スカーレット姉妹の現代旅   作:松雨

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スカーレット姉妹とお勉強

「2人共、来てくれて助かったぜ。お陰で勝つ事が出来たからな」

「ふふっ。まあ、あのくらいなら造作もないわ。それで、私とフランの動きはどうだったかしら? あまり人外染みた感じだったら、ちょっと不味いのだけど」

「ああ……ソイツは問題ないと思うぞ。あれくらいの動きだったら出来杉も出来るし、俺も頑張れば出来るからな。まあ、女の子であそこまで動けるような人は居ないから、そう言う意味では不味いかもしれないが」

「なるほどね。まあ、人間じゃないと思われなければ多少目立つ位は良しとしましょうか。どうせ、この容姿である程度は目立ってしまうだろうからね」

 

 学校のグラウンドでの他クラスの児童とのドッジボール対決を終えたレミリアたちは、そのついでに5人で宿題をやるついでに遊ぶため、のび太の家へと向かいながら良い感じの雰囲気で会話を交わしていた。

 

 児童のみで計画した、遊びの側面が強いクラス対抗のドッジボール対決であり、いつものメンバーではなくレミリアやフランが助っ人として参加した状態ではあったものの、圧倒的勝利を飾る事が出来たとあってジャイアンの機嫌はこの上ないものであった。

 

「なあ、のび太。さっきからフランの機嫌があまり良くないみたいだけど……」

「うん……どうしてなのかな? 僕には分からないや」

 

 しかし、それと対照的にフランの機嫌が対決を勝利で飾ったにも関わらず、あまり良くなかった事に不思議がったスネ夫がその事をのび太に話した。

 

 のび太自身、相手が自分に掃除を押し付けた人で、フランがその相手に対してストッパーがなければ殺しかねない程怒りを露にしている事は知っているが、ドッジボール対決で完膚なきまでに打ち勝って勝利しているため、機嫌が良くならない理由が分かっていないため、スネ夫にその旨を伝えた。

 

「どうした、フラン? もしかして、今日戦ったアイツらに何かされた事があるのか?」

 

 レミリアとの会話を終えたジャイアンが、自分の知らない間に相手に何かされたのだと推測したようで、フランに対して出来るだけ穏やかを心がけ、声をかけた。

 

「されたのは私じゃなくて、お兄様だよ?」

 

 すると、声をかけられたフランはジャイアンの方を振り向き、恐怖を感じる笑みを浮かべながら一言だけそう言い放ち、無意識に狂気を放ってしまった。そのため、声をかけたジャイアンは冷や汗をかき、スネ夫はフランから距離を取る行動を起こしてしまうものの、のび太は1度狂気を見ている事と、自分に向けられたものではない故にあまり反応を示さなかった。レミリアは言わずもがな、落ち着いた様子である。

 

「なんて恐ろしさなんだ……と言うか、のび太の奴さっきの奴らに何されてたんだ? フランのあの口振りからして、相当キツイ事されてた感じだ――」

「ジャイアン。理由、知りたいのかしら?」

「レミリア、知ってるのか? まあ、気にはなるから教えてくれるなら頼む」

「分かったわ。それで、のび太とフランから聞いた話だけど……」

 

 そして、ジャイアンが一体のび太は今日の相手に何をされていたのかとの疑問を、誰に話しかけるでもなく1人で言っていると、隣に居たレミリアが理由を知りたいのかと言いながら割り込んだ。実際、フランがあれ程までに強烈な威圧感を放つ理由を知りたいと思っていたので、その問いに対して肯定の意を示す。すると、レミリアは当日に当事者であるのび太やフランから聞いた話を、一応周りに漏れないような対策をした上で、そっくりそのままジャイアンに対して話し始めた。

 

 毎日ではないものの、時折自分たちが遊びに行ったり面倒臭いと言う理由で気弱く非力なのび太に掃除を押し付ける酷さ。

 断られないために数人がかりで威圧したりした上、誰かに告げ口されないようにするのも欠かさない汚さ。

 その上、勇気を振り絞って断ったのび太に暴力を振るい、軽くではあるが怪我を負わせた凶暴性。

 

