「あら……あれだけ激しく戦っていたと言うのに、まだ余裕があるなんて凄いわね。普段から鍛えてるのかしら?」
「ああ。レミリアの言う通り、普段から鍛えてるからな。流石にどっかの大会とかに出れるレベル位にマジで運動してる奴らには敵わないが、普通の奴らには負けないぜ」
「なるほどね。確かに、これならそこら辺の子たちには負けない訳よ」
のび太のクラスの男子と相手クラスの男子とのドッジボールの練習試合で、1対1の激しい投げ合いに持ち込まれたもののそれを制し、勝利で飾ったジャイアンに対して、レミリアやフランを含めた味方側の観戦者は称賛の意を表していた。運動も天才的な出来杉すら外野に追いやった相手クラスの代表格児童に打ち勝ち、勝利をもぎ取ったためである。
しかも、相手が疲労困憊なのに対して、ジャイアンの方もそれなりに疲労してはいるものの、まだ戦う事が出来る程度には体力が残っている事も称賛される要因となっていた。これにはレミリアも、人間の子供にしては多すぎる体力に驚きを見せ、普段から鍛えているのかとの言葉を投げ掛けていた。これに対して、ジャイアンはその問いに頷いて肯定したため、問ったレミリアも納得の表情を見せていた。
「さてと、次は女子同士の戦いだな……適度に頑張れよ。まあ、お前ら2人なら心配は要らんだろうが」
「ふふっ、当然よ。何て言ってものび太が見ているんですもの。無様な姿は見せられないわ」
「そうだね、お姉様! アッサリ叩きのめされて、お兄様に幻滅されたら嫌だもん!」
「フラン。心配しなくても、のび太の野郎の事だ。あり得んだろうが、仮に2人が無様な倒され方をしたとしても幻滅なんてしやしないさ。むしろ、
そんな感じで会話を交わしていた時、後数分で相手クラスの女子との練習試合が始まるからか、ジャイアンがレミリアとフランに頑張れよと軽い感じで声をかけた。今回の練習試合の相手クラスの女子は強く、戦力差によって普通であれば負ける確率が高い。ただ、今回はレミリアとフランが居て、負けるとは殆んど考えていないが故の軽い発言であった。
ジャイアンからそう声をかけられたレミリアとフランは、のび太が見てくれている事もあって、言われるまでもなく頑張るつもりだったため、当然だと言い放った。その際、フランは万が一叩きのめされた際に、のび太に幻滅されてしまう可能性を心配していたものの、ジャイアンが即座にそれを強く否定した事で、その心配は消え去ったらしい。
「ジャイアンの言った通りだよ、フラン。僕は君たち2人が負けちゃったとしても、幻滅なんてしない。強く問い詰めたりもしない。だから、安心して良いよ」
「っ! えへへ……」
更に、側で話を聞いていたのび太が会話に入り込んできて、例え負けたとしても幻滅なんてするはずがないし、それについては一切問い詰めたりもしないから安心してくれと声をかけてきた。加えて、レミリアやのび太に外でされて嬉しい事の中で上位に位置する、
「2人共。もうすぐ始まるみたいだから、行った方が良いぞ」
「あら……どうやらそうみたいね。じゃあ、行くわよ。フラン」
「うん! お兄様……私、お姉様と一緒に頑張るから見てて!」
「勿論だよ。応援してるから、頑張ってね」
のび太とフランが周りから見ていて微笑ましいやり取りをしていると、お互いのクラスの女子たちが試合をするために集まっているのを見たジャイアンが声をかけた事によって、そんなやり取りは中断される事になった。
もう少し頭を撫でて欲しかったと言わんばかりの表情を見せるフランであったが、レミリアに行こうと促されたため、ここで渋っても仕方ないと気持ちを切り替えて女子たちが集まるコートに向かっていった。
「武君はレミリアちゃんとフランちゃんが居れば余裕みたいな事言ってたけど、本当なのかな? 2人が運動してるところを見た事ないから、体格的にどうしても……」
「さーね。まあ、とにかく今日の練習試合で真価が分かるし、何よりリーダーの源さんがイチオシの子達だから大丈夫でしょ。それと、分かっているとは思うけど……あっさり負けたとしても、強く責め立てては駄目だよ?」
「そんなの、言うまでもないわ」
その際、2人の耳に自分たちの運動能力を疑うような女子の会話が届くも、特に気にもならなかったため、何も言わずにスルーして言われた通りの位置についた。
「それでは、準備が出来たみたいですので……始めてください!」
お互いのクラスの女子たちが位置についたところで、相手クラスの担任の先生がそう声をかけた事によって、ドッジボールの練習試合が始まった。
