IF√トリプルP♪~GirlsHappyRoad~ 作:Lycka
「この前の件、どんな流れで進んでる」
「はい、打ち合わせ通りに滞りなく」
「くれぐれも失敗しないようにな」
「了解」
初めましての人は初めましてか。一応自己紹介だけ。俺の名前は
「取り敢えずこれで一段落着いたか」
「斎藤様」ヒョコ
「うおっ!?」
とある場所のとある部屋で自分の考えに耽っているといきなり顔だけを出して驚かせてくる人物が一人。
「......ったく、そろそろやめてくれよメイドちゃん」
「それは出来ない相談です」
「毎度驚かされるこっちの身にもなってくれ」
「貴方を驚かせていいのは私だけですので」
「いや、全然そんな事ないからね?」
なんなら学生時代に他の面子に嫌というほど驚かされてきましたから。おたえの歯ギターしかり、沙綾の口からファイヤーしかり。最終的にはバケモノみたいな衣装着てたRoselia。まぁウチのお嬢様も破茶滅茶加減については折り紙付きだからな。
「それはそうと報告を」
「いきなり真面目モードになるのね」
「先日開催されたスマイル祭りの件で......」
***
「ほうほう......うん、何となく分かった」
「それでは私はこれで」
「いつもありがとなメイドちゃん」
「あらあら、今日は槍でも降るのかしら」
「お礼言ってんのに素直に受け取れんのか......」
話すこと数十分。色々と頼み込んでいたのもあって時間がかかってしまった。仕事の都合上よく話す機会も多い為、そこまで苦にはなっていないもののやはりめんどくさい。これはアイツに任せるしかなさそうだな。
「何を今更、私は一介のメイドですので」
「いやいや、メイド長兼執事長が何言ってんの」
「ですが流石にお嬢様の秘書には勝てません」
「役職上はそうなってるけど俺は何もしてないからな」
そう、俺の目の前にいるメイドちゃん。実はメイド長でありつつも執事長でもあるかなりの実力者なのだ。ぶっちゃけこの人に仕事任せてたら一先ず安心するからお願いしてる節がある。やはり持つべきものは仕事出来る仲間だな。
とは言ったものの、メイドちゃんがさっき言った通り俺の役職は秘書。この話の流れで察している人も多いだろう。秘書たる俺の今の主は弦巻家のお嬢様である弦巻こころ様。弦巻家は世界でも有数の大金持ちであり、それなりの影響力を持ったインフルエンサー軍団。近年ではそういったインフルエンサーの情報を企業が取り扱って宣伝しているらしく、これをインフルエンサー・マーケティングと言うらしい。これも俺が秘書になるにあたって頭に叩き込まれた知識の一部である。
「はぁ......それより例の件はどうなってるの?」
「まぁ......ぼちぼち」
「そんなに自信が無いの?」
「そりゃあな」
これもメイドちゃんが親しみやすい理由の一つである。こうやって二人きりになった時に立場とか関係なく接してくれるのだ。正直堅苦しい職場な為、気を抜くにはうってつけの相手だったりもする。こうして相談にも乗ってくれるしな。
「失敗したらこの家には居られなくなるわね」
「た、確かに」
「国外追放なんかもされたりして」
「やめてくれ、更に自信喪失が加速する」
偶に、ではなく俺の場合良くこういった悪戯っ子なメイドちゃんが姿を現す。本当にこの人俺のことイジるの好きだよね。弦巻家の力を使えば国外追放なんてお手の物だから殊更緊張する。
「まぁ何とかなるわよ」
「そんな事言われてもな」
「いざと言う時になったら私が何とかするわ」
「メイドちゃん......とか感動的な雰囲気になると思ったら間違いだぞ。前もそんな事言って一つも擁護してくれなかったくせに」
「ちっ、これだから勘の良いガキは嫌いなんですよ」
「おい、ガキって言うな一応20歳だ」
一応20歳だし何ならお金だって普通の人より稼いでるからね?いや、確かに俺一人の力じゃないけどさ。今となっちゃ令香の仕送り出してるの俺一人だから。何なら会う度に小遣いせびられるし。いつから俺の妹は金に貪欲になったのだろうか。
「兎にも角にも本番はもうすぐね」
「まぁ頑張ってみるよ」
「取り敢えず応援してるわよ」
