スカーレット姉妹の現代旅   作:松雨

11 / 29
スカーレット姉妹とふれあい

「その怪我痛そう……今すぐ私が治してあげる!」

「フラン、大丈夫? 誰かに見られたら君にとって、とっても面倒な事に……」

「私の事は心配しないで! それよりも、お兄様が痛そうにしてる方が辛いから……」

「分かった。そう言う事なら、お願い」

「うん! 任せてよ!」

 

 フランがのび太に掃除を押し付けていた男の子たちを、破壊衝動を何とか抑えつつ手加減した上で力ずくでねじ伏せ、もう絶対にやらないと言う約束を取らせてから学校を出た後、少しだけ出血していた手の甲を怪我を回復魔法で治しながら、そんな会話を交わしていた。

 

 最初は誰かに見られた場合、フランが変な目で見られてしまうのではないかと危惧したのび太が今すぐ治さなくても良いと言ったが、自分の事はともかく怪我で痛そうにしているお兄様を見るのが辛いから治したいと、今にも泣きそうな感じでのび太は言われ、それならばと素直にお願いをする事に決めた。

 

「お兄様大丈夫? 怪我した所、本当にもう……痛くない?」

「うん、フランの『回復魔法』のお陰ですっかりね。それに、僕のために助けに来てくれた時の君には驚いたけど、嬉しかった。ありがとう」

「えへへ……お兄様に笑顔が戻って、本当に良かった!」

 

 フランの回復魔法による傷の治療が完全に終わると、のび太に対して怪我していた場所は本当にもう痛くないのかと、心配そうに見つめながら聞いた。

 

 それに対して、当の本人は回復魔法によって傷が完全に治った手の甲を2回ずつ叩いたり擦ったりして全く痛くないと言うのをアピールしてから一呼吸置いた後、掃除を押し付けられそうになった時に助けてもらったお礼を、優しく頭を撫でながら目線を合わせて笑顔で言う事によって、フランの心配を解こうと試みた。

 

 結果、フランの心配を完全に彼方へと消し去るのび太の試みは成功し、加えて自分の行動をレミリアと同等の()()()()()()()に褒められたと言う幸福感を与える事も出来たと言う、最高のものとなっている。

 

「それにしても話を聞く限りだけど、関係ないのび太に掃除を押し付けようとして、断られた途端に突き飛ばして怪我を負わせるなんて……酷い奴らね」

「でしょ? その時のお兄様の表情を見たらね、もう本当に辛そうで見てられなかったの。だから、本当なら()()()()()()()きゅっとしてやりたかったんだけど……」

 

 そうしたやり取りが終わった後は、レミリアや紫が見ていない間に一体何があったのかを促されたため、のび太が出来る限り3人に詳しく説明をした。

 

 すると、話を聞いたレミリアは表情を険しくしてのび太に掃除を押し付けようとしたその行為に不快感を示し、フランに至っては未だに思い出す度に怒りが沸いてくるようで、あの場に居た全員に能力を使って殺してやりたくなった衝動に駆られたと、他人に聞かれても分からないような言葉で表しつつ右手を前に突き出し、何かを握り潰すような動作でも表した。

 

 同世代かつ同種族ではないものの、レミリアとフランの2人とは家族のような関係となったのび太であったが、その言葉の意味は分からずにいた。しかし、右手を突き出して何かを握り潰す動作を見た時に、フランが教室で男の子たちに対して何をしたかったのかを理解したため、一瞬だけその行為に対して身震いする。

 

 ただ、実際にはそれをせずに耐え、次やったらただでは済ませないとジャイアンに似た感じで脅す程度で収めたので、フラン本人に対して恐れや恐怖を抱く事は全くなかった。

 

「私との約束と、のび太の性格を考えて我慢したのよね」

「そう! きっと優しいお兄様の事だから、あんなゴミのような奴らに対してでもやり返したりしないだろうし……それに、お姉様にもお兄様にも、嫌われたくないから……」

「まあ、確かにやってたとしたら貴女の印象が最悪まで低下してた事でしょうし、その判断は間違いなかったわ。それに、良く能力を使わず耐えれたわね。偉いわ、フラン」

「えへへ、やっぱり? 本当、みんなまとめてきゅっとしなくて良かったぁ……」

 

