私、中野一花は5人姉妹の長女。
私は5人の中で一番しっかりしてなくちゃいけないと昔から思っていたし今も思っている。
だから、4人からフータロー君を奪ってしまっても、せめて諦めてくれた4人のために幸せになろうと決めた。
それなのに、初デートはまかせておけと言っておきながら失敗、失敗、失敗。
こんなダメなお姉ちゃん(笑)に想っていた人を奪われたとみんなが知っても納得しないだろう。
いや、みんなならデートの失敗を励ましてくれるかもしれない。
でもその優しさは逆につらいと思う。
フータローくんだって、がっかりしているかもしれない。その証拠に次の目的地は駿河屋。
あの優しいフータローくんも投げやり状態だ。
「駿河屋に着いたぞ。どうしたぼーっとして大丈夫か?」
こんなときにも、いや、こんなときだからこそフータローくんは優しく心配してくれる。
最高の彼氏。そんな人とダメダメな彼女がつり合ったいるのだろうか。
私が苦笑いを浮かべると、フータローくんはますます心配そうな顔をしていた。
「もしかして午前中のデートのことか?それなら問題ない。ああいう体験も貴重だしな。それにさっきも言っただろ、……俺は一花といるだけで幸せだって」
「ありがとう」
私は満面の笑みで答えた。
お世辞でフォローをしてもらっていると分かっていても喜んでしまうダメダメな彼女である。
それから私たちは駿河屋に入って行った。
数分間、フータローくんは何かを探している様子だったが、ポスターを見て急に立ち止まった。
「そのポスター興味あるの?」
「や、やめろ!見るな!これだけは見られたくない!(チラチラ)」
「……見て欲しいんだよね」
「し、しょうがないな。そんなに見たいなら、ほら」
フータローくんは、すごく嬉しそうにそう言ってポスターの前に私の手を引いた。
つまり、今私はフータローくんと手を繋いでいる。
あわわわわ。
「ふ、フータローくん。ちょっと恥ずかしい……、ってこのポスター!」
「ああ、五等分の花嫁のヴァイスシュヴァルツ参戦決定のポスターだ。これだけは見られたくなかったんだがな!」
「……嬉しそうだね」
「ちなみに隣のポスターは五等分の花嫁2期制作決定のポスターだ!みんなぜひ見てくれ」
「……誰に言ってんの」
フータローくんは楽しそうに語っていて、私は平然とツッコンでいるがまだ手を繋いだままでそれどころじゃない。
あわわわわ。
「一花!こっちに三玖がやってた戦国ゲームがあるぞ」
今度は別の場所にあったゲームを見てフータローくんは嬉しそうに騒ぎ出した。
「本当だ!昔これにハマりすぎてゲームするから学校行かないとか言い出したことあるんだよ」
「まじか。……すごいなあいつ」
「結局三玖だけずるいってなってみんなで休んだんだけどね」
「……はあ。そんなんだから成績が低いんだよ」
フータローくんはため息を吐きながら言った。
こうやって話していると付き合っているというより、友達の延長という感じがする。
手は繋いだままだけど。
あわわわわ。
「ちなみに俺はゲームとかトレカとかはやらないが、一花はゲームとかやるのか?」
「んー、最近は全くしないけど昔はちょっとだけやってたかな。マリオとか」
「今度一緒にやるか」
「うん!みんなも久しぶりにフータローくんと遊びたいだろうしね」
「いやそうじゃなくてだな。その、……2人で」
「え!?……う、うん。2人でマリオやろっか」
繋いでいる手を通じてフータローくんの緊張が伝わってくる。
頑張って誘ってくれたんだろう。そう思うと嬉しくてたまらない。
「じゃあほかの場所も見るか」
「うん」
それから、2人でカードやフィギュアを見て周った。
2人とも特別知識があるわけではなかったが、どうでもいいこと話をしたり、変なゲームを見たりして、いつも通り楽しく過ごした。
ちなみに私はずっと『あわわわわ』しっぱなしだったが、フータローくんは手を話してくれなかった。
こういうところは意地悪だ。
