「本当に良かったぁ……ドラえもん、ありがとうね! お陰で、お兄様が私のせいで遅刻して怒られずに済みそう!」
「どういたしまして。それにしても、フランが起こしても起きないなんて珍しいと思ったら、夜中に吸血行為をしたせいだったんだね」
「うん。昨日、お兄様が怪我してからずっと血が欲しくて仕方ないって衝動を皆が寝静まるまで耐えて、それから部屋まで行ってお願いしたら、嫌がらずに聞いてくれて嬉しかったなぁ。お陰で今、私はとっても元気だから!」
「それは良かった。君が元気になったのなら、きっとのび太君も嬉しがってると思うよ」
学校見学に行った翌日の朝、フランはドラえもんに対して強い感謝の意を示していた。それは、いくら起こしても起きないのび太をひみつ道具の力で起こし、ギリギリ学校に遅刻しない時間に送り届ける事に成功したためである。
最初はフランが普段通りに起こしに行ったものの全く歯が立たず、数分後にレミリアに魔法でどうにかしてくれと頼んだが、そもそも眠りに関する魔法を取得していなかった事によってこちらも打つ手なしの状態であった。途中で、それが吸血行為によって与えられた快楽が眠気に強く作用したためだとレミリアが推測するものの、だからと言って状況が好転する訳もなく、考えた末にドラえもんに助けを求めた。
対して、ドラえもんは『ネムケスイトール』と言うひみつ道具を使用してのび太の絶大な眠気を吸収し、普段よりもスッキリした状態で起こす事に成功したものの、増大したそれが手強かったせいで時間がかかってしまい、その時には既に歩きでは到底間に合わなくなっていた。なので、レミリアとフランが着替え以外の支度を手伝い、最後の手段として『どこでもドア』を使って学校内の物置の陰に送り届け、事なきを得たと言う経緯であった。
「いやぁ……まさか、これを使っても眠気を全部吸い取るのにこんなにかかるなんて思ってなかったなぁ。お陰でのび太君遅刻させかけるし……」
「いや、結果としてのび太はドラえもんが判断して使ったひみつ道具で起きれて、遅刻せずに済んだのだから良かったじゃない」
「お姉様の言う通りだよ! それに、遅刻させかけたのはドラえもんのせいじゃなくて、起こせないと分かってもすぐに言わないで自分でどうにかしようとしてた私のせいなのが大きいんだから、気にする必要なんてないんだよ? と言うか、元を辿ればあのタイミングでお兄様の血を飲んだ私のせいなんだし……」
そのため、2階の部屋で休憩がてら3人で会話を交わしていた時、ドラえもんが起こすのに時間がかかり過ぎて遅刻させかけたと言った際にレミリアが横やりを入れ、更にフランがすぐ後に遅刻させかけたのは自分に要因があるのだからと、それを強く否定して気にする必要はないと言った。
実際、今回のび太が布団から起き上がれずに遅刻しかけた事に関してはドラえもんに要因は一切なく、フランに主な要因があるため、それは正しいと言える。ただ、のび太が自分の意思で吸血を受け入れている上に、フランもこれを故意に狙った訳ではない。おまけにフランは謝罪もしっかりして、のび太もそれを受け入れていた……と言うよりは、最初から全く気にしていなかったため、今回起こってしまった
「まあ、言われてみれば確かに遅刻しなかったから気にする必要はないね。でも、それを言うならフランだって気にする必要なんてないよ。ちゃんと謝ってたし、のび太君だって全然気にしてなかったから」
「……うん!」
それをドラえもんは分かっていたらしく、フランが今回の出来事は自分に要因があるのだから、ドラえもんは気にする必要なんてないと言った後すぐ、逆に気にする必要はないと言って安心させようとする行動を取った。その言葉を聞いてフランが頷いた後、次はもっと気を付けようと決意したところで、この事についての話は終わりを告げる事となった。
「さてと、これから何しましょうか? 2人だけで出来るめぼしい事はそれなりにやっちゃったし……」
