最初のデートが風太郎の場合   作:鱸のポワレ

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最初のデートが二乃の場合①

俺、上杉風太郎は、林間学校の最終日に五つ子全員から告白をされた。そして、俺はその中から二乃を選び、恋人同士となったのだった。

 

 

俺たちが最初のデートに選んだ場所は、駅ビルのショッピングモール……

 

「フーくんやっと着いたわ」

「着いたな、……京都に」

 

……のはずだった。

最寄り駅の改札前で二乃と合流するやいなや、二乃の連れらしき黒服の男2人に誘拐され、新幹線に乗ること約2時間、訳の分からぬまま京都に到着していた。

 

「……なんで京都なんかに」

「フーくんとの1回目のデート記念だもん。盛大にやりたいでしょ」

 

二乃は髪を後ろになびかせながら満足げに答えた。

しかし、いくらなんでも京都は遠すぎるし急すぎる。

 

「と、とりあえず、らいはに伝えておこう」

「心配いらないわよ。らいはちゃんは私以外の4人と北海道に行ってるから」

 

らいはの奴、はやく帰ってきてねとか言ってたくせに共犯だったのかよ。

 

「あんたんちのパパとうちのパパも一緒だから大丈夫よ」

「……それ本当に大丈夫なのか」

 

すごいメンバーで北海道旅行に行ったな。2人きりの俺たちよりよっぽど心配なんだが。

 

「そんなこと気にしてないで3日間楽しみましょ」

「は?日帰りじゃないのか!?」

「当たり前でしょ。こんな遠くまで来てすぐ帰ったらもったいないわ。それに……」

 

二乃は恥ずかしそうに指を絡めながら呟いた。

 

「フーくんといっぱいデートしたいし」

「……お、おう」

「じ、じゃあ行きましょうか」

 

さっきの言葉が恥ずかしかったのか、二乃は先に歩いていってしまった。

こっちとしては積極的にこられるのは嫌ではない。だが正直、恥ずかしさが勝ってしまう。大事なことなので2回言おう。決して嫌ではない。

そんなことを考えていると俺の腹の虫が暴れ出した。

状況はいまだに理解できていないが、それでも腹は減る。

時刻は12時を過ぎていた。

 

「とりあえずご飯食べないか?」

「そ、そうね」

 

二乃はまだ恥ずかしそうにしていたが、ひとまず2人でご飯が食べられる場所を探すことにした。

それから店を探すこと数十分。気になったのか二乃が手織り寿司の店の前で立ち止まった。

 

「あ、ここいいんじゃないかしら。フーくんはどう思う?」

「手織り寿司か。京都らしくていいんじゃないか」

「じゃあ入りましょ」

 

二乃が腕を絡めてきたため、俺は引っ張られながら店に入った。

……む、胸があたってる。

とにかく、店の中はすごく落ち着いた空間になっており、まさに和食の店という感じだ。

少し抑え目の証明に古くていい味を出しているテーブル、俺の腕にあたる柔らかい胸。

どれも素晴らしいおっぱいだ。ん?おっぱい?

いや、落ち着けあたっているのはただの脂肪だ。

 

「……そう、脂肪だ。牛脂と同じだ」

「どうしたのフーくん?」

 

二乃が怪しむように俺を見ている。気づかれたら社会的に死ぬかもしれない。

 

「い、いやなんでもない。それより腕を離してくれ。椅子に座れないし、寿司も食べられないだろ」

「隣に座ればいいじゃない。それに私が食べさせてあげるわよ。か、彼女なんだし」

「でもな、そ、その……」

「なに?」

「いや、なんでもない」

 

「胸があたってて恥ずかしい」なんて言えるはずがない。元不良でも難易度が高い。富士山より高い。よっ、日本一。

しぶしぶ俺が椅子に座ると、二乃はメニューを広げだしていた。

 

「フーくんはどれにする?」

「俺はこの、1番スタンダードそうな手織り寿司の並を、……ていうか今気づいたが、俺全然お金持ってないぞ」

「それは任せてフーくん。誘拐もしちゃったわけだし」

「悪いな」

「別にいいわよ。フーくんにデート任せたら駿河屋とか行きそうだし」

 

二乃はさらりと言っているが、二乃にとっての俺のイメージってなんなんだ。デートで駿河屋なんて行くわけがない。たぶん……。

 

「それに新婚旅行みたいで楽しいし」

 

そう言って二乃は、さらに腕を絡めてきた。

な、なるほど、勉強だけしてても学べない柔らかさがここにある。すばらしい。

俺がおっぱ、……ではなく恋人の温もりを感じている間に二乃は注文を済ませ、五月の話を始めていた。

 