「やった! まずは……それ!」
「しまっ……フランちゃん!」
試合始め、最初のジャンプボールでは相手にボールが取られてしまって先制攻撃を許してしまう。しかも、その攻撃の対象がフランであった事によって、味方側のしずかちゃん以外の女子数人が慌ててしまうが……
「ふふっ。貴女、私なら小さくて弱いって思った?」
「……」
「まあ良いや。お返しだよ!」
「ちょっ……速い!?」
フランがあっさりとボールをキャッチしたため、味方の女子の慌ては無駄に終わった。その上、男子顔負けの速球で反撃を繰り出した事により、ジャイアンの言っていた事が嘘ではないと言う事実が判明して女子たちに衝撃が走るが、今の攻撃は
ただ、今の反撃によってフランはもとより、まだ動いていないレミリアに対して侮っていた、一部の相手クラス女子も警戒せざるを得なくなったと言う意味では、十分に効果があったと言える。
「あの、アメリカからの留学生の子たちヤバいな。俺たちと混じってやり合っても行けるんじゃないか?」
「うへぇ……もし俺らのクラスの女子が勝ち進んだら、準々決勝か準決勝あたりでかち合うんじゃね?」
「うん。これは今年、油断できない戦いになるね。女子は」
「いや、女子もそうだが男子もそうだぞ。現にさっきの練習試合じゃ1対1に持ち込めたは良いが、剛田に負けただろう?」
「確かに。と言うか、他の女子たちも結構強いじゃん」
体育館の端の方に座り、反撃からの試合を観戦している相手クラスの男子たちも、レミリアとフランの容姿から想像出来ない程の高い運動能力に驚きを見せ、会話の種にしたりしている。のび太やジャイアン、スネ夫や一部の男子以外の味方側の男子も、同様の反応を見せていた。
「あらあら……相手の女の子たち、かなり強いじゃない。数の上では私たちが不利ね」
「確かにそうだけど、私とお姉様は負けないよ! 勝って、お兄様に頭を撫でてもらうんだから!」
ただ、レミリアとフラン、しずかちゃんとその友人1人以外は相手クラスの女子たちの強力な攻撃によって着々と撃破されてしまい、3分が経った頃には相手が残り8人なのに対して、味方が残り4人と言う感じとなってしまい、数の上では不利な状況に追い込まれていた。
しかし、2人にとっては特に問題がある程の状況ではなく、残っている味方をサポートしながら相手を少しずつ倒していき、4分間で数を同等にまで追い付かせる事に成功した。
そして、この辺りまで試合が進んできた時、レミリアとフランにもほんの僅かずつではあるものの、身体的ではなく精神的な疲れが見え始めてきていた。吸血鬼としての身体能力を持っていて、人間の投げるボール程度の速度であれば受け止めたり回避したりする事であれば余裕を持てるものの、こと攻撃に関しては何かの拍子で手加減を間違えれば、今回の練習試合に使用されていた柔らかめのドッジボールですら人殺しの武器になりかねないためである。
特に、フランに至っては1度だけ手加減を間違えている事もあり、余計に緊張感が増していた。ただ、この時は危ない方の間違いではなかったため、そう言う意味では問題はなかった。
それに、精神的に疲労が溜まっているとは言え、まだまだこの程度であれば許容範囲内であるため、2人の行動には支障が出る事はない。
「確かに貴女たち2人は強い。だけど、流石に疲れが見えてきたようね……!」
ただ、レミリアとフランの精神的な疲れが表情か動きに出ていたからなのか、読み取ったのかは不明であるものの、相手クラスの女の子の1人がこんな事を言い始めた。予想以上に強かった2人に
「確かに
「うん! それに、私とお姉様だけじゃなくて、しずかとそのお友達も居るのを忘れないでね!」
でも、実際にはレミリアとフランの動きはほぼ鈍ってはいないし、付け加えるならば回避とボールのキャッチに関しては、精神的疲労も極めて少量しか溜まらないために余裕綽々である上、2人の他にも味方はまだ2人居る。なので、相手の見出だした光明は、偽りの光明であった。
その後も順当に相手にボールを当てていって減らしていった結果、味方の女の子が当てられて残り3人となってしまうも、最後にしずかちゃんが滑って転んでいるタイミングで目の前に飛んできたボールを取り、ほんの僅かの時間で体を横に向けつつ投げたボールを最後に残っていた相手の足に当てると言う奇跡の芸当によって、この戦いを勝利で飾る事に成功した。
「くっ! 見誤ったみたいね。しかし、あの体勢から当ててくるとは……今年の貴女たちのクラスとの試合、並大抵の苦労じゃ済みそうにないか」
