スカーレット姉妹の現代旅   作:松雨

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スカーレット姉妹と旅行(1日目)

「あっ、しずかちゃん! それにジャイアン! 2人も来る事に決めたんだね!」

「ええ、勿論よ。旅館への旅行、楽しそうだったから」

「当たり前だろ。レミリアやフラン、スネ夫にのび太にドラえもんにしずかちゃんも来る、美味い物を食える……他にも色々楽しそうなこの誘い、母ちゃんも快く送り出してくれたし、来ない選択肢は俺にはなかったぜ。暇だったしな」

 

 スーパーの前で待っていたしずかちゃんやジャイアンの元へと駆け寄ったのび太は、この旅行に参加する事に喜びを感じながら、2人と会話を交わし始めた。

 レミリアとフランが来る以前までは旅行の話自体が来ないか、遊んでいる最中などにそう言う話が出て、行きたくなっても高確率で省かれてしまうためである。

 故に今回、レミリアやフランを含めた4人で行けると分かった時に喜び、友達であるジャイアンやしずかちゃんも参加する事が分かった時には、思い出に残る楽しい3日間になるだろうと直感して更に楽しみに思う気持ちが増えていた。

 

「にしても、随分と嬉しそうだな。フラン」

「そりゃあもう! ()()()()()()()が居るんだから、楽しくないはずがないもん! 私の知らない風景に体験した事のない何か、旅館へのお泊まりでお兄様と一緒にお風呂……は()()()()()で無理だけど、喋りながら食事をしたり一緒の布団で寝たり……えへへ、楽しみだなぁ」

「あらあら……まあ、その気持ちは良く分かるわ。私もほぼ同じだもの」

 

 しかし、それよりも遥かにこの2泊3日の旅行を楽しみにしていたのが、のび太の腕にしがみつき、頬をくっつけるなどの行為を行っていたフランであった。車で遠出すると言う事でこの町以外の町の風景を見たり体験した事のない何かを想像して感じている楽しみに加え、()()()()()()()()と一緒に見たり体験したりする想像をした事による相乗効果が発生したため、この態度を取る要因となった。

 

 これに、5日間吸血を行えていなかった事や、のび太やドラえもんに迷惑をかけたくないと言う理由で3週間近くレミリアとのスキンシップを自重していたのが要因で、フラン自身の強力な理性ですら完全には抑えきれずに天秤が若干欲の方に傾いてきている。ただし、まだ理性も同程度残っているため、暴走の心配は皆無であったが。

 

「おっ? あのデカい白い車……スネ夫が乗ってるな。と言う事は、間違いねぇ。来たみたいだぜ」

 

 なんて事を考えながら、レミリアやフランを中心に会話が進む事15分、途中でのび太たちの下に白い大型車が2台近付いてきているのにジャイアンが真っ先に気付き、皆にその旨を伝える。

 

 白い大型車の1台目がのび太たちの目の前に停車すると、助手席の窓を開けてそこからスネ夫が顔を出し、荷台などに抱えきれる貴重品以外の荷物を、2台目の同一の色合いである大型車にスーツケースなどの大きな荷物を載せた後に真ん中と後部座席の好きなところに乗ってくれと全員に向けて言ったため、言われた皆はその通りにした。ちなみに、のび太は1番後ろの席にレミリアとフランに挟まれる位置に乗り、ドラえもんはフランの左隣に乗った。

 

「それじゃ、出発するよ。3日間宜しくね」

「「「よろしくお願いします!」」」

 

 そうして、全員が乗ったのを確認した運転手であるスネ夫の父親が挨拶し、された全員が挨拶を返した後に車が動き出す。

 

「お姉様、お兄様! 今日行く旅館ってどんなところなんだろうね! 美味しい食べ物、綺麗な風景、知らない体験……私、楽しみでしょうがないよ!」

「ふふっ。同じ事を2度も言うなんて、相当楽しみなのね。まあ、私も同じ事を言わせてもらうと、凄く楽しみよ。フランにのび太、ドラえもんに……皆が居るもの」

「うん。僕もだよ、フラン。今まで()()()()()()()()()()()()分、楽しみにしてる」

「やっぱり、お姉様もお兄様も楽しみなんだね……って、中々誘ってもらえなかった……? どう言う事なの? お兄様」

 

 スーパーの駐車場を出発した後、車内では興奮冷め止まぬフランがレミリアやのび太に向かって出発前と殆んど同じような話をしていた。見た目相応の可愛い仕草をしながら今回の旅行に楽しみにしているフランを見て、レミリアやのび太やドラえもんは元より、前に座っていたしずかちゃんやジャイアンもほっこりしている。