 その後はフランが例の男の子たちをゴミ扱いしたり、レミリアが衝動に耐えて約束を守った事に対して褒め、フランが笑顔を見せて喜ぶ様子を少し離れた所からのび太と紫が見守ると言った状況が続く。

 

 2人のやり取りを見ていて、のび太は自分の事を想って色々してくれた事に感謝しつつも、時折フランの口から出てくる例の男の子に対する悪口に、周りから好奇の目で見られないか心配で仕方なかった。ただ、諭そうにも楽しそうに話している姉妹に割り込みづらく思ったためか、悪口と言っても『死ね』や『殺す』などのキツすぎるものではないこともあって、本人が平気なら良いかと思う事にして見守りを継続する事に決めたようだ。

 

 すると、そんなのび太の思いを紫が察したらしい。レミリアとフランの会話に割り込み、代わりにあまり大きな声で人の悪口は言わないで欲しいと『のび太が言っていた』と、そこだけ強調して諭すように言った。結果、フランは不味い事してしまったと言う表情をしながらのび太の方へと向かい、目の前に立って小さな声で謝り始める。

 

「お兄様……ごめんなさい。もしかして、怒ってる……?」

「ううん、僕は全然怒ってないよ。ただ、フランが悪口言ってる事で周りの人から変な目で見られないか、心配なだけだから」

「私のために心配してくれてたなんて、やっぱりお兄様って優しいね……ふふっ、分かった! 気をつけれるように頑張る!」

「うん。さて、家に戻ったら沢山遊ぼう。今日は誰とも約束はしてないから」

「……そうなの? じゃあ、今日はお姉様とお兄様を私が二人占めだね!」

「確かにそうなるね」

「ええ、そう言う事になるわね」

 

 フランがのび太に謝り、これについてあっさり解決した後はいつも通りの3人の会話となって、家へと戻るまでこの状態が続く事となった。そうして家へと4人で帰ると、今日の出迎えがのび太の母親であったので、少しだけ珍しげに見ていると、彼女が口を開く。

 

 何でも、レミリアたちが学校へと行っている間にのび太の父親から電話がかかってきたらしい。内容は今日の夕方6時頃に帰って来た後、皆で一緒にとある和食料理屋に出かけて食べに行こうと思っているから、行きたいか行きたくないかを聞いておいてくれと言うものだったため、まずは紫以外の3人にどちらなのかと早速聞いてきた。

 

 最初にその問いに対する答えを出したのはのび太で、行くと言うものであった。そして、のび太が行くと答えた事でなし崩し的にレミリアとフランも外食に行く事が決まる。ドラえもんは既に行くとの返事を返していたため、これで合わせて6人となった。

 

「八雲さんも、良かったらご一緒如何でしょうか?」

「そうですね……今日の予定は学校見学以外ない関係で時間はありますし、貴女が宜しければ是非とも一緒にお食事に行かせて頂きたいですわ」

「では、決まりですね八雲さん。それまで家に上がってゆっくりとお過ごし下さい」

「感謝致します」

 

 3人の答えが決まるとのび太の母親は最後に紫を食事に誘い、これが快諾された事によって最終的には7人で夕方に和食料理屋に出かける事が確定し、後はのび太の父親が会社から家に帰って来るまで待つだけとなった。

 

 洗面所で手を洗ってうがいをしてから、2階の部屋で待っている間はレミリアとフランが学校見学についての感想や、学校に初めて登校する日の予定などを、のび太やどら焼きを美味しそうに頬張っているドラえもんに対して話したりした。

 

「それにしても、レミリアとフランの初登校は3日後なんだね。しかも、僕と一緒のクラスになったなんて……皆ビックリするだろうなぁ」

「確かに。それと、出来れば3日後まで友達には秘密にして欲しいわ。サプライズしたら面白そうだからね」

「分かった。約束する」

 

 学校関係の話が終わって少し経った時、和食料理屋に行くのにどら焼きをそんなに食べて大丈夫かと言うツッコミがのび太から出されるも、全く問題ないと言わんばかりに食べ続けてレミリアがドン引くと言ったやり取りもあったりしたが、皆で楽しく過ごした。

 その際、どう言う訳かその時からフランが1人だけ別の方向を向いて(ほう)けていたため、それを不思議に思ったのび太であったが、教科書を持っていた事から自分と学校に行って授業を受ける想像でもして楽しんでいるのだろうと思い、邪魔をしないように話しかけない事に決める。

