「へぇ……しずかちゃんにジャイアン、レミリアにフランを誘うのは分かるけど、スネ夫が僕やドラえもん
レミリアとフランが現代旅を始めて19日目の金曜日の朝、平日にも関わらず珍しく学校が休みであったこの日、気が向いたからと言う理由で出されていた宿題をやっていたのび太は、かかってきた電話に出たドラえもんからその内容を聞いて、少し驚いていた。それは、スネ夫が珍しくのび太やドラえもんも含め、2泊3日の旅行に来ないかと言って誘いをかけてきたためである。
前までであれば、こう言った1泊2日以上の旅行や当日のみのお出かけがあったとしても、稀にある例外を除いて仲間外れにされるか、そもそも話すら入ってこないと言った形で行けない事が多かった。だから、この話をのび太が聞いた時、考えるまでもなく当然行くと言う結論に達し、そう言おうとした。
「あ、でも……ママとパパに許可を取らないと行けないよね? 許可してくれるかなぁ?」
「それなら、心配要らないよのび太君。電話が終わった後、僕がその事を話して許可を取ってきたから。えっと、確か『行きたいのなら、楽しんできなさい』って言ってたよ」
ただ、のび太は未成年かつ小学生であり、両親の庇護下にある子供である。当日中に帰ってくるお出かけならともかく、2日以上他所の子の家と共に遠出をすると言うのであれば、許可無しでは到底行く事は出来ない。そう考えが浮かんだのび太は逸る気持ちを抑え、両親に対して許可を取りに行くため、机を立とうとする。
が、そこに間髪入れずにドラえもんが声をかけ、自分がそれに対する許可をもらってきたから心配は要らないと言った事により、その手間が省けた上に行ける事が決まり、のび太は喜びを露にした。
「やった! 後は、レミリアとフランにも声をかけて、どうしたいか聞いてみるかな。出来れば皆一緒が良いから、行くって言ってくれれば嬉しいけど」
「うん。でも、大丈夫だよのび太君。あの2人、
その後、のび太はレミリアとフランも一緒に連れて行こうと思い、宿題を中断して居間に居るであろう2人の下へお願いをしに向かうが、その際にドラえもんは『でも、大丈夫』との言葉を発した。
もうすぐ3週間が経とうかと言う日数共に過ごし、レミリアとフランがのび太に対して好意を抱いている事が分かり、そんなのび太にお願いをされれば、余程嫌な事が無茶な事でなければ聞いてくれると分かっていたためである。
万が一レミリアに行きたくない気持ちがあって迷っていたとしても、のび太に対してもはや姉に同じ位に依存しているとしか言い様のないフランが行くと答えるのは明白であり、そうすれば流れで行くと言う選択肢を選ぶ可能性が極めて高いと推測出来た事も理由の1つのようだ。
「ねえ、お兄様! ドラえもんが電話で話してるの聞いたんだけど、友達とどこかにお泊まりしに行くんだってね! 勿論、お兄様たちと一緒に私も行くから!」
「ふふっ……2泊3日のホテル泊まりの旅行だって? 何だか面白そうだし、是非とも行く事を
2人がレミリアやフランがいつも居る居間に入り、旅行についてどうするのかと聞こうとした瞬間、着替えなどの各種旅行に必要な物品を入れた小型のスーツケースや、財布などの貴重品を入れた手提げバッグを用意し、出かける準備を既に終えた状態であった光景を目にした。
その後、笑顔で駆け寄ってきたフランと、テンションが高いのを隠しきれていないレミリアを見て、のび太は聞くまでもなかったかと悟り、ドラえもんはやっぱりなと小さく声に出す。
「勿論、僕もドラえもんも行くよ。だけど2人共、もしかしたら僕が行かないって言うかもしれないとは思わなかったの?」
「全然思わなかったし、むしろ行くって選ぶと思ってたよ! だから、ドラえもんの会話を聞いてた時から準備を始めてたの!」
「私もよ。のび太は絶対に
「なるほど……」
そして、自身が旅行について行くかどうかと言う前に準備を済ませていた2人に向けて、行かないと言う可能性は考えなかったのかとのび太が問うと、思う訳がないと断言までした。ここまで清々しい程即答出来たのは、レミリアは能力を使用して少し先の『運命』を見て知り、フランはのび太は絶対に断らないと未来予知クラスの直感でそう予想をしていた故である。
「それにしても、本当にその通りになったなんて驚きね。私は能力使うまで分からなかったし、凄いわ。フラン」
「えへへ……だって、お兄様ってお姉様と並ぶ程の大好きな『家族』なんだもん! 行動や仕草、表情とかをじっくり見てるから、この程度の事なら少し考えれば分かるよ! 前にも1人だけで家に来た事あるし!」
2人が準備を既に終えていた理由が自分の答えが分かっていたからと判明し、成る程とのび太が納得していると、レミリアがフランの頭を撫でながら褒め始めた。何故かと言えば、のび太が旅行に行くと最初に当てたのがフランであるためだ。
で、レミリアに褒められたフランは気を良くし、今回の予想を当てる事が出来た理由を説明し始めた。曰く、前回1人で来た時も含め、家族同然であるのび太の事をじっくり観察していたからとの事らしい。
