スカーレット姉妹の現代旅   作:松雨

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スカーレット姉妹とクラスメート(後編)

「えっと……あっ! お姉様、次の時間給食だよ! やっと美味しいご飯が食べられるね!」

「フラン、落ち着きなさい。確かに、どんなものが出されてくるのか気になるのは分かるけど……」

「だって、いつ聞いたか忘れたけどお兄様が『給食は美味しい』って自信満々に言ってたんだもん。それに、ジャイアンとスネ夫としずかだってお兄様と同じ事言ってたし、これはもう期待しかないでしょ?」

「まあね。苦手な野菜が出ていても、給食なら食べられるって子が一定数居る位みたいだから」

 

 クラスメートとの賑やかな交流会を終え、その次の時間にあった算数の授業をそつなくこなしたレミリアとフランは、当番の人が給食室から運んでくる給食が一体なんなのだろうかと考えながら、その時を待っていた。

 学校見学の日に給食献立表も当然配られていたが、食べるその時まで知らないでおきたいと言うのと、見たところでどんな料理なのか大半分からない、のび太とその友人たちが給食は美味しいと断言したと言う3つの理由から献立表を見ていなかったため、2人は余計に楽しみに思っていた。

 

「レミリアちゃんとフランちゃんが日本語上手なの、ビックリしたよ。ここに来る前、相当勉強したんだねー。凄いと思うよ」

 

 そんな感じで2人が会話を交していると、前の席で図書館の本を読んでいた女の子が、話が少し途切れたタイミングを見計らって話しかけた。レミリアとフランが姉妹同士の会話を英語ではなく、他の日本人が聞いても違和感の全くない日本語で話している事に、純粋に凄いと思ったようだ。

 

「ふふっ……ありがとう。確かに来る前、館の図書館で本を読み漁ったり、紫に手取り足取り教えてもらったり、やれる事は色々やったからね」

「うん! 大変だったけど咲夜にパチュリー、美鈴にこあ、館のメイドさんたちも一緒にやったりしたから、飽きる事なく出来たんだよ!」

「そうなんだ……と言う事は、2人の館の人たちも日本語ペラペラなの?」

「勿論よ。皆同じくらい話せたりするし、読み書きも出来るわ。まあ、アメリカに居たら使う機会が殆んどないから、日本に皆で来れば良かったんじゃないかって今更思ってるのだけどね」

「レミリアちゃんの館の人たちって凄いなぁ……」

 

 会話が途切れたタイミングで話しかけられたレミリアとフランは、女の子の勉強したんだと言う問いに対して肯定した後、虚実を織りまぜた話をしながら楽しんでいると、給食係の児童が教室に全員分の給食が入った容器を持ってくるのが3人の視界に入った。

 

 全員がお碗やお皿によそってもらって席に座り、日直の児童の『いただきます』の号令があるまで食べてはいけないため、それほど急がなくとも問題はない。しかし、おかずや汁物の美味しい部分を少しでも多く味わいたいと言う思いがある故に、フランが人間の常識範囲内の素早さで用意されていたお盆を手に取り、そこにお碗やお皿を乗っけて5人の後ろに並び、後を追うようにレミリアと女の子が並んだ。

 

 そして、牛乳の瓶とデザートのプリンを自分で取って乗せてからおかずや味噌汁を当番の児童に順番によそってもらい、フランは機嫌良く自分の席へとついて、全員が自分の食べる分をよそって席につくまで考え事をしながら待つ。

 

「えーっと、そろそろ良いかな? いただきまーす!」

「「「いただきます!!」」」

 

 途中、誰かがこぼした味噌汁の後処理などで少し時間を取られたが、給食が来てよそりはじめてから5分後には全員が席に着く事が出来たので、日直の児童がいただきますと言い、フランもそれに習って言った後に早速食べ始めた。

 

「レミリアちゃんにフランちゃん、日本の学校給食の味はどう? 口に合ってる?」

「ええ。そりゃあもう、最高に美味しいわ。言う事なしね」

「私もお姉様と同じで、とっても美味しいと思ってるよ! たまにで良いから、館でも出て欲しいかなって思う位!」

「なら良かったね。もしも口に合わなかったら、楽しいはずの給食の時間が楽しくなくなっちゃうから」

 

