スカーレット姉妹の現代旅   作:松雨

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スカーレット姉妹と商店街巡り

「えっ……何で警察の人が? それに、どうしてフランが泣いてるの? 何かトラブルにでも巻き込まれたのかな……?」

 

 トイレを済ませ、戻って来たのび太は警察の人やどこかの店の人らしき男の人、この光景を見ようと押しかけている野次馬が、泣いているフランや怒っているレミリアの元に集結している、この混沌とした状況に困惑し、誰に言うわけでもなくただ独り言を漏らしていた。

 

 周辺の店で姉妹楽しく待っていると思ってたら、いきなりこんな状況になっていた。これはのび太でなくても、例を挙げればドラえもんやジャイアンでも驚いていただろう。

 

「あんた、あの嬢ちゃんたちの連れかい?」

「えっと……まあ、そんなところです。トイレを済ませて戻ってきたら、いきなりこんな事になっててもう、何が何だか……」

「なるほどね。実は、あの泣いてる金髪の方の嬢ちゃんが居るだろう? あの子がね、小物店の物を万引きしたって疑われてるのさ。実際に、手提げの可愛らしいバッグから出てきたから、()()()に見れば信憑性は高いとみるね」

 

 すると、この混沌とした状況に困惑しているのび太の下に、野次馬の中に居た1人のおばちゃんが近づくと、泣いているフランと怒っているレミリアの連れであるかと問いかけた。いきなり話しかけられて少し驚くのび太であったが、持ち直しておばちゃんからの問いに対して肯定の意を示した。すると、2人の連れであると言う返答を聞いた野次馬のおばちゃんは、それならばと見たまま聞いたままを話し始めた。

 

「え!? いや、フランが万引きなんて……そんな事をするはずはありません! きっと、何かの間違いで入ってしまったか、()()()()()()()()()()()()のだと思います!」

「凄い剣幕……あくまでも客観的に見ればと言う話であって、私個人ではあの嬢ちゃんは無実じゃないかと思ってる。まあ、証拠がないからこのまま行くと、もしかしたら犯人と言う事にされるだろうね」

「……っ! 僕が一緒についててあげれば……トイレなんかに行かなければ……!」

 

 そうして、フランが万引きをしたと疑われていると聞いたところで、のび太は反射的に声をあげてしまった。泣いているフランを見て即座に犯人ではないと直感したためだ。

 

 ただ、現にフランの手提げバッグから品物が見つかってしまっている以上、犯人ではないと言う証拠が見つからない限り解放はされない。それをのび太は理解すると同時に、自分がトイレに行かなければこんな辛い思いをさせる事はなかったのではないかと、自責の念に駆られていた。

 

「あっ……お兄様……」

 

 すると、そのタイミングであげた声にフランが気付き、のび太の方に顔を向けた。それから、すぐに周囲の警官の制止を振り切り、逃げるものだと思って止める店員の手を邪魔な虫を退かすかのように払ってのび太に駆け寄り、泣きながらお願いを始める。

 

「お兄様、嫌いにならないでよ……会えなくなるのなんてイヤだよぉ……私、万引きなんてしてないのに……ぐすっ……うぅ」

「……」

 

 自身の胸元にしがみつきながら泣き喚き、周りに注目を浴びるのも厭わず、嫌いになられたり会えなくなる事がないように必死にお願いをしてくるフランの様子を見ていたのび太は、どう声をかけて良いか分からずにいたため、頭を撫でながら考え込んでいた。

 

「心配しなくても、僕はフランが万引きをしているなんて全く思ってないよ。だから嫌いになるなんて事は()()()()って言い切れるし、疑いだってきっと晴れるから会えなくなるなんて事もないよ」

「お兄様……本当?」

「勿論だよ、フラン。だから泣き止んで、笑ってくれると嬉しいな」

 

 そして、10秒程度考え込んだ後にのび太はフランの目線の高さにあわせてしゃがみ、万引きをしたなどとは全く思っていないから嫌いにはなる事はないのと、していないのだから疑いはその内晴れるよと言い、笑ってもらえるように誘導した。

