最初のデートが風太郎の場合   作:鱸のポワレ

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最初のデートが五月の場合②

私、中野五月は今、人生最大の悩みに直面していた。

そう、それは……、

 

「やはり王道の塩味に、……いやでもキャラメル味も魅力的ですね」

 

ポップコーンの味決めだ。

私はかれこれ20分も悩み続けていた。

 

「うーん。やっぱり決められません」

「どっちでもいいわ!」

 

私の彼氏である上杉君はめんどくさそうに言った。

上杉君は分かっていない。ポップコーンの味が今後をどれだけ左右するか。

 

「おい、映画始まっちまうぞ」

「う、うぅ。分かってますよ」

 

そう、今回の目的はポップコーンではなく映画を上杉君と観ることなのだ。だからポップコーンで悩んでいて上杉君を待たせるのは悪い。

よし、ここは思い切って第3の勢力、チーズ味にしよう。

そう決意をして店員さんを呼ぼうとしたが少しためらってしまう。

やっぱり塩味とキャラメル味も食べたい。

 

「……はあ。どれも魅力的です」

「ならハーフ&ハーフにすればいいんじゃないか」

「そ、そんなものが!」

 

ハーフ&ハーフ。塩味とキャラメル味が半分ずつ入っているためどちらの味も楽しめる、とメニューに書いてある。

こんな素晴らしいものがあるなんて思ってもいなかった。

感動で涙がこぼれそう。

今度こそ店員さんを呼ぼう。

この素晴らしいハーフ&ハーフで塩味もキャラメル味も堪能できる。

ん?塩とキャラメル?

……塩とキャラメル。ん?

チーズがない!

私はすでに1度チーズ味を頼もうとしたいたから、もう舌がチーズ味を待っている。

それなのにチーズ味を食べられないなんて!

 

「……チーズ味も食べたいです」

「は?」

「チーズ味も食べたいです!」

「……えぇ」

 

私の大きな声にびっくりして上杉さんが引いていた。

で、でもこれはしょうがない。だってポップコーンの味は大事だもん。

 

「……はあ、じゃあ俺がチーズ味頼んで分けてやるから早く行くぞ」

「そ、それは悪いですよ」

「いいから。映画始まっちまうだろ」

「…….わかりました」

 

上杉君のお言葉に甘えてチーズ味とハーフ&ハーフのポップコーンを買い、シアターに向かった。

 

「そういえばなんて映画を観るんですか?」

「聞いてなかったのかよ」

「き、聞いてましたよもちろん。『おっさんずハグ』ですよね?」

「やっぱり聞いてなかっただろ。そんなんじゃなくて普通の恋愛映画だ」

「ポップコーンのことで頭がいっぱいでした」

「……はあ、着いたぞ」

 

椅子に座り、スクリーンに流れているCMを観た。

おっさんずハグ大ヒット上映中!、とナレーターが読み上げる。

今度みんなと観ようとか思いながらCMを観続けると突然パッと明かりが消え、カラフルなオープニングが始まった。

ありきたりであまり面白くない。

まだ始まってから20分程度しか経っていないがもう飽きてしまっていた。

やっぱり私の楽しみはポップコーンたちしかない。

塩味もキャラメル味もチーズ味も全部美味しい。

それから私はポップコーンを食べることに集中した。

映画が中盤に差し掛かろうとしたところで、塩味とキャラメル味を一緒に食べると甘じょっぱくてクセになることを発見した。

なんて素晴らしい発明を私はしてしまったんだろう。

この発明を上杉君にも教えてあげたいと思い、横をチラッと観ると、上杉君も何か言いたいことがあるのか私を見ていたため目が合ってしまった。

な、なんか気まづい。

しかし、そんな思いが上杉君に伝わるはずもなく、あろうことか顔を真っ赤にしながら私の手を握ってきた。

 

「う、上杉君?どうしたんですか?」

「手を握りたかっただけなんだがダメか?」

 

確かに私たちは恋人同士だし、こういうことをしてもおかしくはない。けど……、

 

「すいません。ポップコーンが取れないので離してください」

「あ、はい」

 

