最初のデートが風太郎の場合   作:鱸のポワレ

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最初のデートが四葉の場合②

今日は私、中野四葉にとって上杉さんとの大切な初デート。なのに私は失敗ばかりだった。

まず最初の失敗は遅刻をしたこと。

上杉さんには、ずっと私を見てもらいたかった。だから1時間かけて服を選んだ。それで、気がつくともう9時半を過ぎていた。

遅刻なんて最低だ。優しい上杉さんも怒っているように見えた。

2つ目の失敗はキスをせがんだこと。

私たちを見てる人が何人もいた。それに気づいていたにも関わらず、私は上杉さんにキスをせがんだ。もちろん断られた。当たり前だ。

3つ目はキスをしてもらえなくていじけたこと。

これが1番最悪だ。デートの雰囲気を壊してしまった。

私のデートは最悪だった。

でもそのかわり、楽しみも1つできた。それは、上杉さんがキスをすると約束をしてくれたこと。

お昼ご飯を食べているときに上杉さんから、観覧車は最後にしようと言われた。

つまり、観覧車で上杉さんがキスをしてくれる。

これが私の楽しみ。これだけは絶対に成功させる。

午後は失敗しないことにだけ気を配って過ごすんだ。

普通に過ごせばいい。変なことはしない。変に考えたりもしない。ただ上杉さんと楽しく過ごす。

そうやって自分に言い聞かせながら、いくつかのアトラクションを周った。

それから時刻は7時を過ぎ、広場ではパレードが行われ人が集まる時間帯となった。

私たちはその様子を見ながらある場所を目指した。

それはもちろん観覧車だ。

私の今日1番の楽しみはもうすぐそこにある。

観覧車に向かう途中、私たちは一言も喋らなかった。

それでも手だけは繋いでいた。

それだけで十分だ。

上杉さんの温かさを感じるから。上杉さんとの幸せを感じるから。

私たちは、そのまま観覧車に乗った。

私たちを歓迎するように観覧車は動き始める。少しずつゆったりと。

私たちはお互いに見つめ合ったまま動かない。

観覧車は頂上に少しずつゆったりと近づいていく。

それに反比例するように私の心臓が跳ね上がる。

ドキドキ、ドキドキ。

それでもやっぱり観覧車はゆったりと、だけども確実に上へ向かっていく。

もう少しで頂上だ、そう思った瞬間上杉さんが私の肩に手を置き顔を寄せた。

上杉さんの顔がすぐそこにある。大好きな人がすぐそばにいる。

嬉しい。

私は上杉さんが好きだ。そして、上杉さんは私が好きだ。

それだけですごく嬉しかった。たった2人だけの感情で私は幸せだった。

私はそっと目を閉じる。

今私はどんな顔をしているのだろうか。すごく笑顔かもしれない、ニヤけちゃっているかもしれない、緊張で変な顔をしてるかもしれない。

それでも、例え私がどんな顔をしていても、感情だけは1つだと強く確信する。

私は今すごく幸せ。それだけはわかる。

でも、幸せな時間は突然終わりを告げる。

上杉さんは私の肩から手を離し私の涙を拭った。

 

「……大丈夫か四葉」

「あはは……」

 

私は観覧車の中で泣いていた。

 

 

 

私と上杉さんの最初のデートで、私は失敗ばかりだ。

観覧車の中で私は再び思う。

4つ目の失敗は大事な場面で泣いてしまったこと。

この場の雰囲気を、上杉さんの勇気を、私の1番の楽しみを全て壊してしまった。

なんで泣いてしまったのかはわからない。

幸せな気持ちに嘘はないのに。それなのに……。

観覧車は無慈悲にも降りていく。私たちを待ってはくれない。

大切な時間は壊れ、過ぎる。

それでも私たちに会話はない。

無言。

さっきまでとは違う嫌な無言。

上杉さんは私が泣いた理由を聞きたいかもしれない。

それでも何も言わない。いや、言わないで待っててくれている。

これが私のために考えた答えなんだろう。上杉さんの優しさだ。

しかし、私の答えは出ないまま観覧車は止まった。

係員の人が退出を促す。それと同時に上杉さんは私に目で確認をする。

私はやっぱり声が出ない。このまま今日のデートは終わるかもしれない。

でも本当にそれでいいのだろうか。

ふと4人のことが頭に浮かんだ。

一花と五月は言っていた。

「私たちの分まで幸せに」と。

二玖と三玖は言っていた。

「幸せにならなきゃ許さない」と。

自分が不甲斐ない。4人は悔しくて悲しい気持ちを抑えて私を応援してくれたのに。

それなのに私は、このままデートを終わらせていいのだろうか。

いいはずがない。終われない。

私は決心した。

何か言わなきゃ。上杉さんに言わなきゃ。

そう思うと心が軽くなった気がした。

みんなが私に勇気をくれたのかもしれない。

だから意を決して私は言う。

 

「係員さん、もう一周だけお願いします!」

 

 

再び観覧車は上に向かって動き出した。

ゆったりとだけども確実に。

私は上杉さんを見つめた。

上杉さんと目が合う。でも上杉さんは何も言わない。ずっと待っててくれている。

だから、私が言わなきゃ。言わなきゃ。言わなきゃ。

 

「う、上杉さん」

「どうした」

 

優しい声で上杉さんが言った。

私はその声を聞いただけで心が軽くなる。

やっぱり私は上杉さんが好きだ。これは自信じゃなくて確信。誰に邪魔されても揺らがない私の大切な気持ち。

それを上杉さんに伝えたい。

 

「私、上杉さんが好きです」

「俺もお前が好きだ」

 

温かい言葉が心に染みる。上杉さんの言葉が私を幸せにする。

もし、私にも上杉さんを幸せにできる言葉があるのなら、その言葉を掛けてあげたい。

だから私は言葉をつむぐ。

 

「さっきはすいませんでした。突然泣いて変な空気にしてしまって」

「ああ」

「それに、その前も急にキスをせがんだりとかいじけちゃったりとか」

「別に気にしてない。ただし遅刻は気を付けろよ」

「は、はい。ごめんなさい」

「でもまあ今日のことは水に流して、明日からまたちょっとずつ歩いていけばいい。その、なんだ、ふ、2人で寄り添い合いながら……」

 

やっぱり上杉さんは優しい。優しく私を包んでくれる。私はその優しさに甘えてばかりだ。

でも今日はこれで終わりたくない。私は私の楽しみを諦めたくない。

 

「上杉さん目瞑ってください」

「目瞑れって、まさかお前キス……」

「いいから早く早く」

「お、おい、まだ心の準備が……」

 

もう少しで観覧車は頂上に行く。あと少し。

私は上杉さんの肩に手を置いて顔を近づける。

今度は泣きませんように。

そう願いながら顔を近づけていく。

上杉さんの鼻息を感じる。上杉さんも私の鼻息を感じているかもしれない。

やっぱり2回目でもこの距離は恥ずかしい。

上杉さんはどう思っているのだろう。

一緒にドキドキしてくれてたらいいな。

そう思いながら、私は唇を上杉さんの唇に重ねる。

 

 

「上杉さん、帰りましょうか」

 

私たちは観覧車から出ると、手を繋いで歩き始めた。2人で寄り添い合うように。




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