俺、上杉風太郎は、林間学校の最終日に五つ子全員から告白をされた。そして、俺はその中から三玖を選び、恋人同士となったのだった。
それから3日後、俺は三玖に呼び出され中野家を訪れていた。三玖以外の4人は気を使ったのか、家には三玖だけが1人ポツンと座っている。
「フータローいらっしゃい」
「お、おう」
部屋に2人しかいないためか、寂しさのような気持ちに襲われる。2人で過ごすにしてはこの部屋は広すぎる。
そんなことは気にしいないのか、普段通りといった様子の三玖は近づいてきながら言った。
「今日は家デート」
三玖は手を広げ、今日はここで過ごすよと言わんばかりに家をアピールをした。
ちょっも待て、2人きりで家デートと聞くとどうしても変な意味だと思ってしまうのだが……。
「と、とりあえず何するんだ?」
「フータローはやりたいことある?」
問いに対し俺は少し考えるが、人の家でやりたいことと聞かれても、何があるのかもよくわからない。
「別に俺は。三玖がやりたいことでいい」
俺がそう言うと、三玖は少し考えてから、
「……じゃあゲーム」
と小さい声で答えた。
ふむ、ゲームというのはやっぱり、いかがわしい感じのゲームだろうか。
負けた方が罰ゲームとしてあんなことやそんなことを……。
俺のそんな妄想を遮るように三玖が興奮しながら言った。
「信長の野望やろう」
「え、信長?」
「ダメだった?じゃあ三国志14?」
三玖は「え、こいつ信長で満足しねえの?」みたいな顔をした後、今度は三国志とやらを取り出した。
なるほど、いかがわしいゲームじゃなく、ガチゲームか、……変なこと考えてた自分が恥ずかしい!
こほん、と咳払いをし気を取り直す。
「お、おお。信長でいいぞ。い、いやー楽しみだなー」
「うん」
元気に返事をしてゲームを始める準備をする三玖。
テレビをつけ、ゲームのホーム画面に切り替わった。
ゲームのBGMが寂しく音を出す。それにしても静かだ……。
「ところで他の4人はどこ行ったんだ?」
「たぶんお父さんのとこ。だから今日は帰ってこない」
「そ、そうか。じゃあ俺も早く帰らなくちゃな」
「どうして?夜ご飯も一緒に食べよ」
三玖は先ほどまでと違い、少し焦ったように言った。
そんなに俺と夜ご飯を食べたいのか!可愛い、なんて可愛いんだ。もちろんこの可愛さの前に断れるはずもなく、
「そんなに言うならいただこう」
「やった。よかった」
「そんなに嬉しいのか?」
「うん」
嬉しそうに三玖ははにかんだ。
結論。
信長をやってるときも俺の彼女は可愛い。
それから1時間ほどゲームをしたところで、さすがに疲れたので他のことをすることにした。
「次は何する?家だとやれること限られてるからな……」
「テレビ見よ。お菓子持ってくる」
「い、一応デートだよなこれ……」
しかも三玖は、見たい番組があるわけでもなかった。
仕方なく2人で『第3回ビックリ仰天!老人変顔トーナメント』を見る。老人たちが睨めっこをするという内容のバラエティ。
しかもトーナメント形式で参加者は100人を超えているため、決勝まで残った人は7回も変顔をさせられるという。何より今回でもう3回目というのが驚きである。もはや老人虐待の域に達してる。
これをなんとか見終わり次は何をするか考えていると三玖が今度は、
「昼寝しよ」
「ひ、昼寝!?」
「うん」
「一緒にか?」
「うん。いや?」
「喜んで!」
これは今度こそ、そういうイベントだ。若い男女がしかも付き合ってる男女が一緒に寝るなんてむしろそれしかない。
「じゃあおやすみ」
「ああ、おやすみ」
「……」
「……」
「……」
「……あの」
「……」
ほんとに寝てる!デートで昼寝ってほんとにあるの?ていうかほんとに俺ら付き合ってるのか?
とかなんとか言いつつ俺も数分で、ウトウトと夢の中に入っていった。
俺と三玖は30分後に起きると、今度は三玖の「次は買い物」という一言でスーパーに行った。
スーパーの中は冷房が強くて肌寒かった。
薄着でスーパーに来たことを後悔しつつ、三玖の方を見る。どうやらナスと格闘中のようで色や重さを確かめている。
俺はナスの状態よりも気になっていることがあった。
「なあ三玖。なんで今日は俺を呼び出したんだ?」
「それはさっきも言った。デート」
「でもデートって言うには、変なことしかしてなくないか」
「そ、それは……」
子供が悪さをして見つかったときのような顔をする三玖。
これ以上何が言うのはかわいそうだと思ったが、三玖は意を決した顔をしてナスを置いた。
「……日常」
「は?日常?」
驚きのあまりついおうむ返しをしてしまう。
三玖は気持ちを紛らすためか今度はピーマンを手に取っていた。
「どういうことだ?日常って」
「……フータローと普通の家族みたいに過ごしたかった。それだけ」
「……家族ってお前」
「変なことばかりしてごめん」
三玖は真っ直ぐ俺を見てそう言った。
別に謝ってほしいわけではないのだが。もちろん怒ってなどいない。
「でも、なんで家族みたいに過ごしたいんだ?」
「そ、それは……」
「ん?」
「…………恥ずかしい」
今度は顔を真っ赤にしてそう言った。可愛い。
「言ってくれよ。気になるだろ」
「…………将来的にこうなるかなって思ったから」
もう三玖は、俺のことを見れないのか顔を隠してしまう。
可愛い。あと、可愛い。もう可愛い意外に思いつかない。
「そ、そうか……」
「……うん」
つまりこの買い物も、俺たちが夫婦だと想像しながらしていたのか。そう思うと俺も恥ずかしくなってくる。
結局、その後はあまり会話は続かず、夜ご飯の具材だけ買い、そわそわしながら俺と三玖は中野家に戻った。
家に戻ると、早速エプロンに着替えた三玖は、買ってきた具材を袋から出して並べている。
俺は何をしていればいいのか分からず相変わらずそわそわしていた。
「なあ三玖、俺も手伝うぞ」
「フータローは座ってて。これは妻の仕事だから。…………やっぱりなんでもない」
またも、恥ずかしがって顔を隠す三玖。
……妻って、なに妻って。
「俺の妻、可愛いな」
ぼそっと三玖に聞かれないように小さな声で呟き、俺はソファの上でゲームをやるかテレビを見るか、それとももう一寝入りするか考え、結局気づかないうちに寝てしまうのだった。
妻の野菜を切る音を聞きながら。
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