「なるほどね……って一応聞くけど、常識は逸脱してないわよね? 紅魔館で私としてるみたいな事を
フランが見事に予想を当てる事が出来た理由を説明していると、話を聞いていたレミリアが急に真剣な表情になり、常識は守っているのかと問いかけ始めた。
今のところは何も起こってないから大丈夫だろうとは思いつつも、フランの言った『大好きなのび太のあらゆる行動や仕草、表情などをじっくり観察した』との言葉に、その気持ちが変な方向にねじ曲がって高ぶり、見ていない時に紅魔館で自身とするようなスキンシップをしていないかと言う心配が、完全には拭えていないためである。
仮に実行に移した場合、色々な面でデメリットでしかない事が容易に想像が出来てしまうため、レミリアが心配してしまうのも無理はない状態となっていた。
「も、勿論だよ! 常識はしっかり守ってるし、紅魔館でやってるような
「……なら良いわ」
しかし、レミリアの想像しているデメリットはフランも痛いほど理解している。加えて、今現在は強い理性とのび太に嫌われた時の恐怖を合わせたものがスキンシップの欲望に対して圧倒的に勝っているため、自信を持って常識は守っていると言えた。これには、レミリアも心配は杞憂だったと思わざるを得なかったようだ。
ちなみに、そんな2人の会話を聞いていたのび太とドラえもんは、一体何の話をしているんだと不思議に思いつつも、聞いてはいけない何かを感じたため、この件に関しては我関せずを貫く事に決めている。
「さて、話が思い切り逸れたけれど……いつ行くのかしら?」
「あっ、そう言えば聞いてなかったけど……ドラえもん、スネ夫は何て言ってたの?」
「確か『今日の12時過ぎに出発する』って言ってたよ。行きたければ、それまでに学校近くのスーパーで待ってれば大型車2台で迎えに来てくれるって。1台は荷物運び用らしいよ」
5分後、フランのスキンシップ云々の話のせいで逸らしてしまった状況を戻すために、レミリアがのび太に対して2泊3日の旅行にはいつ行くのかと聞いた。ただ、電話に出た本人ではなかった故にのび太は答えを知らなかったため、電話に出た本人であるドラえもんに更に質問をした。
結果、今日の昼間までに学校近辺のスーパーの駐車場にレミリアやフランを含めた4人で準備をして向かい、待っていれば迎えの白い大型の車が来るので、それに乗れば良いとスネ夫が言っていた事が判明した。
「なるほど……12時過ぎって事はテレビ前の時計を見るに、今から後4時間近くね。学校の側にあるスーパーならそれ程遠くないから、万が一の事も考えると、家を40分位前に出れば間に合うって感じかしら」
「うーん、そうだね。僕も君と殆んど同じ事を考えてる」
「まあ、早く着いてもスーパーだし、ちょっとした飲み物とか食べ物を買ったりしてれば時間も潰せるしね。僕も、ドラえもんと同じ意見」
「じゃあ、家を出るまでにある残りの3時間は暇だから、のんびり過ごす感じだね!」
なので、それを聞いてからは家を何時に出発するか、集合時間よりも早く来た時に何をして待つかなどを軽く話し合い、終わった後は出発までに余っている3時間程度の時間を、適当にのんびり過ごす事に4人は決める。
「あら、もう行く時間? ドラちゃんや骨川さんたちが一緒だから大丈夫だろうけど、気を付けるのよ。3人共」
「「「はーい!」」」
「ドラちゃんも、何かあった時によろしくね」
「勿論、そのつもりだよ。僕に任せといて」
そうして、のんびり過ごしながらあっという間に3時間が過ぎると、レミリアとフランは部屋の隅に置いていた手提げバッグとスーツケースなどの各種物品を手に持ち、テキオー灯を浴びて直射日光に対する対策をしっかりと済ませた。のび太やドラえもんの荷物については『きせかえカメラ』を初めとしたひみつ道具を使って用意するため、既に出発をする準備は整っている。
のび太たち4人の準備が終わると、母親に見送られながらスネ夫の両親と友人の運転する迎えの車が来るスーパーの駐車場へと、歩きで向かい始めた。
「お兄様にお姉様と一緒に2泊3日の旅行かぁ。美味しい食べ物を食べて、知らない何かを見たり聞いたりやってみたり、旅館だっけ? そこで一緒の布団かベッドで寝るの……楽しそうで、想像したら顔が緩んじゃう! あっ、ドラえもんも居るから1つの布団じゃ足りないよね」
その際、フランは美味しい食べ物や知らない出来事なども楽しみではあったが、旅館への寝泊まりを含めた2泊3日の旅行である事から、布団かベッドで4人で寝るのをとても楽しみにしていた。
厳密に言えばドラえもんも含めた他人抜きかつ、大好きなのび太とレミリアに挟まれて寝ると言うのを楽しみにしていたのだが、ドラえもんはのび太の唯一無二の親友である。それを口に出す、または実行に移した瞬間にのび太がどう思うかは想像に難くないのを、フランは良く理解している故に、ドラえもんも一緒に寝たいと思っていた。