 

 そうして、学校見学を終えて家に戻ってきて待つこと2時間半、父親が帰って来たと伝えにのび太の母親が2階の部屋に来たため、軽く身支度をしてから全員で出発した。割りと家との距離が離れていないようなので、そのまま目的地まで歩きで向かう。

 

 和食料理屋に向かう道中、のび太の両親に対して3日後に学校へ通う事に決まったのを伝えていないと思い出したレミリアとフランは話を切り出し、ついでにのび太たちに言ったように見学の感想も楽しげに話す。

 

「ふむ……3日後にのび太と一緒の学校に行く事にねぇ……色々と慣れない事があるだろうけど、2人にとって楽しい1ヵ月の思い出になる事を願うよ。まあ、学校見学の時の様子を楽しそうに語る君たちなら大丈夫だろうけどね」

「勿論、沢山の思い出を作るよ! それにしても、運良くお姉様もお兄様も一緒だし……もう今から学校に行くのがスッゴく楽しみ!」

「確かにそうね、フラン。授業がどんな流れかは見学で何となく掴めたけど、今日見たのはほんの一部だろうから、私も他にどんな事をするのか楽しみで仕方ないわ」

「だよね。それに、給食だって見学の時は食べれなかったけれど、今度は実際に食べる事が出来るのも嬉しい要素だし」

「なるほど……まあ聞く限りだと、のび太の通う学校の給食は結構美味しいらしいから、レミリアちゃんとフランちゃんも期待して大丈夫だと思うぞ」

 

 レミリアとフランの話を聞き終えると、のび太の父親は1ヵ月の日本の学校生活が楽しい思い出になる事を願うと言った。当然、言われるまでもなくそのつもりでいたためフランは高らかに宣言し、レミリアもそれに頷いて同調した。

 

 その後はいつものように姉妹の仲睦まじい会話が始まり、たまにのび太の父親が内容とタイミング的に割り込んでも大丈夫な時に割り込み、少しだけ学校関連の事を話すと言った流れがしばらく続く。他の4人は置いてきぼりを食らったため、こちらはこちらで当たり障りのない世間話をしたり、知らない紫のためにこれから行くお店の料理についての説明を母親がしているのを、ドラえもんとのび太が改めて聞いていた。

 

「いらっしゃいませ。7名様で宜しいでしょうか」

「はい。それでお願いします」

「分かりました。ではこちらへ……」

 

 後は特に何も起こる事もなく歩きで30分、格式高い日本家屋風の和食料理屋に到着した。それなりに混んではいたものの、全員が座れる分の席自体はあったようで、普通に店員さんに案内された。

 

「随分値段の高そうなお店ですが、大丈夫なのですか?」

「ええ、大丈夫ですよ。確かに上質な食材を使っている店なので普通よりは高いですが、ちゃんと準備した上でここを選びましたので。それに、毎日寄る訳でもないですから」

「なるほど」

 

 案内された席に座り、各々何を食べようか選ぶ中で紫が店の外観や内装などの要素からのび太の父親に、高そうな店だけど大丈夫なのかと少しだけ心配そうに質問していた。自分たちのために、経済的に無理をさせるのはあまり良くないと思っているためである。

 

 しかし、のび太の父親はその質問に対してきっぱりと大丈夫だと宣言をした。確かに普通よりは値段は張るものの、準備はしてある上にしょっちゅう寄る訳でもないと言うのが理由のようだった。そのため、これを聞いた紫は安心して適度に料理を楽しむ事に決めた。

 

 そうしている内に店員さんが席近くを通ったので声をかけ、のび太とフランはえび天うどんでレミリアは蕎麦、ドラえもんは味噌汁定食でのび太の父親はトンカツ定食、のび太の母親はの盛り合わせで紫が最後に蕎麦とかけうどんを頼んだ。これだけで8000円近くはかかっているが先程も言っていたように、想定済みなので問題ないらしい。

 

「フラン、どう? えび天うどん、美味しい?」

「……あ、うん! 美味しいよ、お兄様!」

「この蕎麦美味しいわね。流石、上質な素材を使っているだけあるわ」

「お姉様、蕎麦一口ちょうだい!」

「ええ、良いわよ」

「ありがと……うん、美味しい!」

 