 レミリアがきんぴらごぼう、フランが豆腐とワカメの味噌汁を食べている時、向かい合わせで食べていた女の子が日本の学校給食は口に合うのかとの質問を投げかけた。すると、2人はそれぞれ入れたものを飲み込んだ後、口々に笑顔で『最高に美味しい』と称賛したため、女の子が懸念していた『給食の時間が楽しくなくなる』可能性はひとまず消える事となり、そう聞いた女の子はホッと胸を撫で下ろした。

 

「違いないわね。まあ、この間不本意ながら食べる事になった『アレ』の味を考えれば、多少不味いものが出てきた程度なら平気だけど」

「……お姉様、せっかくの美味しい給食が『アレ』の記憶で台無しになるから、その話がしたいなら後にして」

「確かにそうね。ごめんなさい」

「うん、大丈夫! ほら、それよりも早く食べようよお姉様! 冷めちゃうからさ」

 

 日本の学校給食の感想を言った後、ふとレミリアが1週間程前にひみつ道具の『味のもとのもと』をかける前に、不本意ながら食べてしまったジャイアンシチューを『アレ』に置き換えた話をして、即何の事か察したフランに台無しになるからその話は今は止めて給食を食べようと言う感じでやり取りを交わしたり、向い合わせで食べている良く話せなかったもう1人の女の子との会話を交わしたりしていた。

 

 そんな時、クラスメートの誰よりも早く食べ終わった1人の男の子が隣の友達らしき男の子と一緒にデザートのプリンを持ち、レミリアとフランの席へと近づいて行き、2人のお盆にそっと置いた。予想していなかった追加のプリンの登場にビックリしたフランは、置いた2人の方を向いて話しかけた。

 

「どうしたの? プリン、美味しいのに……いらないの?」

「あぁ……うん。実はオレたち、出る度にいつも誰かに食べてもらう位には苦手なんだよ。で、今日は誰にあげようか考えてた時にレミリアとフランの2人にあげようって、考え付いた訳。チラッと見てたけど、プリンを美味しそうに食べてたし喜ぶかなって――」

 

 背の大きい方の男の子曰く、レミリアとフランがプリンをとても美味しそうに食べる姿が目に入り、自分たちが苦手であるプリンをあげれば一石二鳥だと思い付いたからとの事らしい。

 

「と言うよりは、夕樹(ゆうき)君が人の波に押されて交流会で全然話せなかったから、プリンをあげて少しでも話したいって言う方が大きい……と言うか、それが主目的なんだけどね」

「おい、バカ古谷(ふるたに)! 隠しときたかったのに何で言うんだよ!」

「あはは……だって、君の視線がプリンに釘付けで、我慢してるのがバレバレだもん。仮に言わなくても、レミリアちゃんとフランちゃんにも()()()()()()だって、どうせ察されてるよ。あ、ちなみに僕は本当にプリンが苦手だからね」

「古谷……オレ、そんなに顔に出やすいのか……?」

 

 すると、背の大きい夕樹(ゆうき)と呼ばれている男の子が何か言いかけたところに割り込むように、レミリアやフランよりも少し大きい程度の背丈しかない古谷(ふるたに)と呼ばれている男の子が、色々と言って欲しくない夕樹にとっての秘密をベラベラ喋り始めてしまった。当然、言って欲しくない秘密を勝手に許可なく暴露されて怒った夕樹は抗議するものの、当の本人はどうせバレてるのだから良いだろうと開き直り、彼の抗議なんかどこ吹く風であった。

 

「ふふっ……2人とも、ありがと! あっ、お姉様の分のプリンももらったよー!」

「フラン、良かったじゃないの……って私の分も? あら、わざわざありがとうね」

 

 2人のやり取りを見ていて、別に無理して私にくれなくても話くらいなら頼まれればしてあげるのにと思ったフランであったが、どうしてもくれると言うならもらわないと逆に失礼だと思い直し、ありがたくもらって食べる事に決めた。

 

 もらったプリンを美味しく食べ、既に食べ終えて空になった食器を片付けた後は、お礼として希望通りに昼休みが終わるまで夕樹(ゆうき)と、流れでその友達の古谷(ふるたに)と色々と話をしてあげたりしながらレミリアとフランは過ごした。

