俺、上杉風太郎は、林間学校の最終日に五つ子全員から告白をされた。そして、俺はその中から二乃を選び、恋人同士となったのだった。
俺たちが最初のデートに選んだ場所は、駅ビルのショッピングモール……
「フーくんやっと着いたわ」
「着いたな、……京都に」
……のはずだった。
最寄り駅の改札前で二乃と合流するやいなや、二乃の連れらしき黒服の男2人に誘拐され、新幹線に乗ること約2時間、訳の分からぬまま京都に到着していた。
「……なんで京都なんかに」
「フーくんとの1回目のデート記念だもん。盛大にやりたいでしょ」
二乃は髪を後ろになびかせながら満足げに答えた。
しかし、いくらなんでも京都は遠すぎるし急すぎる。
「と、とりあえず、らいはに伝えておこう」
「心配いらないわよ。らいはちゃんは私以外の4人と北海道に行ってるから」
らいはの奴、はやく帰ってきてねとか言ってたくせに共犯だったのかよ。
「あんたんちのパパとうちのパパも一緒だから大丈夫よ」
「……それ本当に大丈夫なのか」
すごいメンバーで北海道旅行に行ったな。2人きりの俺たちよりよっぽど心配なんだが。
「そんなこと気にしてないで3日間楽しみましょ」
「は?日帰りじゃないのか!?」
「当たり前でしょ。こんな遠くまで来てすぐ帰ったらもったいないわ。それに……」
二乃は恥ずかしそうに指を絡めながら呟いた。
「フーくんといっぱいデートしたいし」
「……お、おう」
「じ、じゃあ行きましょうか」
さっきの言葉が恥ずかしかったのか、二乃は先に歩いていってしまった。
こっちとしては積極的にこられるのは嫌ではない。だが正直、恥ずかしさが勝ってしまう。大事なことなので2回言おう。決して嫌ではない。
そんなことを考えていると俺の腹の虫が暴れ出した。
状況はいまだに理解できていないが、それでも腹は減る。
時刻は12時を過ぎていた。
「とりあえずご飯食べないか?」
「そ、そうね」
二乃はまだ恥ずかしそうにしていたが、ひとまず2人でご飯が食べられる場所を探すことにした。
それから店を探すこと数十分。気になったのか二乃が手織り寿司の店の前で立ち止まった。
「あ、ここいいんじゃないかしら。フーくんはどう思う?」
「手織り寿司か。京都らしくていいんじゃないか」
「じゃあ入りましょ」
二乃が腕を絡めてきたため、俺は引っ張られながら店に入った。
……む、胸があたってる。
とにかく、店の中はすごく落ち着いた空間になっており、まさに和食の店という感じだ。
少し抑え目の証明に古くていい味を出しているテーブル、俺の腕にあたる柔らかい胸。
どれも素晴らしいおっぱいだ。ん?おっぱい?
いや、落ち着けあたっているのはただの脂肪だ。
「……そう、脂肪だ。牛脂と同じだ」
「どうしたのフーくん?」
二乃が怪しむように俺を見ている。気づかれたら社会的に死ぬかもしれない。
「い、いやなんでもない。それより腕を離してくれ。椅子に座れないし、寿司も食べられないだろ」
「隣に座ればいいじゃない。それに私が食べさせてあげるわよ。か、彼女なんだし」
「でもな、そ、その……」
「なに?」
「いや、なんでもない」
「胸があたってて恥ずかしい」なんて言えるはずがない。元不良でも難易度が高い。富士山より高い。よっ、日本一。
しぶしぶ俺が椅子に座ると、二乃はメニューを広げだしていた。
「フーくんはどれにする?」
「俺はこの、1番スタンダードそうな手織り寿司の並を、……ていうか今気づいたが、俺全然お金持ってないぞ」
「それは任せてフーくん。誘拐もしちゃったわけだし」
「悪いな」
「別にいいわよ。フーくんにデート任せたら駿河屋とか行きそうだし」
二乃はさらりと言っているが、二乃にとっての俺のイメージってなんなんだ。デートで駿河屋なんて行くわけがない。たぶん……。
「それに新婚旅行みたいで楽しいし」
そう言って二乃は、さらに腕を絡めてきた。
な、なるほど、勉強だけしてても学べない柔らかさがここにある。すばらしい。
俺がおっぱ、……ではなく恋人の温もりを感じている間に二乃は注文を済ませ、五月の話を始めていた。