「そこは普通に応援しててくれ」
最後までブレないメイドちゃんであった。
そして一ヶ月の月日が経ち、俺の人生最大の難関とも言える日が翌日に迫ってきていた。この一ヶ月の間に色んな人に出会いアドバイスを貰った。商店街でははぐみと沙綾とつぐみに、CiRCLEではまりなさんや練習に来ていたあこ達Roseliaに。みんな昔とほとんど変わってなくて安心してしまった。
「やべぇまだ前日なのに緊張してきた」
「アンタまだ起きてたの」
「バッカお前俺ぐらいのレベルになるとこのくらい朝飯前なんだよ夜遅くに朝飯前ってなんか面白くない?......って美咲?」
「様子見に来てみれば案の定だったね」
俺が秘書専用の休憩室で頭を悩ませていると美咲が登場。そう言えば美咲もこころの秘書だったっけな。担当してる仕事が違うからそう毎日は会う事ないんだけど。高校時代から周りより少し大人びていた美咲は、髪が伸びてロングヘアーとなりますます美人お姉さんと化してしまった。相変わらずハロパピのミッシェルは続けているがその他のミッシェルについては今は引退している。何でも本人曰く"もうそんな歳じゃない"だそうです。
「なんだ秘書仲間の美咲君」
「なんでそんなに緊張してるのさ」
「そりゃこころの返答次第で天国と地獄だからな」
「はぁ......分かってないねぇ」
何故か美咲にはため息をつかれてしまった。何処か俺に悪いところがあったのだろうか。
「じゃあ秘書仲間としてアドバイスしてあげる」
「お、おう頼む」
「当たって砕けろ」
「それダメ元って事だよね!?」
「さぁね」
はぐらかすように首を傾げて笑う美咲。今じゃその意味不明なアドバイスを理解する余裕もないのだ。俺の一世一代の大きなイベントなのに一か八かっていうのもどうなんだって話なんだけどな。まぁ今までどのイベントもなるようになってきたから仕方ない。結末は神のみぞ、弦巻家のみぞ知るってところだな。
「それより美咲の方でも頼むぞ」
「まぁ仕事はちゃんとやり遂げるよ」
「俺の用事抜きにしても明日は特別な日だからな」
「分かってるよ」
"一々心配性なのは治ってないねぇ"とか言ってるこの人本当に大丈夫だろうか。ちょっと俺の用事もだけど美咲の仕事の方も心配になってきたぞ。今更になって心配事を増やさないで欲しい。
ブルルルル
「もしもーし......はいすぐ行きまーす」
「誰からだ?」
「私の口調で分かるでしょ」
「まぁ大体はな」
「じゃあ行ってくる」
美咲は俺と同じく秘書なので割り振られる仕事は案外多い。こころの秘書だからといってこころ周辺の仕事だけではないのだ。やれ屋敷関係だったり弦巻家が管理している弦巻グループの企業の仕事だったり。しかし、先程の電話の相手は言わずもがなメイドちゃんだろう。美咲とてメイドちゃんには気を許している。なのであんな風に軽く接することが多いのだ。
「やる事やって寝ますかね」
~翌日~
ブルルルル
「んぁ......こんな朝早くから誰だよ」
今日という日の為に寝坊防止でいつもより早くアラームをセットしていたのだが杞憂に終わってしまった。仕事用の携帯ではなく俺自身の携帯の着信なので早めに相手を確認する。そこには我が愛しの妹の名前が。
「もしもし」
「もしもしお兄ちゃん!?」
「朝っぱらから声大きいぞ」
「今日学校来るんだよね?」
「まぁな」
令香は現在花咲川学園の生徒会書記として活躍している立派な女子高生。そして令香の言う通り、本日は弦巻家主催のイベントが俺とこころや美咲の母校でもある花咲川で行われるのだ。俺の用事というのはそのついでだったりもする。
「令香も書記としてイベント役員で参加するからよろしく!」
「俺忙しいから多分会えんぞ」
「別に良いもーん、中等部も今日はイベントに参加するらしいから純君や紗南ちゃんも来るよ」
「確かに沙綾がそんな事言ってた気がする」
山吹家次女である紗南と長男の純は二人揃って花咲川へと進学。何でも家族全員一致で決まったらしい。相変わらず紗南は俺に懐いてるし純は滅茶苦茶イケメンになってるし。近年はお年玉をあげてるからもっと好かれてしまった。お年玉の中身を見て千紘さんや沙綾が驚いていたが何故だろう。自慢に聞こえるかもしれないが弦巻家で働いているのもあってお金には何不自由無いのだ。もしかして多過ぎたのだろうか。