背に腹は変えられない。

勇気を出してくれた上杉君には申し訳ないが、ポップコーン食べたい。

私は映画の残りの時間もポップコーンを食べ続けた。

 

映画が終わると上杉君の提案により、私たちは公園のベンチで話をすることにした。

 

「いやー美味しかったですねポップコーン」

「映画観て最初の感想がそれかよ……」

 

ガクッと肩を落として上杉君は言う。しかし、すぐに真面目な顔になって私を見つめた。

 

「そんなことより、俺たち付き合ってるんだよな?」

「え、ええ。何を今更言ってるんですか」

「だって恋人っぽいことしてないだろ。……それにさっき手握るの断られたし」

「そ、それはポップコーンを食べていたからですよ!」

 

私がそう言うと上杉君は目を光らせた。

な、何か嫌な予感がする。

 

「じゃあ今ならいいんだな」

「い、今ですか!」

「ああ」

 

上杉君が私の手を握った。

う、上杉君の温もりを感じる……。

が、そんな恥ずかしいこと言えるはずもなく、

 

「ふ、ふん。別にこれくらいなんともありません!」

「なんでちょっと怒ってるんだよ……」

「別に怒ってないです!」

 

照れているだけ。

だって今、私は上杉君と繋がっているということで、それを考えるだけでドキドキするから。

これが恋愛、これが恋人ということなんだろうか。

 

「じゃあこれならどうだ」

「な、何を……」

 

上杉君の顔が近い。上杉君がすぐそこまで顔を近づけ、そして私の唇を触った。上杉君の唇が。

 

「むぐ!」

「わ、悪い」

 

キスした。上杉君と。

私のファーストキスが突然奪われた。

しかもこんな公園で。恥ずかしくて悔しいはずなのに、なのに。

 

「何するんですか!」

「ほ、本当に悪かった」

「だったら!……もう1回してください」

「え?」

「だ、だから、突然でよくわからなかったのでもう1回してください」

「わ、わかった」

 

私と上杉君が見つめ合う。

恥ずかしい、恥ずかしいけど上杉君の唇を見てしまう。

はやく、はやくもう1回キスしてほしい。

 

「……じゃあいくぞ」

「……はい」

 

今度はしっかり、目を閉じて心の準備をしてキスをした。さっきよりも長く。

上杉君の柔らかい唇の感触がする。

キスはレモンの味がするとか言うけど、緊張で味なんかわからない。

ただ上杉君がいて、上杉君と繋がれる。それが幸せということはわかった。

だから、唇が離れたときは寂しく感じた。

 

「じ、じゃあ、そろそろ帰るか」

「ま、待ってください。今日は上杉君の家にお邪魔してもいいですか?」

「どうしたんだ急に」

「い、一緒に居たいので」

 

まさか私がこんなことを言う日が来るとは思わなかった。

でも、それだけ上杉君が今の私には魅力的で愛おしい。

一緒に居ると楽しいしドキドキする。

そんな時間をもっと過ごしたいから。

 

「まあ、いいぞ。らいはが今夜はカレーって言ってたしな」

「カレーですか!楽しみです」

「じゃあ行くか」

「はい!」

 

私たちは、今度はどちらからでもなく、自然に手を取り合って歩き始めた。




いやーなんとか終わりました。
らいは編や零奈編、五姉妹全員編、変わり種だとマルオ編(笑)なども考えていたのですが他の作品がほったらかしなので予定通りこれで最後です。
よかったら、お気に入り、感想(アドバイス)、評価などよろしくお願いします。
これからは、他の作品を投稿していく予定なのでそっちの作品もよろしくお願いします。

あっというまに終わりました。キャラの中では風太郎を
理解するのが大変でしたね。後はデートの場所も考えるの
が大変でした。コロナのせい(おかげ)で時間もかなり
取れたので途中からは毎日投稿でできました。
うっかりした誤字もありましたが(上杉を上原と間違えた)笑。

見てくれた方、評価してくれた方、お気に入りに入れてくれた方本当にありがとうございました。


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