 これらを全て、フラン程露骨ではないものの怒りを滲ませながら話しているレミリアを見て、ジャイアンとスネ夫は何も反応を示す事が出来なかった。

 

 その理由には、全員ではないとは言え今日の相手がそのような酷い行為をのび太に行っていた事に対する酷さを感じたと言うのも勿論あった。しかし、それ以上に自分たち自身も彼らに類する行為をのび太に対して()()()()()()()()()()()()があったと言うのが大きいためだ。

 

「それに、フランはね。家族か自分が家族同然だと認識した人を『少しでも』傷つけられると、烈火の如く怒るのよ。確か、今から1ヶ月位前だったかしら。その時、迂闊にもとある妖精の悪戯に引っ掛かって、フランから『大好きなお姉様へ』ってもらったネックレスが壊れて、落ち込んでたのよ。そしたら、そんな私を見たフランが……まあ、その後悪戯の張本人がどうなったかは察して欲しいわ」

「おう……分かった」

「まあ、あの状態のフランを見て何となく僕も察したよ。ロクな目に合っていないってね」

 

 更に、レミリアが幻想郷で起こった『ある出来事』をある程度を話した事により、これらの事実がフランに知られた場合に彼らが受けた報復と同じものを受ける可能性もさることながら、容赦なく天国送りにされてしまう可能性すら出てきた事に、ジャイアンとスネ夫は心の中で恐怖を感じると同時に、それを言わなかったのび太の底無しとも言える優しさに感謝をしなくては居られなかった。

 

 その後、のび太が言葉や色々な行動で上手くフランを落ち着かせて笑顔を取り戻させた事で通常の雰囲気に戻り、楽しく会話をしながらのび太の家へと5人で向かった。

 

「こんにちはー! おばさん。のび太の家で一緒に宿題したいんですけど、良いですか?」

「ええ、そう言う事なら良いわよ。2人共、上がって」

「「ありがとうございます!!」」

 

 家に着くと、早速スネ夫が家のチャイムを鳴らして中に居たのび太の母親を呼び、宿題をするために家に上がっても良いかどうかを聞いた。結果、そう言う事なら断る理由もないとの事であっさりと許可が降りたため、ジャイアンとスネ夫は家へ上がれる事となった。

 

「ただいま、ドラえもん!」

「よう、ドラえもん。邪魔するぜ」

「帰って来たよー!」

「ドラえもん。今戻って来たわ」

「のび太君にフラン、レミリアもお帰り。ジャイアンもスネ夫も居るけど、何しに来たの?」

「ああ、のび太と一緒に宿題をやりにね。で、それが終わったらついでに遊ぼうかと思って」

「なるほど。そう言う事なんだね」

 

 2階の部屋へと上がり、どら焼きを食べながらのんびり過ごしていたドラえもんに軽く挨拶をした後、のび太とスネ夫とジャイアンの3人は宿題をやり始めた。レミリアとフランは学校に通う前であって宿題がないため、3人がやっているのを見るだけとなっている。

 

 ただ、今日の宿題の量がそれなりに多い上に難易度も高いのか、進む様子があまり芳しくない。故に、1時間も経つ頃には見ているだけではつまらなくなったフランが自分に分かる問題に関して口を出してのび太を主に助け始め、レミリアも続いて同じようにジャイアンやスネ夫が解けていなさそうな問題を中心に口を出し始めた。

 

 これによって、進んでいなかった宿題の進むスピードがかなり上がり、30分も経つ頃には全員の分が殆んど終わる事となった。ドラえもんのチェックによって正答率もかなり上がっている事が判明したため、やっていた3人は驚く事になる。

 

「運動はともかく勉強もこんなに出来るなんて、レミリアとフランは凄いなぁ。僕なんか全然出来ないのに」

「ありがとう。でも、あまり自分を下げない方が良いわよ。のび太」

「そうだよ! 勉強が苦手でも、スポーツが苦手でも、お兄様には誰にも負けない『優しさ』があるんだから! それに、前までは酷かったとしても、今は頑張ってるじゃん! ね? だから、元気出して!」

