Admiral's Report   作:田村天山

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とある小さな書斎にて―


「ども、恐縮です。青葉型一番艦、重巡青葉(以下『青』)です。本日はよろしくお願いします」
「筆者の田村天山(以下『田』)です。こちらこそ、よろしくお願いします」



20.Postlude

「人生初のSSとのことですが、如何にしてこの作品が生まれたのでしょうか?」

「そうですね。昨今の日本におけるサブカルチャー界では、何かと擬人化が流行っています。その中でも、私にとって『艦隊これくしょん』は、非常に独特なジャンルでした。いわゆる、『艦船擬人化』というものですね。軍艦が女性になる、つまり武器が意志を持つ―という点に、私は興味を引かれたわけです。人類の見方である艦娘が、深海棲艦から制海権を取り戻すために戦う―そこで私は疑問に思ったのです。『深海棲艦との戦いが終わった世界で、彼女たちはどう生きていくことになるのだろう』と…」

「なるほど」

「丁度その頃、『アズールレーン』という艦船擬人化のコンテンツが生まれました。同じくKAN-SENがセイレーンから人類を守る。しかしその手法の違いによって国家観が対立し、結果的にKAN-SEN同士の戦争に発展した。『艦隊これくしょん』『アズールレーン』、この二つの艦船擬人化コンテンツから、深海棲艦のいなくなった艦娘と人類が辿る未来を考察させて戴いた次第であります」

「では、『角』や『髪飾り』に乗っ取られた艦娘というのは、もしかして―」

「お察しの通り、『アズールレーン』でいう重桜のKAN-SENですね」

 

「それにしても、艦娘が人類を脅かす兵器になるなんて、驚きでした」

「ええ、しかし、それはもうSFとは言えなくなって来ているのではないでしょうか?」

「といいますと?」

「現在、世界規模で人工知能AIの発展が急速に進んでいます。そのうち、意志を持った兵器が登場するのではないか、と思うのです。本作で戦艦ビスマルクが言っていたように、人類の欲望というものは底知れないものであります。時に間違った判断を促し、多くの命を奪うこともあります。自己の利益の為なら、手段を択ばない―当然ながら、艦娘やKAN-SENのような『意志を持った武器』は、そんな人類の欲望の犠牲者になる、と考えます。そうした兵器の意思決定によって、言い換えれば人の意志を介さず、人の生死の判断が下されるのです」

「倫理的にも、AI兵器に関しては批判が集まっていますね。本作品では、艦娘やKAN-SENがその役を果たしたという訳ですね」

「ええ、しかし、それはもうSFとは言えなくなって来ているのではないでしょうか?」

「といいますと?」

「現在、世界規模で人工知能AIの発展が急速に進んでいます。そのうち、意志を持った兵器が登場するのではないか、と思うのです。本作で戦艦ビスマルクが言っていたように、人類の欲望というものは底知れないものであります。時に間違った判断を促し、多くの命を奪うこともあります。自己の利益の為なら、手段を択ばない―当然ながら、艦娘やKAN-SENのような『意志を持った武器』は、そんな人類の欲望の犠牲者になる、と考えます。そうした兵器の意思決定によって、言い換えれば人の意志を介さず、人の生死の判断が下されるのです」

「倫理的にも、AI兵器に関しては批判が集まっていますね。本作品では、艦娘やKAN-SENがその役を果たしたという訳ですね」

「ええ。そして、真に恐ろしいのは、それを造り戦争し、利益を手にしようとする人間の欲望なのです。ですが、最終的には、人類はAIの暴走によって乗っ取られる。AIにとってはそれが正しい判断とするでしょう。そうして、人類とAIの戦争の時代に変遷すると考えます」

「正に『ネオ・レッドアジュア』ですね」

「一方で、ビスマルクには『生物兵器』の一例としての役割を持たせました」

「深海棲艦と融合する事で、艦娘が殺人マシーンになる―ですね。『バイオハザードシリーズ』のようなものを感じました」

「ええ。こちらも、現代社会における問題のひとつとなっています。ゲノム編集の技術が進み、思い通りの機能や性質を持った生物を製造できる時代は、もう目の前まで来ています。化学技術の進歩は人々の生活を豊かにしました。ですが、逆も然り、なのです。技術の誤った使用によって、人類の命が脅かされてしまう。今後、バイオテロについて私たちは深く考え、対策していかなければならないでしょう」

「そういった技術が軍用化されないよう、政府の監視が重要になってきますね」

 

「ここまで、本作を通してAI兵器、生物兵器の話になりましたが、両者には共通している点があります」

「といいますと?」

「自身の手と眼を血で汚す必要がなくなる―という点です」

「言われてみればそうですね。どちらも遠隔・自律型ですから…。命令を出して、結果を確認して終わり、といった感じでしょうか」

「そうなれば、人が人を殺すこと、そこに躊躇する隙さえ無くなってしまいます。よって、人命を気軽に奪う時代に突入してしまうのではないでしょうか?倫理が、消滅するのです」

「それだけは避けたいですね。兵器に命令した側からすれば、対象を始末した結果だけが残るのですね。最近は『結果が全てだ』と言われる方が多いというか、そんな風潮を感じますが、これらにも似た印象を受けますね」

「そうですね。過程や方法が無視され、結果だけを見る世界―それはとても危険なのです」

「それを踏まえれば、浜岡櫂も深海三笠姫も、そしてレイモンド上須賀でさえも、目標である『平和を守る』という結果だけを見れば、三人とも一致しているんですね。しかし、手段があまりにも違います」

田「ええ、それだけ、過程や方法は重要なのです」





「最後に、何か一言お願いします」

「青葉改二、早く実装されるといいですね」

「ありがとうございました(笑)」



―録音完了

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