 

 しかし、話の流れでのび太が無意識に言った『中々誘ってもらえなかった分、楽しみにしている』と言う言葉にフランが反応を示し、和やかな雰囲気に暗雲が立ち込める事になってしまう。そして、それに気がつかないのび太がどう言う事なのかと()()説明をしてしまったため、話を完全に理解したフランがスネ夫に対してハイライトの消えた瞳で、のび太が居ない時ならともかく、居る時にわざわざ言った上で仲間はずれにすると言う酷い事をしたのかと、猛烈に非難する意を込めて睨みつけた。

 

「フラン、大丈夫だよ! 心配しなくても、それは昔の話だから」

「……そうなの?」

「そうだよ。ちゃんと仲直りも済んでるし、僕ももう気にしてないから、フランもその事は気にしないで。せっかくの楽しい気分が台無しになっちゃうから」

「分かった。お兄様がそう言うなら私も気にしないし、確かに楽しい気分が台無しになっちゃうもんね!」

 

 ここに来てようやく気づいたのび太は、それについてはもう既に昔の話であり、解決も済んでいると言う事を今にも激怒しそうなフランに必死でアピールを行った。結果、前の話で既に解決済みであり、のび太が気にしていないのであれば自分が怒りを抱いていても仕方ないし、楽しい気分が台無しになってしまうと言う言葉に強く納得したフランは、睨みつけるのを止める。

 

「ごめんね、スネ夫。うっかり、変に蒸し返す真似をしちゃって……」

「まあ、良いよ」

 

 フランが落ち着いた後、故意ではないとは言え既に解決が済んでいる話を蒸し返す感じとなってしまったため、のび太はスネ夫に対して謝罪をした。最も、スネ夫はあまり気にしてはいなかったため、この問題についてはあっさりと解決する事となる。まあ、フランに本気で睨まれた時の『底知れぬ恐怖』はスネ夫に残ってしまったが。

 

 その後は和やかな雰囲気が戻り、車窓から見える風景を見ながらレミリアとフランが会話を楽しんだり、簡単に出来るゲームをドラえもんに出してもらい、運転手以外の全員で楽しんだりして過ごした。道中、明らかに危ない運転をする人の車と接触事故を起こしそうになったり、運悪く警察の検問を数ヶ所でやっていたりした事で遅れが出たりしたものの、それ以外に大きなトラブルや事故に巻き込まれる事はなく、どんどん進んでいく。

 

 そんな感じで学校近くのスーパーを出てから3時間半経った頃、車は風情ある巨大な昔風の旅館の敷地内へと入っていき、そこにある駐車場へと止まった後に全員が車から降り、少し遅れて駐車場へと来た2台目の車から各自持ってきたスーツケースなどの荷物を降ろして手に持って、旅館の中へと入っていった。

 

「凄いな……スネ夫、お前の家の事だからここも相当な高級旅館なんだろ? まあ、見た目で何となく分かるが」

「まあね。パパの知り合いが経営してる旅館で、食事やその他色々サービス込みで確か、1番安いクラスで1人1泊7万円、最高クラスの部屋とサービスで12万円だったかな。で、今日皆が泊まる3部屋が中間の部屋とサービス込みの9万円。ただ、今日は旅館の宿泊費はうち持ちだから、その辺はあんまり気にしなくても良いよ。その他の買い物とか、そう言うのは自分でお願いする感じだけどね。いくらうちがお金持ちとは言え、そこまで出してたら厳しいし」

「……」

 

 チェックインを済ませ、全員で感嘆しながら部屋のある場所へと向かう途中、この旅館が相当な高級旅館であるのだろうと察したジャイアンがスネ夫に対して、高級な旅館なのだろうと質問を投げ掛けると、案の定そうであったらしい。1番安い部屋ですら7万円、高い部屋であれば10万円を軽く超えると聞き、質問をしたジャイアンはもとよりのび太やドラえもん、しずかちゃんもその予想外な宿泊費の高さに衝撃を受けていた。

 ただ、レミリアとフランの2人はこの宿の宿泊費云々よりもこれから3日間、お互いやのび太と過ごす時間にどんな事をするのだろうと考えたていたため、あまり関心を示してはいなかったが。

 

「さて、部屋割りについてなんだが、性別ごとに分け――」

「私は()()()お兄様も一緒が良い! 一緒じゃなきゃ嫌だ! 一緒じゃないなんて考えられない!」

 