「確かに。ねえドラえもん、何か面白そうな事ない?」
「面白そうな事? うーん……どうしようか――」
「それなら、皆で一緒に『お買い物』はどうかしら? のび太の御母様には、一応その旨は伝えておいてあるのだけど」
のび太を遅刻させかけた事についての話を終え、気を切り替えて今日は何をしようかとレミリアたち3人が相談し始めたその時、紫がスキマからではなく、買い物をするのはどうかと提案をしながら普通に部屋の扉を開けて入ってきた。
「お買い物? 別に構わないけど、何を買いに行くの?」
「色々考えてるけれど、そうね……主に2人が学校に通う日に向けて着ていく服と、教科書を入れておくための『ランドセル』かしら」
紫がスキマではなく、普通に扉を開けて入ってきた事に少し驚きつつも、フランが一体何を買いに行くのかと質問すると、学校に行く時に着ていく服とランドセルは絶対で、予算に余裕さえあれば他にも色々な物を買いに行く予定であると答えていた。彼女曰く、外の世界でしか買えない物を買っておけば、きっと思い出になるだろうからとの事らしい。
服はともかく、ランドセルに関しては幻想郷で手に入らない物であるため、2人は確かに思い出には残るだろうと紫の言った事に納得した。特に、フランはのび太やレミリアと同じ物を持てると言うのが嬉しいらしく、今すぐ選びに行こうと紫を急かす程に気分が高ぶっていた。
「フランドール。そんなに急かさなくても、今すぐ行くつもりだから」
「うん。それで、ドラえもんはどうするの? せっかくだから、一緒にお買い物行こうよ!」
「私からも、出来ればお願いしたいわね。ドラえもんが居た方が何かあっても安心だし、何より楽しいもの」
「勿論、今日は何の予定もないから良ければ僕も行かせてもらうかな」
「決まりだね! 紫、それでも良い?」
「ええ。当然よ」
「じゃあ、出発進行ーー!!」
当然、今すぐ行くつもりで用意を済ませていた紫は、フランに対して急かさなくても行くから落ち着いてくれと声をかけると、ゆっくりと頷きながら深呼吸をして落ち着きを取り戻す。その後、フランはレミリアと共にドラえもんを買い物に誘うと、本人と紫が首を縦に振った事で4人で外に出かける事が決定したため、のび太の母親に買い物に出かける旨を伝えて、出かけるための準備を済ませてから全員で家を出て行った。
「お兄様と同じ色の奴は男の子専用の柄なのは残念だったけど、そう言う事なら仕方ないね。でも、それじゃあ私は何色が良いのかな? お姉様」
「やはり、ここは定番らしい赤色が良いんじゃない? 私たち姉妹のイメージカラーでもあるから」
「なるほど。でも、男の子用よりも女の子用のランドセルにはピンクとか水色みたく、結構色のバリエーションがあるって紫が言ってたよ?」
「あぁ……確かに言ってたわね。なら、今どうしようか決めるよりも、実際にお店に行ってみて決めましょう。後悔したくないからね
「そうだね! 後、私たちのランドセル姿をお兄様が見たら、何て言うのかなぁ?」
「さあね。実際に見せてみてのお楽しみって奴よ」
家を出てから、レミリアとフランは2人でランドセルについて紫からある程度の事を聞き、どんな色の奴を買おうかと言う話し合いを始めていた。たった1ヵ月、休みも入れれば20日程度しか学校に通う事はないものの、ランドセルの色1つ決める話に時間をかけるなど、その間に沢山の思い出を作るための買い物故に2人に余念はないが、結局は話し合い程度では決めきれずに店に行ってから考えようと言う結論に達した。
ランドセルの話が終われば、次は学校に着ていく洋服についての話が始まった。ただ、こちらについては事前情報が無いに等しかったため、今まで見た事のある通行人などの服装から頭の中で想像するしかなく、これも結論は店に行ってから良く考えて決めようと言うものに決まった。
「……大きい建物ね。一体どれだけの店があるのかしら」
