マンションの地下駐車場―その一角にあるエレベーターには、長さ5センチ程の刺し傷が無数に付けられていた。ここには、ついさっきまで月のように白い刃が刺さっていたが、その主が力を失ったので、消失したのだ。
ボタンの上の数字が、最上階から一つずつカウントダウンを始める。やがてB1と表示されると、エレベーターは静かに開いた。淡い光の中から、両脇に五航戦を抱えた浜岡が現れる。
ゆっくりとタクシーの方へ向かうも、その足は途中で止まった。ここへ来たときにはなかった黒塗りのワーゲンバスが横付けされていた。ドアが開くと、黒と灰色の重厚な軍服に身を包んだ女性が降りてくる。
「Guten Abend. 凄い恰好ね」
「ビスマルク、何故ここに?」
「心配して来てあげたのよ、悪い?」
「いいや、別に…」
どうしてマンションにいると分かったのか気になったが、空母艦娘を二人も抱えているのが流石に辛くなってきた。
「とりあえず、この娘等を車に乗せていいか?」
「それなら私たちのワーゲンに乗せればいいじゃない」
パチンと指を鳴らすと、運転席から、大きなリボンを着けたブロンドヘアの少女が出てくる。ビスマルクとは違い、白と黒の軽そうな軍服を纏っていた。どう見ても運転免許を取れる年頃ではなさそうな幼い顔立ちと体躯をしているが、その鋭い眼差しは、幾度も戦場を潜り抜けてきたことを物語っていた。
「この娘も、やはり」
「ええ、日本でいう『艦娘』よ。そして私の優秀な部下、Nalvikよ」
紹介されて、少女は敬礼する。浜岡も反射的に敬礼してしまった。
(ナルヴィク…聞いたことのない名前だな)
疑問に思っていると、ビスマルクが話し掛ける。
「その娘たち、私たちが村の外まで送ってあげるわ」
ナルヴィックは浜岡に寄ると、やや強引に瑞鶴と翔鶴を預かって、軽々と担いで黒塗りの車に片付けてしまった。そのパワーに驚くも、少し異様なものを感じ取った。
気が付くと、ビスマルクは浜岡の顔をじっと見つめていた。
「それで、何か分かった事はあったかしら?」
その声は子供の自由研究を見守る親のようだった。
「ああ、奴等はこの村で仲間を増やそうとしているらしい―」
そこまで言って、ポケットにしまった二つの髪飾りを出して見せる。
「これを艦娘の頭に刺すと、洗脳して妖精の力を借りずに艤装を意のままに操れるようになるらしい。それによってリミッターが外れ、艦娘でありながら殺人マシーンになれるって話だ」
「ちゃんと回収していたのね。提督としては当然だけど…。それ、片方貰っていいかしら」
浜岡は髪飾りの赤い方―瑞鶴が着けたものを手渡した。また指を鳴らして、ナルヴィックを呼び出す。少女は受け取ると、彼女とドイツ語で言葉を交わし、敬礼して車に戻った。
「それで、翔鶴から何か聞いたの?なぜこの事件を起こすのかは訊いたでしょう?」
「そこだ…奴は確か『戦争できる艦娘が世界中に拡がって、艦娘が再び使命を取り戻す』とか言っていたな。それを『生きる意味』と言っていたが。私は断固としてそうは思わない」
「なるほどなるほど。それで、あなたは『艦娘の生き甲斐は戦うこと、と狂信している艦娘たちが、戦争を起こすためのテロを実行した』と考えているのかしら?」
「ああ。だから、次に狙われるのは恐らく自衛隊か在日米軍か…どちらにせよ、何とかしてこれを食い止めなければならない。しかし黒幕はこの角を作った艦娘だろうな。それは教えてくれなかったよ。この村に来ているかは知らないが、ソイツを止めない限り、艦娘を発端とする戦争が起きる」
