なにやらチートのような体を手に入れたので楽しく生きたいと思います(願望) 作:火桜 葵
まあそれはさておき、なんとこの作品が前回の更新から1日たった頃かな?ランキングに入っておりました、わーぱちぱち
総合日間96位、二次創作日間76位と順位は低いですが嬉しいです。なんでランキング入ってんの?ありがとうございます
ということで本編です
(追伸)
この話を投稿した1時間後に自動車と衝突事故して利き腕を怪我しました
ってことでまた当分続きはかけまへん
その場にいる館の住人とナツキスバルからの視線。その全てがいま俺に集まっているのを感じる。
それだけで冷や汗が滝のように流れてるような感覚さえ覚える。なにせここの問答で答え方を間違えれば俺は最悪この場のヤツら、少なくとも当主であるロズワールと隣のメイド2人からは襲われても当然だと考えるべきだろう。
しかしここで慌てた様子を出してはせっかくの答えがあっていようと怪しまれるのは必然……。そこまで考え俺がようやく口にしたこと
「私は……」
◆
「それで、なんでここにいるかしら」
「おや、私と貴女の仲ですし、いいではないですか。こんなに広いんですし私1人増えたくらいで文句言わないでいただきたいものです」
「ベティの視界にチラチラと映って鬱陶しいったらないかしら。ハッキリ言って不快なのよ」
朝食での問答のあと、俺は一時的にこの禁書庫と呼ばれる蔵書室にて匿ってもらっている。
どうやら俺の答えは間違ってもいないようで、間違ってもいたようだ。当初の目的である衣食住の確保は出来たものの、次の目的である怪しまれないの方は達成はできなかった。
現在メイドの姉妹である姉と当主のロズワールからは疑念の目……というには早計かもしれないが、様子見といった視線を度々感じる。
ずっと見られていては肩もこるし、証人が居て尚且つ静かで暇を潰せるようなところはないかと考えていたところ、ここが思い至ったわけだ。
「不快……ですか。なら、今朝の貸しを返してもらうということで1つどうですか?」
「……ぐぐっ、あーもうっ! わかったわかったかしら! 好きにするといいのよ!」
「ありがとうございます」
不機嫌な彼女に丁寧な礼を返したものの、ぷいっと反対方向を向いて視線も合わせてくれなくなっちまった。
図書館の司書さんが許してくれるなら好きにするのが当然の権利、だと言わんばかりに俺は気になった本を幾つか見繕ってくる……が。
「……ふむ、読めませんね」
「お前、字も読めないのに本を読むところに何をしに来たのよ……」
どうやら禁書庫の主であるベアトリス様は大層お呆れのご様子だ。
まあこの世界に来て字が読めないことは分かってた。発声する言語が一緒なのに識字だけが別形態ってのもおかしくないかとは思いはするが、そこは異世界クオリティということで置いとくべきなんだろうしつついちゃ面倒なところだと思う。
なんせここに来た理由は、先程述べただけのものじゃなく勿論字を覚えるためにも覚えるためにもこの禁書庫を選んできたんだが知らない言語を1から覚えるのは骨が折れる。
さて長々と言って何が言いたかったのと言うと、ベアトリスに読み書きの講師をしてほしいということだ。
ということで彼女に頼み込んでみるとしよう。
「ほら、言ったでしょ私はちょっと変わった土地から来たので読み書きが出来ないって」
「……そんな話聞いた覚えはないのよ」
「あれ、そうでしたっけ?」
「……はぁ、そこの棚の上から3段目右から15冊目。そこに幼児向けの本があるかしら。それでも読んで字でも覚えるといいのよ」
「おや、今回は素直ですね」
「人の好意をそんなに吐き捨てたいのかしらお前は!?」
ベアトリス怒である。それはもう第三者が仮に俺達のやり取りを見ていたとしてもわかるような明らかに私は怒っていますよと言わんばかりの分かりやすい行動をしていた。