 待つ事25分、最初に単品でうどんや蕎麦を頼んだ3人の料理が運ばれてきたので、先に食べ始めた。この店が出す和食は、どうやら常々良質な素材を使った咲夜の作る料理や、時々人里の腕利きの職人の作る和食を食べているレミリアでも思わず舌を巻く美味しさであるようで、とても満足げであった。のび太や紫は言わずもがな、目のハイライトが消えかけ、何かに惚け気味のフランもレミリアの蕎麦を一口もらいつつ、自分のえび天うどんもかなりのペースで平らげるなど、かなり満足感を得ている。

 

 それから更に10分後、3人以外の頼んだ各種定食や天ぷらなどの料理も運ばれてきて、木製テーブルの上は全員の頼んだもののお皿やどんぶりで一杯になった。

 

「高いけど、やっぱりここの定食は上手いなぁ!」

「普段殆んど来ないから、特別感があって良いわねぇ」

 

 レミリアとフランとのび太の3人とは別に、のび太の両親も特別な時にしか来ない和食料理屋と言う事もあり、食事をしながら良い雰囲気で会話を交わしている。紫はドラえもんに普通に話しかけつつ、何のためなのかは不明であるが、未来のひみつ道具を中心に色々な情報を聞き出していた。当然、ドラえもんが言ったのは誰かに知られたりしても問題ないレベルの事柄であったが、それでも紫にとっては充分足るものであったらしく、ある程度聞いたところでお礼を言って未来の話を切り上げた。

 

「紫さん、僕にこんな事を聞いて一体何を……?」

「まあ、ちょっと未来に興味があってね」

「本当に興味があるってだけですか?」

「勿論よ……あら、皆も食べ終えて帰るみたいだし、私たちも行きましょう」

「……」

 

 突然そんな事を聞いてきた事を不思議に思ったドラえもんは、一体何をする気なのかと紫に聞いてみると、単に未来に興味があると答えた。しかし、隠し事がありそうな気がしたのか、本当にそれだけかともう一度聞くも、返ってきた答えが同じであった上にこのタイミングで皆の食事が終わったため、ドラえもんは仕方なく聞くのは止めておく事に決めて、既に会計を済ませていた皆と一緒にこの和食料理屋を出て行った。

 

 後は他愛もない話をしながら歩みを進め、のび太の家の前についてから紫と別れ、中に入って全員が手洗いうがいを済ませ、交代でお風呂に入った。それが済むと、時間が多少余っている事から寝るまで皆でのび太の宿題を教えたり、テレビを見たりしながら過ごす。

 

 そうして寝る時間となり、お休みなさいの挨拶を済ませた後にそれぞれの寝室へと向かって眠りについた事で、色々あった今日1日は終わりを告げた。

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

「ふふっ……皆ぐっすり寝てるのも確認したし、もう大丈夫だよね!」

 

 日付が変わってから少し経った夜中のある時、1人で起きていたフランは、寝ているレミリアを起こさないように布団からこっそりと抜け出してのび太の両親の寝る部屋まで向かい、しっかり寝ている事を確認した後に、ある目的のためにのび太の寝ている部屋に訪れていた。それは、如何なる邪魔も入らない静かな環境下で吸血を行い、自分に現れた衝動を解消するためである。

 

 現代旅を始めてからは殆んど吸血衝動に駆られる事はなかったが、のび太が学校で怪我をした際に出た少量の血を目で見て匂いを嗅いでしまった事に加えて、前に1度だけ血を飲んだ時の事を思い出してしまい、本能が強く刺激を受けて急激に衝動が復活してきてしまっていた。

 

 本来ならあの場で吸血をしたい位に衝動は強かったが、人の目がある場所でやってしまえばのび太やレミリアに迷惑がかかると思い、残った理性で何とか耐え抜いた。それから今に至るまで3回、並みの精神では負けていたであろう衝動に耐え抜きながら皆が寝静まって邪魔が入らない時まで待ち、念には念を入れて皆が深く寝ている事を確認してからの、フランこの行動であった。

 

「お兄様、ねえ起きて。お兄様……!」

「ん……あぁ、フラン? こんな夜中に……」

 