「五月ったらね、回転寿司に行ったとき20皿も食べたのよ」

「そりゃすごいな。男の俺でも15皿ぐらいしか食べないぞ」

「逆に一花なんかは……」

 

その後も二乃は、すごく楽しそうに姉妹のことを話し続けた。側から見ればただのシスコンにしか見えないかもしれないが、俺には愛情を持った優しいシスコンに見えた。結局シスコンは変わらない。

 

「……しかも四葉と三玖だったの。すごいでしょ」

「ああ、すごいシスコンだな」

「そ、そうじゃなくて!」

「じゃあなんだ?」

「た、確かにシスコンかもしれないけどフーくんが1番大切だから嫉妬しないでよね」

「なんでそんな話になったんだよ!?」

「私はフーくんが大好きだから」

「……話聞けって二乃。ま、まあ俺も二乃が大好きだが」

「フーくん」

「二乃」

「お、お客様。お料理をお持ちしました」

「「は、はい!」」

「ごゆっくりどうぞ〜」

 

店員は料理を置くと素早く去っていく。ニヤニヤしながら。

めちゃくちゃ恥ずかしいところを見られてしまった。低音ボイスで「二乃」とか言っちゃってた。

 

「わ、わー。おいしそうねふーくん」

 

いつも積極的な二乃もペッパーくんばりの棒読で感想を言っている。

こほん。

俺も気を取り直して料理に目をやる。

初めて生で見る手織り寿司は、カラフルで芸術作品のようだった。もし彦◯呂が見たら「魚介の宝石箱や」とか言うレベルだ。

 

「すごいな二乃。きれいだ」

「え!?あ、ありがとうフーくん……」

 

二乃は自分が褒められたと勘違いをしたらしく、顔を真っ赤にして照れだした。

こうなると訂正がしづらくなってしまうが、実際二乃はきれいだからいいだろう。

 

「ふ、フーくんはやく食べましょ」

「そうしたいんだが、お前が腕絡めてるんだろ」

「だ、だからほら、あーん」

「……うぐ!あ、あーん」

 

な、なんて恥ずかしいんだ。さっきの店員もニヤニヤしながら見ている。しかし、そんなことも知らない二乃は、恥ずかしそうにしながらも俺を見つめてさらに続ける。

 

「ふ、フーくん、美味しい?」

「あ、ああ。美味い」

「じゃあ今度は私が食べたいな」

「利き手が使えないんだが」

「あーん」

 

二乃は聞こえないフリをしてあーんをせがんでくる。

Q、この世で1番可愛い生き物は?

A、俺の彼女

 

「仕方ないなほら」

 

しかし、左手で箸を使ったからか寿司をうまく持てず落としてしまった。二乃のおっぱ、……豊満な脂肪と脂肪の間に。

 

「わ、悪い」

「もう。……とってよフーくん」

「だがそれだとお前のおっぱ、……胸に触れちまう」

「……いいよフーくん」

「二乃」

 

この後はご想像にお任せしよう。ただ1つ言えるのは、おっぱいは世界を救うってことだ。

そんなこんなで手織り寿司を食べ終え、俺たちは店を後にした。

 

「この後行くところは決まってるのか」

「もちろん。フーくんも絶対楽しめる場所よ」

「まさかおっぱ、……いやなんでもない」

 

ヤバイ、下手な麻薬より中毒性あるんじゃないか?

なにとは言わないが。

 

「じゃあ行くわよ!鳥居を見に」

「鳥居って意外と渋いな」

「そんなことないわ。フーくん知らないの?千本鳥居」

 

二乃がドヤ顔で言った千本鳥居とは、伏見稲荷大社にある鳥居のことだ。その名の通り大量の鳥居が並んでいる有名な観光スポット。

もちろん俺も知っている。……が、

 

「し、知らないな。なんだそれ?」

「鳥居がいっぱいあって綺麗なのよ。行ったら驚くわよ」

 

彼女のこんなに嬉しそうな顔を見れたのなら、バカを演じるのもいいもんだと思う。

 

「ふ、フーくん、それとね」

「どうした?」

「手繋がない?」

「腕絡めてるのとってくれたらな」

 

すると二乃は腕を離し、今度は自分の指を俺の指に絡めた。

さよならおっぱい。こんにちは暖かい手。

 

「これって恋人繋ぎじゃ……」

「当たり前よ付き合ってるんだから。は、はやく行くわよ」

 

こうして俺たちは、次の伏見稲荷大社を目指して歩きだした。

……手をつなぎながら。




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