「……うん。ありがとね、2人とも」

「どういたしまして」

「えへへ、良かったぁ」

 

 宿題を全て終えた後、2人の頭の良さにのび太が自分を少しだけ下げ始めるも、フランが精一杯元気付けようと言葉や仕草を見せた事で、普段通りに戻った。

 

 その後は全て宿題を終えた事から勉強から離れ、トランプやすごろく等の遊びから、未来のボードゲームをドラえもんに出してもらい、休憩がてらそれで遊んだ。

 

 たかが一般販売されているボードゲームとは言え、未来で発売されている物である。当然、現代の物とは比べ物にならない程の機能を兼ね備えていたため、のび太やドラえもんも含めて全員がかなり楽しめていた。そして、最終的には奇跡のオンパレードによる追い風もあって、フランの圧倒的勝利で幕を閉じた。

 

「あんな奇跡を叩き出されれば、誰だって負けるわよ……」

「はは……そりゃそうだが、楽しかったから良いじゃないか」

「まあ、そうね。フランはどうだったかしら?」

「勿論、楽しかったよ! またやろうね!」

「ああ、勿論だぜ! なあ、スネ夫」

「そうだね。また都合の良い時、皆で集まろう」

 

 そして、ちょうど良いタイミングで夕方の帰る時間になったため、今日は切り上げてジャイアンとスネ夫は帰る事になった。その際、2人は家に帰らず遊んでいた事を思い出して不味く思うも、今更考えても仕方がないので謝った時に何て言おうかと相談しながらのび太の家を出て行った。

 

「突然だけどさ、私とお姉様がお兄様と一緒に学校に行くまでもう後2日なんだよね」

「ええ、確かにね。もう明後日にまで迫って来ているなんて、時が経つのも本当に早いわ」

「そうだね。2日後なんて僕でもいつも通り生活を送ってて、あっという間に過ぎるって感じる時もあるから、レミリアとフランの2人なら余計にそう感じるのかも」

 

 すると、ジャイアンたちが家を出てからすぐ、フランが明後日に迫った学校生活についての話をし始めた。初めての経験でワクワクしているのに加えて、大好きなレミリアとのび太の2人と一緒に居れる時間が増えるとだけあり、相当楽しみで仕方ないと言った感じであるようだ。

 

「まあ、現代の町に来てからはともかくとして、幻想郷に居る間はのび太の言う通り、気づいたら何日も過ぎてたみたいな時もざらにあるわ。何せ、襲撃を受ける事なんてないに等しいから平和だし、色んな友人知人が居る自然豊かな良い所だけれど、裏を返せばここみたいに目新しい何かが殆んどないから、暇なのよね」

「うん! 確かにお姉様の言った通りだけど、それでも幻想郷はスッゴく良い所なんだよ! お兄様もドラえもんも、もし来た時は案内と護衛をしてあげる! ただ、夜中は私たち『妖怪』の時間で、特定の場所以外だと食べられても文句が言えないから危ないんだけど……」

 

 フランの話に反応してのび太が言った事に対してレミリアが肯定し、幻想郷は基本的にとても平和で過ごしやすくて良いところだが、その分新鮮味があまりないので暇になりやすいと付け加える。

 

 更に、フランがレミリアの話した事に対して同意をすると、まだ話し合いすら行われてはいないものの、のび太とドラえもんが幻想郷へ来た場合には案内役兼護衛を買って出る事を確約した。

 

「もし、その時に例えば幻想郷の夜の景色が見たいとか、何か理由があって外を出歩きたい時は言ってね! 襲って来た奴が居たら、私がソイツを()()()して守ってあげるから! 勿論、昼間も大体同じだからね!」

「「「……」」」

 

 加えて、一呼吸置いてから笑顔で部屋にあった空のスチール缶を握り潰し、そう言う話をし始めたため、場の空気を凍りつかせた。過激な言葉が苦手なのび太に気を使ってソフトな言葉を使っているが、フランの言葉には()()()()()()()()()()()()()()()と言う意味が含まれている上に、全員即座にその意味を察した。なので、ストレートに襲ってきた奴は全員殺すと言うのと何ら変わりはなかったが。