ビスマルクは暫し煙草を灯すと、正面から浜岡の両肩に手を置いた。
「浅いわよ、あなた」
「え…?」
思わず拍子の抜けた声が出てしまった。彼女は生徒を諭す先生のような目で浜岡を見つめる。
「いい?あなた、大きな勘違いをしているわ。だからこのBismarckの見込みを教えてあげる。そもそも、艦娘が戦争したいと願っているのなら、なぜ真っ先にこの村を狙った?戦争沙汰にしたいのなら、最初に海外の軍事施設や都市部、何なら大統領を襲ったほうが効果的よ。何より、こんな秘境で、さらにあの日ともに深海棲艦と戦った仲間達を手にかける事があり得ないわ。艦娘ってねぇ、あなたが思うよりお互い深く繋がっているの。艦娘として生まれ変わるより遥か昔の記憶に、私達は強く縛られているのだから…」
確かに、美舩村を襲っても大きな戦争には発展しにくい。自衛隊や海外の軍隊にいる艦娘を狙った方が、世界を混乱に貶めやすい。
「そもそも、あなたは翔鶴の言ってる事が『真実』だと思うの?」
「だったらなんで―」
「私があなたならこう考えるわ。角の作者、つまり『人間』が私たちを真実から遠ざける為に、角で操って『デタラメを言わせた』、とね」
浜岡は耳を疑った。なぜ、人間が艦娘のために戦争を起こしてやるのか、分からなかった。
「戦争って金になるものよ?実際、この国は深海棲艦と戦っていた間、艦娘が少なかったり強い艦娘に邂逅していない国に、高額で艦娘を貸し出して何百兆も手に入れたわ。日本は『艦娘大国』と言われるくらい、様々な種類の艦娘が邂逅されたもの」
その話は浜岡も知っていた。「艦娘派遣協力費」や「艦娘研究開発費」という名目で、深海棲艦に沿岸まで侵略されていた国々は、仕方なくその金を払っていた。
「けれど、今やもう深海棲艦はいないわ。全滅したもの。さあ、そこで軍艦よりも遥かにコストの低い艦娘を、人間が『有効利用』しない手はなくって?…そうそう、あなたは知らないかもしれないけど…人間を攻撃できる艦娘の研究―つまり軍事利用化の研究は、世界中の艦娘保有国で何年も前から始められていたわ。特に日独伊はね。ここまで言ってもまだ分からないかしら?」
艦娘が必至で守ってきた人間に、バケモノだと恩を仇で返され、さらに彼女等が固く守り続けてきた信念をも踏み潰させられるとは―浜岡はいつの間にか、目を見開いていた
「結局、人間にとって、艦娘は終始『都合のいい奴隷』でしかなかったんだな」
彼の言葉に、彼女は溜め息を吐いた。それはどこか諦めの表情にも見える。そして、徐に重厚な軍服を、どこか虚ろな目で撫でた。
「私だって、そうよ」
いきなりの言葉に首を傾げる。車の窓から、少女が顔だけ出したが、直ぐに引っ込めた。
「………私は戦後、『黒鉄協会(Schwarzeseisen)』という軍事企業に移籍させられたの。そこで艤装の改造を受けて、彼奴等と同じように、人間を殺傷できる―戦争できるバケモノになったのよ。『深海棲艦と融合する』という、禁断の手段を使ってね」
「何だってッ⁉」
確認するように彼女を見回す。艤装も彼等のような禍々しい姿をしていない。
「私は、戦艦Bismarckと戦艦水鬼のハイブリッドよ。でも混ぜただけだと、深海棲艦の力が強すぎて、結果的にただの深海棲艦になってしまうわ―そこでこの特殊軍服が、私を深海棲艦になって暴走するのを、一歩手前で止めているの。つまり私は理性を保った深海棲艦という事になるわ………何が言いたいか、理解できたかしら?」
それを聞いて茫然と立ち尽くす他なかった。
