浜岡櫂―。
彼は佐世保の港町に生まれた。両親は漁師を営んでおり、決して裕福ではないものの、幸せな環境で育てられた。自分もいつか父を超える漁師になるのだ、そう心に決めていた。
その最中、『深海棲艦』が発生した。
彼等は七つの海に同時多発的に発生、人間のような姿をとりながら、『艤装』によって軍艦に匹敵する力を有し、船舶を無差別に撃沈していった。海路と空路での物流も事実上不可能になり、世間では「某国の生物兵器」や「宇宙からの侵略者」などと様々な憶測が飛び交い、大混乱に陥った。
各国では直ちに軍隊が出動するも全く歯が立たず、日本でも毎日のように自衛隊の船舶と航空機が水底へと消えていった。戦争が始まってから3か月で米軍が停戦宣言、続けざまに中国やロシアまでもが対策を断念してしまった。一方の日本は、国民を深海棲艦から守り続けることを宣言、軍事的・化学的に対策を練り続けた。その頃、某大手IT企業が海底調査によって彼等が深海で生息していることを確認―『深海棲艦』と呼ぶようになったのはこの時からである。
彼等の強みはそのステルス性と耐久性である。イージス艦のレーダーでさえ探知できず、米軍のASM(空対艦ミサイル)を食らっても無傷だった。核弾道ミサイルにも耐えたというデータも存在した。このようにして、アリの如く湧き続ける深海棲艦に、全世界の制海権はあっという間に奪われてしまったのだ。
勿論、それは浜岡櫂とその家族にも影響した。両親は漁に出られず、生活は日に非に困窮していった。それを見かねた彼は海軍に入ることを決心、上京して防衛大学に入学した。
浜岡が入学して2年が経ったころ、日本やドイツなど、一部の国で『妖精』が発見された。発生経緯は謎に包まれているが、彼等はとある能力を持っていた―『艦娘』の建造である。護衛艦を造るよりもはるかに低コストで空母や戦艦を建造できた。そしてこれらは、深海棲艦に効果があった。それは奇妙なことに、深海棲艦と同じ人の姿をとり、更には艤装によって戦うところまでも同じであった。妖精によると、彼女たちは第二次世界大戦で活躍した軍艦の魂を有しているらしい。世間では、深海棲艦の発生原因が妖精であるといった批判も見られたが、日本政府は藁をも掴む思いで艦娘の大量生産と戦闘配備を命令、自衛隊とは独立した艦娘の軍―『日本軍』が誕生し、各地の沿岸に鎮守府が設置された。また撃沈した深海棲艦の一部が浄化されて艦娘になる事もあって、戦力が増強され日本軍は次々と制海権を奪還していった。
大学をいよいよ卒業するかという頃―深海棲艦の空母機動部隊が、佐世保鎮守府を襲撃した。海軍の大規模作戦中、防衛が手薄になっているところを突かれたのだ。市街地も流れ弾を受け、大勢の人が死に、不幸にも彼の両親もそこに含まれていた。これから親孝行ができると胸を高鳴らせていた彼にとって、これほど大きなショックはなかった。『深海棲艦を、必ず、この手で、駆逐する』―浜岡の中で、復習にも似た意志が燃え上がったのである。
卒業後、浜岡は佐世保鎮守府に配属され、第203部隊司令官として艦娘たちを指揮する事となった。
以来、彼は鬼のように深海棲艦を殲滅していった。『戦力絶対』『滅私訓練』『創意工夫』の精神のもと、彼の指揮する艦隊は数多の敵艦隊を撃破、彼は25歳の若さで一気に中将まで上りつめた。艦娘の練度も非常に高く、一人一人が一騎当千の猛者としてその名を馳せた。浜岡は深海棲艦を撲滅する事を第一とし、「艦娘は轟沈したら深海棲艦になる」との噂を聞けば、全ての艦娘に補強増設と応急修理要因の常時搭載を義務付けた。また、当時はオリョール海での『過労出撃』や、艦娘を特攻させる『捨て艦戦法』といった『ブラック鎮守府』が問題になっていたが、彼は艦隊運用の効率化に工夫を凝らし、過労を訴える者も少なく、戦果も上々で艦娘からも慕われていた。
