スカーレット姉妹の現代旅   作:松雨

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スカーレット姉妹とドッジボール対決

「あらまあ……レミリアちゃんとフランちゃん、随分可愛いお洋服を買ってきたのね。背負ってるランドセルもお似合いよ」

「ふふっ、そう言ってもらえて嬉しいわ」

「私もだよ! これで、お兄様に胸を張って見せられるね!」

 

 巨大複合型商店で学校に着ていく洋服やランドセル、靴やアクセサリー類を買って家へと戻っていった後、レミリアとフランはのび太の母親に買ってきた服を着てアクセサリーをつけ、ランドセルを背負った姿をお願いして見てもらっていた。万が一自分たち2人の格好に変なところがあった場合、指摘してもらう事で本命であるのび太に見せる時に、恥ずかしい事にならないように満足かつ完璧でいるためである。

 

 そう言った意図を持って見せた、新しく買った服にランドセルを背負う格好はかなり好感触であり、のび太の母親曰く違和感なども見られないとの事であるため、レミリアとフランはこのままのび太が帰って来た時に見せて感想を聞いてみる事を決意した。

 

「八雲さん。ランドセルはともかくとして、2人に買ってあげたこの服は相当お高いものなのですか?」

「まあ、確かに普通の服屋よりは良いところの物でしたから。とは言え、1着何十万もするような高級品を何着も買ったと言う訳ではありませんわ。それに、2人は服に関して言えば高級品に興味がそれほどある訳ではありませんし、大人の見栄で過剰に着飾らせたせいで、傷つけたくありませんから……あ、今までそう言った経験があった訳ではありませんので、ご安心くださいませ」

「なるほど。お子さんの事を良く考えていらしているのですね」

 

 一方、のび太の母親はレミリアやフランが買ってもらっていた4着の服を見ていて、素材や見た目からそれらがかなり値段の高い物であると判断したようで、紫にそんな事を聞いていた。今回2人の服を買った店は、普通の服屋よりは良い素材で出来た物を売っていたため、そこの物よりは高めであった。

 

 ただ、1着10万円を超えるような高級な服は当然の事ながら、3万円を超えるような値段の高い服を売っていた店ではなかったため、紫は質問に対してその事実も交えてあまりにも高い物は買ってはいないと答えた。そして、更に言葉を付け加える事によって、レミリアとフランの事を第一に考えていると言う印象をのび太の母親に与える事となる。

 

「さて、そろそろお昼の支度をしますか……あ、紫さんも食べて行きます? 今日のメニューはコロッケですけど」

「あら、宜しいのですか? では、是非とも頂きたいと思います」

 

 そんな会話を交わしたり、テレビを見たりしてそれについての話をしながら過ごす事1時間、昼食時になったためのび太の母親が用意をし始めた。その際に紫を昼食に誘い、本人も快諾した事で平日ではあるものの、今日は5人での食事となった。

 

「今日はコロッケだってよ、お姉様! お兄様のお母様の作る料理の中でも、かなり好きなんだよね」

「なるほど。私はそうね……和食だとお味噌汁、洋食だとフレンチトーストかしら。まあ、コロッケも美味しいから好きだけどね」

「確かに、お姉様の挙げた奴も美味しいもんね! でも、やっぱり咲夜の作る料理には叶わないかな」

「当然よ。咲夜の作る料理に敵う料理人なんて、居る訳ないじゃないの。ただ、それに近い腕を持ってるから、もしうちに居てくれたら良いのにとは思うわね」

 

 昼食が作られている間、レミリアとフランはのび太の母親が作る料理についての会話を交わしたり、咲夜の作る料理の方が優れていると褒めたりしながら過ごしていた。

 

 2人が会話の中で咲夜の料理の方が優れていて美味しいと言っても、のび太の母親が非常に劣っていると言う意味ではなく、むしろ両方とも料理の味については高水準であるため、どちらか選べと言われた場合に咲夜の方を選ぶ位の差でしかない。

 

 更に言えば、咲夜が主に作るのが洋食であるのに対して、のび太の母親が主に作るのは和食である。得意分野が違うため、余程不味いものでなければ後は好みなどの問題でしかない事もあり、客観的にはどちらが優れているとも決めづらい。