「人間は欲望の為なら手段を択ばない生き物よ。金を得る為に、生き甲斐を失った艦娘を利用して戦争をさせるの。兎に角、その黒幕を叩かなければいけないわ。何はともあれ、しっかり調べてみましょう?」
彼女はほんの少し笑み、浜岡の肩を叩いた。
「そうそう、この村には弾薬庫や溶鉱炉、入渠ドックまであるらしいわ。いつ深海棲艦が復活してもいいように準備していたのか、それとも―」
「ああ。考えたくはないが―」
「あなた、さっき言った役場には行ったのかしら?」
「いや、まだだ」
「そう。なら先にそこへ立ち寄ってから、黒幕を探しなさい。私の予想通りそれが人間だったら……………あなただけで倒すのよ」
お互いの顔が険しくなる。
「もしそうだとしたら、普通の艦娘は手も足も出せない………覚悟が要るな」
ビスマルクは深く頷いた。
「Auf jeden Regen folgt auch Sonnenschein. 明けない夜はないわ。では武運長久を、Auf Wiedersehen.」
そう言ってドアを閉めようとする。しかし浜岡が制止した。
「一つ、訊かせてくれ」
「…何かしら?」
「君は命令されれば…今まで守っていた人々を…その砲で葬るのか?」
「………………………………………艦娘は人間に逆らえない、今までも、これからも…」
それだけ言い残して、ドアを閉める。軽く手を挙げると、少女はワーゲンを発進させた。外の街灯に照らされたそれは、低く唸りながら小さくなっていった。
浜岡はタクシーに乗り込むと、翔鶴を乗っ取っていた髪飾りを見る。それ助手席に置くと、エンジンを回して勢いよく飛び出した。
(村長、無事だといいのだが…)
静になった通りを、浜岡は一人、翔け抜けて行く。車内には、ラベンダーの香りが漂っていた。
美船村役場―施設にしては小さい二階建てで、旧帝国海軍を彷彿とさせる赤煉瓦で造られた建物だ。屋上には特徴的なパラボラアンテナが設置されている。此処では、鎮守府の任務受付嬢だった大淀を含む少数の艦娘が務めており、美舩村の管理を行っていた。また、ここは、この村の住人で唯一の人間である村長の住居でもある。
灯りの消えた村役場に、浜岡は車を止める。降りて役場を見上げて、絶句した。
(敵が、此処まで来ているッ⁉)
役場の二階の一部が無くなっている。それは、艦娘の砲撃、艦載機の爆撃では到底実現できないような力で、強引に抉り取られていた。断面の煉瓦は高熱で溶けて、それが付き抜けて行ったであろう方向に氷柱となって伸びている。何か電子機器が設置されていたのか、時折パチパチと音を立てて火花が散らせた。
「本当に生存者なんているのか?」
帯刀したまま懐中電灯を片手に、独り言を呟きながら扉を開ける。まず、古い学校のように左右に、事務室があった。覗いてみると、教室のように椅子と机が並び、黒板まであるのが分かる。廊下を進んで正面の柱に、案内板があった。照らして文字列を上から順に確かめて行く。
〝…会議室…一階東………………村長室…二階〟
階段を上がって直ぐ、『村長執務室』と書かれた両開きの扉を見つける。開けてみると、懐かしい光景が拡がっていた。
「鎮守府の執務室か」
広い部屋の真ん中に、金縁に深紅の布が掛けられた机と椅子がある。壁には本棚があり、烈風のポスターが飾られている。
争った形跡も無く、村長たちは既に避難したようだ。ふと机の上のパソコンに目がいく。
「………………」
画面はまだ点いたままで、何か文章が表示されている。メールのようだ。椅子に腰かけて見る。
“カチューシャの配布完了を確認。1500に計画を実行して下さい 美舩村村長”