一方で、その目覚ましい活躍をよく思わない提督も多かった。大本営が浜岡の部隊へ優先的に新装備を支給し、巨額の投資をしたからである。あらぬ噂を鎮守府に流すなど、嫌がらせは連日のように続いた。言うまでもなく、浜岡と彼の艦娘たちは、彼等を歯牙にも掛けなかった。こうして第203部隊はますます戦力を上げ、快進撃を続けた。
※
その日―佐世保の空に、薄雲が掛っていた。
レイテ沖での死闘の末、敵の大将『深海鶴棲姫』を撃破した浜岡の艦隊は、帰還の路についていた。他の作戦に当たっていた艦娘たちは先に帰投しており、ドックで傷を癒したり甘味処へスイーツを食べに行っている。と言っても鎮守府にいるのは浜岡の艦娘のみである。他の提督、そして彼等の艦娘たちは、大規模作戦の勝利を祝して慰安旅行に出かけていた。浜岡は勿論、『お留守番』である。行っても楽しめないことは承知の上、作戦海域周辺の残党艦を入念に探していた為に艦隊の引き上げが他より大幅に遅れていたのだ。
浜岡は朝から報告書を書きながら、無線機の前に座っている。
“Hey、提督ぅー!今日中に母港へ到着予定ネー!5 o'clock には間に合いマース!”
「了解、敵飛行場の破壊、そして敵空母機動部隊の撃破、皆ご苦労だった」
“ああ、ありがとう。それにしても、金剛が島に向かって三式弾を撃った時には、どうかしてしまったのかと思ったよ。まさかあんなに効果があったとはな…”
真っ先に返事をしたのは旗艦の長門だ。
“ワタシのsenseはピカイチデース!”
それを聞いた浜岡が微笑むも、ふと思い出したように、白手袋をした指を見つめる。左手の薬指には白銀の指輪が輝いていた。それは作戦前に配給されたもので、仕組みは知らされていないが艦娘の力を増幅させるものらしい。
「そうだ、金剛。この指輪のことなんだが…効果はあったのか?」
“うーん…いつもと変わりなかった気がしマース。いつもと同じデース!”
「そうか…」
彼女の言葉に浜岡がもう一度それを見つめる。
(明石によるとまだ試作品らしいが…失敗作なのか、それとも金剛のポテンシャルが高い為に効果が現れにくいのか…)
“金剛殿も流石じゃったが、筑摩も霧の中での奮闘もなかなかのものじゃったぞ!”
“ありがとう利根姉さん。帰ったら一杯やらないとね”
“これは鎮守府に帰ったら皆でお好み焼きパーティじゃね”
“ではお肉は神戸牛がいいですわ!”
“おっ、なら焼くのはこの磯風に任せてもらおう!”
“あなたがやったら炭の円盤になってしまいます”
“浜風、そこまで言わなくたっt―”
『ドンッ‼』
突然、浜岡が机を叩く。そして、怒鳴る。
「てめえら! 気ィ抜いてんじゃあねェ!」
無線が静まり返る。
「安全海域に入っても警戒を怠るな‼」
“わ、わかってるって~。お家に帰るまでが遠足じゃん?水偵もレーダーもバッチリだって!”
いつものような会話をしながら、浜岡は彼女たちの帰投を待っていた。
暫くして、再び無線の通知音が鳴る。浜岡は不思議そうな表を浮かべる。
「こちら浜岡。どうした?」
“しれー!榛名さんから緊急無線です!今つなぎます!”