 次の授業の準備などもあって話せたのは15分程であった上、その内容も当たり障りのない会話ではあったものの、とても満足そうにしてくれていたので良かったと、レミリアとフランは思っていた。

 

「皆、席に着きなさい」

 

 昼休みが終わる僅か10秒前、やって来た担任の先生が全員に席に着けと声をかけると全員が急いで指示に従い、席に着いた。レミリアとフランは元々自分の席に座っていたため、特に慌てる事はなかった。

 

「えっと……それでは、これから3週間後に行われる『高学年クラス対抗ドッジボール大会』についての話をするぞ。良く聞くように」

 

 そうして全員が席に着いた事を確認した先生が、高学年クラス対抗ドッジボール大会を行うと言う話をし始めた。曰く、のび太たちの居る学校の5年生と6年生、いわゆる『高学年』の括りに入る合計10ものクラスがその名の通り『ドッジボール』で競い合い、今年初めて行われる頂点を決めるイベントとの事。1年生と2年生、3年生と4年生もそれぞれ別の場所で同時期に行われるらしい。

 

 給食後の国語の授業が始まると思っていた2人であったが、先生の口から出されたのは2週間後に行われるクラス対抗のドッジボール大会についての話であった。故に、何か自分たちが勘違いしてるのかと改めて今日の予定表を確認したところ、明日の5時間目の『国語』と今日の5時間目の『その他』と見間違えていた事に気づいた。その他の時は教科書はいらないため、特に影響が現れる事はなかった。

 

「先生! 質問良いですか?」

「はい、どうぞ」

「男女は別々で行われる大会ですか? それとも一緒ですか?」

 

 ある程度先生から説明がされた所で1人の女の子が手を上げ、男女は別々で行われる大会であるのかどうかとの質問を投げかけた。今年から始まった新しいイベントであるため、分からない事だらけだからだ。

 

「勿論、男女別々で行われるぞ。そうでないと、どうしても問題が発生するからな」

 

 それに対して、先生が男女別々であると答えた瞬間、質問した女の子ではない、斜め上の席に座っていた男の子を中心に『マジかぁ』や『えぇ……』など、何人かがこの決定をあまり歓迎していない感じらしく、うっかり声に出してしまっていた。

 

 何故こんな態度を取ったのか、不思議に思った誰かがどう言う事かと聞いてみたところ、それだと『男子と同等以上の女子であるレミリアとフランの2人』を厄介な男子が居るクラスとの戦いに参加させる事が出来ないからだと、男の子は話した。どうやら2日前にグラウンドでドッジボールをやった時の味方に居た男の子だったようで、レミリアとフランの活躍を間近で目に焼き付けていた故に、心の声が出てしまったようだ。

 

 他何人かの心の声が出ていた男の子も同じような態度であったため、こちらも2日前のドッジボール対決の時に味方側に居たのは確実である。

 

「お前ら、男子に俺と出来杉が居る事を忘れてないか? 確かに、出来杉以上の運動神経を持つレミリアとフランが男子の戦いに加われないのは痛いが、絶望する程ではないだろう?」

 

 こんな状況になってしまい、話がいつまでも終わらなそうに見えたが、ジャイアンがそんな男の子たちに対して自分と運動の天才でもある出来杉が居るのだから、仮に強敵が出てきたとしてもそんなに絶望する事はないと言い切った事で、をあまり歓迎していなかった男の子たちは落ち着きを取り戻す事に成功した。

 

 それからは話もトントン拍子に進んで、ドッジボールの件についてはあっさりとカタがつき、先生が何枚かのプリント配りも済ませると、残りの25分は各教科の教科書を見るなどして自習をする時間となった。

 

 4時間目も終わり、次の5時間目の『社会』の授業は特段変わった事もなく、先生の話を聞いてノートをとったり、配られたプリントの問題を解いて皆で答え合わせをすると言った流れで進んでいった。6時間目の『国語』の授業も多少の差異があれど、ほぼ同じであった。

 

「先生! 次掃除の時間ですけど、レミリアさんとフランさんはどうするんですか?」

「それなら、教室をやってもらう事になっているから、分担の者は何をするのか2人にしっかりと教えるように」

「「「はーい!」」」

 