……手を離して欲しかったわけではないけど。
一通り駿河屋を周り、私たちはデュエルスペースで休憩することにした。
……カップルでデュエルスペースは前代未聞だ。
「本来デュエルスペースはデュエをする人が使う場所だ。今回は特別だがみんなはデュエルの邪魔にならないようにしよう」
「……さっきもだけど、誰と話してるの」
「読者の皆様だ」
「え?」
「コホン、そんなことより駿河屋はどうだった」
フータローくんは誤魔化すようにわざとらしく咳払いをした後、私に質問をした。
駿河屋はどうだったか。
そんなの決まっている。フータローくんと一緒ならどこでも……
「ま、まあまあだったかな」
本当は楽しかった。超楽しかった。
けれども、素直に認められないのがお姉さんの悪いところだ。
「午前中あんなひどいデートしたくせに」
「そ、それ言っちゃうかな!」
「まあ、俺が言わせればどっちも超楽しかったけどな」
「フータローくんやけに素直だね。あはは。ま、まあ実は私も楽しかったけど」
「なんというかな……」
フータローくんは人差し指を立ててドヤ顔で口を開いた。
「こんなデートに合わない場所でも俺と一花なら超楽しいってことだ。だからあんま気張ってデートプランとかガチガチにしなくていい」
「うん。本当にごめんね今日は」
「今日何度目か分からないが謝る必要もない。午前中だって超楽しかったし、実は困ってる一花は可愛くてそれはそれでよかったからな」
フータローくんはニヤッと笑い悪い顔をした。
今日はこうやって何度も冗談っぽく気遣ってくれている。
だからこそ、平然を装って答えるのが正解だと思った。
私はわざとらしく頬を膨らませて怒った。
「もー。そんなこと考えてたの」
「悪い悪い。あと悪いついでにもう一箇所俺に付き合ってくれないか」
「う、うん。別にいいけど、まさか今度はアニメイトとか言わないよね」
「……ま、まさか」
フータローくんの目が明らかに泳いでいた。
え、本当にアニメイト?私たちそんなにオタク系カップルだっけ。
「アニメイトじゃなくて、晩飯だ」
「そういえばそんな時間だね」
「もちろん予約なんてしてないし、ファミレスに行こうと思ってるがな。ジョナサンとバーミヤンどっちがいい?」
またもドヤ顔で質問してきた。なんかここまでくると可愛いような気がする。
「じゃあジョナサンがいいな。焼き立てデニッシュが美味しいんだよ」
「じゃあ行くか」
「うん」
私たちは駿河屋を後にして歩いてジョナサンに向かった。
が、しかし。
「こっちだっけジョナサン?」
「も、もう少しだ」
「本当に?」
私の知る限りでは、ジョナサンとは逆方向に向かってフータローくんは歩いていた。
しかも、全く目を合わせてくれない。実に怪しい。
「つ、着いたぞ」
「え、ここって?」
私たちの目の前にはジョナサン……ではなくなんと、お洒落そうなレストランがあった。
「ど、どういうこと?」
「つまりだな、……張り切ってデートプランを考えたのは一花だけじゃないってことだ」
「あんだけ言っといて!?」
「わ、悪い。……でも予約しちゃっててお金もったいないし」
「別に怒ってけどさ。……ていうか嬉しい」
フータローくんも一緒だったんだ。張り切ってくれていたし、緊張もしていた。
そう思えるだけですごく嬉しかった。
「いつもお姉さんとして頑張ってるからな。彼氏の俺ぐらいには、その、……甘えていいんだぞ」
「恥ずかしいくせに。お姉さんそれくらい分かっちゃうんだから」
「そ、そんなことは……」
「でもね、フータローくん」
「ん?」
「ありがと。今日はこの後、思いっきり甘えさせてもらうから覚悟してね!」
「ああ」
「大好きだよ」って大事なことは言えないヘタレなお姉さん(笑)だけど、それでもフータローくんは優しくしてくれる。
フータローくんだけには、お姉さんとしてじゃなく単純に好きな人として接しよう。いっぱいいっぱい甘えてやろう。
感想やアドバイスなどよろしくお願いします。