メールの送信先を確認する。そこには『レッドアジュア 上須賀司令』と記されていた。
「待てよ……つまり、村長は、迫害された艦娘たちを救う為じゃあなく、多くの艦娘を感染させて、戦争させて金を儲ける為にこの村を作ったのかッ⁉……艦娘たちは、何も知らずに―‼」
これで黒幕は『人間』であるとハッキリした。Bismarckの言っていた事が日本でも起きようとしているのだ。さらに浜岡は怒りで手が震えていることに気付いた。
何か他に手掛かりがないか、とパソコンを操作しようとすると、画面が消えた。バッテリーが切れたのだ。
「クソッ」
パソコン乱暴に閉じる。証拠になりそうなので、浜岡はそれを持って行くことにした。
役場を出て、証拠品をタクシーのトランクにしまう。その時だった。
『パチパチパチ』
拍手の音にギョっとして振り向く。そこには一人の男がいた。
漆黒のロングコートに鉄黒のブーツ、相反して顔ぼんやりと白く、昆布のような長い若紫色の前髪が垂れて揺らめいていた。目は深海棲艦のように紫色に光っている。
「役場を調べるとは、いいセンスだな」
見た目の割には低すぎる声で言うと、口端を上げた。
「誰だッ!」
その殺気に満ちた瞳から、逃げ遅れた人ではないことぐらい直ぐに分かった。だとすれば―
「私はレッドアジュア艦隊司令、上須賀だ。久しぶりだな、浜岡櫂元中将」
その名前に、メールの発信者を思い出す。しかし、『久しぶりだな』という言葉に引っ掛かった。
「―なぜ俺の事を知っている」
すると、上須賀はクスッと笑った。
「ああ、直接会った事はなかったな…しかし、貴様には実験でかなり世話になった」
意味が分からず首を傾げる。それを無視して、ゆっくりと歩き始めた。
「オレは長年、深海棲艦の研究をしていた―」
※
浜岡の艦隊が全滅した翌日―。
パラオのとある鎮守府の執務室で、元帥らしい中年の男と、白衣を着た若い化学者が会談をしていた。するとそこに中将と見られる初老の男が電話を持って入ってきた。
「元帥殿、呉から連絡がありました。第203部隊は全滅しました」
「うむ。流石だ。引き続き呉からの連絡を待て」
「はッ。元帥殿」
初老の男は、一礼すると執務室を出て行った。
「さて、上須賀君。君の実験は大成功だ。よくやってくれた」
「お褒め戴き光栄です、古山元帥」
上須賀と呼ばれるその化学者が頭を垂れた。
「それにしても、日本は艦娘に恵まれていると思わんかね?」
そう言って元帥は葉巻に火をつけた。
「不思議なことに、艦娘は世界で最初に日本に現れ、艦種も一番豊富だ。その上、工廠の技術も世界トップクラスだ。それに、大和や赤城といった強力な艦娘も多くいる。海外でも戦艦や空母の艦娘は発見されてはいるが、殆どが駆逐艦で戦力も弱い。姫級や鬼級といった奴らには歯が立たなかった…」
葉巻で一服すると、話を続けた。
「そこで政府は艦娘の海外派遣を実施、見返りに『艦娘派遣協力費』や『艦娘研究開発費』と称して多額の金を請求した。私はあの政策を素晴らしいと評価するねぇ。深海棲艦に困窮していたアジアや欧州、アフリカ、オセアニア諸国は喜んで金を払った…」
元帥はまた一服した。
「大国どもは頑なに拒んでいたがねえ、それであのザマだ。ロシアは漁業が完全に廃れ、アメリカなんて内陸ですら旅客機を飛ばせられないそうじゃあないか。軍も手を出せずに、指をくわえて見ているだけだ。最近では陸上型の深海棲艦まで発生して、油田やらを占領しているんだって?」
「はい、左様でございます」