 のび太は1度寝てしまえば並大抵の刺激では起きない。なので、寝ている間に事を済ませればすぐに終わったのだが、まだ残る理性がそれを許さなかった。そのため、フランは寝ているのび太を強く揺すったり怪我しない程度に叩いたりしながら声をかけて起こし、吸血の許可を求めようとした。

 

「もしかして、僕の血が欲しいの?」

「そうなの。喉の渇きが凄く辛くて……お願い……」

「……分かったよ。出来るだけ痛くしないでね、フラン」

「うん……!」

 

 しかし、フランがのび太に許可を取ろうとする前に、先に血が欲しいのかと聞き返してきた。どうやら、フランの表情や仕草などから裏山で別れたあの時と同じ展開である事を察したようだ。

 

 当然、最初からそのつもりでのび太の下へ来たフランはそうだと答え、無意識に女の子座りをしながらお願いをした。すると、のび太は布団から体を起こして、吸血しやすい体勢になった後に分かったと言って許可を出した。その言葉を聞いたフランは満面の笑みを浮かべながらのび太に飛び付き、痛みが生じないように噛む箇所を時間をかけて舐めた後、改めて噛み付いて吸血を始めた。

 

「んっ……ふぅ……」

 

 本能のままに沢山血を飲み過ぎてしまい、まかり間違ってのび太を殺してしまったり、死なせなくとも今後の生活に支障を来す事がないように気を遣いつつ、フランはこの至福の一時を少しでも長く味わうために少しずつ血を飲み続ける。その分だけのび太にも長い時間快楽が与えられているが、1度経験済みであるためか比較的落ち着いて様子を見守っていた。

 

 しかし、普通ならぐっすり眠っている時間帯である上に与えられている快楽も加わったせいか、強めの眠気がのび太に襲いかかっている。ただ、現在フランが吸血中であるため、眠らずに耐えている状態である。

 

「はぁ……はぁ……私、幸せだよ……お兄様、ありがと」

「……満足した?」

「うん。じゃあ、回復魔法を――」

 

 そんな感じで2分が過ぎた頃、満足したフランが首筋から口を離して傷口を治すために回復魔法をのび太に使おうとした時、部屋の扉が開く音が聞こえたため、視線を扉の方へと向けた。

 

「私抜きで美味しそうなのび太の血を飲んでたなんて……ズルいわよ、フラン」

 

 すると、そこに居たのはレミリアであった。どうやら、目覚めた際にいつの間にか居なくなっていたフランを探しにやって来たようだ。部屋に入ってすぐに状況を察したのは、吸血鬼の嗅覚で感じ取ったのび太の血の匂いと、フランの口元からそれと同じ匂いのする血が滴り落ちそうになっていたのが原因との事らしい。

 

 レミリアからそう聞いたフランは申し訳なさそうにしながら謝っていた時、咄嗟に何かを思い付いたらしい。再びのび太の首筋に噛み付いて1口分の血を口に含み、回復魔法を使ってからレミリアへと近づいて行った。

 

「フラン、一体何を……!?」

 

 良く分からない謎の行動にレミリアが首を傾げた次の瞬間、フランが彼女の頬を両手で挟んで自身の側まで引き寄せると、無理やり口移しでのび太の血を飲ませ始めた。流石のレミリアも、これには思わずビックリしたようである。

 

「お姉様。これで、今日は許してくれるかな?」

「のび太の血がこんなに美味しいなんて……それに、フランとキスまで……」

「お姉様……?」

「あっ……ごめんなさい。勿論、ここまでしてもらったら許さない訳には行かないわ」

「本当?」

「ええ、本当よ」

 

 口移しを終えると、フランはレミリアに対してこれで許してもらえるかと聞くものの、飲まされたのび太の血が想像以上に美味しかった上に結果的にキスをされた事によって惚けていたため、返事を返せなかった。それに対して、何らかの不安を覚えたフランが肩を揺すってようやくレミリアが気付き、許すと言った事で血の独り占めの件は解決した。

 

 その後はいつの間にか眠っていたのび太に毛布を被せ、吸血の際の快楽によって疲れたフランを背負って1階まで下っていき、布団に寝かせてからレミリア自身も布団に横になって、幸せな気分のままで再び眠りについた。

 

 

 




ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りと評価、感想をくださった方にも感謝です。励みになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。