「まぁお兄ちゃんも頑張ってね〜」
「りょーかい」
そして令香との通話は終了。時計を見ると案外丁度良い時間だったので素早く準備して執事やメイド、黒服さん達が集まる広場へと向かった。
-広場-
「みんなおはよう!」
『おはよう御座います、こころ様!』
「今日はとーっても良い天気ね!」
広場に着き次第始まったこころによる恒例のお話。イベントが開催される度に朝こうして集まってこころからありがたいお話を聞かされるのだ。お話と言っても話す内容は全てこころに一任しているので、先程の様に今日の天気であったり昨日の出来事などを淡々と話すだけなのだ。それだけなのだが......メイドや執事や黒服さん達は神の言葉かの様に聞き入ってしまうので最初は少し戸惑ってしまった。今となっては軽くスルー出来るまでには成長したものだ。
そんな中秘書である俺はというと、黒服さん達とは違い広場に設置されたこころ専用のステージの横で待機中。勿論、俺の隣にはメイド長兼執事長のメイドちゃんやもう一人の秘書である美咲も待機。何かあった際に迅速に対応する為......という名目で普通に世間話しているのだ。俺達もこころのお話中は何かと暇な時が多い。そこが最近の悩みだったりする。あ、因みにこの広場の名前は弦巻家で働く人の中で"大聖堂"なんて呼ばれてたり呼ばれてなかったり。それより俺命名の"ブラックZONE"の方がしっくりくると思うんだけどなぁ。ほら、こころ以外全員黒服だしさ。メイド服も特注で黒をベースに作ってあるし。
「今日は大切なイベントの日!みんなには期待してるわよ!」
『御意』
今時返事するのに御意とは言わんだろ。しかしここは弦巻家、それでまかり通ってしまうのもまた弦巻家たる所以なのだろう。現にこころのお父さん相手には俺ですら時々御意って言うほどだ。でも何故かこころのお父さんが俺にはフランクなんだよなぁ。
「お疲れさん」
「あら、宗輝はこっちに居たのね」
「お嬢様、失礼ながら斎藤様は"こころには俺がついてないとな!キリッ"と言い張るので仕方なく連れてきております」
「おいそこのメイド平気で嘘つくな」
「嘘とは失敬な、私はこころ様に誓って嘘などついておりません」
こんのメイドまたしてもイジってきやがったなこんちくしょう。良いもんね、俺にはお仲間の美咲がいるもんね。別に寂しくなんかないんだから。
「美咲も何か言ってくれ」
「ん?ごめん聞いてなかった」
「お前ほんっとにマイペースだな」
「どうせアンタが悪いんでしょ?」
「何故そうなる」
高校卒業とともに進化してしまった影響か、美咲が恐ろしくマイペースになってしまったのだ。ハロパピを裏で操っているのは美咲と言っても過言ではないレベル。だって言いようによっちゃこころもコントロールできるまでになっちゃってるから。それもう美咲が弦巻家の実権握っちゃってるよね。
「美咲もメイドちゃんも冗談が上手いわね!宗輝は私の秘書だから側に居て当然じゃない!」ギユッ
「ちょ、こころいきなり抱きつくのはNGだって」
「どうして?」
「くっ......そうやって絶妙に首を傾げて可愛らしく言われると強く言えないのが難点だ」
「心の声がダダ漏れしてるよ宗輝」
おっと失敬失敬、腕に抱きついて可愛らしく聞いてくるこころが悪いんだ許してくれ。こころに抱きつかれた時にふわっと香るキツ過ぎない甘い匂いは俺を誘っているとしか思えん。
「お嬢様、そろそろお時間になります」
「あら、楽しい時間は早く過ぎてしまうものね」
「こころはイベントの主催者だから遅れちゃダメでしょ」
「美咲!だったら運転をお願い!」
「はいはい......じゃあ私はこころを送ってくるから」
「了解、俺達もすぐ行く」
美咲とこころ、そして2人の黒服さんを連れてとんでもなく高級な黒塗りのリムジンへと乗り込むこころ達。基本的には運転手がそれぞれの車に専属で付いているのだが、こうして偶にだが秘書である俺や美咲が運転することもあるのだ。知ってるか?リムジンってめちゃんこ運転難しいんだぜ?