声の主は雪風だ。いつもの能天気な声に不安が混じっている。榛名は作戦中に大破したため、野分と清霜の護衛のもとブルネイ泊地に寄港、修復を受けた後、金剛たちからは遅れて佐世保に向かっていた。
「もしもし、こちらh―」
“ききき緊急事態です!敵の空母艦隊に補足、奇襲されました!大丈夫じゃないです‼”
「何ィ⁉敵艦隊は殲滅されたはずだぞッ‼」
彼女の言葉に冷や汗が噴き出す。榛名が奇襲を受けた事ではない、別の何か―異様な雰囲気に悪寒を覚える。
「榛名、落ち着け。先ずは状況を教えてくれ」
“それは分かりませんが、敵……真っ直ぐn……ッ⁉…ザザザリザリザザァァ―”
「榛名ァ‼」
全身から力が抜ける、痺れる。
(今までのとは違う⁉)
深海棲艦が通信妨害を使うという前例は聞いたことがない。嫌な予感―それは不幸にも的中する。
“た、大変じゃー‼”
悲鳴のような割れた声が響く。
“どうしたの利根姉さん⁉”
“吾輩の水偵が敵の超大艦隊を発見したのじゃ!…空母…戦艦…潜水艦までおる!”
“数はいくつだ!”
普段は何にも動じない長門ですら動揺を隠しきれずにいる。
“暫し待たれよ…”
“ふむ…な…なん…じゃと…⁉”
“…利根姉さん?”
〝姫鬼級だけで、空母4、戦艦9、重巡13、軽巡6、駆逐34だ。そしてノーマルが空母17、軽空母18、戦艦12、重巡11、軽巡15、駆逐艦141、PTが約1500じゃ…〟
「何ィイ⁉」
気付けば浜岡は立ち上がっていた。
“…それに…すぐそこまで来ておる…………………吾輩たちの、真後ろじゃ”
(―馬鹿なッ⁉)
執務室の空気が凍る。浜岡の瞳孔が開く。
“ほげェエ⁉…うちのレーダーにはなぁんも映っとらんよ⁉”
“浦風さんの電探でも探知できないなんて…奴ら、一体どうやって―”
言い終わる前に、無線に噛みついて叫ぶ。
「逃げろ‼最大船速で‼何としても振り切るのだッ‼」
ただでさえ敵の本丸を撃破した帰りだ、弾も残り少ない、疲労も相当なものだ。彼女たちが奴等に勝てる可能性は―ゼロだ。その上、佐世保鎮守府にいるのは第203部隊のみ。戦力の差なんて赤子にでもわかるほどだ。だが、時間にはまだ余裕がある。
「今はこちらにいる艦娘では歯が立たない。俺は今から他の部隊と、岩川と鹿屋にも連絡をとる!今は友軍を待つしかないが、体制を整えて、敵艦隊は必ず倒すッ!お前たちは逃げ切る事だけを考えろッ‼」
“提督、それはできないネー”
その声は、非常に落ち着いていた。思考が停止する。
「なん…だって?」
“沖縄はどうするんですカー?”
「……沖縄?」
レイテ島と九州の間に位置する、沖縄県―かつて自衛隊基地や米軍基地が点在したが、深海棲艦の猛攻で壊滅。その跡地に日本軍の飛行場が、そして中城湾に小規模な泊地が設置された。人口は空襲で激減したが、その後に制海権を取り戻したことで、少しずつ回復していった。
「沖縄は……残念だが、手遅れだ。基地航空隊が総出でかかっても、数で押し負けるだろう。深海棲艦に占領されるのは、最早避けられない。しかし、必ず奪還するッ」
“それではダメデース”
金剛は珍しく反発した。無線を睨んで、浜岡は眉間にしわを寄せる。
“艦娘が深海棲艦と戦う理由、分かりますカー?”