 

 昼食を作り始めてから40分程経った時、どうやら出来上がったらしく、のび太の母親が居間でのんびりしていたレミリアとフランを呼びに来た。なので2人は見ていたテレビを消し、話を一旦切り上げてキッチンへと向かう。

 

「うわぁ……コロッケがいっぱいある!」

「フランちゃんコロッケ好きみたいだから、量を多めにしてあるからね」

「そうなの!? えへへ、ありがと!」

 

 レミリアたちが席に着いていざ食べようとした時、そこにあった沢山のコロッケにフランが瞳を輝かせた。基本的に少食のレミリアは2個で、ドラえもんや紫は3個か4個であるのに対して、フランの皿にだけ倍以上の10個が盛られていた上、他の4人のコロッケよりも1つ1つが少しだけ大きかったためである。

 これは数日前に、フランがコロッケを初めて食べた際の反応がとても良かった事に由来していた。

 

「本当、貴女ってコロッケ好きよねぇ」

「うん! まあ、()()()()()()()には到底及ばないけどね!」

「あらあら……微笑ましい事」

 

 そうして、いただきますの挨拶を軽く済ませると、フランは早速コロッケを頬張り始めた。出来立てであるためかなり熱くなっているが、そんなのはお構い無しとばかりに食べ進めている。

 

 あまりにも美味しそうに食べる様子から、レミリアが自分の分を食べつつ、コロッケ本当に好きなんだなと独り言のように言うと、フランがそれに反応し、笑顔でレミリアやのび太には到底及ばないと含みを持たせた感じで言った。そんな姉妹の微笑ましい光景を、紫は本当の子供を見るような感じで見ていた。

 

 それから、やり取りを交わしつつ皆で食事をのんびり楽しみ、片付けを終えて紫が家を出てから姉妹はすぐに2階の部屋へと向かい、まだ時間が2時間以上あるにも関わらず、それぞれのび太が帰って来た時に1番見せたい服へと着替え始めた。

 

 フランは、少し暗めのピンク色を基調としたワンピースの上に白寄りの灰色でフード付きパーカーに、膝上までの紺色ソックスを履く。対して、レミリアは深紅色の薄い長袖に紺色のズボン、黒の髪留めとネックレスを付けた。この時期の割には暑めの格好ではあったものの、出かける前に浴びたテキオー灯の効果が残っているため、特に問題はなかった。

 

「早くお兄様帰ってこないかなぁ……待ち遠しいよ」

「まあ、確かに待ち遠しいけれど2時間程度よ。気長にお話でもしながら待ちましょう」

「うん!」

 

 1番見せたい服に着替え終えた後は、2人で部屋の中で他愛もない会話を交わしたり、どう言う訳かドラえもんが一向に2階まで上がって来る気配が全くないため、ここぞとばかりにイチャイチャしながら過ごした。ただ、ここが紅魔館ではない事や家に2人以外にもドラえもんやのび太の母親がいるため、激しめのスキンシップなどは自制し、軽めのスキンシップで済ませている。

 

「レミリア、フラン。のび太君が帰って来たよ。それと、2人にお願いがあるみたいだから、聞いてあげて」

「そうなの? ええ、分かったわ……フラン。ランドセル背負って行くわよ」

「はーい!」

 

 会話やスキンシップなどで時間を潰し始めてから2時間半、やる事がなくなって寝転がっていた時にドラえもんがやって来て、のび太が帰って来た事を伝えに来た。その際、何か頼み事があるらしいから聞いてあげてと言っていた事に少し不思議に思う2人であったが、のび太からのお願いだったら聞いてあげようと考えながら、ランドセルを背負って玄関へと向かった。

 

「お帰りー! ねえ、お兄様見て! 今日ね、お姉様たちと一緒に新しいお洋服とランドセルを買ったの!」

「その……出来ればのび太から感想を聞かせて欲しいって思ってるんだけど、私の格好……どうかしら?」

 

 そして、お願いを言われる前にフランがすかさずのび太に対して話しかけ、強く迫るようにして今の格好に対する感想を求めた。レミリアはそれに続き、少しだけ恥ずかしそうにしながら同じようにして感想を求めた。