 そうして皆が泊まる客室があるエリアへと到着し、スネ夫の父親が全員の部屋割りについて話そうとした瞬間、フランが突如として声を荒げ、自分が泊まる部屋は何がなんでものび太が一緒でないと嫌だし、考えられないと言った。レミリアやドラえもんの事については何も言わなかったのは、前者は姉かつ同性であるから一緒だろうと思っていたからで、後者は親友であるのび太さえ一緒であれば流れでついてきてくれるだろうと推測していたためである。

 

 この反応を見てドラえもんとレミリアは、相変わらずフランはのび太の事が凄く好きなんだなと、唐突に大きな声をあげた事以外に特段驚きを見せる事はなかった。しかし、フランとの付き合いがそれ程多くなかったしずかちゃんやジャイアンやスネ夫はもとより、今の今まで全く付き合いが皆無だったスネ夫の両親も、これ程までにのび太に対して非常に懐いている……もはや依存の領域にまで片足を突っ込んでいるフランを見て、驚きを隠せていない。

 

 更に、フランは部屋を性別ごとに分けようと言ったスネ夫の父親に近寄るとじっと顔を見つめ、本来のび太を傷つける敵に対してのみであった、吸血鬼としての威圧感を反射的に出してまで()()()をし始めた。最も、威圧している時点でお願いと言うよりは、脅しと言った方が正しい感じではあるが、本人はそれに気がついていない。

 

「スネ夫のお父様、お願い。良いでしょ? 私とお姉様、お兄様とドラえもん。4人で一緒の部屋でお泊まりするの、私の楽しみだから……」

「あ、ああ……分かった。君がそこまで言うならそうしよう」

「やったぁ! ありがとね、スネ夫のお父様!」」

 

 結果、フランの固い意思と自身にとって底知れぬ()()に気圧されたスネ夫の父親がそれを了承した事によって、レミリアやのび太やドラえもんを含めた4人で同じ部屋に泊まる事が決まった。

 

「お姉様! お兄様と一緒のお部屋になったよ! えへへ、良かったぁ」

「ふふっ……良かったわね、フラン」

「うん! そう言う事だから、お兄様! 今日と明日は一緒に()()寝ようね! 絶対だよ!」

「分かった。勿論良いよ」

 

 大好きな2人と一緒の部屋で寝泊まり出来るようになった瞬間、反射的に放たれていたフランの威圧感が嘘のように消え去り、見た目相応の子供のようにはしゃいだ。そしてすぐに、レミリアに満面の笑みで報告をした後にのび太に対し、旅館で泊まっている2日間は自分の隣で寝てくれと甘えるような仕草を見せつつ約束を迫り、特に断る理由もなかったのび太は、その頼みを二つ返事で了承した。

 

 のび太とドラえもん、レミリアとフランが4人一緒の部屋で寝泊まりする事が決まった後は、トントン拍子に残りの2部屋で寝泊まりするメンバーが決まり、全員の部屋割りについての話はここで終わる事となる。

 

「流石、高級旅館と謳うだけあるわね。部屋の内装、置かれてる家具、窓から見える景色、部屋自体の広さ……全部うちの館に決して引けを取らない程だし。これで普通の部屋なのだから、最高級の部屋は一体どれだけ凄いのかしら?」

「どうなんだろうね? 多分ホコリ1つすらなくて、部屋にある家具とかは著名な腕利きの職人さんの手作りで、置いてあるお菓子は良いお店の物とかだと思うよ!」

 

 そうして、レミリアとフランは割り振られた部屋に入ると、持ってきた荷物を置いた後に、窓から景色を見たり部屋内を歩いて回りつつ、自分たちの住む紅魔館と比べながら楽しみ始めた。特に、フランは自分の望み描いた展開となった事による喜びが加わっているからか、かなりテンションが高くなっている状態のまま、レミリアにべったりくっついていた。

 

 姉妹同士のとても微笑ましい光景に、続いて部屋に入ったのび太やドラえもんは2人に話しかけようと思っていたのを止め、自分たちは自分たちで都合良く窓の側にあった木目調の椅子2つに座り、外の自然と建造物群が調和した景色を見ながら会話をして過ごす事に決める。

 

「失礼します。お客様、本日の夕食をお持ち致しました」

「「「ん?」」」

 

 部屋に入ってから2時間、各々思い思いの癒しの一時を過ごしていると、入り口の襖がゆっくり開き、その前にいた何やら如何にも高級そうな食事の数々を人数分、女将が運んでいるのを部屋に居た全員が目撃する。