兎にも角にもこころが出発したのに俺達が遅れる訳にもいかない。一旦屋敷へ戻り車の鍵を持って高級セダンが何十台も置かれているガレージへ向かう。実はこのセダンは弦巻家が総力を上げて開発した代物。一部富裕層にのみ要相談で取引している市場には出回っていないハイスペックセダン。その中の一台に乗り込みエンジンをかける。
コンコン
出発しようと思った矢先に窓をノックされたので確認の為に開けてみる。
「隣良いですか?」
「別に良いですけど、運転はしてくれないんですか」
「私運転が下手で......」
「いやいや自分の車ガッツリスーパーカーだろ」
「時間が無いので急ぎましょう」
「はぁ......早く乗って下さい」
助手席で鼻歌を歌いながら楽しそうにしているメイドちゃんには後で仕事を押し付けよう(使命感)
***
朝の時間だったが渋滞に巻き込まれる事なく母校花咲川へ到着。着いた途端に仕事モードに切り替えた俺とメイドちゃんはそれぞれの持ち場へ着く。メイドちゃんは何やらお店を出す手伝いをするらしい。俺はというと、勿論こころの側で何かあった時の対処の為待機。
しばらくすると体育館に在校生が集まってイベントの式典が始まる。このイベント、実は言うとこころの思い付きで始まったので開催は2回目だったりする。去年は初めてという事もあり手探りで進めていき、少し手違いがあった事もしばしば。その反省も踏まえての今年のイベントだ。こころや俺達の気合いも充分。絶対に成功させてみせるからな。
「今日は楽しい一日になりそうね!」
「......お兄ちゃん」
「ん?おお、令香どした?」
現在はステージにてこころの有り難いお話が始まって5分といったところ。もうすぐ終わるのでステージ横で待機してたら令香に見つかってしまう。左腕の"生徒会"と書かれた腕章が似合う立派なJKになってお兄ちゃんは嬉しいぞ。
「この後の予定聞いておきたくて」
「予定っつっても、俺はずっとこころと一緒にいると思うぞ」
「じゃあこころんの予定教えてよ」
「多分校内をずっと見て回るんじゃないか?」
「はぁ......秘書が多分とか言わないでよ」
これにもちゃんとした理由はあるのだ。昨晩こころに最終確認で今日の予定を聞いたら"私は宗輝と一緒に校内を回りたいわ!"と満面の笑みで返ってきた。秘書としてはお嬢様の気の向くままに従うだけだ。よって、これについては俺は悪くない。
「令香も一応校内の見回りだから、何かあったら携帯にでも連絡してね」
「了解、まぁお前も楽しめよ」
そしてそこで令香とは別れ、そのタイミングで式典も終了。いよいよイベントがスタート。花咲川の校門や各所に黒服さん達が待機し、怪しい人物を見かけ次第連絡対処を行う警戒網を用意。耳に付けたイヤホンで随時連絡を聞き、ピンマイクで俺から指示を出すのが基本の流れだ。しかし、そちらにかまけているとこころにお叱りを喰らうので注意しなければいけない。
「お疲れ様こころ」
「さぁ校内を回るわよ!」
「その前にこころ、これだけ付けといて」
「それは何かしら美咲」
いつの間にか来ていた美咲が何やらこころの服にバッジの様なものを取り付ける。それを良く見てみると、なんとミッシェルの顔をしたバッジ、に見えるGPS機能付きの追跡装置だった。そういやこんな優れものもあったっけな。
「ただのミッシェルのお守りだよ」
「じゃあ一生大切にするわね!」