「五月ったらね、回転寿司に行ったとき20皿も食べたのよ」
「そりゃすごいな。男の俺でも15皿ぐらいしか食べないぞ」
「逆に一花なんかは……」
その後も二乃は、すごく楽しそうに姉妹のことを話し続けた。側から見ればただのシスコンにしか見えないかもしれないが、俺には愛情を持った優しいシスコンに見えた。結局シスコンは変わらない。
「……しかも四葉と三玖だったの。すごいでしょ」
「ああ、すごいシスコンだな」
「そ、そうじゃなくて!」
「じゃあなんだ?」
「た、確かにシスコンかもしれないけどフーくんが1番大切だから嫉妬しないでよね」
「なんでそんな話になったんだよ!?」
「私はフーくんが大好きだから」
「……話聞けって二乃。ま、まあ俺も二乃が大好きだが」
「フーくん」
「二乃」
「お、お客様。お料理をお持ちしました」
「「は、はい!」」
「ごゆっくりどうぞ〜」
店員は料理を置くと素早く去っていく。ニヤニヤしながら。
めちゃくちゃ恥ずかしいところを見られてしまった。低音ボイスで「二乃」とか言っちゃってた。
「わ、わー。おいしそうねふーくん」
いつも積極的な二乃もペッパーくんばりの棒読で感想を言っている。
こほん。
俺も気を取り直して料理に目をやる。
初めて生で見る手織り寿司は、カラフルで芸術作品のようだった。もし彦◯呂が見たら「魚介の宝石箱や」とか言うレベルだ。
「すごいな二乃。きれいだ」
「え!?あ、ありがとうフーくん……」
二乃は自分が褒められたと勘違いをしたらしく、顔を真っ赤にして照れだした。
こうなると訂正がしづらくなってしまうが、実際二乃はきれいだからいいだろう。
「ふ、フーくんはやく食べましょ」
「そうしたいんだが、お前が腕絡めてるんだろ」
「だ、だからほら、あーん」
「……うぐ!あ、あーん」
な、なんて恥ずかしいんだ。さっきの店員もニヤニヤしながら見ている。しかし、そんなことも知らない二乃は、恥ずかしそうにしながらも俺を見つめてさらに続ける。
「ふ、フーくん、美味しい?」
「あ、ああ。美味い」
「じゃあ今度は私が食べたいな」
「利き手が使えないんだが」
「あーん」
二乃は聞こえないフリをしてあーんをせがんでくる。
Q、この世で1番可愛い生き物は?
A、俺の彼女
「仕方ないなほら」
しかし、左手で箸を使ったからか寿司をうまく持てず落としてしまった。二乃のおっぱ、……豊満な脂肪と脂肪の間に。
「わ、悪い」
「もう。……とってよフーくん」
「だがそれだとお前のおっぱ、……胸に触れちまう」
「……いいよフーくん」
「二乃」
この後はご想像にお任せしよう。ただ1つ言えるのは、おっぱいは世界を救うってことだ。
そんなこんなで手織り寿司を食べ終え、俺たちは店を後にした。
「この後行くところは決まってるのか」
「もちろん。フーくんも絶対楽しめる場所よ」
「まさかおっぱ、……いやなんでもない」
ヤバイ、下手な麻薬より中毒性あるんじゃないか?
なにとは言わないが。
「じゃあ行くわよ!鳥居を見に」
「鳥居って意外と渋いな」
「そんなことないわ。フーくん知らないの?千本鳥居」
二乃がドヤ顔で言った千本鳥居とは、伏見稲荷大社にある鳥居のことだ。その名の通り大量の鳥居が並んでいる有名な観光スポット。
もちろん俺も知っている。……が、
「し、知らないな。なんだそれ?」
「鳥居がいっぱいあって綺麗なのよ。行ったら驚くわよ」
彼女のこんなに嬉しそうな顔を見れたのなら、バカを演じるのもいいもんだと思う。
「ふ、フーくん、それとね」
「どうした?」
「手繋がない?」
「腕絡めてるのとってくれたらな」
すると二乃は腕を離し、今度は自分の指を俺の指に絡めた。
さよならおっぱい。こんにちは暖かい手。
「これって恋人繋ぎじゃ……」
「当たり前よ付き合ってるんだから。は、はやく行くわよ」
こうして俺たちは、次の伏見稲荷大社を目指して歩きだした。
……手をつなぎながら。
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