ぼっちとは何なのか。
「えー、わかんないーい」と答えるパリピなお猿さんもいるだろうし、「辞書で調べろ」と答える一件頭良さそうでバカな奴もいるかもしれない。辞書に載ってるわけないじゃん……。
ちなみに答えは単純明快、俺のことである。
中学生の時、「俺マジぼっちなんだよね」と言っている奴がいた。どこの学校にもいるであろう自称ぼっちだか、俺から言わせればそんなの雑魚だ。だって自慢する相手がいるじゃん?なんなら言葉発してるじゃん?ちなみに中3で俺が言った言葉は、初日の休み時間に……
「ねえ君、LINE交換しない?」
「ひゃい!!」
「え、キモ……。やっぱいいや」
この、「ひゃい!!」だけである。……ひどくない?キモって。頑張って返事したんだよ?確かにキモかったかもしれないが。
まあそんな話はさておき、つまりのところ俺が言いたいのは、神ってすごいよねってことだ。え?いきなりなんの話かって?
神は見ていた、俺という低スペック人間の16年間の生き様を。そして思った。「こいつこのままじゃかわいそうやん!」って。だからあたえてくれたんだ、この、時間停止能力を。神様ありがとうございます。
さて突然だがここで問題、テレン!
ある部屋の隅っこに陰キャが座っている。無論俺のことだ。このある部屋というのは、不死原って奴の部屋だ。
不死原光。非常に整った顔をしている。その顔にマッチした栗色の髪の毛。
100人中100人が間違いなく可愛いと答えるだろう。
ちなみに俺は、100人中50人ぐらいが普通と答えるような顔をしている。残りの50人はなんて答えるかって?聞くなよ……。
不死原は幼なじみだから、俺が部屋にあがっていてもおかしくないかもしれない。しかし、家は隣同士で幼稚園から始まり、小学校、中学校、高校と同じ場所に通う俺たちだが、小学校までは一緒に学校へ通い仲良くしていたものの、中学生になりクラスでからかわれてからはろくに話していなかった。昔は光と闇の仲良しコンビって言われてたんだよ?ちなみに俺の下の名前は、影と書いてえいと読む。いつの間にか、片方はクラスの人気者で片方はクラスの「あっ、いたんだキモ」って言われる人だ。本当に光と影ですね。泣いていい?ぐすん。
そんな奴の部屋に俺は呼ばれた訳だ。では、今陰キャぼっちは何を思っているでしょう。正解は……
「神死ね!!」
「え?どうした?」
ちょうど飲み物を取りに行っていた不死原が帰ってきた。べ、別に恥ずかしくなんかないんだからね。
……恥ずかしい。死にたい。
「まぁ、キモいのは昔からか」
「え?キモいって言った?もしかして中3の黒歴史思い出させようとしてる?」
「何よ黒歴史って。そんなことより久しぶりだねこうやって話すの」
おい今そんなことよりって言っただろ、と文句でも言ってやろうかと思ったが言葉が出なかった。不死原の笑顔を不意に可愛いと思ってしまったからだ。
なにこれ惚れちゃう。
よく考えれば自分の部屋に上げて笑顔で話しかけるって俺のこと好きなんじゃね。
どうしよう告白しようかな。そうそう、告白といえば中2の時同じような、……おっとこれは思い出しちゃいけないやつだったぜ。あれ、涙が。
「え、なに泣いてんの?」
「いや、なんでもない。ぐすん」
「はい、ティッシュ」
「あ、ありがとう。いいとこあるんだな」
「これぐらい当たり前じゃない?」
「そうか?」
やっぱ惚れちゃう。これが両思いのリア充か。最高。俺はつい不死原をじっと見つめてしまう。彼女はそれを真面目な話をするためだと思ったらしく真顔で俺を見つめ返す。集中しているためか右手で左腕の肩をギュッと握る癖が出ていた。幼少期の頃からの癖だ。
「それで?不死原はなんでわざわざ部屋に俺を呼んだんだ?」
「いやいやいや!分かってるでしょ。昨日の変な現象のことに決まってんじゃん」
「やっぱりか」
昨日の変な現象というのは、時間停止能力のことである。と言ってもこの能力を俺が知ったのも昨日なのだが。ちょっと回想はいりまーす。
ということで昨日の昼頃、俺は家で1人ゲームをしていた。
え?学校でぼっちなのに家でも1人なのかって?フッ、くだらん。答える必要あるかそれ?
……ぼっちです。
だって妹が遊んでくれないんだもん。まああれだな、中学生だしそういう時期なんだろう。たぶん。またいつか遊んでくれるよね?
まあ、そんなことを考えつつゲームを進めていくと
突然テレビゲームが光り出し、電源が勝手にoffになってしまった。ちなみにあと少しでクッパ城着きそうだったのに。また三面からじゃん。
「ごめんねー、ゲーム止めちゃって」
「本当だよ全く……ってあなた誰ですか!?」
チャラい見た目の男が俺の隣に座っていた。
「神でーす。キラン」
「キラン、じゃなくて。は?どっから入ったんだ?」
「ゲーム機から」
「いやいやいや、意味が……」
「まあまあ、落ち着いて」
突然現れた自分のことを神と呼んでいるやつを信じる人はいるだろうか。デスノートでもあれば信じるが。そしたら、これまで俺をバカにしてた奴を全員殺してやるんだが。あれ?クラスメイトが一人もいなくなっちゃう。
「僕のこと信じてないでしょ?じゃあさじゃあさ、神の能力見ちゃうー?」
「能力?」
「えーと例えば、せい!」
ポンっと何かの蓋が外れたような音が鳴り、目の前に大量のベイブレードが現れる。いやなんでベイブレードなん。
「どう?すごいっしょ?信じたっしょ?」
「はあ」
「うわ、引いてるねー。ていうかさ本題入っていい?」
神とやらは面倒くさくなったと言わんばかりにあくびをする。
「えっとねー。君ってほらすごい陰キャだし低スペックじゃん?普通の人だったらもう自殺してるよチミ」
「え?」
「だからさ僕も君を初めて見たとき、こいつこのままじゃかわいそうやん!って思ったわけよ。そこでだよ安生くん」
あ、本名安生影です。どうも。
「君に特殊能力をあげちゃおうって思ったんだ僕」
「特殊能力?」
それって、透明になって女子更衣室を覗いたり、時間を止めて女子更衣室を覗いたりできるやつだろうか。あれ?なんでどっちもやること同じなの?なんで女子更衣室覗いちゃってんの?