「何を言ってるんだ。そんなの決まっているじゃあないか。深海棲艦をこの世から撲滅する為だ」
“確かに、それもありマース。でも、それが一番ではないデース”
無線の奥で、深呼吸が聞こえる。
“艦娘が深海棲艦と戦う理由、それは、一人でも多くの人命を護るためネー”
その言葉は力強かった。だが、浜岡の中に沸いたものは、混乱だけであった。
“ワタシたちがまだ鋼鉄の身体だった頃、誰も守ることができなくて、数えきれない命が戦火に焼かれていった―だから、こうして生まれ変わって、今度こそは、深海棲艦から皆を守り抜いて見せると誓ったのです”
彼女の言わんとすることが、彼には全く分からなかった。金剛とは佐世保鎮守府に着任してからの長い付き合いで、練度も一番高く、お互い考えが手に取るように分かる程であった。それが初めて、すれ違った。
“全く金剛の言うとおりだ。艦娘として今ここに立っているのは、『宿命』なのだ”
“そうじゃ。これは時を超えた『リベンジ』なのじゃよ”
“鈴谷も激しく同意じゃん?”
“この熊野もお供しますわ!”
“しれー!心配しなくっても大丈夫!私達は絶対、沈みません!”
誰一人として、金剛を止めようとはしない。それどころか、躊躇の欠片もなく付いて行こうとしている。浜岡には、彼女等が少数の人間を見捨てられないという理由で、後先考えずに死に急いでいるようにしか、見えなかった。仮にそうしたとして、沖縄が深海棲艦に呑まれる未来を変えられる訳がない、と思った。完全な無駄死にである。
“敵艦載機!来ます!攻撃機!推定386機!真っ赤です‼”
“了解!この磯風、カイルもビビる対空射撃を見せてやるさ!なぁ、浜風”
“はい!必ず、守り抜きます!浦風、私より先に逝ったら、許しませんから!”
“あがにー言いさんな浜風。うちらは浜岡はんにぶち厳しゅう訓練されとるけぇ。簡単にゃ沈まんよ?”
“沖縄に―人々に指一本触れさせませんわ!”
“そうそう、うちらは佐世保最強の『盾』じゃん?”
浜岡の目が見開かれる。彼の耳には、『生きて還るつもりはない』と聞こえたからだ。
“発砲安全装置解除!オーバーヒートは避けられぬなぁ…長門よ、吾輩はいつでもいけるぞ!”
“よし!皆準備はいいな!深海棲艦どもッ!雁首揃えて、十万億土を踏みやがれッ‼総員!突撃ッ!”
「おい!おm―」
“それ…あ浜…ん…急増援よろ…くネー!…ザザザザァアア―”
「金剛ォォオオ‼」
ノイズでかき消される。彼女たちの命令違反―とうとう引き留められなかった。
「クソッ」
奥歯を噛み締めてから、乱暴に受話器を取った。
※
浜岡は、電話の前で、茫然と立ち尽くしていた。頭の中で、任務娘の大淀の声が共鳴している。
『岩川、鹿屋に連絡を入れましたが、提督と艦娘は慰安旅行でほぼ不在。呉や佐伯もダメでした。大本営からも―貴殿の艦隊で対処せよ。増援は必ず送る。それまで辛抱せよ―とのことでした…。沖縄の基地航空隊、艦隊も全滅。金剛たちは―』
腹の底が煮えくり返り、今にもアリゾナの如く噴火しそうだった。
(増援が来るまで辛抱せよ―そいつは絶対に不可能だッ‼いくら俺の艦隊でも、30分と持たないッ!どいつもこいつもレイテの勝利如きで浮かれやがってッー‼こうなったら―止むを得ん。体勢が整うまで、艦娘を退避させよう。俺もクビを斬られるだろうが、知った事か。これも、戦力を温存し、深海棲艦をいち早く殲滅する為だッ。この鎮守府が吹き飛ぼうが、直ぐに再建できる。だが、艦娘は別だ。育成にどれほど時間が掛かることか…大本営は何も分かっていないッ‼)