なんなら彼女の背後でムキー! といった擬音が目に浮かぶように見えるほどだ。
「いやいやいや、そんなまさか私ほど清廉潔白で優しくて美しくて、そして恩を返す人間は居ませんよ。ほら、ね?」
「ほら、ね? ──じゃないのよ、自分で自分のことを清廉潔白で美しいなんて言うやつ埃程度も信用ならんかしら」
なんと、この俺のどこが清廉潔白でないと言うのだろうか。清廉潔白であるかのような象徴であるこの白い髪──まあ裏地は黒いが──が見えないのだろうか。
「まあ何が言いたいかというと、字を教えてください」
「全くその話の流れが一切見えなかった気がしなくもないのよ」
「気の所為ですよ。ほらこんなにも私は懇切丁寧に教えを乞うているじゃありませんか。ベアトリス様〜どうぞこの無知なる私めに学というものを教えてください〜てね」
「おかしいのよ、お前からは信用と同時に敬意も見えなかったかしら!?」
「はは」
「笑い事じゃないかしら! はぁ、どうしてこんなやつ禁書庫に入れちゃったかしら」
「ははは」
「鬱陶しい!!」
ただ場を和ませようとしていただけなのに可笑しいなぁ。どうやらこの世界は俺が思ってるほど甘くないみたいだ……っ!!
と、漫才のような流れはさておき、結果的に言えばこの後ベアトリスは俺に読み書きを丁寧に教えてくれ、そしてこの世界の成り立ち、そして学問一般常識などなど様々な知識をこの4日間俺に叩き込んでくれた。
そう4日間だけだ、そしてそれは4日目の夜に起きた。
また世界の時間が巻き戻ったのだ。
◆
「解せない」
4日目の夜、眠るように力が入らなくなって最後には館の廊下で死んだあの日。そこから時間は戻って、いまは4日前だ。
解せない、ちょー解せない。せっかく色々と悩んで問答に答えた1日目。
そして口喧嘩はありつつも仲は深まったであろうベアトリスとの時間4日間。
全て無に帰されたと思うと、とてつもなくやるせなさというものを感じる。
まあ問答の件に関しては先程終わらせた。ベアトリスから聞いた世界の情勢や成り立ちから当たり障りのない程度の理由を貼っつけてロズワールにぶっつけてやったのだ。
それもあってか前回よりは疑念の目で見られるといったことは無くなった。
さて、どうしようか。前も少し考えたことではあるが、この世界がループする現象、まあループする前に俺が死んでいることを考慮して呼ぶなら「死に戻り」この現象をどうにかして解明したいわけだ。
何故起きて、何故起こされるのか。原因と理由を解明したいわけだ俺は。
さてまあ、だからと言ってどうしたものか。
ちょっとあれ? と思うことはあった、そう一日目の朝巻き戻された世界はビデオのように同じように動かなければ可笑しいのに1人だけ前回と明らかに違う反応を見せた人間がいる。
そうナツキスバルだ。
初めて見た時もそうだったが、彼はジャージを着てこの地を踏み歩いていた。ベアトリスからも話を聞いていたが、ジャージなんていう意外と現代の科学力で作られた服はこの世界には存在し得ないらしい。
まあなんだ、彼は俺と同郷なのだろう。同じ世界かは別としても
彼が行った1日目の明らかに違うアクション、そして私が起点じゃないかのようなバラバラの時間のループ。そし多種多様な死に方。
大方、彼が死ぬとこの「死に戻り」という能力は発動されるのだろう。
傍迷惑な話だ。これで俺の記憶も戻っていたのならなんら問題は無かったのだが、何故か知らないが俺も記憶を持ったままループしているし、そして何故か彼と同じ死に方をして「死に戻り」を始めている。
解せない。
何故俺が巻き込まれているのかは分からないが、とりあえず今回のループはナツキスバル彼を観察して終わりにする。
いわゆる捨て回ってやつだ。