 全ての授業も終わって掃除の時間となった時に、レミリアとフランの分担場所はどうするのかとの問題が発生したものの、既に1ヵ月の間教室をやってもらう事に決まっていた。そのため、ある児童のその質問に対して先生はそう答え、2人に教室掃除は何をするのかしっかりと教えるように担当の児童に言い、言われた児童たちが分かりましたと元気良く答え、それから10分の休憩の後に掃除の時間が始まった。

 

「レミリアちゃんとフランちゃん、女の子なのに体力あるんだねー」

「まあ、館でフランや他の皆と色々やってたから、体力はそれなりについてる感じね

「お姉様と毎日いっぱい遊んだりしてるからかな。あ、咲夜と美鈴も良く遊んでくれてるよ。パチュリーとこあは、そう言うタイプじゃないけどね」

 

 教室掃除担当の児童たちと共に会話を交わしつつ、レミリアとフランは床のモップがけをしたり、要らない新聞紙や雑巾で窓や棚を拭いたり、机を運んだりしながら掃除を難なくこなしていく。2人にとっては机の重さ程度、片手どころか指1本でも余裕で持てるレベルであるが、そんな事をしてしまえば人外っぷりが露呈してしまうため、他の児童たちと同じように両手で運ぶように気を付けていた。

 

「ふぅ……これでおしまいかしら?」

「うん。2人ともお疲れ様。じゃあ、手を洗いに行こう」

「ええ、分かったわ」

「はーい!」

 

 レミリアとフランを加えた5人で役割を明確にした上で教室掃除を行い、そのお陰で早く終える事が出来た。なので、埃などで汚れた手を洗うために廊下に備え付けの水道に向かい、しっかり石鹸を使って時間をかけて洗った。濡れた手をハンカチで拭いた後は、備え付けのアルコールスプレーで消毒を済ませた。

 

 手を綺麗にした後は教室へと戻り、いつでも帰れるように手早く引き出しに入れていた教科書などの荷物をランドセルにしまって机に置き、帰りの会が終わるのを席について大人しく待つ。

 

「お兄様ー! 一緒に帰ろう!」

「うん、良いよ。それで2人共、初めての学校生活はどうだった?」

「えっとね、楽しかったよ! 給食も美味しかったし、周りの皆がスッゴく優しいから!」

 

 そうして、先生の話や次の日に出す宿題のプリントを配るなどを経て、日直の児童のさようならの挨拶が終わって皆が思い思いに帰り始めると、フランは周りの人の注目など知らんとばかりにのび太の方へと一直線に向かい、流石に抱きつきはしなかったものの手を握って一緒に家まで帰ろうとねだり、レミリアもさりげなくフランが握っていない方の手をそっと握って、無言でお願いを始めた。

 

 フランから直接ねだられ、レミリアから無言の視線を送られたのび太はそれを即了承すると、2人に対して始めての学校生活はどうだったかとの感想を求めた。

 

 当然分からない事も沢山あったものの、十二分に楽しむ事が出来ていたので、フランはのび太に対して満面の笑みを浮かべ、瞳を輝かせながら楽しかったとの感想を言った。

 

「私もフランと全く同じよ。それにしても、このクラスで心底良かったと思ってるわ。仮にだけど、もしも()()()()()だったら、関係ない彼ら彼女らには申し訳ないけど、虫酸が走る位の()()が居るから楽しめていなかったでしょうし」

「あー……うん! 違いないね、お姉様! 未だにあの顔見ると、私がこの手で殴り……お兄様居るから、この話はやーめた!」

「はは……」

 

 レミリアは、のび太に対してフランと全く同じ感想である事を伝え、改めてのび太やその友人、その他優しい人たちが沢山居るこのクラスで1ヵ月過ごせる事を感謝する意を表した。そして、仮に例の男の子たちが居たクラスであったならば、虫酸が走る思いを抱きながらの生活になって楽しめない学校生活と化していただろうと、そう話した。

 

 フランはその話を聞き、拳を握りながらレミリアに対して全面的に同意するどころか、未だに例の男の子の顔を見るだけで()()()()()()()()()殴りたくなると言いかける。故に、のび太はちゃんとフランと接してあげる時間を増やし、あの男の子たちとは絶対に1人で合わせないようにしなければと心に誓いつつ、2人と一緒に学校から出て行った。

 

 こうして、レミリアとフランの学校生活初日は楽しい雰囲気のまま、終える事が出来た。

 

 




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