「イベントが終わったら返して欲しいんだけどなぁ......」
「それじゃあ早速行きましょう宗輝!」
"まぁいつもの事か"と少し呆れた様子で微笑む美咲。美咲......大丈夫だ、問題無い。俺がちゃんと後でこっそりと回収しておいてやるから。
「すまんな美咲、後は頼んだ」
「アンタもこころの事は頼んだよ」
「おう、任された」
そして、ここからはこころの好きなように気の向くままに校内を回る。
「あそこに行ってみましょう!」
「ちょ、服!服は引っ張るなこころ!」
在校生がお店を出しているスペースをくまなく回り、その度に目をキラキラと輝かせていたこころ。
「ん〜、このパフェ美味しいわよ!」
「どれどれ、俺も一口......」パクッ
年に一度のイベント日の為、学校側から許可を貰ったクラスは食べ物なんかもお店として出しているのだ。こころは案外スイーツが好きなので何店もはしごしては食べはしごしては食べの繰り返しだ。
「体育館でライブをしているらしいじゃない!見に行きましょう宗輝!」
「へいへい」
俺達が卒業してからもガールズバンドブームは身を潜める事無く、更に盛り上がりを見せている。珍しくバンドの中でバイオリンがあるバンドも出てきたくらいだ。まぁその話は長くなるからまたの機会に話すとしよう。
そして、何一つ問題が起きる事無くイベントは終わりを迎えた。
「今日はとーっても楽しい一日だったわ!」
「そりゃ頑張った甲斐もあったもんだ」
時間を忘れて過ごした楽しいイベントも幕を閉じ、片付けに手間取る事なく速やかに撤収出来たのは収穫だ。去年は最後にもたついたのもあって反省点だったからな。そんなこんなで今は弦巻家のこころの部屋。
「宗輝も頑張ってくれてありがと!」
「こころも色々とご苦労さん」
何故俺がこころの部屋にいるのか。これまでの流れで察している人もいるだろう。
そう、俺は今日遂にこころにプロポーズしようと思っているのだ。その前にお前ら付き合ってんの?とかいうマジレスは勘弁してもらいたい。少々話が噛み合ってなかったかもしれないが、お互い好きなのは既に確認が取れている。周りの人も頑なに大丈夫だと言ってくれるし間違いは無いだろう。
「ちょっと話があるんだけどいいか?」
「あら、もしかしてもう楽しい事を思いついたのかしら」
「捉え方によっちゃ楽しいな」
「じゃあ早速教えて頂戴!」
しかし、いざとなるとやはり怖くなってしまうものである。良くある恋愛のポエムのようにはいかないのが現実というものだ。そこら辺にいる甘ったるいカップルなんて○ヶ月〜♪、とかSNSで更新してるけどその何ヶ月後には大半のカップルが別れてる気がするし。別れるのをカウントダウンしてるのかと時々勘違いするレベルだ。
という風にほんの少しだけ本音の部分が漏れてしまったが、今重要なのはそんなチンケな事ではない。大袈裟に言えば俺の今後が左右される大問題。生半可な気持ちではこころにも失礼だ。ここは一つ深呼吸をして気持ちを落ち着かせよう。
「ふぅ.......こ、こころ聞いてくれ」
「うん!」
「えーっと、まぁあれだ。あの事についてなんだけど」
「あの事?」
深呼吸したはずなのに心臓バクバクなんだけど。やはり俺は嘘を付くのが苦手らしい。しかし、もうこうなってしまえば取るべき行動は一つ。素直にどストレートに想いを伝えるしかないだろう。ええい、ままよ!伝われこの想い!