大本営が意味不明な事を言っているとしか思えないので、命令違反を犯すことに、1ミリの戸惑いも恐怖も感じられなかった。
「―司令‼」
直ぐ隣に戦艦霧島がいる―いや、いたのに気付いていなかった。気配に振り返ると、鎮守府にいた艦娘たちが集合していた。眼を疑うことに、全員が艤装を背負っていた。中には『任務受付』の腕章をした大淀もいた。
「どうして…」
霧島が向き直る。拳が骨を自己粉砕しそうな強さで握られている。
「司令、私たちも、出撃します」
「しかし霧島!」
「私も、出撃します」
一歩前に出たのは、正規空母の赤城だ。鬼のような形相で、浜岡の顔を睨んでいる。
「そ、それは……大本営の………命令だからか?」
しかし、彼女は首を横に振った。
「いいえ、私たちの、意志です」
寸刻も目を逸らさず、はっきりと言った。彼女が振り向くと、後ろの艦娘たちが敬礼した。その瞳に、迷いなど一切存在しなかった。気圧されて、浜岡が後ずさりする。
「正気か……こいつは作戦でも何でもない、十死零生なんだぞ……それに、轟沈した艦娘がその後どうなるか……知らないわけじゃあないだろう……『深海棲艦を1日でも早く殲滅する。青い海を取り戻す』―それが、提督と艦娘の義務じゃあないか。その為の精強な艦隊じゃあないかッ‼」
悲鳴のような声を轟かせても、その燃えるような瞳の色は、一つとして変わる事はなかった。
ここで、赤城の背後にいる加賀が口を開いた。
「『戦力絶対』―貴方の艦隊思想、確かに間違ってはいないわ。実際、そのお陰で、私たち203部隊は数々の敵艦に勝利、制海権を奪還してきました―でもね、貴方には最も大事なことが欠けていたの」
そこまで言ったところで、急に眼差しが鋭くなった。
「それは、制海権の奪還以前に、人命を一番に重んじる事。そして私たち艦娘は、深海棲艦を沈める『矛』ではなく、奴等から命を護る『盾』である、ということよ。例え、背水の陣だと分かっていても、私たちの自殺行為で、敵艦が一隻でも沈んで、爆撃機の数が一機でも減って、降り注ぐ砲弾の数が一発でも減って―その結果、失われるはずだった命が一つでも救われるのなら…私たち、いえ、艦娘は喜んで命を投げるわ」
浜岡は、艦娘という生き物が、完全に分からなくなった。今まで、共に深海棲艦との戦いに勝利する同志だと思っていた存在が、滲む。そもそも、この戦争における勝利とは何なのか―信じて疑わずに積み上げてきたものが、全てまやかしだった様な気分に捕らわれる。目の前の艦娘たちが、とても冷たく感じた。
「それでは司令、武運長久を―」
霧島が言い残すと、全員、浜岡のことなど一瞥もせずに、執務室を出て行ってしまった。
気が付けば、一人ぽつんと取り残されていた。只々、虚しさと悔しさが全身を充満し、抜け殻のようになっていた。
昼下がりの空が、白く霞んでいく。浜岡は、窓の脇に飾られたカンパニュラを茫然と見つめていた。
結局、浜岡の艦隊は一人として帰ってくることはなかった。一方で、彼女等の必死の迎撃が時間稼ぎとなり、岩川基地、鹿屋基地などの艦隊が迎撃に間に合うことができた。その上、敵戦力が弱体化したお陰で、艦隊は負傷艦を大量に出しながらも迎撃に成功―加賀たちの願い通り、基地や市街地に一発の砲弾も爆弾も落とさせなかった。
所持艦を全て失った浜岡は、理不尽にも鎮守府を追われる結果となった。だが、彼はそれに対して、不思議と怒りの感情が全く湧き上がらなかった―その理由が、彼自身どうしても分からないのであった。