「ロシアもそろそろ、日本に艦娘派遣要請をしようかと考えているそうだ。一部の噂では、数千億で艦娘を購入とするとまで言われているじゃあないか」
ふぅーっ、と煙を吐くと、新海に向き直った。
「だからだよ上須賀君。深海棲艦というものはだね、大金の巾着袋なのだよ。そう簡単に全滅されては困るのだ。浜岡君のような、一騎当千の艦娘が何人も集まる艦隊には消えてもらわねばならん―分かるかね?」
彼はニヤリと笑った
「はい。この戦争はビジネス、そう捉えております。深海棲艦によって、この国はますます豊かになるでしょう」
その言葉に、元帥は満面の笑みで、深く頷く。
「そこで上須賀君。私は君を選んだのだ。今回の実験で、この判断は正しかったと確信している
よ」
「ありがたきお言葉、感謝致します。深海棲艦を研究する者としてこれほど嬉しい事はございません」
「君が深海棲艦を操る装置を開発したと聞いた時には耳を疑ってしまったよ」
「はい。操る…というより、艦隊を丸ごと『乗っ取った』のでございます」
「そうかそうか。私は深海棲艦や艦娘自体についてはよく分からんが、これからも期待しているよ?上須賀君」
葉巻を吸い終えると、元帥は新海の肩をポンと叩いて部屋を後にした。
※
「じゃ、じゃあ、佐世保事件は…海軍が…今度は…艦娘を操って…戦争をするのか?」
それを聞いて上須賀は鼻で嗤った。
「いいや、今起きていることに海軍は無関係だ。全てはオレ自身のためだ」
浜岡は、その手にハンドガンを構えていた。冷静さを完全に失っていた。
「艦娘は、人命を護るために命を捨てて戦ったんだ―深海棲艦に勝つより、一人でも多くの民衆を救う為に…それを…テメェは…テメェは…ふ…ふざけんじゃあねェェェェー!」
絶叫して引き金を引く。
「ッ⁉」
消えた。見回すも、どこにもいない。
「ここだよ」
ハッとして見上げる。上須賀は信号機の上にいた。
「貴様は、この世界を見届けたいかね?」
見下ろして、不敵に笑う。浜岡は直ぐに銃を構えて撃つ。だが、上須賀は地面に瞬間移動する。
『パン、パン、パン、パン』
また瞬間移動でかわされる。それは人間業ではあり得ない芸当に、浜岡は冷静さを失い恐怖に支配されていた。とうとう弾切れしてしまう。
視界から上須賀が消える、上にも、左右にもいない。
(つまり、背後ッ‼)
日向の太刀、その柄に手を添える。
『絶対に人は斬ってくれるなよ?こいつに人間の血を味あわせたくないからな』
日向の言葉が聞こえ、一弾指遅れた。
『ズシャァアアアアア‼』
勢い良く、貫かれた。腹部から、血塗られた小さな『錨』が突き出ている。
「血とは、魂だ」
耳元で冷たい声が囁いた。
「これは、とある艦娘の錨だ。そいつの魂を今、深海棲艦の持つウイルス―『Abyss Virus』によって貴様に注入した。たいていの人間は、このウイルスに耐えられず、生きる屍となる。しかし、適応すれば―」
上須賀は「フッ」と笑った。
「貴様も、オレの研究の実験台だ。アイツ等と同じように、な…。さて、あまり時間がないので、この辺にさせてもらうよ」
背中を小突かれ、浜岡はセミの抜け殻のように倒れた。
雨の中、道路の真ん中で、男が倒れていた。背中からは鋼鉄の『錨』が突き出ており、街灯の灯りを反射して光っていた……そこに、一本の腕が伸ばされた。
「……………」
黒い人影は、男の身体をひょいと抱え上げると、傍にあったタクシーの後部座席に寝かせた。
「……………」
他にも人影が現れ、男の持ち物を拾い上げて、皆それに乗り込む。
「……………」
やがて、タクシーはゆっくりと走り去った。雨音だけが、静かに路面に響いていた。