勿論、ドラえもんを省きたいと思っているとは言え、それは『嫌い』『気持ち悪い』などと言った悪感情から来るものではない。大好きな2人との一時を邪魔されたくないと言うだけであるため、ドラえもんと一緒に居る事自体は楽しく思っている。
「ええ、そうね。それと、どうか部屋を別にされたりしない事を祈るわ。何だか、そうなりそうな心配がしてならないからね」
「えっ? お姉様、運命を見たの……?」
「違うわ。単にそんな予感がしてならないだけ」
「……何とか4人一緒の部屋になるように仕向けなきゃ」
話を聞き、レミリアがそれに強く同意しつつも、性別などの理由で部屋を別にされないように心配だから祈ると言うと、表情を曇らせたフランがそれに反応し、能力を使って運命を見たのかとレミリアに対して心配そうに問いかけた。
ただ、今回は能力を使った訳ではなく、そんな気がしただけである。故に、レミリアはフランに対して能力ではなくただの予感であると答え、安心させようとする。
が、フランは安心するどころかむしろ心配の種が増えてしまい、どんな手段を使おうとも4人で一緒の部屋で寝て過ごしたいと、瞳のハイライトが消滅してしまう程にまで思うようになってしまっていた。
「心配しなくても、どうにもならなかったらドラえもんに頼めば何とかなるわ。だから、少し落ち着きなさい」
「……そっか! 確かにそうだね! と言う訳でドラえもん、その時はよろしくね!」
「うん。まあ、何とかしてみせるよ」
「やったぁ! ありがとね!」
すると、レミリアがこのままだと面倒な事になりかねないと直感で感じ取ったため、いざとなったらドラえもんが何とかしてくれるから大丈夫だと、本人の了解を得ずに勝手に言ってしまう。ドラえもんは勝手に言わないでと思いつつも、何かの拍子に暴走しかねないと言うのはレミリアの態度からして何となく分かっていたため、まあ良いかと思う事に決めた。
「本当、フランってのび太君の事が好きだよね」
「うん! 前にも言ったかもしれないけど……私、初めてお兄様を見た時から、お姉様と一緒に居る時みたいな安心感を感じたの! で、一緒に過ごしてく内に本当の家族が1人増えたみたいに思えてきて……
そんなフランの、のび太に対する懐く様子にドラえもんは改めてそう言う言葉を口にした。今まで数多もの冒険や経験をしていく中で、植物や動物などの人ではない生き物に好かれていたのび太を見ていて、ここまで強く好意を示した存在は類を見ないためである。
ドラえもんのそんな言葉に対して、フランは非常に強く肯定し、どうしてここまでのび太の事が好きになったのかを嬉々として説明をし始めた。
「ええ、私もそれには確かに同意するわ。何て言ったら良いか分からないけど、のび太には私を惹き付ける何かがあるのよ。誰にでも優しすぎるこの性格だからってのもあるんだろうけど……こう、もっと超常的な何か、例えば私やフランが能力を持っているみたいな。心当たりってない?」
嬉々としたフランの説明が終わった後、側でそれを聞いていたレミリアがそれに頷いて同意すると同時に、これには自身が能力を持っているように、のび太にもそう言う類いの能力が宿っている可能性が高いと推測し、ドラえもんに何か心当たりはないのかと質問を投げ掛けた。
「うーん……心当たりって言えばのび太君って植物とか動物とか、人じゃない生き物に好かれやすいってところかな? 勿論、無条件に洗脳されるとか、そんなんじゃないけど」
レミリアからの質問に対し、のび太が植物や動物と言った人ではない生き物に好かれやすいと言った後、台風のフー子や犬のイチ、キー坊などのいくつかの例を示す。勿論、好かれなかったパターンも示し、必ずしも良い方向に向くとは限らない事も伝えた。
「なるほどね。それで能力を持っているとするならば、差し当たり『人ならざる者に好かれやすい程度の能力』と言ったところかしら? 幻想郷に行けば、妖精にはほぼ確実に好かれそうね。知性のない妖怪は無理でも、それ以外の妖怪とならそこそこ良い関係を築けそう」
「のび太君に能力……確かに、持っているって言われても納得出来るね。それに、幻想郷って場所には人じゃない生き物が多いらしいし、少しだけ危険度が下がるって言うのは分かる」
挙げられた例を聞き、レミリアはのび太のその特異体質を能力と仮定して名前をつけると、幻想郷に行った場合にどうなるかを想定したりして、会話をドラえもんと楽しんでいた。フランはのび太と手を繋ぎ、これから起こるであろう楽しい出来事に心を踊らせていた。
「おーい!」
「のび太さん! ドラちゃん!」
そんな感じで歩く事20分、目的地に近づいてきたのを確認したその時、同じく旅行に参加するジャイアンたちに呼ばれているのに気づいた4人は、彼ら彼女らの待つところに駆けて行った。
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