「凄い沢山の人だよ、お姉様! 買い物抜きにしても、何だか楽しそう!」
「ええ。これだけ広ければ、服やランドセルを売る店以外にも色々ありそうだし、フランの言う通り楽しめそうね」
その後は紫から色々と話を聞いたりしながら歩いて向かう事30分、目的である服屋やランドセルを売る店がある巨大な複合型商店に到着した。平日にも関わらず駐車場には沢山の車が止まっていて、多くの人が行き交う光景を目撃したレミリアとフランは、まだ見ぬ内部には一体何があるのかと、楽しそうに言っている。
4人で会話をしつつ正面の入り口から中に入り、有名なファストフード店やラーメン店を含む飲食店が立ち並ぶエリアを抜け、エスカレーターで2階に向かってゲームコーナーの前を通り、偶然突き当たりにあった洋服を売る店を見つけるとそこに皆で入って行き、どんな服を買って着ていこうかと歩き回りながら相談していた。
途中、レミリアとフランがどれだけ買っていいのかと聞いたところ、資金だけは沢山用意してあるため、余程の無茶なまとめ買いや超高級品などでなければ良いとの事らしい。いつの間にそんなお金を用意したのかと疑問に思う2人であったが、今のところ自分たちにしか得がない上に、のび太とドラえもんに何か無理強いしてる訳でもなさそうであったため、今は考えるよりも楽しもうと決めた。
「うーん……お姉様、沢山ありすぎて決められないね」
「ふふっ。私はともかく、フランはどれを着ても可愛いから、余計に決めにくいものね」
「可愛いって言われた……えへへ」
あまりの沢山の服にどれにしようか決めかねているフランに、どれを着ても可愛いからねとレミリアが言って喜ばせていると、その光景を入店時から遠目で見ていた店の従業員が2人の下へ近づいて行き、声をかけた。
「あの……もし宜しければ、私共がお客様の洋服選びをお手伝い致しましょうか? 随分迷っていらしたので」
「えっと、このお店ってそう言う事してくれるところなの?」
「まあ、そうですね。勿論、そう言うのを望まない方には無理強いしませんが」
「へぇ……じゃあ、ちょっとだけお姉様たちと相談するから待っててもらっても良い?」
「どうぞ。お待ちしています」
店の従業員曰く、2人がどれを選んだら良いのか迷っていたのを見て、似合う服選びの助けとなるために声をかけてきたとの事らしい。フランがこの店はそう言う事をしてくれるところなのかと質問したところ、従業員の人がそう答えたのでこの店のサービスの中に組み込まれているのが伺えた。
すると、フランは従業員の人にその場で待ってもらうようにお願いした後、レミリアと共に少し離れたところから見守っていた紫の方に近寄ると、店の人に任せちゃっても大丈夫かと聞いた。それに対し、紫が大丈夫だと即決した事で手伝ってもらう事に決めた2人は、店の人の方へと戻っていった。
「決めたよ! 私とお姉様の洋服選びのお手伝い、貴女にお願いしたからよろしくね!」
「と言う訳だから、よろしくお願いするわね」
「了解です。お任せください」
「「はーい!」」
その後従業員の人に手伝いをお願いして、彼女が制服の胸元に付けてあった無線機に対して呼びかけ、他にもう1人来たところで再び洋服選びを始めた。すると、従業員2人のアドバイスや提案などもあり、今まで迷っていたレミリアやフランが気になった服を手に取り、試着して気に入れば購入を決定していくと言った感じであれよあれよと買い物が進んでいった。
更に、どうせならと言う事で本来予定にはなかった各種下着や靴、アクセサリーなども2人分購入を決めた。こちらの方についても、従業員の人の意見や嗜好をある程度取り入れているようであった。そして、最終的には会計が5万円を超えたものの、紫の今回の買い物に用意した予算の6割の消費であるため、1つも欠ける事なく購入が確定した。
「随分買ったわね。とは言え、まだ予算に余裕があるから良いけれど……さて、2人共。次はランドセルを買いに行くわよ」