 頼んでもいないのに何で出来たのかを一瞬疑問に思った4人であったが、ほんの2~3時間前にスネ夫の言った言葉の一部である『1日3食のサービスがついている』を思い出したため、疑問は即座に消滅した。

 

「やはり美味しいわね。豆腐入り味噌汁にきんぴらごぼう、向こうじゃ全く食べられないに等しい海鮮系統の料理……咲夜と調理担当の妖精メイドたちと良い勝負ね。まあ、洋食と和食じゃ色々と違うから一概には決めきれないのだけど」

「そうなの? いつか食べてみたいなぁ」

「ええ。だから、何時になるか分からないしそもそも幻想郷にのび太とドラえもんが来れるかが疑問なのだけど……もし、紅魔館に遊びに来る事があれば、是非とも食べさせてあげるわ。とても美味しいから」

 

 運ばれてきた食事をゆっくりと味わっている最中、レミリアは旅館の料理を自分の住む紅魔館のメイドたちが作る料理と比べ、見た目も味も遜色ないものだと言う評価を下し、何度も食べたいと思う程に感心していた。

 あまりにも褒めるので、旅館のとても美味しい料理を味わいつつも、紅魔館の料理もいつか食べてみたいとのび太が言ったところ、幻想郷に訪れる事が出来たなら是非とも食べさせてあげると言う事が、この場で確定する。

 

「うん! それに、お兄様と一緒に幻想郷巡りするのも楽しみ! 手を繋ぎながら人里を見て回ったり、博麗神社に妖怪の山とその頂上にある守矢神社、星空を見るお気に入りの場所に太陽の――」

「フラン!? 人里と博麗神社と守矢神社は比較的安全だから良いわ。だけど、妖怪の山は天狗のテリトリーだし、太陽の畑は()()風見幽香が居る場所よ。それに、夜中の幻想郷は()()()()()。前にも言った事あるけど、いくら貴女が居るからって、危ないと思うわ」

 

 そんな感じで料理についての話をレミリアとのび太がしていると、割り込むようにしてフランが会話に参加し、幻想郷にのび太が来た場合にどこに行って案内をしてあげようかと言い始めた。手を繋いで笑顔になりながら楽しく行く想像をしているため、フランの表情は『幸せ』を体現したようなものとなっていた。

 

 しかし、フランの提示した行き先の中に普通の人には危険な場所や時間帯が含まれていたため、レミリアは話を遮り、いくら貴女が居たとしても危ないと忠告をしてそれとなく考え直すように促したが……

 

「分かってる。だから、その時は本気を出して私が4人でお兄様を守るよ! お兄様を殺そうとする奴が居れば、塵にしてやるもん!」

「フォーオブアカインド……なるほどね。スペルカードを使って守ると」

「そうだよ!」

「……やりすぎないでよ」

 

 フランの意思の固さは凄まじく、その時は『禁忌 フォーオブアカインド』と呼ばれるスペルカードを使用して、死角を作らないようにしてありとあらゆる外敵を塵にし、のび太に傷1つつけさせない鉄壁の守護体制を整えると豪語する程である。外敵を殺すと言わずに塵にするとのソフトな言葉を選んだ訳は、のび太に変なイメージを持たれないように気を遣っているためだ。

 それを聞き、レミリアは納得しつつもあまりやり過ぎないように注意する事も怠らなかった。

 

「ごちそうさまでした。さてと、持ってきてもらった料理も食べ終えた事だし、お風呂に入ってくるわね。フラン、一緒に入りましょ?」

「うん! お兄様たち、先に入ってくるね!」

「分かった。その後僕たちが入るけど、だからってあんまり急がなくても良いからね」

 

 出された料理を全て食べ終え、玄関脇に用意されていた食器入れに食器を入れて片付けを済ませると、レミリアとフランが先でのび太とドラえもんが後に入浴する事が決まった。

 

 それから1時間程経ち、4人が入浴を終えた後は旅館内を何となく出歩いてみたり、自動販売機で買った飲み物を側にあった椅子に座りながら飲みつつ話をしたり、同じく出歩いていたジャイアンたちも途中で加わるなどして、寝る時間になるまで色々と楽しんだりした。

 

「今日は楽しかったね! お兄様、お姉様!」

「うん。僕もだよ、フラン」

「ええ、そうね。何と言っても、のび太とフランが居たんですもの。勿論、ドラえもんもね」

 

 そんな感じで色々と楽しんで午後10時を回った時間帯になった時、寝る事に決めた4人は布団を敷き、今日経験した事を振り返りながらお互いに眠くなるまで30分程話し込み、1日目を終える事になった。

 




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