 

「えっと……2人とも、いつもより()()可愛くなってると思うよ」

「「……」」

 

 すると、知ってか知らずか、のび太が自分たちに最も言って欲しかった一言を、驚きながらも咄嗟に口に出したのを聞いた。故に、急に何も言えなくなって、この場を沈黙が支配し始めた。それを見て、普段の格好が全く可愛くないと言う風に誤解をされたと思い込んだのび太は、非常に慌てながらいつもの2人も可愛いと訂正を入れようとする。

 

「お兄様、ありがとう……! 今、私が1番言って欲しかった一言をもらえて、とっても嬉しい!!」

「のび太……ありがと」

 

 しかし、その訂正を入れる前にフランがのび太の胸に顔を埋め、目に嬉し涙を浮かべながら可愛いと言ってくれてありがとうと言い、レミリアがさっきよりも恥ずかしがりながらお礼を言った事で、ようやくあの沈黙が嬉しさ故の物であったのだと察し、のび太はほっと胸を撫で下ろした。

 

「それで、お兄様のお願い事って何? 最高に嬉しい気分だから、今なら何でも聞くよ!」

「フランと同じで、私ものび太のお願い事だったら何だって聞いてあげるわ」

「あ、うん……ありがとうね。で、僕が2人にお願いしたいのは……」

 

 そうして数分が経ち、少し落ち着いたところでフランがお願い事について聞いた事で、のび太もそれについて2人に話し始めた。

 

 のび太曰く、児童同士で企画した学校のグラウンドで行うクラス対抗のドッジボール対決が今日であったものの、タイミング悪く参加者の中で学校を休んでしまった人が3人出たらしい。その補てんで、レミリアとフランを連れてきてくれと、ジャイアンから言われたとの事。

 

 あくまでも遊びであるとは言え、クラス対抗なのに()()部外者である連れて行っても良いのかとレミリアが聞くと、ジャイアンが相手と交渉して、小学生の知り合いなら問題ないとの話がついたから大丈夫なようだ。ルールについても、学校のグラウンドに向かうまでの間に説明するとの事から2人は快く受け入れ、急いでランドセルを部屋に置いた後、のび太の母親に出かけてくる旨を伝えてから、新しく買ったスニーカーを履いて目的地へと向かう。

 

 道中、自身の格好を可愛いと言われた時の興奮が未だに持続しているフランが外でも露骨に甘えてきたり、レミリアが話しかける頻度が増えたりしたが、そんな状況下でものび太はいつも通り接していた。案の定、たまに誰かの視線を浴びる事もあったが、そんな人は居ないものだと思ってそれらは全て無視する事に決めていた。

 

「ジャイアン、2人を連れてきたよ!」

「お、のび太か。ご苦労さん……って2人共格好変えたんだな。随分とお似合いじゃないか」

「ふふっ、でしょ! お兄様にも、可愛いって言われたの!」

「そいつは良かったじゃないか、フラン」

 

 色々なやり取りを交わしながら会場であるグラウンドへと着くと、のび太はそこに居たジャイアンに対してレミリアとフランをを連れてきた事を報告した。すると、ジャイアンはほっとしたような表情を見せながらのび太を労うと、2人の変わった格好をお似合いだと褒めた。フランはそれに対して更に気を良くして、のび太に可愛いと言われた事を強くアピールすると、ジャイアンはそいつは良かったと言いながら頭を優しくぽんぽんと叩く。

 

「そう言えば、私たちの相手は誰なの?」

「ん? 俺たちの目の前に居るぞ」

「へぇ……あの人たちが今日の相手なんだ……!?」

 

 そして、フランがジャイアンに対して今日のドッジボールの相手は誰なのかと質問すると、目の前に居る男の子12人を差したため、レミリアも一緒になって確認したところで、途端に顔を曇らせる。何故ならその中に忘れもしない、のび太に対して掃除を押し付けた上に怪我までさせた、恨みしか湧かないあの時の体格の良い男の子が居たためであった。

 