 

「さて……取り敢えず、いつになるか分からない幻想郷にのび太たちが来る話は置いといて、フラン。お勉強を始めましょうか」

「お勉強? 今日はもうやったのに?」

「そうよ。今までもそれなりにやってはいたけれど、それでもしないよりは増やした方がマシでしょう? 今日、のび太たちのやってた宿題は殆んど分かる問題ばかりだったけれど、教科書を見る限りだとあれだけとは限らないじゃない」

「まあ……うん。確かにね」

 

 そうして、実現するかも不明な上にいつになるか分からないのび太たちの幻想郷旅の話をしていると、レミリアがそれはひとまず置いといて、2日後の学校通いに向けてもっと勉強をしようとフランに声をかけた。今日の宿題の問題は解ける物ばかりあったが、僅かばかり分からないようなものも混じっている上に学校見学の日にもらった教科書を改めて見て、理解の出来ない部分が多くも少なくも露呈したためである。

 

「それに、分からないだけならまだしも、授業で当てられた時に間違ってる答えを皆の前で堂々と言い放ったりしたら、恥ずかしいでしょう? 仮に、それを何十回も繰り返したりしようものなら……目も当てられないわ」

「なるほど……」

 

 後はもう1つ、分からないだけなら少し恥ずかしい思いをするだけで済むが、的はずれな答えを1回だけならともかく何回も堂々と言い放ってしまおうものなら、大きく恥をかいてしまう可能性が高いと言う理由もあった。

 

 まあ、仮にもアメリカの留学生と言う体で学校に来る故に、からかわれたりそれ以上の事態へと発展する可能性は小さいだろうが、ゼロではないため万が一と言う事もあり得る。そんな感じでフランも理解しているのか、レミリアの発言に対して納得していた。

 

 故に、フランはその場に居たドラえもんに対して勉強の先生を依頼して了承してもらい、更にレミリアが漫画を読もうとしていたのび太に半ば強引に巻き込んで、3人での勉強会が開催される事になった。正直勘弁してくれと思っていてそれを声に出そうか迷ったのび太であったが、姉妹の息のあった『お願い』をされて断る事が非常にしにくくなったために、声には出さない事に決めて勉強を一緒に始めた。

 

 途中で夕飯が出来たと言って、のび太の母親が2階の皆居る部屋に呼びに来たものの、珍しく自分の息子が真剣に教科書などを使いながら宿題ではなく勉強をしている姿を見て、せっかくやる気になっているのにそれを削いでしまったら意味がないと思ったらしく、それ以上は何もせずにこの場を去っていった。

 

「今までは結構流して読んじゃう事も多かったから、見覚えのない箇所も幾つかあったわね」

「うん。今更だけど、もっとしっかり読んでおけば良かったなぁ……」

「いや、それでも2人の理解力は凄いと思うよ。やっぱり、500年以上も生きてたから、館にあるって言う膨大な本から類する知識を得たのかな?」

「ええ、ドラえもんの言う通りよ。うちの館の地下図書館には外から流れ着いた多種多様な本や、幻想郷に向かう前の時代にお父様やお母様たちが集めた魔導書もあって、それらを目的は何であれ結構読んでいるからね」

「なるほど。まあ、目的は違えどとにかく沢山の本を読んでいれば、知識は得れるからね……のび太君も、たまには他の本も読まないとダメだよ」

「分かったよ。ドラえもん、それよりもお腹空いたからご飯食べに行こう」

 

 勉強を始めてから2時間が経った頃、夕食を取らずにいた事によってのび太の空腹が限界に達して集中力が保てなくなったため流石に勉強をやめる事に決め、キッチンへと向かう。

 

 そして、お腹が空いていた事もあって全員かなり速いペースでラップがかけられた夕食を食べ、片付けを済ませた後はレミリアとフランが先でのび太とドラえもんが後と言う順番で入浴を終わらせた。その後は何もやる事がなかった上に、もうすぐ寝る時間も近い事からのび太の母親にそう促されたため、寝る準備を済ませてから皆それぞれの部屋で寝る事に決まった。

 

 

 




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