なにやらチートのような体を手に入れたので楽しく生きたいと思います(願望) 作:nonose
幾度の撃ち合い。既に相手の女は瀕死の状態に見えるが、一向に倒れ伏す気配が見えない。
それどころか、更に速さを増していく。
「本当に気味が悪いほど倒れませんねっ!」
「あら、それはこっちも思っているわ。こちらの攻撃が全然当たらないもの、飛ばしたナイフも不自然にナイフが避けた。もしかして風避けの加護でも持っているのかしら……?」
風避けの加護……?
もしかすれば、この身体本来の能力が使えたりするのか?
「考え事かしら。妬いちゃう」
「戯けたことを」
俺の大振りの1太刀、相手の女の鋭い横一閃。
「やっとその可愛い顔に傷がついたわ……」
「やられましたね」
振り下ろした長剣は半ばから綺麗に折れ、頬に鋭い痛みが走る。
切れた頬から流れる血を指で拭いとる。
「ふぅ、この世界のこと少し舐めてかかりすぎたみたいです」
相手の女は俺の言う言葉に何も言わず聞いてくれている。
後ろの青年は、少し気にかかっている様子だが、そういうことなんだろ。
「色々と不安はありましたが、貴女とやり合って漸くわかりました」
「なにかしら?」
「私は狂いかけてるってことをですね」
「それは面白いわね」
「えぇ、いまこの瞬間が楽しくて仕方ないんです。どうすれば攻撃が当たるのか、どうすれば防げるのか避けられるのか……そう考えたいですけど、それすら許してくれない貴女の戦い方はとても好ましい」
「褒めてくれているのね。嬉しいわ」
「出来れば、この瞬間が続けば良いと思いますが、無理でしょうね。私も野暮用があるので」
「それは残念ね。私も貴女とするのは少し楽しかったのだけれど」
「そうですね、ですから最後に名前を聞いておきましょう。名乗りを許しましょう」
「……ふふっ、貴女本当に面白いわ。そういう人は好きよ。───『 腸狩り』、エルザ・グランヒルテ」
「また会えるのを楽しみにしています。──『 越後の軍神』、長尾景虎。推して参る!」
戦意が練り上げられる。身体の奥底の核が増長する感覚を感じる。
ドクンドクンと脈を打つ、自然と力が入る。右手と左手をグッと力強く握ればいつの間にか手の中には槍が2条。
遠き日に彼女自身が握った無銘の槍。
「いまはこれでも上々! 咲き荒べ、八華繚乱!」
「さっきより、荒々しいけれど。とても良いわ……感じちゃう」
いままさに最後の決着のとき──。そうなるはずだった。
盗品蔵の天井を突き破り、現れたのは燃えるような赤髪の男。
後方にフェルトが居ないところを見ると、エミリアは抜けてはいるもののバカではなかったようだった。
あぁ、萎えた。