 

「えへへ、良かった……お兄様、私をずっと信じてくれてたんだ……!」

「うんうん、それでこそフランだね」

 

 のび太の言葉が心に効いたらしく、結果はフランが涙を拭っていつも通りの笑顔に戻った事で、大成功となった。それどころか、普段よりもベッタリとくっつくと言った感じで、ずっとなのかは不明ではあるものの、更に2人の関係が親密になる事となった。

 

 フランを泣き止ませて笑顔に戻した後は、再びどうやって万引き犯の疑いを晴らしてあげようかとのび太は考え始めるも、良い方法が全く思いつかなかったようで、店内に居た人や野次馬の人たちに話しかけ、何か見ていないかと質問をひたすら投げかけると言う『聞き込み』をし始めた。本来は自分の仕事ではないし、放っておいても恐らく警察官が真実を明らかにしてくれるだろうと思っていた。

 

 けれども、絶望しきった表情で涙を流すフランを見ていたのび太は、そう言う細かい事を考える前に身体が既に動き、泣き止ませた後は無実を証明してあげたいと、必死になっていたのだ。

 

「オレ、この外国の子の後ろをつけてってる、すげぇ怪しい女の子みてえな男のガキが居たのをチラッと見たぜ。途中までしか見てねぇし証拠はないが、もしかしたらこれもソイツの質の悪い悪戯かもしれないな」

「ほ、本当ですか!?」

「まあな。ただ、さっきも言ったがオレの予想だから、あまり期待するな」

 

 何人かに聞いている内に、店内に居た客の1人の厳つい大男が割り込んできて、フランたちの後をつける怪しい男の子が居たとの話をし始めた。証拠としては弱いが、のび太にとってはそれでもありがたいものであったため、純粋に喜んだ。

 

 その後もひたすら聞き込みを繰り返し、厳つい大男と似たような証言の数々を得る事に成功していく。ここまで聞いて、のび太は自分の直感が正しかった事を改めて感じ取った。

 

「先輩! 監視カメラの映像を確認してきました。金髪の子は万引き犯などではなくむしろ、後ろをつけていた女の子……すみません、男の子ですね。彼に仕立て上げられた被害者と言う事が判明いたしました!」

「そうか。一応聞くが、もうその子は居ないのか?」

「居ませんね。手慣れた様子で彼女の手提げバッグにこっそり仕込んでからすぐに人目につかないように動きつつ、店の外へと出ています。監視カメラにはバッチリ写っていましたが」

「うーむ……常習犯って奴か。将来が思いやられるな」

 

 ある程度証言を得たタイミングで、店の監視カメラの映像を見に行ってきた警察官の1人が外へと出てくると、先輩らしき警察官に()()()()()()()()()()()報告をして、それが未だに言い争いをしているレミリアたちを含めて、のび太たちの耳にも入っていった。

 

 結果、フランは万引き犯などではなくむしろ、悪戯に踊らされた可哀想な被害者であると言う()()()()()()()をもらい、疑いが完全に晴れた。これに対してレミリアは勿論の事、周りに集まっていた野次馬の人たちの半数が良かったなとの言葉を投げ掛けてくれるなど、良い雰囲気に包まれている。

 

「お嬢ちゃん、良かったね。今度お店に入る時は、もう少しだけ手提げバッグに気を向けとくと安心だから、やってみてね」

「はーい……お兄様、早く行こうよ! お姉様も!」

「分かったわ。じゃあ、気分直しに別のお店を回りましょう」

 

 フランは女性警察官に手提げバッグに気を向けるようにアドバイスをされた後、さっきまで泣いていたのが嘘のような笑顔を向けながらのび太の手を引き、気分転換のために商店街道を歩きながら、気になった店に入っていく流れになる事が決まった。

 

 流れが決まってから最初に入ったのは、万引き犯騒ぎがあった店とは別の小物を売る店であった。店の大きさは先程の所より小さくも品揃えは同等以上に豊富であり、お客さんの入りが多い。故に人の目が多く、フランがされたような行為をする人や万引き犯にとってストッパーとなっているため、3人は安心して店内を楽しみながら回れていた。