「分かったわ」
「うん、分かった!」
そうして服の購入を終えると、すぐさまランドセル売り場に向かうために洋服店を出た。紫とドラえもんが前もって目的の場所を誰かに聞いておいてくれたお陰で、売り場が1階の学校用品エリアの一角にあると言う事が分かっているため、来た道を戻ってエスカレーターで1階へと戻って来た時とは逆の方の入り口方面に向かい、途中にある道を左に曲がった後は道なりに進んでいると、児童や生徒が学校で使う物を販売する学校用品エリアへと到着した。後は目につく場所にあったランドセル売り場へと向かい、選んで買うだけとなった。
「私たちには関係のない話だけれど……女の子のランドセルに比べて、いくらなんでも男の子の方は少な過ぎないかしら? もう少しバリエーションが多くても良いと思うわ」
「うん。確かに言えてるけど、何か理由があるんじゃない? 例えば、男の子はランドセルの色に拘りがあんまりないとか、昔のなんかの風習とかの名残だとか……」
「まあ、その予想の真偽はともかくとして理由がある事には間違いないわね。さてと、取り敢えずこの話は置いといて、早くランドセルを選びましょう。フラン」
「うん! お兄様にもお姉様から『可愛い』って言われたように言われたいから、服の時みたいにしっかり考えて選ばないとね!」
ランドセルの色の種類が女の子の方がかなり多い理由について話し合いながら、2人は何色にしようか吟味していた。特にフランは、服選びの際にレミリアから可愛いと言われた事がとても嬉しかったようで、同じように家族認定しているのび太にも言ってもらいたいがために、今着ている服と買った3着の服に合うと思う色のものはどれだろうかと、普通よりも遥かに時間をかけて考えていた。
そんな感じで考えに考えた結果、最終的にレミリアは薄めの紫色のランドセルを、フランは少しだけピンク色の入った赤色のランドセルを選び、予算内に収まる範囲であるため購入する事に決定した。
「どうかな? お兄様、何て思うのかな?」
「それは分からないけれど、少なくとも変に思われない事だけは確かよ。フラン」
「うん。優しいお兄様の事だから、それは分かってるけど……欲を言えば、お姉様が言ってくれたみたいに可愛いねとか、似合ってるねとか言われたいなって」
「まあ、貴女のその気持ちは分かるわ。私だってフランは勿論の事、のび太にそう言われたら嬉しいもの」
「だよね! えへへ、今からお兄様にこの格好を見せるの楽しみだなぁ……」
目的である洋服とランドセルを買う事は出来てご満悦なレミリアとフランであるものの、予算がかなり圧してきているためこれ以上の買い物は出来ない。そのため今日はこれにて帰ると紫が言い、2人はそれに対して理解を示して帰ろうと、店の出入り口から出ようとしたその時にある事に気がつく。
「あっ……良く考えたら、私たち2人だけ楽しんでて誘って連れてきたドラえもんが全然楽しめてないじゃん!」
「言われてみれば、確かにそうかもしれないわね。ごめんなさい」
「いや、僕は全く気にしていないから大丈夫だよ。フラン、レミリア」
「本当?」
「本当だよ。元々、その辺を散歩するつもりで君たちについていったから。それに、紫さんから色々とお菓子とかを買ってもらったりしてたから」
「なら良いけど……」
それは、今までの買い物で楽しんだのは自分たちだけで、誘って連れてきたドラえもんを殆んど放置していたような状況であったと言う事であった。なので、2人はそれについてドラえもんに謝罪をするものの、当の本人は全く気にしていなかったらしく、その点については大丈夫だと言う事を伝えたため、殆んど放置していた件についてはあっさりと解決した。
こうして、予算も殆んど使いきった状態である事から、4人は買い物を終えて家に戻る事になった。
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