「お兄様からの贈り物……うん! 勿論受け取るよ!」
夕方までレミリアと沢山遊び、若干の心残りがありながらも楽しく過ごしていたフランは、帰って来てすぐにのび太から贈り物をされる事は全く予想してはいなかったため、驚く事となった。
「良かったぁ……はい、どうぞ。あ、それとフランだけじゃなくてレミリアにも2つあるから、喜んでくれると良いな」
「ありがと! えへへ、お兄様からの贈り物……何だろうなぁ」
「フランだけかと思ってたら、私にもあるの? ありがとう、のび太」
「勿論だよ。レミリアだけ仲間外れにするなんて、考えられないから」
しかし、大好きなのび太がくれると言った物を受け取らないと言う選択肢はフランには微塵もなかったから、箱を2つ受け取った。その様子に安心したのび太は、手に持っていたもう2つの箱を、受け取って喜んでくれたら嬉しいとレミリアに言いながら手渡した。
そうして、フランとレミリアがのび太から贈り物をもらった事を非常に喜びながら箱を開けていくと、中からは一見何の変哲もない真っ白なマグカップが出てきた。これだけであれば、普通にありがとうと言って終わりであったのだが、フランがマグカップに描かれていたとある絵に気づいたため、それだけでは終わる事はなかった。
「あれ? この絵って……私だよね? あっ、2つ目の箱に入ってたマグカップにも私の絵が描いてある……」
「あら、こっちには私の絵があるわね。ご丁寧に名前まで書いてあるわ」
「お姉様の絵も?」
「ええ。しかも、手書きの絵と文よ。一応聞くけど、これってのび太が書いた奴なのかしら?」
何故なら、フランに渡されたマグカップにはフランの絵と名前が、レミリアに渡されたマグカップにはレミリアの絵と名前が、機械ではなく手書きで書かれていたからである。
店で売っている物を買ったのであれば自分たちの絵が描いてある事などないので、これはのび太が描いた絵であると即座に2人は察した。
「うん、そうだよ。僕、絵が凄く下手くそだから何度も時間をかけて書き直したんだけど結局、それでもやっぱり下手くそでね。2人に分かってもらえなかったら、どうしようかなって思ってたけど……すぐに分かってもらえて良かったよ。遊ぶ時間をかけてまでやった甲斐があったって思えたし」
しかし、のび太がこの絵を描いていない可能性が全くないと言い切れるかと言うと、微妙なところではあった。レミリアもそう思っていたため、この絵はのび太が描いたものなのかと本人に問いかけた。
結果、レミリアのその問いに対してのび太が確かに自分で描いたものだと認めたため、2人の察しは正しかったと証明される事となる。
その後、のび太は自分の絵が下手くそである故に、ドラえもんと遊ぶ時間をかけてまで何回も書き直したりしたけど、結局下手くそなままになってしまい、喜んでもらえるかと不安であったと言う、今に至るまでの心情を暴露したところでフランが何を思ったか、声をあげた。
「お兄様! どうしてそこまでしてくれたの? この旅行、もしかしたら2度と行く機会がないかも知れないんだよ? なのに……私のために、大切な時間を使っちゃって良かったの? 凄く嬉しかったけど、ドラえもんと遊びたい気持ちを無視してまでお兄様が無理してまで描いてくれてたとしたら……」
当然、部屋に居たフラン以外の3人はいきなり大声を聞いた事でビックリしたものの、声をあげたその訳は本人の口から、もう2度と行く機会がないかも知れないこの旅館周辺で遊べる時間の内の1日を、わざわざ自分のために使ってくれてまでプレゼントをしてくれたからだと語られたため、3人の疑問は解決させる事が出来た。
「大丈夫。僕は全く無理してないから、安心して良いよ」
「本当……?」
「うん、本当だよ。自分の意思でプレゼントを贈りたいからやるって決めて、今日1日をかけたんだよ。それに、今日のこのマグカップ、フランに対してのお礼も兼ねてるからね」
「えっ……」
終始感情を露にしたフランのその話を全て聞き終えると、のび太は即座にこれは全て自分の意思でやった事であり、決して無理をしている訳ではない事を力説し、泣きそうになるのを間一髪で阻止した。