 

「ねえ! この髪飾りなんかどう? 私に似合ってるかな?」

「この桜の髪飾り? 似合うと思うけど、それだったら和服を着た方が今よりももっと似合いそうだね」

「和服かぁ……分かった! 今はないけど、お兄様に似合うって言ってくれたから、この髪飾りも買ってくね!」

 

 そんな中、フランがとある髪飾りを商品棚から取ってのび太の方へと持ってきて、自分に似合うかと少しだけ心配そうに問いかけた。フランからの問いに対してのび太は、そのままでも似合うけど和服を着たらもっと似合いそうだと、見たまま感じたままの感想を述べた。

 

 満足する回答をもらえたフランはご満悦になりつつ、和服を着ればもっと似合うと言われた事から、近い内に和服を売っている店をレミリアと一緒に探し、のび太に気に入ってもらえる格好になろうと心の中で誓った。

 

「一応言うけど、フランのお金なんだから、僕が似合うって言った物を全部買わなくても、自分が気に入れば買っても良いんだよ?」

「えっとね、お兄様に似合ってるって言われれば私も嬉しいから良いの! 嫌なら嫌だって言うから、心配しなくても大丈夫!」

 

 すると、のび太が自分の良いって言った和服までそのまま買いに行ってしまいそうなフランを見て、もしかしたら自分の意思を抑えているのではないかと思ったらしく、気に入れば聞かないで買っても良いと薦めた。

 

 しかし、そもそもフランが洋服やアクセサリーを気に入るかどうかの基準の1つに『のび太に似合うと言われるか言われないか』が入っている。そのため、色々と心配をしているのび太に対してフランは似合うと言われる事が嬉しいから、心配なんかしなくても良いと元気良く答えた。

 

「のび太、心配しなくても大丈夫よ。フランは懐いてる人に似合うと言われればほぼ確実に気に入る子だから。前に幻想郷の人里の店でアクセサリーをつけて見せてきた時に、私が『可愛いフランにとっても似合う』って言ったら、即買ってお気に入りにしてた位から」

「なるほどね。まあ、フランが良いなら良いかな」

 

 答え終えたタイミングでレミリアもそれに加わり、フランは懐いている人が薦めたりプレゼントした洋服やアクセサリーをほぼ確実に気に入る傾向にある事を公表、自分の意思を抑えていると言う事は一切ないから心配しなくても大丈夫だと伝える。

 

 レミリアがそう言った事で、のび太はフランが良いなら良いやと思うようになると同時に、下手に高い値段の物を薦めないように気を付けようと誓っていた。

 

「お兄様! 何だか面白そうな物がこのお店にありそうだから行こうよ! あっ、こっちのお店から凄く良い匂いがする! あっちのお店も気になるなぁ……」

「ちょっとフラン……痛いから引っ張らないでぇ!」

「あらあら、随分テンション上がってるわね。さっきのあれを打ち消す位に楽しそうで良かったわ」

「レミリア、お願い! フランを止めて!」

「ん? 何か言ったかしら、のび太?」

「絶対聞こえてるよね!?」

 

 そうして桜の髪飾りを買ってから店を出ると、商店街道を万引き犯トラブルの反動などでテンションが高いフランがのび太の腕を引っ張り、興味のある店や美味しそうな料理を売ってる店に連れ回し、色んな意味で疲れるやり取りが続いていた。

 悪意は微塵もないが、あまりにも乱暴に掴んで引っ張っているため、のび太はフランをどうにかしてくれるようにレミリアにお願いをした。しかし、先程の泣き腫らすフランを見ていたと言う理由から、レミリアはのび太の言葉が全く聞こえなかったふりをして、これをスルーした。

 

 とぼけて聞こえないふりをするレミリアの様子から、この痛く疲れる状況から解放される事は当分ない事を悟ったのび太であったが、少し前まで万引き犯と疑われて自分と会えなくなってしまうと傷心していたフランの悲しい表情を思い出し、何も言わずに成されるがままになろうと心に決めた。