斎藤宗輝、いざ参ります。
「俺と結婚してくだしゃい!!」
あー、これ終わった。やったわ、これ完全にやらかしたわ。なんだよプロポーズで噛むって。ありえなくね、自分マジでありえなくね?これからまずは国外追放されてその先で指名手配されるだろ。いや、その前に首ちょんぱの可能性がなきにしもあらず。いや待てよ、俺から切腹すれば少しは良い終わり方になるかもしれん。そうだ、最後くらいは綺麗に終わろう。有終の美なんて言葉もあるくらいだからな。
斎藤宗輝、いざ参ります。
「す、すまんこころさっきのは無しで、ってひでぶっ!!」
「......」ギュッ
ところがギッチョン、猛烈なダイブをこころからモロに受けなし崩し的にベッドへ倒れ込んでしまう。
「こころ?」
「......ズルイわ」
「いきなりどうしたんだ」
「ズルイわ宗輝!私から言おうと思ってたのに!」ポロポロ
胸に顔を押し付けていた為、今までは分からなかった。だが顔を上げ俺を見るこころの頬には一筋の涙が零れ落ちていた。そんなこころを見て、俺は純粋に美しいと感じていた。
そして数秒程俺は見惚れてしまい、二人の間を静寂が包む。そんな中、その静寂をかき消したのはこころだった。
「私も貴方が好きよ!私と結婚して頂戴!」
「俺から言っといてなんだけど、俺で良いのか?」
「宗輝が一番良いの!」スリスリ
俺の胸の辺りにほっぺスリスリしてる可愛い天使は誰だろう。視界が歪んでちょっと良く見えませんね。あ、これ俺が泣いてるからだわ。テヘペロ!
「美咲達もありがと!」
「こころもありが......ん?今美咲って言った?」
「入ってきても良いわよ!」
そのこころの言葉を合図に鍵が掛かっていたはずのドアが開き、美咲とメイドちゃんが入室。この部屋の鍵は俺とこころしか持ってないはずなんだけどな。まぁ大体こころが美咲にでもスペアキーを渡したのだろう。
「プ-クスクス,"結婚してくだしゃい!"だって」クスクス
「ちょ、こらそこのメイド今笑ったな!?」
「まぁまぁ面白かったよ」
「美咲まで!?俺もうお嫁にいけない......」トホホ
「アンタは嫁じゃないでしょ」
こんのメイド野郎バカにしやがって。そんなだから彼氏の一人も出来ないんだと思いますね。まぁ?俺はたった今プロポーズに成功したわけですけど!?
「美咲、準備は出来てるかしら」
「バッチリだよ」
「おい待て、準備ってなんだよ。もしかして最初からグル?」
「お嬢様と宗輝君には今からハワイへ飛び立って頂きます」
さぁ話が急展開を迎えております弦巻家某所。どうやら美咲とメイドちゃんは最初からこの話を企てていたらしい。俺とこころが改めてお互いの気持ちをぶつけたところでハワイへ飛び立てとのご名案。トントン拍子で進んでるけどそれで良いのか弦巻家。
「ちょ待て、ハワイ?この時間から?」
「何言ってんのさ。スマイルジェットがあるじゃん」
「ああそうでした忘れてました自家用ジェットですね」
弦巻家にはこころ専用の自家用ジェットが置いてある。その名もスマイルジェット。なんでも国内有名メーカーと共同で開発した代物らしく、金額にするとふえぇな額になるので一応伏せておく。
「さぁ行くわよ宗輝!」グイッ
「後で覚えてろよ二人共」
「いってらっしゃいませ」
「偶には二人っきりで楽しんできなよ」
美咲の言う通り、これまで秘書として働いてはいたがこころと二人の時間はあまり取れていなかったのだ。その点に関しては今回のハワイ行きは素直に嬉しい。ただやり方が解せないので帰ってきたら仕事を押し付けようそうしよう。
「こころ、飛行機乗る前にこれ」
「ん?これは何かしら?」
プロポーズの時に渡そうと思っていた箱を今取り出してこころに渡す。その中には向日葵をモチーフにした指輪。驚く程高いって訳でもないが、特別な想いの込められた俺なりの婚約指輪だ。
「確か高校の時に俺の事太陽だって言ってたよな」
「......うん」ポロポロ
「だからさ、俺にとってこころは向日葵みたいな存在でいて欲しいな。向日葵って太陽の方向をずっと見てるだろ?これからもこころにはずっと俺を見てて欲しい」
そう言って、再び涙を流すこころの手を取って指輪をはめ込む。
「こころ......大好きだ」
ありきたりな言葉だが、今はそれで......それだけで良いと思った。メイドちゃんが居て美咲が居て黒服さん達が居る。商店街には沙綾達だって居るし俺達を応援してくれる人は沢山居る。
そして、俺の隣にはこころが居る。だから、今はそれだけで幸せだと感じる。
「私もだーいすきよ!」チュッ
願わくばこの幸せが永遠に続きますように。
IF√:私の太陽
~fin~
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