 レミリアは無表情で見つめるだけで済んでいたものの、フランは可愛いと褒められて興奮覚め止まぬ状態だった反動と、のび太の表情に少しだけ怯えのようなものが見られた事から、あの時とほぼ同等の猛烈な敵対心を抱くと同時に何らかの考えが頭に浮かばせ、思わず狂気が混じる笑みを溢しながら、相手の方をじっと見ていた。

 

 フランの態度の豹変ぶりにジャイアンは驚くも、聞いたら恐ろしい事になりそうだと言う理由から聞くのは止めておく事に決め、すぐさま準備が出来た事を相手に伝える。すると、フランを知らない他の男の子は助っ人が小さな女の子だと言う事に対して驚いたり、これなら大丈夫だと余裕をかましたりしていたものの、体格の良い男の子だけは恐怖で顔がひきつっている。

 

「さて、そろそろ始めようぜ。ああ、言っておくが……お前ら、この2人を舐めてかかると痛い目見るぞ。覚悟しておけ」

「あ、ああ……」

 

 そんな中、ジャイアンが相手にレミリアとフランを舐めてかかるなと警告した後に全員が位置につき、ジャンプボールが相手チームに渡ったところでドッジボールの試合が始まった。

 

 すると序盤、相手が小さな女の子だから当てるのも余裕だろうと舐めてかかっていた1人にフランは本気で狙われるも、そのボールを()()()当たるか当たらないかのギリギリで避けた。これにその1人が驚いてしまい、一瞬だけ隙を晒してしまう。

 

「ほら、隙だらけだぜ!」

「あっ……」

 

 当然、その隙を見逃されるはずがなく、フランの後ろでボールを取っていたジャイアンが相手の足元に投げつけて当て、後は何もさせずに相手を外野に追いやった。これにより、フランを警戒した相手の面々が、まずは他の味方を外野に追いやる事に専念し始めたため、気を引き締める。

 

「くっ……相手、なかなか強いな。7対11か……」

 

 試合が始まってから2分、相手の主力陣の強力な投球によって立て続けに味方が外野へと追いやられ、今度はレミリアが例の男の子の全力で狙われるも余裕で取り、すかさず別の相手に投げ返して当てた。更に、運良く味方陣地に跳ね返ってきたボールを味方が取って投げるも、これは例の男の子に取られてしまう。

 

「レミリア、流石だな」

「あら、褒めてくれるの? ありがとうね」

 

 一言レミリアとジャイアンが会話を交わしていると、好機と見た例の男の子が2人の側に居たのび太に攻撃を仕掛けるが、それが既に見えていたレミリアが再び取り、今度は本人に反撃を仕掛けた。これは構えていた例の男の子に取られてしまったものの、レミリアにとっては想定内であったのか、全く慌ててはいなかった。

 

 試合開始から5分経った頃、のび太やスネ夫が外野に送られて更に数的に不利になるも、味方の外野が相手にボールを当てて陣地に復活し、フランが容赦のない攻撃を仕掛けて自分を舐めていた相手を2人外野に追いやった事で同点に追い付いた。ここまで来ると、もうレミリアやフランをたかが女の子だと舐めてかかる男の子たちは居なくなった。

 

「くっ! あの2人の女の子強すぎだろう!? オレたちと余裕で渡り合えてる……と言うか、未だに一撃すら与えられてない!!」

「試合中に余所見してないで、こっち見てなよ!」

 

 ただ、だからと言ってレミリアとフランに一撃を与えられるようになる訳もなかった。相手は2人……主にフランの手によって順々に叩き潰され、ジャイアンや外野から復活したスネ夫のアシストに加えてのび太の奇跡的な一撃による復活によって、更に試合が始まってから10分経った頃には7対1と言う圧倒的大差を付ける事に成功していた。

 

「お兄様に掃除を押し付けるだけに飽き足らず、怪我させたお前だけは……お前だけは絶対に許さない……!」

 

 そして、最後に残った例の男の子はフランが誰にも聞こえないような小さな声で呟きながら、吸血鬼としての本気は出さずに手加減しているとは言え、狂気混じりの怒りや恨みを込めた一撃で容赦なく当てて倒し、相手陣地に誰も居なくなった事で勝利を勝ち取れたため、これにてドッジボール対決は幕を閉じる事となった。

 




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