 

「フラン、そろそろのび太を休ませてあげなさい。貴女が色々連れ回したから、もうヘトヘトよ?」

「あっ」

 

 のび太がフランに身を任せてから1時間、ここに来てようやくレミリアが待ったをかけたため、商店街の休憩スペースに座って休める事になった。もう真夏の時期は過ぎているにも関わらず、終始ハイペースで走らされたり歩かされたりしたお陰で息が完全に上がり、汗も滴っている状態であったのを見て、フランは即座に自動販売機に向かってスポーツ飲料を購入し、のび太に渡した。

 

 次に商店街巡りの際、たまたま入った洋服店にタオルが売っている事を思い出したフランはすぐさま走ってそこに向かい、適当な柄の物を何故か2つも手に取り、レジまで持って行って購入すると、再び休憩所まで走った。

 

「ごめんなさい。万引き犯に疑われた時、私のために必死になってくれた事が嬉しくてね、テンションが上がってたの」

「なるほど……ふぅ……フラン。楽しめた?」

「お兄様のお陰で、スッゴく楽しめたよ! ありがとね!」

「なら良かった。僕もヘトヘトになった甲斐があったってものだよ」

 

 そして、のび太の汗を買ったタオルで拭ってあげつつ、体力の差を考えずに色々な店を連れ回して息を上がらせ、ヘトヘトにさせてしまった事を謝った後に掴んで引っ張り、赤くなっていた腕を汗を拭くふりをしながら回復魔法をかけて治した。

 

 謝られたのび太は少しは休ませて欲しかったとは思いつつも、元の輝く笑顔にフランが戻っていて、この商店街巡りを楽しめていた事が分かったため、内なる思いは言わずに楽しめて良かったと、自分がヘトヘトになった甲斐があったと言い、フランを安心させた。

 

「それにしても、体力ないとか言ってたけれど……1度も引きずられる事なくついていけてたわよね。のび太」

「うん。まあ、ヘトヘトになりながらもついていけてたんだよね。今思うと何でなのか、不思議でしょうがないよ」

「そう……もしかして、フランが何かやったのかしら?」

「ううん、何もやってないよ。だから、お兄様が気づいていない体力か根性のどっちかがあったんだと思う!」

 

 フランとのび太がそんな会話を交わしていると、今まで微笑ましく2人の様子を見守っていたレミリアが突如、会話に割り込んできた。どうやら、前に体力がないと本人が言っていたのを覚えていて、故に長い間ずっとフランに振り回されながらもずっとついていけていた事に対して純粋に感心をしているらしい。

 

 ただ、のび太も何故ここまで動き回る事が出来たのか分からないと言ったため、レミリアはフランがいつの間にか魔法を使っていたのかと疑うも、当の本人がキッパリと否定し、実はのび太には気づいていない体力か根性のどちらかがあったのだろうと推測を立てる。

 

 レミリアは納得いかない様子ではあったものの、誰にも迷惑がかかってないどころかむしろ得をしている状態であったため、この事については考えるのを放棄する事に決めたようだ。

 

「お兄様、どう? 動ける?」

「大分楽になって来たから動けるよ」

「そっか! じゃあ、もう少し休んで疲れが癒えたら今度は町巡りしよう? 勿論、休憩はちゃんと入れるし、引っ張って走り回ったりしないから……お願い、お兄様」

「それなら、全然構わないよ。レミリアも、それで大丈夫?」

「ええ。2人が構わないのであれば、私はそれで大丈夫よ」

「やったぁ! お姉様もお兄様も、私に付き合ってくれてありがとうね!」

 

 そうして、1時間と少し程時間が過ぎて体力が戻ってきたのび太に対して、フランがもう少しだけ休んだら今度は町巡りに行こうとお願いを持ちかけた。体力が回復してきたのと、元からそう言う予定で外に出た事もあってのび太はお願いを受け入れ、レミリアも反対する事なく2人に任せると言ったため、30分程度休憩した後に町巡りに3人で動く事に決定した。

 




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