「しずか。あの体勢からボールを取って当てるなんて、やるじゃない」
「ちぇっ。最後の相手を倒したところをお兄様に見せたかったなぁ……でも、あれに関しては文句言えないね。確かに凄かったから」
しずかちゃんが見せたこの芸当に、観戦していた両クラスの男子たちは勿論の事、共に戦っていたレミリアやフランを含む両クラスの女子たちも純粋に感嘆する事となった。
「お兄様、私も頑張ったんだから撫でて!」
「良いよ。ほら、おいで」
「えへへ……ねえ、私の活躍ってどうだった?」
「フランの活躍? 誰よりも凄かったよ。流石だって思った」
「……ありがと!」
試合が終わってすぐ、フランはしずかちゃんを褒めるのび太のところへと駆け寄って行き、服を優しく引っ張りながら自分も勝利に貢献したのだから頭を撫でてくれとねだると、のび太は要求に答えて頭を撫でる。
それに満足したフランが、何気なしに自分の活躍はどうだったかと質問をしてみたら、のび太が
ちなみに、レミリアは同じようにされたいと思ってはいたものの、フラン程の大胆さを発揮出来ずにいたため、家に戻ってから要求しようかと考え始めていた。
「先生、授業時間がまだ半分位残ってるんですけど……まだ試合ってやるんですか?」
練習試合が終わり、水分補給やトイレ休憩などを済ませて帰って来たのび太のクラスの1人が、担任の先生に対して授業時間がそれを含めてまだ25分程度残っている事を伝え、まだ試合をやるのかと少し何かを期待しているような感じで質問を投げ掛けた。
「やらないぞ。うちのクラスは、残りの時間は教室で自習をする予定だ。体育館は既に予約が入っているからな」
すると、担任の先生は練習試合はもう行わず、体育館の予約も相手クラスに先に取られていて、残りの時間は教室へ戻って自習の時間とする予定である事を伝えた。結果、それを聞いた男の子がホッとした表情を見せながら伝達した事で、担任の先生が声かけせずに全員が教室へ戻るために素早く動き始めたため、時間のロスが少なく抑えて戻る事に成功した。
「自習かぁ……適当に教科書でも読もうかな。お姉様は?」
「そうね……次は国語の授業だから、国語の教科書でも読もうかと思ってるわ」
「ふーん。じゃあ、私も読むの国語の教科書にしよっと」
教室へ戻った後は、次の授業が国語であるためか、レミリアは自習の時間を国語の教科書を読んだりするのに使う事を決め、フランもそれに流される形で時間を使う事を決め、余った時間が終わるまで実行に移した。
3時間目の国語が終われば4時間目の算数に昼休み、5時間目の社会と言った感じで順当に授業が、何事もなくいつものように進んでいった。
「フラン。今日の学校の授業はどうだった?」
「あっ……言うまでもなく、良かったよ! だって、お兄様に私の活躍の事を聞いたら、
「……」
今日の授業が全て終わり、いつも通り担当である教室の清掃と先生の話も終わらせ、さて帰ろうと言う時にレミリアが唐突にそんな事をフランに聞いた。学校登校の初日にすら聞いてこなかった事を何故かこの日だけは聞いてきたため、フランは一瞬だけ不思議に思うも、すぐに心で思っていた事を答えた。
更に、レミリアの心の中を読み取ったのか、家に戻ったらフランがしてもらったのと同様に、のび太に頭を撫でてもらう予約まで勝手に取っていた事までここでようやく本人に明らかにした。
確かに、レミリア自身もフランと同様に頭を撫でられたいとは思っていたから、勝手に予約を取った事に対しては感謝すらあった。しかし、恥ずかしいから皆の前では自重していたのに、よりによって人が教室に10人以上居たり、廊下を何人も通ったりするこの時間に大きな声で言わないで欲しいと思っていた。現に、この会話をしているレミリア自身やフランに、妙に微笑ましい視線が向けられているのを感じ取ったためである。
ただ、ここで余計な事を言って頭を撫でてもらうのがなくなるのは良くないとも思っているため、レミリアは何も言わずに恥ずかしさに耐える事を選択した。
「2人共、僕はもう準備は出来たけど……一緒に帰る?」
「うん! 勿論だよ、お兄様!」
「私も一緒に帰るわ……」
そうした会話を交わしていると、帰るための準備を終えたのび太が一緒に帰るかとレミリアとフランに声をかけてきた。2人にとって、一緒に帰らないと言う選択肢はあってないようなものであるため、了承して一緒に帰る事に即決まった。
こうして、2人は殆んどいつも通りの1日を過ごして終えた。
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