すぐに、この自作絵入りのマグカップを用意した理由を、フランが自分が危ない目にあった時に助けてくれたり、レミリアと一緒に毎日をより楽しいものへと昇華させてくれたりなどしたお礼であると説明をして、フランの表情を笑顔へと変えていった。
「ありがとうね、フラン。君と出会えたのは、本当に良かった。2週間もしない内に帰っちゃうのは
更に、今まで自分自身に色々と恩恵を与えてくれた事と、一緒に居るだけで楽しくなるような
「そっか……お兄様、私の事を
のび太からのお礼を含めた話を聞いていたフランは、自分の存在がのび太の中で親友のドラえもんに劣る可能性があるとは言え、特別な存在となっていた事を悟り、感動に打ち震えた。
まあ、大好きな家族同然だと思っている人物から、わざわざ時間を削って用意してくれた贈り物を受け取ったとあっては、この反応も当然と言えるだろう。
「あれ、何でかな? 凄く嬉しいはずなのに涙が止まらないよ、お兄様……」
「えっと、フラン? あの絵で、泣く程嬉しかったの?」
「うん……! だって、だってぇ……」
ただ、フランの感じている嬉しさは最初こそは普通の感じではあったものの、レミリアと共に現代に来てから経験した出来事を振り返っていくにつれて倍々に膨れ上がっていくと言う様子を見せ、最終的にもらったマグカップに描かれた自分自身の絵を改めて見て、君と会えて本当に良かったと言う、のび太から言われた事を反芻したところで遂に、天元突破するにまで至った。故に、フランは本能的に色々な行動をのび太に対して起こす事になってしまう。
例えば、のび太に飛びつくようにして抱きついたり、悲しい事や嫌な事で泣いているかのように嬉し泣きしたり、大好きなどの愛情を表現する言葉を連呼するなどだ。
そうして、終いにはフランの泣き声を聞きつけたスネ夫やジャイアンやしずかちゃんが何事かと部屋に訪れたタイミングで何を思ったか、唐突にのび太は私の
「「……」」
あまりにもぶっ飛んだこの状況にのび太は勿論の事、部屋に訪れたスネ夫やジャイアンもしずかちゃんも、一時的に何も言葉を発する事も動く事も出来なかった。
が、本人の発言や様子から、フランに何かがあったと言うのは明らかに勘違いかつ早とちりである事が判明し、そうなるとこの雰囲気の中に居座るのは場違いであると気がつく。なので、楽しんでくれよなと言い残し、部屋を後にしていった。
「私だけのもの宣言までするなんて……のび太から贈られた自作絵つきのマグカップ、フランは相当嬉しかったみたいね。でも、まさかあそこまで嬉しがるなんて、本当に驚いたわ」
「そうだね。でも、君だってフランに負けず劣らず嬉しそうに見えるよ」
「えっ? まあ、フランにだけかと思ってたマグカップをのび太からもらえて凄く嬉しい気持ちだけど、そんなに分かりやすい程顔に出てたかしら? ドラえもん」
スネ夫たちが部屋を後にしてからすぐ、レミリアはフランがのび太に対して私だけのものだと宣言をした事が相当の衝撃だったらしい。隣に居たドラえもんに会話を振り、それとなくフランのその行為が凄かった事に対する同意を求めていた。
対して、ドラえもんはフランの喜び様が凄かった事には全面的に同意しつつ、それに負けず劣らずレミリアものび太からマグカップをもらった時に喜んでいるように見えたと言ったため、レミリアは思わず
「確かに、顔にも嬉しいって気持ちは出てるけど、1番は翼かな。レミリア。君は気づいてないみたいだったけど、のび太君からマグカップをもらった時、隠してた翼が急に現れてね。ぴょこぴょこ羽ばたかせてたのを見た時にそれはもう、凄く嬉しそうだなって直感したよ」
「翼!? あら、本当……無関係の他人がここに来なくて助かったわ。まあ、万が一他人が来たとしても、吸血鬼か悪魔のコスプレをしてたとでも言えばどうにでもなったでしょうけど」
それからすぐ、レミリアがそんなに顔に出ていたのかと質問を投げかけると、投げかけられたドラえもんはそれに対して、顔にも出てはいたけど1番は何があっても隠していた翼が現れた上、嬉しそうに羽ばたく仕草を見せたからだと説明をした。
