なにやらチートのような体を手に入れたので楽しく生きたいと思います(願望) 作:nonose
久しぶりすぎて内容を忘れてるところ多いので文章に矛盾が生じる可能性があります
「ど、おっ────」
扉越しに飛ばされた風の刃を受けたと、そう錯覚し今回を諦めかけた、そう思った瞬間彼は窓をどころか……壁をブチ破って宙を浮いていた。
「おっおっおっ!? オァァアァァアァ……ッ!?」
「口を閉じていなさい! 舌を噛み切っても知りませんよ! ……そろそろ着地です!」
「──ッ!」
彼女に忠告され彼は肝が飛び上がるような恐怖さえも押し殺して何とか口をキツく結ぶ。
其れも、背から迫っていた風の刃よりも、この宙に浮く恐怖よりも、彼を抱き抱えている彼女の方こそどの恐怖よりも勝る故だった。
そうして目前に迫る地に降り立つ衝撃に目をつぶり耐えようとするが、壁を破壊した豪胆さとは裏腹にその着地はスケート選手の如く軽やかだった。
「──追ってきますね」
「えっ、あっ……お、俺はどうすりゃ」
「離れて貰う……には少々危険が過ぎますね。護衛は兎も角、戦事に置いて私に勝るものナシ! と自負はしていますが、いまは少し例外の例外中。相手は何より魔術……? なるものを扱う魔術師でしょうし、貴方を離して先程のように狙い打たれては敵わない。それにサーヴァント程の力はないとしても、ただの人よりは強い化生の類です。近付かれば貴方くらいなら一太刀……いや、ひと殴りでさえも命の危機ですね。なので出来るだけ離れないように」
「おっ、おぉ……そうか……」
「ご了承頂けたようで何より何より!」
捲し立てるように彼に何れ程危険であるか、それを伝えた彼女はいままで見てきた彼女とは程遠いその雰囲気に圧倒される彼の答えを了承の意として受け止め、満足そうに頷いた。
「──さて、来ましたね」
彼女がそう言うと、先程の彼と彼女のような似た格好でポッカリと部屋1つ分の穴から2人の少女が落ちてくる。
彼女と違い、少々荒っぽく音を立て砂煙を撒きながら、その砂煙から現れたのは彼もこの館の中で幾度となく見てきたその目立つ2つの色。
桃色の髪と、青色の髪の双子のメイドがそこには居たのだ。
「やっぱラム、なのか。もう1人の妹の方も付いてくるのは完全に予想外だったが……」
「あら、随分と心当たりのあるような言い方なのねお客様、普段見せていた愚鈍極まりない姿は演技だったのかしら?」
「愚鈍極まりないって随分な物言いだなおい……」
「さてね、まぁラムたちの目的はそっちじゃなくて」
「おや、私の方ですか? いやはや、随分と好かれていますね私は……と言うよりもですが」
何処か含みのある言い方に彼も、桃色のメイドも若干不審に感じるところだったが、その思考ももう1人のメイドに切られることになった。
「姉様」
「ん……あぁ、分かってるわレム、早く目的を遂行しなきゃね」
そう言い桃色のメイドは杖を構え、そして青色のメイドは────
「おいおい、おいおいおいおい……っ!? モーニングスターなんてアリかよ! 細腕のメイドが持ってるにしちゃチグハグ過ぎる光景だぞコレ!?」
────少女が持つには些かあまりにも不相応なモノだった。
鎖の長さは大幅伸び切れば3メートル程度と言ったところで、その先についている禍々しい鉄球もその所有者の頭ほどのデカさだった。
ただでさえ扱うことが難しいであろうというのが、日本から来た彼でさえ分かるようなことだ。
青色のメイドである片割れの姉が杖を使う立姿がスタイリッシュなだけに、身をかがめ低く虎視眈々と彼や彼女を狙う姿の荒々しさがより際立ってしまう。
「もぉにんぐすたぁ……? 確か、西洋の武器でしたか。鎖鎌は何度か見たことはありますが、あの武器も中々」
メイドの持つ彼女にとっては独創的な武器が、彼女にとっては少々気になるらしく顎に手を当て「うむうむ……なるほど」と吟味している。
しかし丸腰の状態、しかも尚且つ荷物を抱えている状態と言っても過言では無い状況に置いてメイド達が攻撃を躊躇う筈もなく双子のメイドが攻撃を仕掛けてくる。
桃色のメイドが僅かに妹より早く魔法を唱え、先程と同じように風の刃を彼女へと飛ばし、それに追従するように青色のメイドのモーニングスターが勢いよく彼女へと飛んでいく。
「おいおい来てるぞ!?」
「……ん? あぁ、大丈夫です。どうせ当たりませんから」
彼女のその言葉の通り、風の刃は彼女の目前で若干霧散するように軌道を変え後方の地を切りつけ、飛んでくる鉄球は身を捩り簡単に避けてしまった。
飛んできたものに差異はあれど、その能力は盗品蔵に置いても見せられた『風避けの加護』に類似する能力のお陰であった。
「……話に聞いてはいたけれど厄介だわ、魔法にまで範囲が及ぶのは想定外だったけれど」
「それに身体能力もスゴく高いですね、人1人抱えてあの身のこなし。到底人とは思えません、亜人かもしくは……」
「魔女教の関係者、もしくはそれに近しい者。でも、あっちの方からは臭いはしない・・・でしょ、レム?」
「はい……。魔女教にしては臭いが無さすぎます、それどころか……近くにいるあの男の臭いも、少し?」
「……とりあえず考えても仕方ないわ。ロズワール様、ひいてはエミリア様に害があってはならない」
「疑わしきは罰せよ、メイドの務めですよね」
「そういうことよ、とりあえず相手の出方を見るわ。何が効くか分からないし、いまは攻めるわよ! ──エルフーラ!」
「はい!」
「向こうも攻めてくる気満々と言ったところでしょうか。やる気があって何よりですねぇ」
「言ってる場合かよ……。にしたって、これどうすんだよ、向こうの攻撃が当たんないのは分かったが、このままじゃ」
「逃げることしか出来ないと? それもアリですね勿論」
「じゃあ……、それじゃあ」
「まぁ貴方が好意を寄せてるあの半魔の娘には、二度と会えないでしょうね」
「……っ」
彼にとっても分かっていたことだ。館の者に敵対されている時点で彼が想っているハーフエルフの彼女との逢瀬は叶うわけもない。
この場を解決する方法は、敵対していると勘違いされている誤解を解くか、もしくは彼女には少なくない信頼を置いているハーフエルフ本人を呼び出すか
彼の言う『死に戻り』でやり直すか。
そのどれかしか方法はなかった。
「話し合い……で解決は」
「無駄でしょうね、魔術師の方なら幾分冷静さがありますが、片方がアレでは話もないでしょう。個人的には打ち倒して殺してしまった方が手っ取り早くて良いんですけどね」
「ころ……っ!? い、いやでも……そう、なるのか……」
「と言っても、私ももうそろそろ限界なので戦闘を考えるのはやめた方が良いかもしれませんね」
「限界……?」
「ええ、ちょっといまは無理をしてますので。ただでさえ貴方にご執心な魔女に邪魔されていますからね、やれやれ、どんな時に置いても魔術を扱う魔女というのは本当に厄介で仕方ありませんね」
心底うんざりだ、と言うかのように肩を竦める彼女。ただその表情は貼り付けられたように笑顔から変わることはないのだが。
「おっと、本当に時間がありません!それじゃあ私はこれで!」
「な……おいちょっとどういう!?」
彼の叫び声と同時にメイドの放った魔法が彼等に先程とはうってかわり着弾した