最初のデートが風太郎の場合   作:鱸のポワレ

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最初のデートが五月の場合①

俺、上杉風太郎は、林間学校の最終日に五つ子全員から告白をされた。そして、俺はその中から五月を選び、恋人同士となったのだった。

 

 

それから1週間後。

俺たちの記念すべき初デートは、五月の提案によって動き出した。

待ち合わせ場所は、中野家の近くの公園と前日に言われていたが俺はどこに行くかは知らされていない。

俺が公園に到着してから約5分後、とびっきりのオシャレをして来た、……ようには見えない五月がやってきた。

五月の服装は、下はダボダボなズボンで上はトレーナー。色合いも灰色と茶色で地味だ。

もうちょいデート感を出してはもらえないだろうか。

あえて軽い感じの服装で行こうとか考えてた自分が恥ずかしいから。

五月の服をマジマジと見ていると、五月も恥ずかしく思ったのか少し顔を赤らめた。

 

「な、なんですか、そんなに見ないでください。早く行きますよ」

 

そう言うと五月は1人で歩き出してしまった。

俺まだどこ行くのか聞いてないんだけど……。

 

「行くますよ上杉君!」

 

行き先がわからなくてもこれだけは言える。張り切っている五月は可愛い。

 

 

どうやら目的地は割と近場らしく、五月がスマホを調べながら歩いて向った。

それから数十分歩いただろうか、五月が急に立ち止まった。

 

「ここです上杉君」

 

外装が明るく、若い人が好きそうな雰囲気の店だ。まあ、俺も若いが。

 

「なになに、ケーキ屋すまいる?」

「おいしいって噂なんですよ!」

 

看板を指差しながら五月は言った。

看板には「ケーキバイキングでスマイルに!ケーキ屋すまいる」と書かれている。

なるほどケーキ屋か。

俺に事前に言ってなかった割には意外性のない場所のような……。

他にも看板には、テレビ取材があったことや名物メニューなどが書かれている。

 

「なになに、名物メニューのメガモンブラン……」

「……」

「おい五月」

「な、なんでしょう」

 

五月は、俺に全く目を合わせず冷や汗をタラタラ掻いている。

 

「もしかして食べるのか?」

「え、ええ」

「まだ朝の8時だぞ」

「一緒に頑張りましょう!」

「でも協力禁止って書いて……」

「当たり前じゃないですか。お互いに頑張ろうって意味です」

 

「ルールは守ります」と五月は少し怒り気味に言った。

いやなんでだよ。俺が悪いのか?

五月が早く食べたいと急かしてくるが、落ち着いてもう1度看板を見る。

ケーキ屋すまいる看板メニュー『メガモンブラン』。

総重量2キロ。6000キロカロリー越え。

値段は3000円。ただし30分以内に食べきれば無料。

食べ切れるか!

ここまでくると根本から勘違いをしている気がする。

 

「なあ五月。俺たちって付き合ってるよな?」

「え、ええ」

「今日はデートだよな?」

「まあ、デートとと言えばデートかもしれないですね」

「かもしれない?」

「ええ。いわゆるデートとは目的は違えど、一応2人きりで出かけているわけですしね」

「目的は違うってまさか……」

「もちろんこのモンブランが目的です!!」

「まじかよ……」

 

こうして俺たちの初デート(?)が始まった。

 

 

店員が両手で大きなお皿を運んでくる。乗っているのはもちろんメガモンブランとやらだ。

実物を見て俺はあらためてげっそりした。

思った通りでかい。食べきれる自信がないぞこれは。

でも30分で食べなくては。3000円も無駄にできない!

 

「それではスタートでーす」

 

ゆるっとした雰囲気の店員さんの合図でチャレンジがスタートする。

ここから30分の長い戦いだ。

 

「ではいただきましょうか上杉君」

「ああ。いただきます」

「いただきます」

 

フォークですくいあげて口にモンブランを運ぶ。

栗の風味が口の中いっぱいに広がって美味しいな、なんて思いながら横を見る。

五月も満足そうな顔をしてモンブランを頬張っていた。

満足ならそれでいいか。

なんて気持ちになるわけがなかった。

なんだよ彼女との初デートがメガモンブランって!

ていうかこれデートなのか?

だれか『デート中』ってテロップ貼り付けてくれ。

そうでもしなきゃただの大食い友達にしか見えない……。

俺は心の中で暴れながらモンブランをむさぼった。

そして30分間食べ続け、……られなかった。

というかまだ開始から10分しか経っていない。

それなのにもう手が動かなかった。

まだ4分の3ぐらい残ってるぞこれ……。

対する五月は、なんとのこり半分くらいまで減っていた。しかもまだ幸せそうに食べている。

バケモンだこの人……。

食べている時は真剣そのもので、話をするような雰囲気ではなかったが、突然何か言いたげに五月が俺を見た。

 

「どうした?」

「私は味変のためにカレーを頼みますが、上杉君はどうしますか?」

「え?追加注文すんの?」

「ええ。何かおかしなことでも?」

「いや……」

 

カレーは飲み物とはこういうことなんだろうか、と思いつつ再び俺は手を動かす。

それからまた10分が経過すると、五月はほとんど食べ終わっており名残惜しそうにモンブランを見つめていた。

対する俺は、さっきからほとんど減らないモンブランを睨みつける。

残り10分か……。3000円は惜しいがここは、

 

「ギブアップだ」

「え、まだ全然食べてないじゃないですか!」

「もういい。3000円は諦める」

「そ、そうですか」

 

五月はそわそわしながら言った。

これはつまり、そういうことだろう。

 

「もう俺は食えないから食べていいぞ五月」

「そ、そこまで言うならしょうがないですね」

 

目を輝かせながら五月はそういうと、食べ始めた時のペースに戻しとりあえずといった感じに自分の分を平らげた。

それからさらに10分が経ったころには、モンブランは綺麗になくなっていた。

結局五月はカレー1皿とメガモンブラン約1.7個を完食したのだった。

ちなみに俺の分も半分以上食べたということでお金も半分払ってもらった。

ああ、俺の3000円。1500円で済んでよかったなあ。

感慨深く1500円を払い、俺たちは店の外に出た。

 

「今日は付き合っていただきありがとうございました」

「いや、こっちこそ悪かったな半分払ってもらって」

「いえいえ。では、今日はこれで」

「ああ。じゃあまた」

 

そう言って俺たちは別れていった。

って、ちょっと待て。

今日は記念すべき初デートのはずだったよな。

それがいつの間にか大食い企画に変わったんだ。

このままじゃ終われない。

その思いが俺を自然と動かした。

 

「ちょっと待て五月」

「何か?」

「午前中はそっちに付き合ったんだ。午後は俺に付き合ってくれないか?」

「もしかしてお昼ご飯ですか?行きましょう!」

 

目を輝かせながら五月は言った。

まだ食べれるのかこいつ……。

だがもちろんお昼ご飯ではなく、俺は普通にデートをしたいだけだった。

 

「普通に映画でも行かないか?」

「映画ですか……」

 

あからさまに五月はガッカリする。

……俺と映画観るのそんなに嫌なのか。

だが俺はめげない。

 

「ほら、映画観にポップコーンとかもあるだろ」

「ポップコーンですか……」

「だ、だめか?」

「行きましょう!」

 

こうして俺たちの初デートは今から始まった。

『今から』ってとこが大事だ。今からだからな?

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