まあでも、ちゃんと男の子に育ってるな俺。母さんも泣いて喜ぶかもしれない。……いや別の意味で泣くか。
「で、気になるその特殊能力だけど、なななーんと時間停止能力をあげちゃいまーす」
「明日は3組が体育だな」
「ん?どしたどした?」
「べ、別に怪しいことはなにも……」
「うわー分かりやすいね。覗きでもしようと思ったんでしょ?」
「な、なんのことでしょう」
「でもリアルな話さーダメだよそういうの。神が能力あげて犯罪に協力とかありえないっしょ?即逮捕だよ」
「ええっ?」
俺の桃源郷(と書いて女子更衣室と読む)が……。
「じゃあ細かい説明行くよ?能力にもいろんな制限があるからね」
「はあ」
「こうして俺は時間停止能力を手に入れた訳だ」
「本当に言ってんのそれ?ってまあ実際私もその力を経験してるわけだしなー。信じるしかないか」
「分かってくれると助かる」
「それで?細かい制限って何なの?」
昨日、頭の中で下着姿の女子高生を思い浮かべながら聞いていて話を思い出す。ちなみにその中に不死原も入っていたため、なんか罪悪感がある。
「ええっと確か、使える回数と巻き込まれる人と一度に止められる時間があるらしい」
噛まずに言えた。俺偉い。ちゅかえるかいしゅうとか言っちゃったらどうしようかと思ったわ全く。
「使える回数は全部で15回で、昨日そのうちの3回使った」
「ええ!じゃああと12回しか止められないの?」
「まあそうだな」
「もったいな!」
いやしょうがないじゃん。男の子だよ?特殊能力とかテンション上がってムダに使っちゃうでしょ。まあ恥ずかしいから不死原には言わないが。
「次に巻き込まれる人だが、俺が時間を止めたときに近くにいる奴も動けるらしい」
「なるほど。だから昨日私も動けたんだね」
「その通り」
実は昨日、家でこの能力を試しているときに不死原を巻き込んでしまったのだ。家が隣同士でお互いの部屋が1mしか離れていないため仕方がない。俺は悪くない。
「まじで驚いたよあのとき」
「すいませんでした!!」
陽キャには勝てない。これ絶対。
「まあいいよ別に」
簡単に許してくれる優しさ、さすがクラスの人気者だ。それとも俺が好きなのか?そうに違いない。
「それで?最後の一度に止められる時間ってのは?」
「そのままだ。一度に止められる時間は3分って決められている」
「でも時間を止めてるときは時計も止まるから3分って分かんないよね」
「は?時間止めてる間は、視界の右上に残り時間が出てくるんだよ。無かった?」
「私が巻き込まれたときは無かったよ?」
「じゃあ俺にしか時間は見えないのか」
「なるほど」
コクコクと頷く不死原。超可愛い。不死原と結婚したい。
「え?無理」
声に出してたらしい。よし死のう。
「だってまだ私たち高校生じゃん。せめて影が働いて収入が入るようにならなきゃ」
「え?」
「ままっ、まって今のは間違えただけだから!」
そう言って顔を赤くしながら否定しだした。
これもうほぼOKなんじゃね?なら俺の答えは一つだ!
「いやこっちが無理だから」
「は?」
「なんで俺が不死原を養うわけ?俺、働く気ねえから。俺のモットーは『ニートは三文の得』だから」
「ウヘェ」
「なんだその顔」
「別にぃ」
不死原の目が完全に死んでいた。まるで夏休み最終日の俺みたいな目だ。
まじで最終日キツくない?「ああ、明日からまた学校か。はぁ」ってなるよね?
そんなことを妄想している間に不死原は完全目に輝きを取り戻していた。さすが陽キャ、回復スピードも半端ない。
「それでさ影。相談なんだけど」
「ん?なんだ」
バンっとテーブルを叩き、不死原は前のめりになる。可愛いし近いし可愛い。
「私と部活やらない?」
「え?めんどい」
いくら可愛い幼なじみに誘われても、やりたくないことはやりたくない。こういう頑固なところは陰キャの良いところでもあり悪いところでもある。2:8ってとこかな。ほとんど悪い。
「え?なんでぇー、影と楽しく部活したいのになぁ」
「やります。やりましょう」
頑固?そんなのくそくらえだ。可愛いが正義。
「でもなんの部活をやるんだ?」
「ボランティア部だよ。影の力も使えそうでしょ?」
「やっぱりめんどくさいしやめよ……」
「あと、昔みたいに、……光って呼んでくれたらうれしいな」
「頑張ろうな光!」
元気いっぱいに返事をしてしまう俺。
仕方ないじゃん可愛いんだもん。
感想、お気に入り、評価お願いします。