ドラえもんからの説明を聞いたレミリアは手を後ろに回し、確かに隠していたはずの翼がいつの間にか現れていた事を確認し、急いで再度翼を隠した後、この間にのび太の友達以外の面々が来なくて良かったと、ホッと一息をついた。
同時に、フランが落ち着いたらのび太に対して、もらったマグカップに対するお礼の言葉でも言おうかと決意を固める。
「あっ……ごめんなさい。お兄様の服、涙で濡らしちゃった……」
「どうせお風呂上がりの時に着替えるし、大丈夫だよ。それよりも、ほら。ハンカチで涙拭いて」
「うん! えへへ、お兄様大好き! マグカップ、ありがとうね! ずっと大事にするよ!」
10分程の時間が経った時、ようやく泣き止んで落ち着いたフランは、机に置かれたもらったマグカップに対し、何かの間違いで破損する事がないようにこれでもかと長期間効果が続く防御魔法を重ねがけした後、ずっと大事にする事をのび太に対して固く誓った。ちなみに、今のこのマグカップの耐久力は、フランの能力で何とか破壊が可能になるレベルにまで達している。
「のび太。フランの分だけじゃなくて、私の分までわざわざありがとうね。凄く嬉しかったわ」
「そう? ありがとうね、レミリア。それと、さっきフランに対してだけ出会えて良かったって言ったけど、勿論君に対してもまるっきり同じ事を思ってるから、安心して。何だか後付けみたいだけど、本当だからね?」
「ふふっ……分かってるわよ。あの状況下で私の名前を一緒に出すのは、変だしね。私がのび太の立場だったら、同じ感じになっていただろうから」
フランがようやく落ち着き、話が途切れたタイミングを見計らい、レミリアがのび太に対してマグカップをくれたお礼を言った。
どうしても下手くそ過ぎなのではないかと言う心配があったが故に、フランには泣かれたり変なテンションで私だけのもの宣言をされてしまう程に喜ばれ、レミリアにも満面の笑みを浮かべられながら感謝された事で、のび太は顔を少し赤くして照れた。
それから、先ほどフランに対してのみ出会えて良かったと言ったが、レミリアに対しても同様の感情と感謝を抱いている事をのび太は強調して伝えた。フランだけにそう言う感情を抱き、感謝している訳ではない事を分かってもらい、あらぬ誤解を招かないようにするためである。
まあ、レミリアはのび太が自分にもほぼ同じ感情を抱いている事は既に分かっていたため、その手間は杞憂に終わる事になったが。
「よう、お前ら! 俺たちと一緒に、今から飯一緒に食いに行かないか?」
そうしてマグカップの話が終わり、さて何をしようかと言う話題になった時、チャイム音が部屋に響き渡り、ジャイアンたちが再び部屋へと入ってきた。どうやら、4人で色々と部屋で盛り上がっていたらいつの間にか夕食時になっていたらしく、それに誘いに来たようだ。
「駄目! お兄様たちは私と一緒に居るの! だから、今日は絶対に渡さないからね!」
しかし、フランはジャイアンたちの姿を見るや否や、即座にのび太の腕を掴んで今日は絶対に渡してなるものかと発言し、もし無理矢理連れていくのであれば抵抗し、対峙する構えを見せた。
「と言う訳だから、今日はごめんね。ジャイアン」
「まあ、一生に1度の思い出だからな。謝る事はないぜ。じゃあ、ゆっくり楽しめよ!」
あまりにもフランが強く拒否する意を示し、のび太を筆頭にドラえもんやレミリアも少し申し訳なさそうに拒否したため、ジャイアンたちは夕食へと誘う事を諦め、部屋を去っていった。
「お兄様! これで今日はずーっと一緒だね!」
「うん。そうだね、フラン」
こうして、ジャイアンたちに自分の秘めたる意思を悟られないように追い払ったフランによってのび太は勿論の事、レミリアとドラえもんも流れで残りの寝る時間、お風呂とトイレの時間以外はずっと一緒に過ごす事となった。
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