! こちらローゼンバーグ、聞こえますか!』

「ニコル! 良かった、無事だったのね!」

『はい、ジュネットさんも健在で何よりです! いまジュネットさんのレーヴァテインと一緒に待機しています』

 

 それまで沈黙を保っていた無線機より声が聞こえて小路で別れて以来のニコルの呼びかけにすぐさま応えて、彼はいまアズライトの愛機であるレーヴァテインとともに待機している。しかしそこにもガレリアの脅威が寄せてきており、今はオルゴンシールドを張って耐えているがいつまで持ちこたえていられるかわからない状態だ。

 早く合流したいのだがアズライトはガレリアの数が多くて簡単に突破することは難しく、ニコルは1人で2機のストライダーを持っているので動けないでいる。この状況を打破するべくアズライトは脇を締めてブレードを顔の横に寄せるように立てて構えると、送られてきたレーヴァテインの現在位置との直線距離を測っていった。

 

「今からそっちに行くからちょっと待ってて、最短距離で最速で行くから!」

『最速最短ってどうやって、ジュネットさ――』

 

 ニコルとストライダーの位置を逆探知して確認すると彼の声が終わらぬ間にセイバーを構えると、大剣モードによる巨大な光刃を振り上げて膨大なエネルギーの奔流が迸る。真っ直ぐに伸びる光芒がガレリアで構成された壁を容易く打ち破り、塞がれる前に飛び込んで宣言通りに最短ルートを駆け出していった。

 エネルギーの余波により無線が途中で途切れてしまい、通信先のニコルがヤキモキしているとすぐ近くの壁が盛大に崩壊していく。新たなガレリアの登場かと思って身構えるが、そこから出てきたのは緑の光刃を手にしたアズライトだった。

 

「せっ、盛大な登場だね……。無事で何よりです」

「そっちもね。レーヴァテインを守ってくれてありがとう」

 

 ブレードを仕舞うとレーヴァテインへ飛び移ってスリープモードから戦闘モードへ切り替えると、白いボディに緑のラインが浮かび上がって立ち上がる。始動した時に漏れ出すオルゴンだけで周囲のガレリアを吹き消すほどのエネルギーゲインが生まれ、各種センサーも全開にしてプラットフォーム内を走査させた。

 出口を探すためでない、当初の目的通りコアの位置を探す為で同じように囚えられている仲間達を助力するべく今の状況を打破するにはそこを破壊するしか方法はないだろう。一番ガレリアの反応が強い場所を見つけるとレーヴァテインが立ち上がり、ニコルも慌ててついていくようにストライダーを立ち上がらせる。

 

「見つけた、コアの場所!」

「コアの場所って、まさかそこにいくつもりですか!?」

「そのまさかよ、コアをぶっ壊してここのガレリアを一掃する!!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。